パンデミック真菌カンジダ・アウリスを1時間以内に検出・診断できる遺伝子診断法を開発・発表
[18/10/29]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
2018年10月29日
学校法人帝京大学
パンデミック真菌カンジダ・アウリスを1時間以内に
検出・診断できる遺伝子診断法を開発・発表
―国内流行に備えた実証試験へー
帝京大学大学院医学研究科医真菌学(槇村浩一教授)の研究グループは、パンデミック真菌:カンジダ・アウリスを1時間以内に検出・診断できる遺伝子診断法を開発し、米国微生物学会のジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー誌9月号で報告しました。
院内感染としてパンデミックを生じている新種の病原真菌カンジダ・アウリスが北米・欧州をはじめとした全世界で問題となっています。この菌は多くの薬剤に耐性(多剤耐性AMR)である上、病原性・致命率が高いことが知られていますが、限られた高価な機器を使用しなければ感染の診断ができず、有効な対策が取れません。そこで、帝京大学大学院医学研究科医真菌学(槇村浩一教授)の研究グループは、臨床検体、環境サンプル、および分離された菌株から本菌を1時間以内に検出し菌名を特定できる遺伝子診断法を開発し、米国微生物学会のジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー誌9月号(注1)で報告しました。
本研究は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)による新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業の支援を得て行われたものであり、海外研究機関の協力の下に流行地における実証試験が予定されています。
開発されたカンジダ・アウリス遺伝子診断法(LAMPauris)の特徴
●LAMPaurisは極めて高い感度(プラスミドDNAは2コピー、細胞は10個以上)でカンジダ・アウリスを検出できる(図1,表1)。
●主要病原真菌の中でLAMPaurisによって検出されたのはカンジダ・アウリスのみであった。また、通常の検査でカンジダ・アウリスと間違って判定される菌種は何れもLAMPaurisで検出されなかった(表2)。
●LAMPaurisによれば、患者から得られた検体だけではなく、様々な微生物に汚染された院内環境から得られた検体(器具やベットなどを拭ったものなど)からであっても、カンジダ・アウリスの有無を直接調べることが可能(表1)。
●LAMPauris検査に必要な時間は1時間以内、費用は実費として1検体1000円程度。
●LAMPaurisの開発に当たっては、カンジダ・アウリスの全ての遺伝子情報を調べ、本菌にだけに見つかるDNA塩基配列を標的とした。
●遺伝子増幅法は、日本で開発されたLAMP法(一定の温度で迅速・特異的に標的DNA塩基配列を検出できる)を用いるため、迅速・高感度・高精度であり、検出に必要となる機械も安価である。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201810269646-O1-nX72935H 】
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201810269646-O2-zseOOx49 】
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201810269646-O3-xIi5HCxp 】
パンデミックを生じているカンジダ・アウリス(パンデミック型)感染症の特徴(注2)
●院内感染として概ね2013年以降全世界的規模の流行(パンデミック)を引き起こしている。
●多くは薬剤耐性(AMR)であり、多剤耐性の菌も少なくない(一部の菌にはいかなる薬剤も効かない)。
●感染症状は敗血症や髄膜炎などを含む全身感染だが、外傷や皮膚などの感染もあり(米国では400名程度)、また皮膚や粘膜に無症状のまま住み着いていることもある(米国では700名程度)。
●全身感染の致命率は高い(30-60%)。
●流行地は、米国、欧州、南米、南アフリカ、およびインド等をはじめ全世界。
●カンジダ・アウリスは、患者または健康な人が流行地から他の国に拡散している。
●中国のアウトブレーク(パンデミック型による院内感染)が今年報告された。
国内におけるカンジダ・アウリス(在来型)感染症
●日本国内から見つかったカンジダ・アウリス(在来型)はパンデミック型と異なり、薬剤耐性の程度は軽く、病気も引き起こしにくい。
●感染症としては、外耳道炎から11株が見つかった。
●今後、国際交流、メディカルツールズム、および東京オリンピックを背景にパンデミック株が国内に流入し、アウトブレークを生じる可能性がある。
●本菌を確実に見つける方法(今回の研究を含む)と、アウトブレーク株と在来株を識別する方法の開発が必要である。
カンジダ・アウリスとは
●カンジダ・アウリス(オーリスと表記されることもある:学名はCanidida auris)は、2005年(平成17年)に東京で初めて発見され、帝京大学の槇村教授らが2009年(平成21年)に新種として報告した病原真菌(酵母)である(図2,注3)。
(注1)Yamamoto M, Alshahni MM, Tamura T, Satoh K, Iguchi S, Kikuchi K, Mimaki M, Makimura K: Rapid Detection of Candida auris Based on Loop-Mediated Isothermal Amplification (LAMP). J Clin Microbiol. 2018 Aug 27;56(9). pii: e00591-18. doi: 10.1128/JCM.00591-18. Print 2018 Sep.(https://jcm.asm.org/content/early/2018/06/21/JCM.00591-18)
(注2)米国疾病管理センター(CDC)カンジダ・アウリス情報: https://www.cdc.gov/fungal/candida-auris/index.html
(注3)Satoh K, Makimura K, Hasumi Y, Nishiyama Y, Uchida K, Yamaguchi H: Candida auris sp. nov., a novel ascomycetous yeast isolated from the external ear canal of an inpatient in a Japanese hospital. Microbiol Immunol, Jan;53(1):41-4, 2009.
(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1348-0421.2008.00083.x)
学校法人帝京大学
パンデミック真菌カンジダ・アウリスを1時間以内に
検出・診断できる遺伝子診断法を開発・発表
―国内流行に備えた実証試験へー
帝京大学大学院医学研究科医真菌学(槇村浩一教授)の研究グループは、パンデミック真菌:カンジダ・アウリスを1時間以内に検出・診断できる遺伝子診断法を開発し、米国微生物学会のジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー誌9月号で報告しました。
院内感染としてパンデミックを生じている新種の病原真菌カンジダ・アウリスが北米・欧州をはじめとした全世界で問題となっています。この菌は多くの薬剤に耐性(多剤耐性AMR)である上、病原性・致命率が高いことが知られていますが、限られた高価な機器を使用しなければ感染の診断ができず、有効な対策が取れません。そこで、帝京大学大学院医学研究科医真菌学(槇村浩一教授)の研究グループは、臨床検体、環境サンプル、および分離された菌株から本菌を1時間以内に検出し菌名を特定できる遺伝子診断法を開発し、米国微生物学会のジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー誌9月号(注1)で報告しました。
本研究は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)による新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業の支援を得て行われたものであり、海外研究機関の協力の下に流行地における実証試験が予定されています。
開発されたカンジダ・アウリス遺伝子診断法(LAMPauris)の特徴
●LAMPaurisは極めて高い感度(プラスミドDNAは2コピー、細胞は10個以上)でカンジダ・アウリスを検出できる(図1,表1)。
●主要病原真菌の中でLAMPaurisによって検出されたのはカンジダ・アウリスのみであった。また、通常の検査でカンジダ・アウリスと間違って判定される菌種は何れもLAMPaurisで検出されなかった(表2)。
●LAMPaurisによれば、患者から得られた検体だけではなく、様々な微生物に汚染された院内環境から得られた検体(器具やベットなどを拭ったものなど)からであっても、カンジダ・アウリスの有無を直接調べることが可能(表1)。
●LAMPauris検査に必要な時間は1時間以内、費用は実費として1検体1000円程度。
●LAMPaurisの開発に当たっては、カンジダ・アウリスの全ての遺伝子情報を調べ、本菌にだけに見つかるDNA塩基配列を標的とした。
●遺伝子増幅法は、日本で開発されたLAMP法(一定の温度で迅速・特異的に標的DNA塩基配列を検出できる)を用いるため、迅速・高感度・高精度であり、検出に必要となる機械も安価である。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201810269646-O1-nX72935H 】
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201810269646-O2-zseOOx49 】
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201810269646-O3-xIi5HCxp 】
パンデミックを生じているカンジダ・アウリス(パンデミック型)感染症の特徴(注2)
●院内感染として概ね2013年以降全世界的規模の流行(パンデミック)を引き起こしている。
●多くは薬剤耐性(AMR)であり、多剤耐性の菌も少なくない(一部の菌にはいかなる薬剤も効かない)。
●感染症状は敗血症や髄膜炎などを含む全身感染だが、外傷や皮膚などの感染もあり(米国では400名程度)、また皮膚や粘膜に無症状のまま住み着いていることもある(米国では700名程度)。
●全身感染の致命率は高い(30-60%)。
●流行地は、米国、欧州、南米、南アフリカ、およびインド等をはじめ全世界。
●カンジダ・アウリスは、患者または健康な人が流行地から他の国に拡散している。
●中国のアウトブレーク(パンデミック型による院内感染)が今年報告された。
国内におけるカンジダ・アウリス(在来型)感染症
●日本国内から見つかったカンジダ・アウリス(在来型)はパンデミック型と異なり、薬剤耐性の程度は軽く、病気も引き起こしにくい。
●感染症としては、外耳道炎から11株が見つかった。
●今後、国際交流、メディカルツールズム、および東京オリンピックを背景にパンデミック株が国内に流入し、アウトブレークを生じる可能性がある。
●本菌を確実に見つける方法(今回の研究を含む)と、アウトブレーク株と在来株を識別する方法の開発が必要である。
カンジダ・アウリスとは
●カンジダ・アウリス(オーリスと表記されることもある:学名はCanidida auris)は、2005年(平成17年)に東京で初めて発見され、帝京大学の槇村教授らが2009年(平成21年)に新種として報告した病原真菌(酵母)である(図2,注3)。
(注1)Yamamoto M, Alshahni MM, Tamura T, Satoh K, Iguchi S, Kikuchi K, Mimaki M, Makimura K: Rapid Detection of Candida auris Based on Loop-Mediated Isothermal Amplification (LAMP). J Clin Microbiol. 2018 Aug 27;56(9). pii: e00591-18. doi: 10.1128/JCM.00591-18. Print 2018 Sep.(https://jcm.asm.org/content/early/2018/06/21/JCM.00591-18)
(注2)米国疾病管理センター(CDC)カンジダ・アウリス情報: https://www.cdc.gov/fungal/candida-auris/index.html
(注3)Satoh K, Makimura K, Hasumi Y, Nishiyama Y, Uchida K, Yamaguchi H: Candida auris sp. nov., a novel ascomycetous yeast isolated from the external ear canal of an inpatient in a Japanese hospital. Microbiol Immunol, Jan;53(1):41-4, 2009.
(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1348-0421.2008.00083.x)