三木市「緑が丘ネオポリス」において郊外型住宅団地再生のための実証実験を開始します
[19/02/15]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
2019/02/15
大和ハウス工業株式会社
代表取締役社長 芳井 敬一
大阪市北区梅田3−3−5
■Reニュータウンプロジェクト第一弾
三木市「緑が丘ネオポリス」において郊外型住宅団地再生のための実証実験を開始します
大和ハウス工業株式会社(本社:大阪市、社長:芳井敬一)は、兵庫県三木市の「緑が丘ネオポリス」において、郊外型住宅団地ライフスタイル研究会(※1)ならびに三木市(市長:仲田一彦)、緑が丘町まちづくり協議会(会長:井上輝美)、一般社団法人三木市生涯活躍のまち推進機構(理事長:岩?正勝)と協同で「産・官・学・民」連携による既存住宅団地の再生事業に取り組んでいますが、このたび、郊外型住宅団地再生のため、4つの実証実験を行うこととなりました。
今回の実証実験では、高齢化率約40%のオールドタウンと化した「緑が丘ネオポリス」において、高齢化する地域住民および新たに流入する住民が安心して快適に過ごせる多世代循環型コミュニティを形成するために、現状の課題を抽出し、問題解決に向け改善策を講じるものです。
4つの実証実験では、団地再生に必要な4つのサービスプラットフォーム(移動・人材・IoT・活動 拠点)の構築と6つのサービス(移動配達・子育て・健康増進・新たな働き方・地域互助・住み替え)をパッケージングして街を再生する日本初の試みとなります。
本実証実験で得た知見や成果については今後、高度経済成長期に開発したニュータウンで同様の課題を抱える当社の大規模戸建住宅団地「ネオポリス」(※2)において展開していきます。
※1.幹事企業として当社、凸版印刷株式会社、株式会社クラウドワークス。その他民間企業として、スポーツクラブNAS株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、豊田通商株式会社、キユーピー株式会社、イオンリテール株式会社、生活協同組合コープこうべ、神姫バス株式会社、神姫ゾーンバス株式会社、神戸電鉄株式会社、株式会社ライフビジネスウェザー。行政機関として三木市、三木市社会福祉協議会、国土交通政策研究所。学校法人として関西学院大学、関西国際大学、創志学園。地域住民団体として緑が丘町まちづくり協議会、一般社団法人三木市生涯活躍のまち推進機構、サンロード商店街振興組合の総勢22社・団体が加盟。
※2.当社が開発した大規模戸建住宅団地。ギリシャ語の“neo”(new)とギリシャ語の古代都市国家“Polis”とを組み合わせた造語。
●ポイント 〜4つのサービスプラットフォームの構築と6つのサービスの提供〜
1.移動 自動運転によるコミュニティ内移動サービス(移動・配達支援)
2.人材 クラウドソーシングと高齢者・障がい者の就業環境整備(新たな働き方)
3.IoT 高血圧症の重症化を予防(健康増進)
4.活動拠点 サテライト拠点整備と移住の場を整備(子育て・地域互助・移住・住み替え促進)
■郊外型住宅団地「緑が丘ネオポリス」再生の背景
当社が1967年に開発・造成した「緑が丘ネオポリス」は、現在、1971年の入居開始から半世紀近くが経過し、高齢化率約40%のオールドタウンとなり、人口減少や空き家・空き地の増加等、様々な社会課題が山積し、その課題解決に向けた取り組みが必要な状況となっています。
この現状を打開するべく、兵庫県三木市は2014年4月、当社と団地再生に関する協議を開始し、2014年8月、内閣府より「特定地域再生計画策定事業」に選定され、団地再生における課題抽出を行いました。その後2015年8月、三木市が民間事業者に呼びかけ産・官・学・民協働の「郊外型住宅団地ライフスタイル研究会」を設立、現在も再生事業に取り組んでいます。参加企業・団体は、互いの持つ技術やノウハウ等を交流・融合させ、日本のオールドタウンが抱える課題解決に向けて団地再生に取り組んでいます。
そして今回、「Reニュータウンプロジェクト」の第一弾として、4つの実証実験(1)自動運転車両によるコミュニティ内移動サービス、(2)クラウドソーシングと高齢者・障がい者の就業環境整備、(3)高血圧症の重症化を予防、(4)サテライト拠点整備と移住の場を整備するための実証実験を行うこととなりました。
1.移動 自動運転によるコミュニティ内移動サービス(移動・配達支援)
(1)市街地公道での自動運転によるコミュニティ内移動サービス
当社は、日本工営株式会社と共同で2019年2月16日(土)から2月22日(金)までの期間、「緑が丘ネオポリス」および隣接する「松が丘ネオポリス」の一部エリアにおいて、市街地公道での自動運転によるコミュニティ内移動サービスの実証実験を実施します。
本実証実験は、国の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動運転(システムとサービスの拡張)」のプロジェクトの1つとして国土交通省・内閣府が行う取り組みに基づき実施します。
実証内容は、予め設定された自動運転走行区間(約2.6kmの範囲内)の沿線住民を対象者(30名)にした自動運転によるコミュニティ内移動サービスです。
モニターとなる利用者は、電話またはWEBアプリで事前にサービスを利用したい日時・出発地・目的地を入力・予約し、自宅から約1km〜2km(ワンマイル)程度の短距離にある公民館・自治会館・クリニック・商業施設を行き来できるようにしました。
自動運転に使用する車両は、市街地公道での自動運転のために開発されたソフトウェア「Autoware」を搭載し、事前に計測した「高精度3次元地図(ADASmap)」を組み合わせ、自動走行システムで運行します。
(2)将来の自動運転サービスのイメージ
現在、自家用車等で公共施設や生活利便施設を利用されている高齢者の方々は、いずれ運転免許証返納等の時期が訪れ、徒歩での移動となり、さらに外出が困難な状況に陥ることも予想されます。
また、現在地域内を循環する公共交通機関のバス路線は利用が伸び悩んでおり、今後バス運行の見直しが行われることも考えられます。
そこで「緑が丘ネオポリス」では、戸建住宅団地での新たな移動手段として自動運転を活用した公共交通サービスの実現に向け検証と課題整理を行い、本サービスを早期に実現することを計画しています。
運用イメージは、複数の町丁目で形成する「コミュニティエリア」ごとに自動運転車両を共同所有し、各住居から地域拠点施設を結ぶ交通サービスとして運用していくことを検討しています。
このような自動運転送迎サービスを実用化し、日本全国で普及・拡大していくことで、高齢者が移動難民となることを防ぎ、地域に住み続けられるサステナブルなまちづくりを目指します。
2.人材 クラウドソーシングと高齢者・障がい者の就業環境整備(新たな働き方)
(1)時間や場所に縛られない職場環境の創出
当社ならびに三木市が運営する一般社団法人三木市生涯活躍のまち推進機構では、ICT(※3)の活用により場所や時間にとらわれず郊外型の住宅団地でも働ける「クラウドソーシング」(※4)の職場環境の整備の実証実験を行います。
実験内容は、「クラウドソーシング」の就労場所として自宅はもちろん、「緑が丘ネオポリス」内にコワ―キング(※5)が可能なサテライト拠点を設置する予定です。将来的には就労者である子育て世代のワーカーが仕事と子育てを両立できるよう、サテライト拠点にキッズコーナーを併設し、NPO法人と連携して運営するなど子育てスペースの機能を充実させていきます。
本業務は、クラウドサービス業界最大手の株式会社クラウドワークスが全国の企業から業務を 斡旋し、簡単なテープ起こしやデータ作成等の簡易業務をワーカーに提供します。また、将来的には業務範囲もグラフィックデザインなど、より専門的な業務も請け負います。
2019年6月からの運用開始に向け、4月までにワーカーを束ねるクラウドディレクター(世話役)を全国から募集し育成します。6月からは実際に働くクラウドワーカーを約20名〜30名募集。試験運用を重ねて2019年度中に本格的な事業開始を目指します。
このように、街に新たな付加価値を創出することで、新たな若年層を「緑が丘ネオポリス」に流入させていきます。
※3.Information and Communication Technologyの略。IT=情報技術に通信コミュニケーションの重要性を加味した言葉です。
※4.Crowd(群衆)とSourcing(業務委託)の造語で、企業側はネットを介して外注でき、受注側である働き手は時間や場所に拘束されずに働くことができる新たな仕事のスタイルのこと。
※5.事務所スペースや会議室、打ち合わせスペースなどを共有しながら独立した仕事を行う共働ワークスタイルです。
(2)高齢者や障がい者の就労環境を創出
当社ならびに大和ハウスグループの大和リース株式会社、一般社団法人三木市生涯活躍のまち 推進機構は、「緑が丘ネオポリス」にお住いの高齢者や障がい者が永続的に就業できる環境の創出に取り組みます。
具体的には、「緑が丘ネオポリス」に隣接する「松が丘ネオポリス」の当社社有地に延床面積約400?のビニールハウスを設置し、2019年度(予定)から高齢者や障がい者が胡蝶蘭の栽培に従事できるようにするものです。そこで育てた胡蝶蘭は、当社の戸建住宅や賃貸住宅、分譲マンションのオーナー様へ贈呈する予定です。
また、そこで働く高齢者や障がい者の方々が安全・安心して働ける環境の場の創出に努めるべく、就業者全員にウェアラブルデバイス(※6)を装着していただき、心拍数を集計する実証実験を行います。
実証実験では、就業中に熱中症等にならないよう、就業前に血圧・体温を計測するとともに、就業中もウェアラブルデバイスを装着した就業者の心拍情報や就業場所の気温・湿度などの情報が奈良県立医科大学MBT研究所(※7)に送信され、暑熱ストレスの危険度を解析、その結果に基づき状況報告や注意喚起をタブレット端末やスマートフォン経由で現場管理者へ送信。職場の安全管理につなげます。また後日、モニタリングした就業者のバイタルデータ(心拍等の情報)の結果については、保健師の健康相談会や筋力・体重測定会などの健康チェックを行う機会を設け、そこで働く方々の健康増進につなげていきます。
このような高齢者や障がい者の新たな職場環境を創出することで、「緑が丘ネオポリス」で住まう方々の「生きがい」を創出し、心の健康と健康寿命の延伸に寄与していきます。
※6.身体に装着して利用できる端末(デバイス)。アプリと連動して心拍数など健康状態を記録できるもの。
※7.少子高齢化を快適に暮らすことができるまちづくりの実現を目指して、奈良県立医科大学が持つ医学的知見やノウハウを全て産業に投入することによって、産業創生を行うとともに地方創生に寄与するもので、その理念を達成するために設立。金融機関や民間企業の活力を導入して、医師・医学者と企業との連携を促し、新産業創生・まちづくりを進めている研究所。
3.IoT 高血圧症の重症化を予防(健康増進)
(1)患者のデータをIoTで自動収集・解析し最適なメッセージを個別配信
凸版印刷株式会社ならびに三木市、一般社団法人三木市生涯活躍のまち推進機構、奈良県立医科大学、株式会社MICIN、当社は、「緑が丘ネオポリス」にお住いの高血圧症患者に対して通信機能を有する血圧計、活動量計、環境センサー・情報発信機器などのIoTデバイス(ウェアラブルデバイス)を配布し、脈拍、血圧、活動量のほか、温度・湿度、気圧など血圧の増減に影響を与えると思われるデータを自動で収集。奈良県立医科大学MBT研究所による解析を経て、最適な個別のメッセージをモニター(「緑が丘ネオポリス」の住民利用者:80名)のタブレット端末やスマートフォン、「あんしんライトTM」(※8)に配信します。
また、モニターは定期的にサテライト拠点でコンシェルジュによる生活のアドバイスも受けることができます。高血圧症の重症化予防のほか、健康意識の向上による行動変容も期待できます。
将来的には、全国の自治体・地域が共通して抱えるこの地域課題の解決に資する推進モデルを、広めていく予定です。
なお、本実証実験は、総務省の「IoTサービス創出支援事業」を活用して実施します。
※8.凸版印刷が提供する緊急情報や自治体などのお知らせを音声や文字で報知し、住民の受信状態を把握できる個別送受信機。
4.活動拠点 サテライト拠点整備と移住の場を整備(子育て・地域互助・移住・住み替え促進)
(1)多世代循環型コミュニティの形成
2015年8月に設立した「郊外型住宅団地ライフスタイル研究会」では、多世代循環型コミュニティの形成の場として地域のきずなを育む拠点を整備する実証実験を行うこととなりました。
その第一弾として2017年4月、「緑が丘ネオポリス」のサンロード商店街に地域互助・たまり場・相談窓口としての機能を持つ多世代交流施設「みどりん(一般社団法人三木市生涯活躍のまち推進機構)」を設置しました。
「みどりん」では、自治組織としての機能を持つ緑が丘町まちづくり協議会、老人クラブ、地域の民生委員、児童委員、子ども会、商店街振興組合と情報共有し、多世代間の交流スペースとして、また健康サービスの場として利用されています。
将来的には、地域互助・たまり場・相談窓口としての機能を持たせたサテライト拠点を数ヵ所設置し、子どもの見守りから「クラウドソーシング」の就労場所としても利用していく予定です。
(2)移住・住み替えの促進
大和ハウスグループでは、2018年1月より戸建住宅や分譲マンションの売買仲介・買取再販・リノベーション・リフォームなどの住宅ストック事業を強化するため「Livness(リブネス)」の統一ブランドで事業を展開しています。
当社が手がけた「緑が丘ネオポリス」内には、不動産の購入から売却、買取などの相談窓口として、地域に密着した大和ハウスグループの日本住宅流通株式会社三木緑が丘店があり、「Livness」事業を推進しています。
今回当社では、高齢者の住民に対して入居から半世紀近く経ち、住みにくくなった戸建住宅から 高齢者向け住宅等へ住み替えを促し、その空いた戸建住宅をリフォームして新たな若年層に入居していただく仕組みを新たに構築することとなりました。
2019年度(予定)には「緑が丘ネオポリス」に隣接する「松が丘ネオポリス」の当社社有地に、高齢者のライフスタイルにあわせて戸建平屋住宅やサービス付き高齢者向け住宅、コミュニティサポート住宅(※9)、高齢者用コレクティブハウス(※10)等の住宅を整備。加えて、住み替えに必要な各種ファイナンススキーム(資産コンサルティング、住み替え資金調達、不動産活用コンサルティング)を提案することで、同じ町内での移住を促進させ、Reニュータウンを実現させます。
※9.居住者がコミュニティを形成し生活することで、自立した生活を送りつつ、必要な部分を互いに支え合う住宅。スタッフを配置し、コミュニティ形成の円滑化や相互扶助の負担を軽減するもの。
※10.団地内の住民が既存のコミュニティを変えることなく、お互いの介護負担を軽減しながら相互扶助していく住宅。
5.今後について
当社は、兵庫県三木市の「緑が丘ネオポリス」において培った郊外型戸建住宅団地再生に関する知見を先導的モデルとしてプラットフォーム(基盤)を整備し、同様の課題を抱える全国のニュータウンに展開。将来は高齢化を迎える海外でも展開していきます。
●「緑が丘ネオポリス」
所在地:兵庫県三木市(神戸から電車で1時間)
開発面積:約441,650坪(約136ha:東京ドーム約31個分)
総区画数:約3,400区画
高齢化率:39.9%(2018年9月末)
人口動態:約11,500人(1982年) ⇒ 約9,100人(2018年9月末)
備考:大和ハウス工業が1967年3月、神戸電気鉄道株式会社から用地約24万坪を譲り受け、さらに地元の地権者から約10万坪を譲り受け開発・造成した住宅団地。1971年の入居開始から既に半世紀近くが経過し、かつては団塊世代、団塊ジュニア世代が住むベットタウンだったが、子どもは大都市へ移り住み、高齢化率が約40%となるオールドタウンと化した。
■「緑が丘ネオポリス」再生への道のり
1970年 緑が丘地区 土地区画整理事業認可取得
1970年〜1972年 緑が丘地区 第一期開発 造成工事
1971年 緑が丘ネオポリス 第一期開発 分譲開始
1975年〜1976年 緑が丘地区 第二期開発 造成工事
1975年 緑が丘ネオポリス 第二期開発 分譲開始
1983年 青山地区 土地区画整理事業認可取得
1983年〜1988年 青山地区 造成工事
1985年 松が丘ネオポリス 分譲開始
1997年 三木市の人口ピーク 88,232人
2012年
三木市の人口 81,304人 高齢化率27%
(緑が丘ネオポリス高齢化率35.59%、松が丘ネオポリス高齢化率14.47%)
大和ハウス工業総合技術研究所にて緑が丘ネオポリス実態調査を実施(〜2013年)
2013年
三木市の人口 80,391人 高齢化率28.43%
(緑が丘ネオポリス高齢化率37.12%、松が丘ネオポリス高齢化率16.08%)
2014年
三木市の人口 79,768人 高齢化率29.81%
(緑が丘ネオポリス高齢化率38.25%、松が丘ネオポリス高齢化率17.37%)
2月 三木市長が来社 緑が丘ネオポリスの団地再生協力要請
4月 三木市と当社で団地再生に関する協議開始
8月 三木市 内閣府の「特定地域再生計画策定事業」に選定
2015年
三木市の人口 79,282人 高齢化率30.9%
(緑が丘ネオポリス高齢化率39.23%、松が丘ネオポリス高齢化率18.87%)
8月 「郊外型ライフスタイル研究会」設立
2016年
三木市の人口 78,803人 高齢化率31.77%
(緑が丘ネオポリス高齢化率39.9%、松が丘ネオポリス高齢化率20.56%)
9月 「生涯活躍のまち構想」が地方創生推進事務局の「地域再生計画」に認定
2017年
三木市の人口 78,414人 高齢化率32.46%
(緑が丘ネオポリス高齢化率40.33%、松が丘ネオポリス高齢化率21.6%)
3月 「生涯活躍のまち推進機構」設立
4月 「生涯活躍のまち推進機構 緑が丘事業部」開設
2018年
三木市の人口 77,873人 高齢化率33%
(緑が丘ネオポリス高齢化率40.69%、松が丘ネオポリス高齢化率22.99%)
6月 総務省「IoTサービス創出支援事業」採択
11月 国土交通省「平成30年度スマートウェルネス住宅等推進モデル事業住宅団地再生部門」採択
12月 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「戦略的イノベーション創造プログラム(SPI)自動運転(システムとサービスの拡張)『ニュータウン地域における自動運転による移動サービス実用化に向けた環境整備に係る調査』に係る実施体制」採択
大和ハウス工業株式会社
代表取締役社長 芳井 敬一
大阪市北区梅田3−3−5
■Reニュータウンプロジェクト第一弾
三木市「緑が丘ネオポリス」において郊外型住宅団地再生のための実証実験を開始します
大和ハウス工業株式会社(本社:大阪市、社長:芳井敬一)は、兵庫県三木市の「緑が丘ネオポリス」において、郊外型住宅団地ライフスタイル研究会(※1)ならびに三木市(市長:仲田一彦)、緑が丘町まちづくり協議会(会長:井上輝美)、一般社団法人三木市生涯活躍のまち推進機構(理事長:岩?正勝)と協同で「産・官・学・民」連携による既存住宅団地の再生事業に取り組んでいますが、このたび、郊外型住宅団地再生のため、4つの実証実験を行うこととなりました。
今回の実証実験では、高齢化率約40%のオールドタウンと化した「緑が丘ネオポリス」において、高齢化する地域住民および新たに流入する住民が安心して快適に過ごせる多世代循環型コミュニティを形成するために、現状の課題を抽出し、問題解決に向け改善策を講じるものです。
4つの実証実験では、団地再生に必要な4つのサービスプラットフォーム(移動・人材・IoT・活動 拠点)の構築と6つのサービス(移動配達・子育て・健康増進・新たな働き方・地域互助・住み替え)をパッケージングして街を再生する日本初の試みとなります。
本実証実験で得た知見や成果については今後、高度経済成長期に開発したニュータウンで同様の課題を抱える当社の大規模戸建住宅団地「ネオポリス」(※2)において展開していきます。
※1.幹事企業として当社、凸版印刷株式会社、株式会社クラウドワークス。その他民間企業として、スポーツクラブNAS株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、豊田通商株式会社、キユーピー株式会社、イオンリテール株式会社、生活協同組合コープこうべ、神姫バス株式会社、神姫ゾーンバス株式会社、神戸電鉄株式会社、株式会社ライフビジネスウェザー。行政機関として三木市、三木市社会福祉協議会、国土交通政策研究所。学校法人として関西学院大学、関西国際大学、創志学園。地域住民団体として緑が丘町まちづくり協議会、一般社団法人三木市生涯活躍のまち推進機構、サンロード商店街振興組合の総勢22社・団体が加盟。
※2.当社が開発した大規模戸建住宅団地。ギリシャ語の“neo”(new)とギリシャ語の古代都市国家“Polis”とを組み合わせた造語。
●ポイント 〜4つのサービスプラットフォームの構築と6つのサービスの提供〜
1.移動 自動運転によるコミュニティ内移動サービス(移動・配達支援)
2.人材 クラウドソーシングと高齢者・障がい者の就業環境整備(新たな働き方)
3.IoT 高血圧症の重症化を予防(健康増進)
4.活動拠点 サテライト拠点整備と移住の場を整備(子育て・地域互助・移住・住み替え促進)
■郊外型住宅団地「緑が丘ネオポリス」再生の背景
当社が1967年に開発・造成した「緑が丘ネオポリス」は、現在、1971年の入居開始から半世紀近くが経過し、高齢化率約40%のオールドタウンとなり、人口減少や空き家・空き地の増加等、様々な社会課題が山積し、その課題解決に向けた取り組みが必要な状況となっています。
この現状を打開するべく、兵庫県三木市は2014年4月、当社と団地再生に関する協議を開始し、2014年8月、内閣府より「特定地域再生計画策定事業」に選定され、団地再生における課題抽出を行いました。その後2015年8月、三木市が民間事業者に呼びかけ産・官・学・民協働の「郊外型住宅団地ライフスタイル研究会」を設立、現在も再生事業に取り組んでいます。参加企業・団体は、互いの持つ技術やノウハウ等を交流・融合させ、日本のオールドタウンが抱える課題解決に向けて団地再生に取り組んでいます。
そして今回、「Reニュータウンプロジェクト」の第一弾として、4つの実証実験(1)自動運転車両によるコミュニティ内移動サービス、(2)クラウドソーシングと高齢者・障がい者の就業環境整備、(3)高血圧症の重症化を予防、(4)サテライト拠点整備と移住の場を整備するための実証実験を行うこととなりました。
1.移動 自動運転によるコミュニティ内移動サービス(移動・配達支援)
(1)市街地公道での自動運転によるコミュニティ内移動サービス
当社は、日本工営株式会社と共同で2019年2月16日(土)から2月22日(金)までの期間、「緑が丘ネオポリス」および隣接する「松が丘ネオポリス」の一部エリアにおいて、市街地公道での自動運転によるコミュニティ内移動サービスの実証実験を実施します。
本実証実験は、国の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動運転(システムとサービスの拡張)」のプロジェクトの1つとして国土交通省・内閣府が行う取り組みに基づき実施します。
実証内容は、予め設定された自動運転走行区間(約2.6kmの範囲内)の沿線住民を対象者(30名)にした自動運転によるコミュニティ内移動サービスです。
モニターとなる利用者は、電話またはWEBアプリで事前にサービスを利用したい日時・出発地・目的地を入力・予約し、自宅から約1km〜2km(ワンマイル)程度の短距離にある公民館・自治会館・クリニック・商業施設を行き来できるようにしました。
自動運転に使用する車両は、市街地公道での自動運転のために開発されたソフトウェア「Autoware」を搭載し、事前に計測した「高精度3次元地図(ADASmap)」を組み合わせ、自動走行システムで運行します。
(2)将来の自動運転サービスのイメージ
現在、自家用車等で公共施設や生活利便施設を利用されている高齢者の方々は、いずれ運転免許証返納等の時期が訪れ、徒歩での移動となり、さらに外出が困難な状況に陥ることも予想されます。
また、現在地域内を循環する公共交通機関のバス路線は利用が伸び悩んでおり、今後バス運行の見直しが行われることも考えられます。
そこで「緑が丘ネオポリス」では、戸建住宅団地での新たな移動手段として自動運転を活用した公共交通サービスの実現に向け検証と課題整理を行い、本サービスを早期に実現することを計画しています。
運用イメージは、複数の町丁目で形成する「コミュニティエリア」ごとに自動運転車両を共同所有し、各住居から地域拠点施設を結ぶ交通サービスとして運用していくことを検討しています。
このような自動運転送迎サービスを実用化し、日本全国で普及・拡大していくことで、高齢者が移動難民となることを防ぎ、地域に住み続けられるサステナブルなまちづくりを目指します。
2.人材 クラウドソーシングと高齢者・障がい者の就業環境整備(新たな働き方)
(1)時間や場所に縛られない職場環境の創出
当社ならびに三木市が運営する一般社団法人三木市生涯活躍のまち推進機構では、ICT(※3)の活用により場所や時間にとらわれず郊外型の住宅団地でも働ける「クラウドソーシング」(※4)の職場環境の整備の実証実験を行います。
実験内容は、「クラウドソーシング」の就労場所として自宅はもちろん、「緑が丘ネオポリス」内にコワ―キング(※5)が可能なサテライト拠点を設置する予定です。将来的には就労者である子育て世代のワーカーが仕事と子育てを両立できるよう、サテライト拠点にキッズコーナーを併設し、NPO法人と連携して運営するなど子育てスペースの機能を充実させていきます。
本業務は、クラウドサービス業界最大手の株式会社クラウドワークスが全国の企業から業務を 斡旋し、簡単なテープ起こしやデータ作成等の簡易業務をワーカーに提供します。また、将来的には業務範囲もグラフィックデザインなど、より専門的な業務も請け負います。
2019年6月からの運用開始に向け、4月までにワーカーを束ねるクラウドディレクター(世話役)を全国から募集し育成します。6月からは実際に働くクラウドワーカーを約20名〜30名募集。試験運用を重ねて2019年度中に本格的な事業開始を目指します。
このように、街に新たな付加価値を創出することで、新たな若年層を「緑が丘ネオポリス」に流入させていきます。
※3.Information and Communication Technologyの略。IT=情報技術に通信コミュニケーションの重要性を加味した言葉です。
※4.Crowd(群衆)とSourcing(業務委託)の造語で、企業側はネットを介して外注でき、受注側である働き手は時間や場所に拘束されずに働くことができる新たな仕事のスタイルのこと。
※5.事務所スペースや会議室、打ち合わせスペースなどを共有しながら独立した仕事を行う共働ワークスタイルです。
(2)高齢者や障がい者の就労環境を創出
当社ならびに大和ハウスグループの大和リース株式会社、一般社団法人三木市生涯活躍のまち 推進機構は、「緑が丘ネオポリス」にお住いの高齢者や障がい者が永続的に就業できる環境の創出に取り組みます。
具体的には、「緑が丘ネオポリス」に隣接する「松が丘ネオポリス」の当社社有地に延床面積約400?のビニールハウスを設置し、2019年度(予定)から高齢者や障がい者が胡蝶蘭の栽培に従事できるようにするものです。そこで育てた胡蝶蘭は、当社の戸建住宅や賃貸住宅、分譲マンションのオーナー様へ贈呈する予定です。
また、そこで働く高齢者や障がい者の方々が安全・安心して働ける環境の場の創出に努めるべく、就業者全員にウェアラブルデバイス(※6)を装着していただき、心拍数を集計する実証実験を行います。
実証実験では、就業中に熱中症等にならないよう、就業前に血圧・体温を計測するとともに、就業中もウェアラブルデバイスを装着した就業者の心拍情報や就業場所の気温・湿度などの情報が奈良県立医科大学MBT研究所(※7)に送信され、暑熱ストレスの危険度を解析、その結果に基づき状況報告や注意喚起をタブレット端末やスマートフォン経由で現場管理者へ送信。職場の安全管理につなげます。また後日、モニタリングした就業者のバイタルデータ(心拍等の情報)の結果については、保健師の健康相談会や筋力・体重測定会などの健康チェックを行う機会を設け、そこで働く方々の健康増進につなげていきます。
このような高齢者や障がい者の新たな職場環境を創出することで、「緑が丘ネオポリス」で住まう方々の「生きがい」を創出し、心の健康と健康寿命の延伸に寄与していきます。
※6.身体に装着して利用できる端末(デバイス)。アプリと連動して心拍数など健康状態を記録できるもの。
※7.少子高齢化を快適に暮らすことができるまちづくりの実現を目指して、奈良県立医科大学が持つ医学的知見やノウハウを全て産業に投入することによって、産業創生を行うとともに地方創生に寄与するもので、その理念を達成するために設立。金融機関や民間企業の活力を導入して、医師・医学者と企業との連携を促し、新産業創生・まちづくりを進めている研究所。
3.IoT 高血圧症の重症化を予防(健康増進)
(1)患者のデータをIoTで自動収集・解析し最適なメッセージを個別配信
凸版印刷株式会社ならびに三木市、一般社団法人三木市生涯活躍のまち推進機構、奈良県立医科大学、株式会社MICIN、当社は、「緑が丘ネオポリス」にお住いの高血圧症患者に対して通信機能を有する血圧計、活動量計、環境センサー・情報発信機器などのIoTデバイス(ウェアラブルデバイス)を配布し、脈拍、血圧、活動量のほか、温度・湿度、気圧など血圧の増減に影響を与えると思われるデータを自動で収集。奈良県立医科大学MBT研究所による解析を経て、最適な個別のメッセージをモニター(「緑が丘ネオポリス」の住民利用者:80名)のタブレット端末やスマートフォン、「あんしんライトTM」(※8)に配信します。
また、モニターは定期的にサテライト拠点でコンシェルジュによる生活のアドバイスも受けることができます。高血圧症の重症化予防のほか、健康意識の向上による行動変容も期待できます。
将来的には、全国の自治体・地域が共通して抱えるこの地域課題の解決に資する推進モデルを、広めていく予定です。
なお、本実証実験は、総務省の「IoTサービス創出支援事業」を活用して実施します。
※8.凸版印刷が提供する緊急情報や自治体などのお知らせを音声や文字で報知し、住民の受信状態を把握できる個別送受信機。
4.活動拠点 サテライト拠点整備と移住の場を整備(子育て・地域互助・移住・住み替え促進)
(1)多世代循環型コミュニティの形成
2015年8月に設立した「郊外型住宅団地ライフスタイル研究会」では、多世代循環型コミュニティの形成の場として地域のきずなを育む拠点を整備する実証実験を行うこととなりました。
その第一弾として2017年4月、「緑が丘ネオポリス」のサンロード商店街に地域互助・たまり場・相談窓口としての機能を持つ多世代交流施設「みどりん(一般社団法人三木市生涯活躍のまち推進機構)」を設置しました。
「みどりん」では、自治組織としての機能を持つ緑が丘町まちづくり協議会、老人クラブ、地域の民生委員、児童委員、子ども会、商店街振興組合と情報共有し、多世代間の交流スペースとして、また健康サービスの場として利用されています。
将来的には、地域互助・たまり場・相談窓口としての機能を持たせたサテライト拠点を数ヵ所設置し、子どもの見守りから「クラウドソーシング」の就労場所としても利用していく予定です。
(2)移住・住み替えの促進
大和ハウスグループでは、2018年1月より戸建住宅や分譲マンションの売買仲介・買取再販・リノベーション・リフォームなどの住宅ストック事業を強化するため「Livness(リブネス)」の統一ブランドで事業を展開しています。
当社が手がけた「緑が丘ネオポリス」内には、不動産の購入から売却、買取などの相談窓口として、地域に密着した大和ハウスグループの日本住宅流通株式会社三木緑が丘店があり、「Livness」事業を推進しています。
今回当社では、高齢者の住民に対して入居から半世紀近く経ち、住みにくくなった戸建住宅から 高齢者向け住宅等へ住み替えを促し、その空いた戸建住宅をリフォームして新たな若年層に入居していただく仕組みを新たに構築することとなりました。
2019年度(予定)には「緑が丘ネオポリス」に隣接する「松が丘ネオポリス」の当社社有地に、高齢者のライフスタイルにあわせて戸建平屋住宅やサービス付き高齢者向け住宅、コミュニティサポート住宅(※9)、高齢者用コレクティブハウス(※10)等の住宅を整備。加えて、住み替えに必要な各種ファイナンススキーム(資産コンサルティング、住み替え資金調達、不動産活用コンサルティング)を提案することで、同じ町内での移住を促進させ、Reニュータウンを実現させます。
※9.居住者がコミュニティを形成し生活することで、自立した生活を送りつつ、必要な部分を互いに支え合う住宅。スタッフを配置し、コミュニティ形成の円滑化や相互扶助の負担を軽減するもの。
※10.団地内の住民が既存のコミュニティを変えることなく、お互いの介護負担を軽減しながら相互扶助していく住宅。
5.今後について
当社は、兵庫県三木市の「緑が丘ネオポリス」において培った郊外型戸建住宅団地再生に関する知見を先導的モデルとしてプラットフォーム(基盤)を整備し、同様の課題を抱える全国のニュータウンに展開。将来は高齢化を迎える海外でも展開していきます。
●「緑が丘ネオポリス」
所在地:兵庫県三木市(神戸から電車で1時間)
開発面積:約441,650坪(約136ha:東京ドーム約31個分)
総区画数:約3,400区画
高齢化率:39.9%(2018年9月末)
人口動態:約11,500人(1982年) ⇒ 約9,100人(2018年9月末)
備考:大和ハウス工業が1967年3月、神戸電気鉄道株式会社から用地約24万坪を譲り受け、さらに地元の地権者から約10万坪を譲り受け開発・造成した住宅団地。1971年の入居開始から既に半世紀近くが経過し、かつては団塊世代、団塊ジュニア世代が住むベットタウンだったが、子どもは大都市へ移り住み、高齢化率が約40%となるオールドタウンと化した。
■「緑が丘ネオポリス」再生への道のり
1970年 緑が丘地区 土地区画整理事業認可取得
1970年〜1972年 緑が丘地区 第一期開発 造成工事
1971年 緑が丘ネオポリス 第一期開発 分譲開始
1975年〜1976年 緑が丘地区 第二期開発 造成工事
1975年 緑が丘ネオポリス 第二期開発 分譲開始
1983年 青山地区 土地区画整理事業認可取得
1983年〜1988年 青山地区 造成工事
1985年 松が丘ネオポリス 分譲開始
1997年 三木市の人口ピーク 88,232人
2012年
三木市の人口 81,304人 高齢化率27%
(緑が丘ネオポリス高齢化率35.59%、松が丘ネオポリス高齢化率14.47%)
大和ハウス工業総合技術研究所にて緑が丘ネオポリス実態調査を実施(〜2013年)
2013年
三木市の人口 80,391人 高齢化率28.43%
(緑が丘ネオポリス高齢化率37.12%、松が丘ネオポリス高齢化率16.08%)
2014年
三木市の人口 79,768人 高齢化率29.81%
(緑が丘ネオポリス高齢化率38.25%、松が丘ネオポリス高齢化率17.37%)
2月 三木市長が来社 緑が丘ネオポリスの団地再生協力要請
4月 三木市と当社で団地再生に関する協議開始
8月 三木市 内閣府の「特定地域再生計画策定事業」に選定
2015年
三木市の人口 79,282人 高齢化率30.9%
(緑が丘ネオポリス高齢化率39.23%、松が丘ネオポリス高齢化率18.87%)
8月 「郊外型ライフスタイル研究会」設立
2016年
三木市の人口 78,803人 高齢化率31.77%
(緑が丘ネオポリス高齢化率39.9%、松が丘ネオポリス高齢化率20.56%)
9月 「生涯活躍のまち構想」が地方創生推進事務局の「地域再生計画」に認定
2017年
三木市の人口 78,414人 高齢化率32.46%
(緑が丘ネオポリス高齢化率40.33%、松が丘ネオポリス高齢化率21.6%)
3月 「生涯活躍のまち推進機構」設立
4月 「生涯活躍のまち推進機構 緑が丘事業部」開設
2018年
三木市の人口 77,873人 高齢化率33%
(緑が丘ネオポリス高齢化率40.69%、松が丘ネオポリス高齢化率22.99%)
6月 総務省「IoTサービス創出支援事業」採択
11月 国土交通省「平成30年度スマートウェルネス住宅等推進モデル事業住宅団地再生部門」採択
12月 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「戦略的イノベーション創造プログラム(SPI)自動運転(システムとサービスの拡張)『ニュータウン地域における自動運転による移動サービス実用化に向けた環境整備に係る調査』に係る実施体制」採択