皮脂中に人のRNAが存在することを発見 独自の解析技術「RNA Monitoring(RNAモニタリング)」を開発
[19/06/04]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
2019年6月4日
花王株式会社
皮脂中に人のRNAが存在することを発見
独自の解析技術「RNA Monitoring(RNAモニタリング)」を開発
花王株式会社(社長・澤田道隆)生物科学研究所は、皮脂の中に人のRNA(リボ核酸)が存在することを発見し、そのRNAを網羅的に分析する独自の解析技術「RNA Monitoring(RNAモニタリング)」を世界で初めて構築しました。この技術を用い、皮脂中のRNA発現情報にアトピー性皮膚炎の肌状態が反映されていることを見出しました。
この研究成果の一部は、「第118回日本皮膚科学会総会」(2019年6月6〜9日開催)で発表する予定です。
背景
DNAは、アデニン・グアニン・シトシン・チミンの 4 種の塩基を含む2重らせん構造を持った分子で、塩基配列の違いから、顔の形や体質等、人が生まれながらに持つ特徴を生み出します。一方RNAは、DNAの情報に基づき、酵素やホルモンなど体内でいろいろな働きをするタンパク質を生み出すもととなる分子です。DNAは、その人固有のものとして一生変化しないのに対し、RNAは、肝臓や皮膚等の組織ごとにプロファイルも合成される量も違い、またその時の体調や環境によって日々変化するという性質があります。
肌を例にとると、DNAは生まれながらに持つ肌の性質を捉えるのに有用で、RNAは、さまざまな環境要因により日々絶え間なく変化する肌状態を知るのに有用であるといえます。しかしこれまでは、皮膚のRNA発現情報を分析するには、皮膚を外科的に切り取るなど侵襲性の高い生検が必要でした。
昨今は、唾液や尿など非侵襲的に採取可能な検体を利用して体内の状態を予測する技術開発が、さかんに行なわれています。花王は皮膚のRNA発現情報を、肌を極力傷つけることなく分析することが可能になれば、その時の肌状態をより詳しく知ることが可能になると考えました。またそれだけではなく、「皮膚は体内の窓」とも呼ばれていることから、体内状態も知りうる有用な技術になると考えました。
「RNAモニタリング」技術の構築
角層や汗は、皮膚から比較的簡単に採取することができます。しかし、そもそも皮膚にはRNAを分解する酵素(RNase)が豊富に存在することから、これまで、人に由来する分析可能なRNAを角層や汗から回収することは難しいと考えられていました。
花王では、化粧品開発の一環で、長年皮脂や皮脂腺に関する研究を行なってきました。皮脂腺は皮脂をつくり出し、皮膚の表面へと分泌する役割を担った器官です。皮脂腺に関する研究は、皮脂のもととなる脂質の合成過程に焦点を当てたものがほとんどですが、分泌過程に関する数少ない知見として、皮脂の分泌過程は、細胞内の全成分をすべて放出する特殊な機構(全分泌機構)を有していることが知られていました。花王では、この細胞内成分をすべて放出する全分泌の仕組みに着目。皮脂の中には、脂質だけではなく細胞内成分の一つであるRNAも含有される可能性に気づきました。そこで、あぶら取りフィルムで皮脂を採取しRNAの抽出を試みたところ、皮脂中に人のRNAが存在していることを発見しました。さらに皮脂がRNAを分解する酵素(RNase)の作用を阻害することにより、RNAが皮脂中で安定的に存在できることをつきとめました。
この知見に基づき、最先端の解析装置と花王で検討した解析方法を用いることで、皮脂中にある約一万種におよぶ人のRNA発現情報を解析出来る独自の技術「RNA モニタリング」を確立しました(図1)。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201906037083-O6-xRdG9f7D 】
RNAモニタリング技術 活用事例
花王は、この技術を用いて、健常者およびアトピー性皮膚炎患者より採取した皮脂中RNAの解析を行ないました。その結果、アトピー性皮膚炎患者では、皮膚のバリア機能維持に重要なRNA種の発現が減少し、炎症の亢進に関わるRNA種の発現が上昇していることを確認しました(図2)。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201906037083-O7-4V29EhF2 】
アトピー性皮膚炎の症状の重さの正しい評価は、適切な治療方法の選択に必須であると言われており、血液中の特定の分子や血球を測定する等、いくつかの方法が実際に利用されています。今回の解析により、アトピー性皮膚炎の症状が重くなるにつれて発現が上昇することが報告されているRNA種が、皮脂中のRNAでも同様に、重症化に伴い増加することが明らかとなりました。これらの結果は、アトピー性皮膚炎の肌の状態として、すでに知られている知見と一致する結果です。RNAモニタリング技術を用いることで、将来的には、視覚的には判別できないような肌状態の微細な違いまでを知ることが可能となると考えられます。
今後の展望
皮脂は誰でも簡便に採取可能なため、この技術を活用することで、手軽かつ精緻にRNAの発現情報を確認し、肌状態を把握できる可能性が示唆されました。今後は、肌や体内の状態とRNA情報の関連の検討をさらに進め、一人ひとりの肌状態に合わせた美容の提案、また一人ひとりの健康状態に合わせた、ヘルスケアへの応用も検討していきます。
花王株式会社
皮脂中に人のRNAが存在することを発見
独自の解析技術「RNA Monitoring(RNAモニタリング)」を開発
花王株式会社(社長・澤田道隆)生物科学研究所は、皮脂の中に人のRNA(リボ核酸)が存在することを発見し、そのRNAを網羅的に分析する独自の解析技術「RNA Monitoring(RNAモニタリング)」を世界で初めて構築しました。この技術を用い、皮脂中のRNA発現情報にアトピー性皮膚炎の肌状態が反映されていることを見出しました。
この研究成果の一部は、「第118回日本皮膚科学会総会」(2019年6月6〜9日開催)で発表する予定です。
背景
DNAは、アデニン・グアニン・シトシン・チミンの 4 種の塩基を含む2重らせん構造を持った分子で、塩基配列の違いから、顔の形や体質等、人が生まれながらに持つ特徴を生み出します。一方RNAは、DNAの情報に基づき、酵素やホルモンなど体内でいろいろな働きをするタンパク質を生み出すもととなる分子です。DNAは、その人固有のものとして一生変化しないのに対し、RNAは、肝臓や皮膚等の組織ごとにプロファイルも合成される量も違い、またその時の体調や環境によって日々変化するという性質があります。
肌を例にとると、DNAは生まれながらに持つ肌の性質を捉えるのに有用で、RNAは、さまざまな環境要因により日々絶え間なく変化する肌状態を知るのに有用であるといえます。しかしこれまでは、皮膚のRNA発現情報を分析するには、皮膚を外科的に切り取るなど侵襲性の高い生検が必要でした。
昨今は、唾液や尿など非侵襲的に採取可能な検体を利用して体内の状態を予測する技術開発が、さかんに行なわれています。花王は皮膚のRNA発現情報を、肌を極力傷つけることなく分析することが可能になれば、その時の肌状態をより詳しく知ることが可能になると考えました。またそれだけではなく、「皮膚は体内の窓」とも呼ばれていることから、体内状態も知りうる有用な技術になると考えました。
「RNAモニタリング」技術の構築
角層や汗は、皮膚から比較的簡単に採取することができます。しかし、そもそも皮膚にはRNAを分解する酵素(RNase)が豊富に存在することから、これまで、人に由来する分析可能なRNAを角層や汗から回収することは難しいと考えられていました。
花王では、化粧品開発の一環で、長年皮脂や皮脂腺に関する研究を行なってきました。皮脂腺は皮脂をつくり出し、皮膚の表面へと分泌する役割を担った器官です。皮脂腺に関する研究は、皮脂のもととなる脂質の合成過程に焦点を当てたものがほとんどですが、分泌過程に関する数少ない知見として、皮脂の分泌過程は、細胞内の全成分をすべて放出する特殊な機構(全分泌機構)を有していることが知られていました。花王では、この細胞内成分をすべて放出する全分泌の仕組みに着目。皮脂の中には、脂質だけではなく細胞内成分の一つであるRNAも含有される可能性に気づきました。そこで、あぶら取りフィルムで皮脂を採取しRNAの抽出を試みたところ、皮脂中に人のRNAが存在していることを発見しました。さらに皮脂がRNAを分解する酵素(RNase)の作用を阻害することにより、RNAが皮脂中で安定的に存在できることをつきとめました。
この知見に基づき、最先端の解析装置と花王で検討した解析方法を用いることで、皮脂中にある約一万種におよぶ人のRNA発現情報を解析出来る独自の技術「RNA モニタリング」を確立しました(図1)。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201906037083-O6-xRdG9f7D 】
RNAモニタリング技術 活用事例
花王は、この技術を用いて、健常者およびアトピー性皮膚炎患者より採取した皮脂中RNAの解析を行ないました。その結果、アトピー性皮膚炎患者では、皮膚のバリア機能維持に重要なRNA種の発現が減少し、炎症の亢進に関わるRNA種の発現が上昇していることを確認しました(図2)。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201906037083-O7-4V29EhF2 】
アトピー性皮膚炎の症状の重さの正しい評価は、適切な治療方法の選択に必須であると言われており、血液中の特定の分子や血球を測定する等、いくつかの方法が実際に利用されています。今回の解析により、アトピー性皮膚炎の症状が重くなるにつれて発現が上昇することが報告されているRNA種が、皮脂中のRNAでも同様に、重症化に伴い増加することが明らかとなりました。これらの結果は、アトピー性皮膚炎の肌の状態として、すでに知られている知見と一致する結果です。RNAモニタリング技術を用いることで、将来的には、視覚的には判別できないような肌状態の微細な違いまでを知ることが可能となると考えられます。
今後の展望
皮脂は誰でも簡便に採取可能なため、この技術を活用することで、手軽かつ精緻にRNAの発現情報を確認し、肌状態を把握できる可能性が示唆されました。今後は、肌や体内の状態とRNA情報の関連の検討をさらに進め、一人ひとりの肌状態に合わせた美容の提案、また一人ひとりの健康状態に合わせた、ヘルスケアへの応用も検討していきます。