世界で初めて『スーパー爆弾低気圧』の発達要因を解明
[19/06/21]
提供元:共同通信PRワイヤー
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2019年6月21日
立正大学
九州大学
国立研究開発法人海洋研究開発機構
名古屋大学
立正大、九州大、海洋研究開発機構、名古屋大で共同研究
世界で初めて『スーパー爆弾低気圧』の発達要因を解明
〜天気予報の改善や温暖化に伴う爆弾低気圧の変化の理解向上に〜
立正大学(学長:吉川洋、本校所在地:東京都品川区大崎4-2-16)地球環境科学部・平田英隆助教は、九州大学(総長:久保千春、本校所在地:福岡市西区元岡744)理学研究院・川村隆一教授、海洋研究開発機構(理事長:平朝彦、本部:神奈川県横須賀市夏島町2番地15)アプリケーションラボ・野中正見主任研究員、名古屋大学(総長:松尾清一、本校所在地:名古屋市千種区不老町)宇宙地球環境研究所・坪木和久教授らとの共同研究の結果、2018年に北米に災害をもたらした「スーパー爆弾低気圧」(近年稀にみる急発達をした温帯低気圧)の発達要因を世界で初めて解き明かしました。
本研究から得られた知見は、今後、天気予報の改善や温暖化に伴う爆弾低気圧の変化の 理解向上に貢献することが期待されます。本研究成果は、6月17日に米国の学術誌「Geophysical Research Letters」 にオンライン掲載されました。
◆研究の背景と概要
今回の共同研究のきっかけとして、2018年1月4日にアメリカの東方海上で発生した 「スーパー爆弾低気圧」による甚大な被害が挙げられます。この「スーパー爆弾低気圧」は、従来の低気圧発達理論では説明できないほどの急発達を遂げた低気圧で、アメリカ東岸に接近し、暴風や大雪をもたらしました。その結果、死者20人超の人的被害や約11億ドルの経済的損失が生じました。
このような現象について理解することは、学術的な意義のみならず、防災・減災の観点 からも重要です。しかし、低気圧が急発達した海上は陸上よりも観測数が少なく、観測データだけで低気圧発達過程の全容を紐解くことは容易ではありません。そこで本研究チームは、スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」上で雲の詳細を再現できる数値モデルを用いて、海洋上で発達する低気圧の詳細な構造をシミュレーションし(図1)、その結果を分析することで「スーパー爆弾低気圧」の急発達メカニズムの解明に取り組みました。
◆研究結果
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201906217770-O2-C20w46AL 】
図1. 高解像度の数値シミュレーションで再現された「スーパー爆弾低気圧」に伴う雲の三次元構造と地上における降水と気圧の分布。時刻は低気圧が最も急発達した時刻(協定世界時2018年1月4日6時)。
シミュレーション結果は、低気圧が急発達した際に、低気圧中心付近で降水が局所的に 強まる様子を示しました(図1b)。これは、降水の源である水蒸気が多量に凝結したことを意味します。分析の結果から、凝結に伴って生じた熱(凝結熱)によって引き起こされた 気圧低下が、「スーパー爆弾低気圧」の発達を加速させたことがわかりました。
さらに、降水が局所的に強まった要因を探ったところ、アメリカ東岸の沖合を流れる 暖流・メキシコ湾流から放出された熱と水蒸気が、その主要因であることを発見しました。これらの結果から、メキシコ湾流からの熱・水蒸気供給が、低気圧中心付近の凝結熱の生成を促すことで「スーパー爆弾低気圧」の急発達を導いたと結論付けました。
〜研究者からのコメント〜
本研究の結果は、数値シミュレーションで爆弾低気圧を精度良く再現するには、低気圧中心近傍の降水の細かな構造や海からの熱・水蒸気供給を適切にシミュレートする必要があることを示しています。今後、本研究から得られた知見は、天気予報の改善や地球温暖化が爆弾低気圧へ与える影響の理解向上に活用されることが期待されます。また、黒潮が流れる日本周辺でも、アメリカの東方海上と同様に爆弾低気圧が発生することから、日本付近の爆弾低気圧を理解する上でも有用な情報になると考えています。
◆今後の展望
今回の研究を通じて、局所的な降水の強化に伴って生じる凝結熱が「スーパー爆弾低気圧」の急発達に大きく寄与したことを示しました。本研究が注目したスケールの小さな凝結熱の効果は従来の低気圧発達理論には十分に考慮されておらず、未だに不明な点が多いです。今後、爆弾低気圧研究を進展させるためには、低気圧に伴う降水や凝結熱の細かな構造に対する理解をさらに深めていく必要があると考えています。本研究グループは、今後も高解像度の数値シミュレーションや利用可能な観測データを最大限活用し、爆弾低気圧の細かな構造や発達過程に関する研究をさらに推し進めていきます。
【研究内容の詳細】
プレスリリース原文PDFを参照ください。
【謝辞】
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業特別研究員奨励費JP17J04041、基盤研究(A) JP16H01846の助成を受けたものです。
【論文情報】
論文タイトル:Significant impact of heat supply from the Gulf Stream on a “super bomb” cyclone in January 2018
著者:Hidetaka Hirata, Ryuichi Kawamura, Masami Nonaka, and Kazuhisa Tsuboki
雑誌名:Geophysical Research Letters
DOI:10.1029/2019GL082995
掲載ページ(英語)
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1029/2019GL082995
立正大学
九州大学
国立研究開発法人海洋研究開発機構
名古屋大学
立正大、九州大、海洋研究開発機構、名古屋大で共同研究
世界で初めて『スーパー爆弾低気圧』の発達要因を解明
〜天気予報の改善や温暖化に伴う爆弾低気圧の変化の理解向上に〜
立正大学(学長:吉川洋、本校所在地:東京都品川区大崎4-2-16)地球環境科学部・平田英隆助教は、九州大学(総長:久保千春、本校所在地:福岡市西区元岡744)理学研究院・川村隆一教授、海洋研究開発機構(理事長:平朝彦、本部:神奈川県横須賀市夏島町2番地15)アプリケーションラボ・野中正見主任研究員、名古屋大学(総長:松尾清一、本校所在地:名古屋市千種区不老町)宇宙地球環境研究所・坪木和久教授らとの共同研究の結果、2018年に北米に災害をもたらした「スーパー爆弾低気圧」(近年稀にみる急発達をした温帯低気圧)の発達要因を世界で初めて解き明かしました。
本研究から得られた知見は、今後、天気予報の改善や温暖化に伴う爆弾低気圧の変化の 理解向上に貢献することが期待されます。本研究成果は、6月17日に米国の学術誌「Geophysical Research Letters」 にオンライン掲載されました。
◆研究の背景と概要
今回の共同研究のきっかけとして、2018年1月4日にアメリカの東方海上で発生した 「スーパー爆弾低気圧」による甚大な被害が挙げられます。この「スーパー爆弾低気圧」は、従来の低気圧発達理論では説明できないほどの急発達を遂げた低気圧で、アメリカ東岸に接近し、暴風や大雪をもたらしました。その結果、死者20人超の人的被害や約11億ドルの経済的損失が生じました。
このような現象について理解することは、学術的な意義のみならず、防災・減災の観点 からも重要です。しかし、低気圧が急発達した海上は陸上よりも観測数が少なく、観測データだけで低気圧発達過程の全容を紐解くことは容易ではありません。そこで本研究チームは、スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」上で雲の詳細を再現できる数値モデルを用いて、海洋上で発達する低気圧の詳細な構造をシミュレーションし(図1)、その結果を分析することで「スーパー爆弾低気圧」の急発達メカニズムの解明に取り組みました。
◆研究結果
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201906217770-O2-C20w46AL 】
図1. 高解像度の数値シミュレーションで再現された「スーパー爆弾低気圧」に伴う雲の三次元構造と地上における降水と気圧の分布。時刻は低気圧が最も急発達した時刻(協定世界時2018年1月4日6時)。
シミュレーション結果は、低気圧が急発達した際に、低気圧中心付近で降水が局所的に 強まる様子を示しました(図1b)。これは、降水の源である水蒸気が多量に凝結したことを意味します。分析の結果から、凝結に伴って生じた熱(凝結熱)によって引き起こされた 気圧低下が、「スーパー爆弾低気圧」の発達を加速させたことがわかりました。
さらに、降水が局所的に強まった要因を探ったところ、アメリカ東岸の沖合を流れる 暖流・メキシコ湾流から放出された熱と水蒸気が、その主要因であることを発見しました。これらの結果から、メキシコ湾流からの熱・水蒸気供給が、低気圧中心付近の凝結熱の生成を促すことで「スーパー爆弾低気圧」の急発達を導いたと結論付けました。
〜研究者からのコメント〜
本研究の結果は、数値シミュレーションで爆弾低気圧を精度良く再現するには、低気圧中心近傍の降水の細かな構造や海からの熱・水蒸気供給を適切にシミュレートする必要があることを示しています。今後、本研究から得られた知見は、天気予報の改善や地球温暖化が爆弾低気圧へ与える影響の理解向上に活用されることが期待されます。また、黒潮が流れる日本周辺でも、アメリカの東方海上と同様に爆弾低気圧が発生することから、日本付近の爆弾低気圧を理解する上でも有用な情報になると考えています。
◆今後の展望
今回の研究を通じて、局所的な降水の強化に伴って生じる凝結熱が「スーパー爆弾低気圧」の急発達に大きく寄与したことを示しました。本研究が注目したスケールの小さな凝結熱の効果は従来の低気圧発達理論には十分に考慮されておらず、未だに不明な点が多いです。今後、爆弾低気圧研究を進展させるためには、低気圧に伴う降水や凝結熱の細かな構造に対する理解をさらに深めていく必要があると考えています。本研究グループは、今後も高解像度の数値シミュレーションや利用可能な観測データを最大限活用し、爆弾低気圧の細かな構造や発達過程に関する研究をさらに推し進めていきます。
【研究内容の詳細】
プレスリリース原文PDFを参照ください。
【謝辞】
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業特別研究員奨励費JP17J04041、基盤研究(A) JP16H01846の助成を受けたものです。
【論文情報】
論文タイトル:Significant impact of heat supply from the Gulf Stream on a “super bomb” cyclone in January 2018
著者:Hidetaka Hirata, Ryuichi Kawamura, Masami Nonaka, and Kazuhisa Tsuboki
雑誌名:Geophysical Research Letters
DOI:10.1029/2019GL082995
掲載ページ(英語)
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1029/2019GL082995