秘密分散と秘匿通信技術を用いた電子カルテ保管・交換システムを開発〜災害想定実験で医療データ迅速復元〜
[19/12/12]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
2019年12月12日
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
高知県・高知市病院企業団立高知医療センター、高知県公立大学法人高知工科大学、
株式会社ZenmuTech、学校法人芝浦工業大学、株式会社SBS情報システム、
スカパーJSAT株式会社、日本電気株式会社、ISARA Corporation、ダルムシュタット工科大学
秘密分散と秘匿通信技術を用いた電子カルテ保管・交換システムを開発
〜南海トラフ地震等の災害想定実験において、医療データを迅速に復元〜
【ポイント】
■ 秘密分散と秘匿通信技術により、災害に強くセキュアな電子カルテ保管・交換システムを開発
■ 南海トラフ地震等の災害想定実験で、衛星経由で検索から9秒以内で医療データの復元に成功
■ 医療機関間で相互参照可能な電子カルテのデータ交換標準規格に準拠し、医療への貢献に期待
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)と高知県・高知市病院企業団立高知医療センター(病院長: 島田 安博)及び連携協力機関から成るチームは、秘密分散技術と秘匿通信技術を組み合わせることにより、電子カルテデータのセキュアなバックアップと医療機関間での相互参照、災害時の迅速なデータ復元を可能とするシステムを開発しました。
このシステムを用いた実証実験では、800 km圏のネットワークで結ぶ高知医療センターと大阪、名古屋、大手町、小金井にあるデータサーバに、1万人分の電子カルテの模擬データを分散保管しました。次に、南海トラフ地震等により四国エリアが被災したというシナリオの下、それぞれのデータサーバから処方履歴、アレルギー情報などの災害時医療に必要とされるデータ項目を小金井のサーバ上に復元し、衛星回線経由で高知医療センターの端末に伝送しました。その結果、高知医療センターの端末で患者検索してから9秒以内で医療データを復元することに成功しました。これは、救急時の猶予時間といわれる15秒程度の要求に応えるものです。
今回の結果により、災害時に必要な医療データを迅速に届けることが可能になり、災害医療に大いに役立つことが期待されます。また、地上網が使える平時においては、医療機関の間で電子カルテデータを相互参照することが可能になります。なお、本成果について、京都で開催される日米欧量子技術国際シンポジウム(EU-USA-Japan International Symposium on Quantum Technology)にて、12月16日(月)に発表します。
【背景】
2011年の東日本大震災では、海岸沿いの医療機関の多くが倒壊し、電子カルテもサーバごと流されてしまいました。電子カルテなどの重要な医療データは、遠隔地にバックアップを取っておく必要があります。いざ災害時には多くの方を早く診療、治療する必要があるため、患者の氏名、住所、生年月日とプロファイリングに必要な投薬、アレルギー情報など必要最小限の項目だけを迅速に復元することが求められます。
一方、電子カルテのバックアップデータは、究極の個人情報であり、適切な暗号技術を用いて安全にバックアップする必要があります。さらに、共通のデータ交換規格を活用すれば、異なる医療機関の間でも医療情報を安全に相互参照できるため、検査・投薬の重複防止や新しい医療技術の開発などにつながります。
しかし、これまで、電子カルテデータのセキュアなバックアップと医療機関間での相互参照、災害時に必要な医療データ項目の迅速な復元、という要件を全て満たすシステムは存在していませんでした。
【今回の成果】
我々は、秘密分散技術と秘匿通信技術を組み合わせることにより、電子カルテデータのセキュアなバックアップと医療機関間での相互参照、災害時を想定した場合に必要とされる医療データ項目の迅速な復元が可能な、保健医療用の長期セキュアデータ保管・交換システム(H-LINCOS: Healthcare long-term integrity and confidentiality protection system)を開発しました。
H-LINCOSは、高知医療センターとNICTのテストベッドJGN上の大阪、名古屋、大手町、小金井のアクセスポイントを結ぶ800 km圏のネットワーク上に実装されています(図1参照)。また、H-LINCOSへのアクセス管理には、耐量子−公開鍵認証方式という新しい技術が用いられており、医師や救急救命士といった保健医療分野26種の国家資格に基づいた高セキュアな認証機能が利用されています。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201912094487-O1-r04CV6lF 】
図1 実証実験に用いたネットワーク接続図と性能評価結果
このシステムを用いた実証実験では、1万人分の電子カルテの模擬データ(計90 GB)を用意し、データ交換標準規格に準拠した保管用データ(SS-MIXデータ)に変換して分散保管しました。次に、南海トラフ地震等の災害で四国エリアの光ファイバー網が寸断されているというシナリオの下、大阪、名古屋、大手町のデータサーバのうち2つのデータサーバから処方履歴、アレルギー情報などの項目を小金井のサーバ上に復元し、衛星回線経由で高知医療センターの端末まで伝送するという操作を行いました。
想定被災地にある端末で、患者の処方履歴やアレルギー情報などの医療データ項目を検索した結果、患者検索から9秒以内で端末上に復元することに成功しました。救急処置に必要な情報を入手する時間的猶予は15秒程度といわれており、今回の結果はその要求に応えるものです。これによって、災害時に必要な医療データを迅速に復元することが可能になり、災害医療に大いに役立つことが期待されます。
また、地上網が使える平時においては、SS-MIXデータとして保管することにより、医療機関の間で電子カルテデータを相互参照することが可能になります。
【今後の展望】
今後、扱うデータサイズや接続する端末数を増やしながら、通信遅延や輻輳についての解析を進め、H-LINCOSの実用性を更に高めるための研究開発や実環境での運用方法についての検討を進めていきます。また、災害時の保健医療活動の効率化に向けて、H-LINCOSと災害時保健医療福祉活動支援システム(D24H)の連携方法についても検討を進めていきます。
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
高知県・高知市病院企業団立高知医療センター、高知県公立大学法人高知工科大学、
株式会社ZenmuTech、学校法人芝浦工業大学、株式会社SBS情報システム、
スカパーJSAT株式会社、日本電気株式会社、ISARA Corporation、ダルムシュタット工科大学
秘密分散と秘匿通信技術を用いた電子カルテ保管・交換システムを開発
〜南海トラフ地震等の災害想定実験において、医療データを迅速に復元〜
【ポイント】
■ 秘密分散と秘匿通信技術により、災害に強くセキュアな電子カルテ保管・交換システムを開発
■ 南海トラフ地震等の災害想定実験で、衛星経由で検索から9秒以内で医療データの復元に成功
■ 医療機関間で相互参照可能な電子カルテのデータ交換標準規格に準拠し、医療への貢献に期待
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)と高知県・高知市病院企業団立高知医療センター(病院長: 島田 安博)及び連携協力機関から成るチームは、秘密分散技術と秘匿通信技術を組み合わせることにより、電子カルテデータのセキュアなバックアップと医療機関間での相互参照、災害時の迅速なデータ復元を可能とするシステムを開発しました。
このシステムを用いた実証実験では、800 km圏のネットワークで結ぶ高知医療センターと大阪、名古屋、大手町、小金井にあるデータサーバに、1万人分の電子カルテの模擬データを分散保管しました。次に、南海トラフ地震等により四国エリアが被災したというシナリオの下、それぞれのデータサーバから処方履歴、アレルギー情報などの災害時医療に必要とされるデータ項目を小金井のサーバ上に復元し、衛星回線経由で高知医療センターの端末に伝送しました。その結果、高知医療センターの端末で患者検索してから9秒以内で医療データを復元することに成功しました。これは、救急時の猶予時間といわれる15秒程度の要求に応えるものです。
今回の結果により、災害時に必要な医療データを迅速に届けることが可能になり、災害医療に大いに役立つことが期待されます。また、地上網が使える平時においては、医療機関の間で電子カルテデータを相互参照することが可能になります。なお、本成果について、京都で開催される日米欧量子技術国際シンポジウム(EU-USA-Japan International Symposium on Quantum Technology)にて、12月16日(月)に発表します。
【背景】
2011年の東日本大震災では、海岸沿いの医療機関の多くが倒壊し、電子カルテもサーバごと流されてしまいました。電子カルテなどの重要な医療データは、遠隔地にバックアップを取っておく必要があります。いざ災害時には多くの方を早く診療、治療する必要があるため、患者の氏名、住所、生年月日とプロファイリングに必要な投薬、アレルギー情報など必要最小限の項目だけを迅速に復元することが求められます。
一方、電子カルテのバックアップデータは、究極の個人情報であり、適切な暗号技術を用いて安全にバックアップする必要があります。さらに、共通のデータ交換規格を活用すれば、異なる医療機関の間でも医療情報を安全に相互参照できるため、検査・投薬の重複防止や新しい医療技術の開発などにつながります。
しかし、これまで、電子カルテデータのセキュアなバックアップと医療機関間での相互参照、災害時に必要な医療データ項目の迅速な復元、という要件を全て満たすシステムは存在していませんでした。
【今回の成果】
我々は、秘密分散技術と秘匿通信技術を組み合わせることにより、電子カルテデータのセキュアなバックアップと医療機関間での相互参照、災害時を想定した場合に必要とされる医療データ項目の迅速な復元が可能な、保健医療用の長期セキュアデータ保管・交換システム(H-LINCOS: Healthcare long-term integrity and confidentiality protection system)を開発しました。
H-LINCOSは、高知医療センターとNICTのテストベッドJGN上の大阪、名古屋、大手町、小金井のアクセスポイントを結ぶ800 km圏のネットワーク上に実装されています(図1参照)。また、H-LINCOSへのアクセス管理には、耐量子−公開鍵認証方式という新しい技術が用いられており、医師や救急救命士といった保健医療分野26種の国家資格に基づいた高セキュアな認証機能が利用されています。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201912094487-O1-r04CV6lF 】
図1 実証実験に用いたネットワーク接続図と性能評価結果
このシステムを用いた実証実験では、1万人分の電子カルテの模擬データ(計90 GB)を用意し、データ交換標準規格に準拠した保管用データ(SS-MIXデータ)に変換して分散保管しました。次に、南海トラフ地震等の災害で四国エリアの光ファイバー網が寸断されているというシナリオの下、大阪、名古屋、大手町のデータサーバのうち2つのデータサーバから処方履歴、アレルギー情報などの項目を小金井のサーバ上に復元し、衛星回線経由で高知医療センターの端末まで伝送するという操作を行いました。
想定被災地にある端末で、患者の処方履歴やアレルギー情報などの医療データ項目を検索した結果、患者検索から9秒以内で端末上に復元することに成功しました。救急処置に必要な情報を入手する時間的猶予は15秒程度といわれており、今回の結果はその要求に応えるものです。これによって、災害時に必要な医療データを迅速に復元することが可能になり、災害医療に大いに役立つことが期待されます。
また、地上網が使える平時においては、SS-MIXデータとして保管することにより、医療機関の間で電子カルテデータを相互参照することが可能になります。
【今後の展望】
今後、扱うデータサイズや接続する端末数を増やしながら、通信遅延や輻輳についての解析を進め、H-LINCOSの実用性を更に高めるための研究開発や実環境での運用方法についての検討を進めていきます。また、災害時の保健医療活動の効率化に向けて、H-LINCOSと災害時保健医療福祉活動支援システム(D24H)の連携方法についても検討を進めていきます。