毎日のスキンケア動作習慣が、心拍自律神経活動や皮膚状態に影響する可能性を確認
[20/09/14]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
2020年9月14日
花王株式会社
神戸大学
花王株式会社(社長・澤田道隆)スキンケア研究所・感覚科学研究所は、神戸大学大学院システム情報学研究科 上原邦昭名誉教授(現大阪学院大学)との共同研究によって、毎日のスキンケア動作習慣が心拍自律神経活動※1や皮膚状態に影響する可能性を見いだしました。
今回の研究成果は、「第38回日本美容皮膚科学会総会(2020年9月13日・東京)」にて発表しました。
※1 心拍のゆらぎを測定することで得られる、自律神経活動を示す指標のひとつ。自律神経活動は意識にのぼらない活動であり、交感神経と副交感神経のバランスが重要と考えられています。たとえば、休息時は副交感神経活動が優位になるのに対し、ストレスを受けている場合は交感神経活動が優位になることが知られています。
背景
スキンケアの動作は、これまでにも皮膚をすこやかに保つだけでなく、リラックスなどの心理的効果があることが知られています。しかしながら、日常の習慣的なスキンケア動作は一人ひとり異なり、かつその動きは複雑なため、スキンケア動作の個人的な特徴と、皮膚機能や身体機能との関連性を客観的かつ定量的に評価することは困難でした。
そこでこのたび、スポーツおよびスポーツ医療の分野において、選手の身体の動きをデータ収集する技術のひとつである光学式モーションキャプチャー(図1)を取り入れ、ユーザーのスキンケア動作を客観的に評価しました。今回は、マーカーがついたカチューシャと指輪を装着し、普段通りのスキンケア動作を行ないました。これにより、化粧水・乳液・クリームを用いたスキンケア中の手の動きを、3次元の軌跡として解析したり、速度を計測したりなど、経時的な分析が可能です。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202009104179-O4-9znG8Y7C】
方法と結果
女性(30〜40代39名)の皮膚状態を測定し、その後、日常のスキンケア動作を再現してもらい、その際の手の動き(指輪についたマーカーの動き)を光学式モーションキャプチャーで計測しました。また、スキンケア前後には、気分に関するアンケートと心拍変動(心拍自律神経活動)も計測しました。手の動きの速度から各速度成分比率※2を求め、心拍自律神経と皮膚状態との関連を調べました。
※2 一連のスキンケア動作を行なった時間に対して、ある範囲の速度(cm/秒)が占める時間の割合(%)
結果1:手の動きの速さと心拍自律神経の関連性
ゆっくりとした手の動き(速度成分1〜7 cm/秒)の比率が高い人ほど、スキンケア後、心拍副交感神経活動が増大していました(図2)。さらに、ハンドプレス(速度成分0〜1cm/秒)の比率が高い人は、心拍交感神経活動が低下することがわかりました。このことから、ハンドプレスやゆっくりとした手の動きである0〜7cm/秒の速度成分比率は、心拍自律神経活動のバランスに影響を及ぼし、よりリラックスした状態に導くと考えられました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202009104179-O1-EY5zaT79】
結果2:手の動きの速さと肌の弾力性との関連性
やや速い手の動き(速度成分10〜22cm/秒)の比率が高い人は、皮膚の弾力性が高いことがわかりました(図3)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202009104179-O3-u3J19ocG】
結果3:「楽しい群」「楽しくない群」の手の動きの速さ、心拍自律神経活動の関連性
スキンケアに対して肌への効果だけでなく、楽しさかつ心の充足を求める人(n=20)を「楽しい群」、スキンケアが楽しいものでなく、義務的に行なっている人(n=19)を「楽しくない群」とし、手の速度や心拍自律神経活動を比較しました。すると、楽しい群は楽しくない群に比べて、ゆっくりとした手の動きである速度成分(1〜10 cm/秒)の比率が高いこと(図4)、スキンケア後に心拍交感神経活動が低下していることがわかりました(図5)。さらに、スキンケア前後に行なった気分に関するアンケートによると、「二次元気分尺度※3」の安定度(リラックス度)が上昇していることもわかりました(図6)。これらのことから、楽しい群は楽しくない群に比べてスキンケア動作によってよりリラックスした状態になることがわかりました。
※3 短時間での気分変化を評価する時に用いられる尺度のひとつ。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202009104179-O5-QuPfsX2k】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202009104179-O2-5L6L9BBV】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202009104179-O6-nD30lzRX】
まとめ
(1)スキンケア動作において、ゆっくりとした手の動きである0〜7 cm/秒の速度成分比率は、心拍自律神経活動のバランスに影響し、よりリラックスした状態に導くと考えられます。
(2)スキンケア動作において、やや早い手の動きである10〜22cm/秒の速度成分比率が高い人は、皮膚弾力性が高いことがわかりました。
(3)スキンケアが楽しい群のスキンケア動作は、心拍自律神経活動のバランスを整え、よりリラックスした状態に導くことがわかりました。
以上のことから毎日習慣的に行っているスキンケア動作は、手から皮膚への物理的刺激を通して心拍自律神経活動のバランスに影響を与えることがわかりました。一方、皮膚のハリに関与している可能性も示唆されました。
今後、日々のお手入れの際の塗布動作において、その効果を最大限に引き出すことができるよう、検討を進めていきます。
花王株式会社
神戸大学
花王株式会社(社長・澤田道隆)スキンケア研究所・感覚科学研究所は、神戸大学大学院システム情報学研究科 上原邦昭名誉教授(現大阪学院大学)との共同研究によって、毎日のスキンケア動作習慣が心拍自律神経活動※1や皮膚状態に影響する可能性を見いだしました。
今回の研究成果は、「第38回日本美容皮膚科学会総会(2020年9月13日・東京)」にて発表しました。
※1 心拍のゆらぎを測定することで得られる、自律神経活動を示す指標のひとつ。自律神経活動は意識にのぼらない活動であり、交感神経と副交感神経のバランスが重要と考えられています。たとえば、休息時は副交感神経活動が優位になるのに対し、ストレスを受けている場合は交感神経活動が優位になることが知られています。
背景
スキンケアの動作は、これまでにも皮膚をすこやかに保つだけでなく、リラックスなどの心理的効果があることが知られています。しかしながら、日常の習慣的なスキンケア動作は一人ひとり異なり、かつその動きは複雑なため、スキンケア動作の個人的な特徴と、皮膚機能や身体機能との関連性を客観的かつ定量的に評価することは困難でした。
そこでこのたび、スポーツおよびスポーツ医療の分野において、選手の身体の動きをデータ収集する技術のひとつである光学式モーションキャプチャー(図1)を取り入れ、ユーザーのスキンケア動作を客観的に評価しました。今回は、マーカーがついたカチューシャと指輪を装着し、普段通りのスキンケア動作を行ないました。これにより、化粧水・乳液・クリームを用いたスキンケア中の手の動きを、3次元の軌跡として解析したり、速度を計測したりなど、経時的な分析が可能です。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202009104179-O4-9znG8Y7C】
方法と結果
女性(30〜40代39名)の皮膚状態を測定し、その後、日常のスキンケア動作を再現してもらい、その際の手の動き(指輪についたマーカーの動き)を光学式モーションキャプチャーで計測しました。また、スキンケア前後には、気分に関するアンケートと心拍変動(心拍自律神経活動)も計測しました。手の動きの速度から各速度成分比率※2を求め、心拍自律神経と皮膚状態との関連を調べました。
※2 一連のスキンケア動作を行なった時間に対して、ある範囲の速度(cm/秒)が占める時間の割合(%)
結果1:手の動きの速さと心拍自律神経の関連性
ゆっくりとした手の動き(速度成分1〜7 cm/秒)の比率が高い人ほど、スキンケア後、心拍副交感神経活動が増大していました(図2)。さらに、ハンドプレス(速度成分0〜1cm/秒)の比率が高い人は、心拍交感神経活動が低下することがわかりました。このことから、ハンドプレスやゆっくりとした手の動きである0〜7cm/秒の速度成分比率は、心拍自律神経活動のバランスに影響を及ぼし、よりリラックスした状態に導くと考えられました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202009104179-O1-EY5zaT79】
結果2:手の動きの速さと肌の弾力性との関連性
やや速い手の動き(速度成分10〜22cm/秒)の比率が高い人は、皮膚の弾力性が高いことがわかりました(図3)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202009104179-O3-u3J19ocG】
結果3:「楽しい群」「楽しくない群」の手の動きの速さ、心拍自律神経活動の関連性
スキンケアに対して肌への効果だけでなく、楽しさかつ心の充足を求める人(n=20)を「楽しい群」、スキンケアが楽しいものでなく、義務的に行なっている人(n=19)を「楽しくない群」とし、手の速度や心拍自律神経活動を比較しました。すると、楽しい群は楽しくない群に比べて、ゆっくりとした手の動きである速度成分(1〜10 cm/秒)の比率が高いこと(図4)、スキンケア後に心拍交感神経活動が低下していることがわかりました(図5)。さらに、スキンケア前後に行なった気分に関するアンケートによると、「二次元気分尺度※3」の安定度(リラックス度)が上昇していることもわかりました(図6)。これらのことから、楽しい群は楽しくない群に比べてスキンケア動作によってよりリラックスした状態になることがわかりました。
※3 短時間での気分変化を評価する時に用いられる尺度のひとつ。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202009104179-O5-QuPfsX2k】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202009104179-O2-5L6L9BBV】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202009104179-O6-nD30lzRX】
まとめ
(1)スキンケア動作において、ゆっくりとした手の動きである0〜7 cm/秒の速度成分比率は、心拍自律神経活動のバランスに影響し、よりリラックスした状態に導くと考えられます。
(2)スキンケア動作において、やや早い手の動きである10〜22cm/秒の速度成分比率が高い人は、皮膚弾力性が高いことがわかりました。
(3)スキンケアが楽しい群のスキンケア動作は、心拍自律神経活動のバランスを整え、よりリラックスした状態に導くことがわかりました。
以上のことから毎日習慣的に行っているスキンケア動作は、手から皮膚への物理的刺激を通して心拍自律神経活動のバランスに影響を与えることがわかりました。一方、皮膚のハリに関与している可能性も示唆されました。
今後、日々のお手入れの際の塗布動作において、その効果を最大限に引き出すことができるよう、検討を進めていきます。