太陽フレアなど宇宙天気による社会への影響を評価
[20/10/07]
提供元:共同通信PRワイヤー
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宇宙天気は日本にどのような影響を及ぼすか
2020年10月7日
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
ポイント
■ 「科学提言のための宇宙天気現象の社会への影響評価」を作成、発表
■ 大規模な太陽フレアが発生しても、地上での健康への影響はほぼないことを確認
■ 各事業者が適切な対応策を取ることで、宇宙天気現象に対して社会的な強靭性が増すことが期待
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)電磁波研究所宇宙環境研究室は、文部科学省新学術領域研究「太陽地球圏環境予測(PSTEP)」(2015-2019)の下、国内関係機関と協力し、報告書「科学提言のための宇宙天気現象の社会への影響評価」を作成、発表しました。これは、日本において、太陽活動を主な源とする宇宙天気がどのような影響を及ぼし得るかを過去の文献・観測データ等を基に評価したものであり、衛星運用、通信、放送、測位等のそれぞれの分野において、社会的に大きな影響を与える現象がどのくらいの頻度で発生する可能性があるかを示したものです。
この情報を基に、各事業者が適切な対応策を取ることで、災害レベルの宇宙天気現象に対して、正しい知識が普及し、社会的な強靭性が増すと考えられます。
背景
太陽活動が主な源である宇宙天気は、社会に様々な影響を与えることが知られています。宇宙天気現象の規模が大きい場合は、通信・放送・測位等の電波利用に加え、衛星利用や電力、航空運用など我々の社会活動にも影響を与えます。例えば、1989年3月に発生した太陽フレアの際にはカナダ・ケベック州において約10時間の大規模停電が発生し、経済的にも大きな打撃を受けました。また、2003年10-11月には大規模な磁気嵐が発生し、日本の科学衛星を含む宇宙機の約59%が影響を受け、24%のミッションが安全策を取りました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202010065333-O3-b2SWF2P6】
このように、宇宙天気による「災害」はまれではあるものの、一度発生すると広範囲で大規模に影響を与えることが知られています。しかし、どれくらいの規模の現象がどのくらいの頻度で発生するかなど、社会への定量的な影響についての議論は十分でないのが現状です。そのため、宇宙天気予報の警報を発信しても、そのための備えをどのようにしたらよいかについての指針がなく、その結果、ユーザーの過剰な心配あるいは無関心に陥っていました。
特に、日本の場合は、太陽活動の影響を受けやすい高緯度から離れているため、宇宙天気の影響を過小に評価してきた傾向があります。
今回の成果
今後のポストコロナ時代において重要となる、自動運転やドローン物流、また、多数の小型衛星による通信サービス等に対しても、適切な対策を取ることが重要と思われます。
2015年から始まった科学研究費補助金: 新学術領域研究「太陽地球圏環境予測(PSTEP)」(2015-2019)の活動の下、国内の研究者から成る執筆編集委員会は、現在得られている知見を駆使し、今後、どの程度の宇宙天気現象が発生し得るか、その際に、どのような社会影響が発生し得るかについて検討を重ねました。その結果を表1にまとめます。
これまで、一部の分野で宇宙天気現象の影響を検討してきた例はありますが、我が国における宇宙天気現象の社会影響を網羅的に検討して評価したのは初めてです。
表1 各分野における宇宙天気の影響と頻度
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202010065333-O2-HjAaqiwP】
この中には、PSTEPで得られた新たな知見も含んでいます。例えば、日本は中緯度に位置する島国ということもあり、地磁気活動が誘導する地電流が電力網に与える影響などは従来無視されてきました。しかし、PSTEPの研究の中で、その認識を再検討するべき結果も示されてきています。
また、2017年9月に大規模な太陽フレアが発生した際には、多くの方々から宇宙放射線による地上での影響を懸念する問合せをいただきましたが、今回の評価で、地上における健康への影響はほぼないという結果を得ました。
この情報を基に、各事業者が適切な対応策を取ることで、災害レベルの宇宙天気現象に対して、正しい知識が普及し、社会的な強靭性が増すと考えられます。
今後の展望
NICTでは、2016年から宇宙天気の情報を提供する研究者とユーザーによる「宇宙天気ユーザー協議会」を設立し、データの適切な利用について検討してきました。2020年10月13日(火)に、オンラインにて当協議会を開催し、本報告書を説明します。本報告書を基に、今後、宇宙天気情報のユーザーとのコミュニケーションを図り、ユーザーサイドの具体的な対応策の検討まで進めることで、最先端の研究成果を社会活動に取り入れる好例としたいと考えています。
PSTEPについて
「太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成(PSTEP)」は、2015年〜2019年に文部科学省科学研究費補助金新学術領域によって組織された全国的な研究プロジェクトです。本プロジェクトの目的は、宇宙天気に関する科学課題を解決すると同時に、宇宙天気予報の飛躍的な発展を実現し、将来発生する激甚宇宙天気災害に備える社会基盤の形成を推進することです。https://www.pstep.jp/
本報告書は、PSTEPの枠組みの下、以下に示すメンバーから成る編集委員によって作成されました(敬称略)。
[執筆編集委員(敬称略、五十音順)]
編集: 石井守、塩田大幸(NICT)
石井貴子(京都大学)、一本潔(京都大学)、海老原祐輔(京都大学)、片岡龍峰(国立極地研究所)、草野完也(名古屋大学)、久保勇樹(NICT)、古賀清一(宇宙航空研究開発機構)、齋藤享(電子航法研究所)、佐藤達彦(日本原子力研究開発機構)、陣英克(NICT)、垰千尋(NICT)、津川卓也(NICT)、長妻努(NICT)、中溝葵(NICT)、中村雅夫(大阪府立大学)、西岡未知(NICT)、藤原均(成蹊大学)、三好由純(名古屋大学)、余田成男(京都大学)
2020年10月7日
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
ポイント
■ 「科学提言のための宇宙天気現象の社会への影響評価」を作成、発表
■ 大規模な太陽フレアが発生しても、地上での健康への影響はほぼないことを確認
■ 各事業者が適切な対応策を取ることで、宇宙天気現象に対して社会的な強靭性が増すことが期待
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)電磁波研究所宇宙環境研究室は、文部科学省新学術領域研究「太陽地球圏環境予測(PSTEP)」(2015-2019)の下、国内関係機関と協力し、報告書「科学提言のための宇宙天気現象の社会への影響評価」を作成、発表しました。これは、日本において、太陽活動を主な源とする宇宙天気がどのような影響を及ぼし得るかを過去の文献・観測データ等を基に評価したものであり、衛星運用、通信、放送、測位等のそれぞれの分野において、社会的に大きな影響を与える現象がどのくらいの頻度で発生する可能性があるかを示したものです。
この情報を基に、各事業者が適切な対応策を取ることで、災害レベルの宇宙天気現象に対して、正しい知識が普及し、社会的な強靭性が増すと考えられます。
背景
太陽活動が主な源である宇宙天気は、社会に様々な影響を与えることが知られています。宇宙天気現象の規模が大きい場合は、通信・放送・測位等の電波利用に加え、衛星利用や電力、航空運用など我々の社会活動にも影響を与えます。例えば、1989年3月に発生した太陽フレアの際にはカナダ・ケベック州において約10時間の大規模停電が発生し、経済的にも大きな打撃を受けました。また、2003年10-11月には大規模な磁気嵐が発生し、日本の科学衛星を含む宇宙機の約59%が影響を受け、24%のミッションが安全策を取りました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202010065333-O3-b2SWF2P6】
このように、宇宙天気による「災害」はまれではあるものの、一度発生すると広範囲で大規模に影響を与えることが知られています。しかし、どれくらいの規模の現象がどのくらいの頻度で発生するかなど、社会への定量的な影響についての議論は十分でないのが現状です。そのため、宇宙天気予報の警報を発信しても、そのための備えをどのようにしたらよいかについての指針がなく、その結果、ユーザーの過剰な心配あるいは無関心に陥っていました。
特に、日本の場合は、太陽活動の影響を受けやすい高緯度から離れているため、宇宙天気の影響を過小に評価してきた傾向があります。
今回の成果
今後のポストコロナ時代において重要となる、自動運転やドローン物流、また、多数の小型衛星による通信サービス等に対しても、適切な対策を取ることが重要と思われます。
2015年から始まった科学研究費補助金: 新学術領域研究「太陽地球圏環境予測(PSTEP)」(2015-2019)の活動の下、国内の研究者から成る執筆編集委員会は、現在得られている知見を駆使し、今後、どの程度の宇宙天気現象が発生し得るか、その際に、どのような社会影響が発生し得るかについて検討を重ねました。その結果を表1にまとめます。
これまで、一部の分野で宇宙天気現象の影響を検討してきた例はありますが、我が国における宇宙天気現象の社会影響を網羅的に検討して評価したのは初めてです。
表1 各分野における宇宙天気の影響と頻度
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202010065333-O2-HjAaqiwP】
この中には、PSTEPで得られた新たな知見も含んでいます。例えば、日本は中緯度に位置する島国ということもあり、地磁気活動が誘導する地電流が電力網に与える影響などは従来無視されてきました。しかし、PSTEPの研究の中で、その認識を再検討するべき結果も示されてきています。
また、2017年9月に大規模な太陽フレアが発生した際には、多くの方々から宇宙放射線による地上での影響を懸念する問合せをいただきましたが、今回の評価で、地上における健康への影響はほぼないという結果を得ました。
この情報を基に、各事業者が適切な対応策を取ることで、災害レベルの宇宙天気現象に対して、正しい知識が普及し、社会的な強靭性が増すと考えられます。
今後の展望
NICTでは、2016年から宇宙天気の情報を提供する研究者とユーザーによる「宇宙天気ユーザー協議会」を設立し、データの適切な利用について検討してきました。2020年10月13日(火)に、オンラインにて当協議会を開催し、本報告書を説明します。本報告書を基に、今後、宇宙天気情報のユーザーとのコミュニケーションを図り、ユーザーサイドの具体的な対応策の検討まで進めることで、最先端の研究成果を社会活動に取り入れる好例としたいと考えています。
PSTEPについて
「太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成(PSTEP)」は、2015年〜2019年に文部科学省科学研究費補助金新学術領域によって組織された全国的な研究プロジェクトです。本プロジェクトの目的は、宇宙天気に関する科学課題を解決すると同時に、宇宙天気予報の飛躍的な発展を実現し、将来発生する激甚宇宙天気災害に備える社会基盤の形成を推進することです。https://www.pstep.jp/
本報告書は、PSTEPの枠組みの下、以下に示すメンバーから成る編集委員によって作成されました(敬称略)。
[執筆編集委員(敬称略、五十音順)]
編集: 石井守、塩田大幸(NICT)
石井貴子(京都大学)、一本潔(京都大学)、海老原祐輔(京都大学)、片岡龍峰(国立極地研究所)、草野完也(名古屋大学)、久保勇樹(NICT)、古賀清一(宇宙航空研究開発機構)、齋藤享(電子航法研究所)、佐藤達彦(日本原子力研究開発機構)、陣英克(NICT)、垰千尋(NICT)、津川卓也(NICT)、長妻努(NICT)、中溝葵(NICT)、中村雅夫(大阪府立大学)、西岡未知(NICT)、藤原均(成蹊大学)、三好由純(名古屋大学)、余田成男(京都大学)