東洋大学【新しい観光のパラダイム Vol.4】温泉地のパラダイムシフト-21世紀の温泉地-
[20/11/30]
提供元:共同通信PRワイヤー
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2020年11月30日
News Letter Vol.4 新しい観光のパラダイム
温泉地のパラダイムシフト-21世紀の温泉地-
東洋大学 国際観光学部 内田彩
観光のパラダイムとは
パラダイムとは、一般的に「ある時代や分野において支配的規範となる『物の見方や捉え方』である」といわれています。コロナウイルス流行前後では、私たちの生活も『物の見方や捉え方」も大きく変化しました。こうした時期には観光行動も大きな変化が生まれます。私の研究テーマである温泉地も、長い歴史のなかで、いくたびかの革命的かつ非連続的に変化する時期、つまり「パラダイムシフト」を経てきました。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/202011277781-O1-EPz69k65 】
温泉地におけるパラダイムシフトの変遷
最初のパラダイムシフトは温泉地への旅が一般化した江戸時代になります。この時代は政治・経済が安定し、人々の往来が盛んになりましたが、幕府は商業・公用を除き人々が自由に移動することを許可していませんでした。しかし、病気治療(湯治)と信仰(寺社参詣)は認めており、これが旅の大衆化の先駆けとなるとともに、温泉地の発展につながりました。この時代は長期滞在しながら心身の健康を回復する療養地としての役割がありました。
2回目は江戸幕府が崩壊し、欧米諸国の思想・文化が流入した明治時代になります。旅は自由化された一方で、西洋医学の導入により温泉医学(湯治)の必要性が低下しました。また、鉄道の発達、職業形態の変化などにより、温泉地は短期滞在も可能な保養地としての性格を強くしていきました。
3回目は、戦後のマスツーリズム(大衆観光)になります。社会が豊かになるとともに、余暇の過ごし方として、多くの人々が温泉地に訪れることができるようになりました。美味しく豪華な食事と一泊だけの特別な宿泊、周遊観光の通過地点など、温泉地は観光地としてにぎわうようになります。
新たな時代の温泉地とは -21世紀のパラダイムシフト-
今後、温泉地はどんな「新たな観光のパラダイム」と向き合うのでしょうか。今回、私たちは改めて「健康」の大切さに気が付きました。観光一辺倒だった温泉利用も、もういちど湯治の原点に戻り、健康を中心とした温泉利用の取り組みが進むでしょう。
一方で、近年「働き方改革」で注目されていた「リモートワーク」が強く推奨されるようになりました。「リモート(Remote)」という言葉は、「遠隔」を意味しており、必ずしも自宅とは限りません。社会状況が落ち着いたあと、人々の仕事のスタイル、余暇の過ごし方の中に、リゾート地・温泉地の宿泊施設に滞在しながら仕事をするスタイル、いわいる「ワーケーション」が広がる可能性もあります。「地域の食材を購入して自炊したり、健康的な温泉旅館の料理を食べたりしながら、ゆっくりと温泉に浸かり、美しい景色に癒され、温泉旅館の書斎で仕事をする」。そんな温泉地滞在が、21世紀の新たな温泉地の魅力になるかもしれません。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/202011277781-O2-bE5y51cf 】
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/202011277781-O3-4m969JY5 】
内田 彩
東洋大学国際観光学部 准教授
専門分野:観光歴史学、観光行動論、温泉論
研究キーワード:温泉史, 交流, 温泉
News Letter Vol.4 新しい観光のパラダイム
温泉地のパラダイムシフト-21世紀の温泉地-
東洋大学 国際観光学部 内田彩
観光のパラダイムとは
パラダイムとは、一般的に「ある時代や分野において支配的規範となる『物の見方や捉え方』である」といわれています。コロナウイルス流行前後では、私たちの生活も『物の見方や捉え方」も大きく変化しました。こうした時期には観光行動も大きな変化が生まれます。私の研究テーマである温泉地も、長い歴史のなかで、いくたびかの革命的かつ非連続的に変化する時期、つまり「パラダイムシフト」を経てきました。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/202011277781-O1-EPz69k65 】
温泉地におけるパラダイムシフトの変遷
最初のパラダイムシフトは温泉地への旅が一般化した江戸時代になります。この時代は政治・経済が安定し、人々の往来が盛んになりましたが、幕府は商業・公用を除き人々が自由に移動することを許可していませんでした。しかし、病気治療(湯治)と信仰(寺社参詣)は認めており、これが旅の大衆化の先駆けとなるとともに、温泉地の発展につながりました。この時代は長期滞在しながら心身の健康を回復する療養地としての役割がありました。
2回目は江戸幕府が崩壊し、欧米諸国の思想・文化が流入した明治時代になります。旅は自由化された一方で、西洋医学の導入により温泉医学(湯治)の必要性が低下しました。また、鉄道の発達、職業形態の変化などにより、温泉地は短期滞在も可能な保養地としての性格を強くしていきました。
3回目は、戦後のマスツーリズム(大衆観光)になります。社会が豊かになるとともに、余暇の過ごし方として、多くの人々が温泉地に訪れることができるようになりました。美味しく豪華な食事と一泊だけの特別な宿泊、周遊観光の通過地点など、温泉地は観光地としてにぎわうようになります。
新たな時代の温泉地とは -21世紀のパラダイムシフト-
今後、温泉地はどんな「新たな観光のパラダイム」と向き合うのでしょうか。今回、私たちは改めて「健康」の大切さに気が付きました。観光一辺倒だった温泉利用も、もういちど湯治の原点に戻り、健康を中心とした温泉利用の取り組みが進むでしょう。
一方で、近年「働き方改革」で注目されていた「リモートワーク」が強く推奨されるようになりました。「リモート(Remote)」という言葉は、「遠隔」を意味しており、必ずしも自宅とは限りません。社会状況が落ち着いたあと、人々の仕事のスタイル、余暇の過ごし方の中に、リゾート地・温泉地の宿泊施設に滞在しながら仕事をするスタイル、いわいる「ワーケーション」が広がる可能性もあります。「地域の食材を購入して自炊したり、健康的な温泉旅館の料理を食べたりしながら、ゆっくりと温泉に浸かり、美しい景色に癒され、温泉旅館の書斎で仕事をする」。そんな温泉地滞在が、21世紀の新たな温泉地の魅力になるかもしれません。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/202011277781-O2-bE5y51cf 】
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内田 彩
東洋大学国際観光学部 准教授
専門分野:観光歴史学、観光行動論、温泉論
研究キーワード:温泉史, 交流, 温泉