<日本歯内療法学会 ニュースレターvol.2 >「歯科専門医制度」最新情報
[21/01/22]
提供元:共同通信PRワイヤー
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患者さんが適切な治療を受けるためには?ポイントを医師が解説
一般社団法人 日本歯内療法学会(所在地:東京都豊島区、理事長:阿南 壽)より、「歯科専門医制度」に関する最新情報や、適切な治療を受診するためのポイントについてお知らせいたします。
患者さんや生活者は、歯の症状や痛みに応じて、その分野を得意とする歯科医院や医師を選択することが望ましいのですが、専門的な技術を持つ「歯科専門医」の認知は低いのが現状です。日本歯内療法学会は、患者さんや生活者が適切な歯科医院や歯科医師を選択できるよう、情報発信を通じ、患者さんや生活者の口腔健康の維持に貢献してまいります。
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【サマリー】
(1)歯科医にもそれぞれ得意分野が!「歯科専門医」とは
・医科だけでなく、歯科にもそれぞれの専門領域に明るく、確かな治療を施すことのできる専門医が存在する
・歯科医院や病院を選ぶ際、多くの人が「医師の技術力」を重視しているにも関わらず、歯科専門医の存在はあまり知られていない
(2) 患者さんが適切な治療を受けるための、歯科専門医制度のあり方
・各学会の専門医制度は、「歯科医師の質や技術力の向上」や「患者さんが適切な歯科医院や治療を選択しやすくなる」ことを目的とし、日本歯科専門医機構が中立・公平の立場から制度の監督・支援・協力等を行っている
・当学会も、「歯内療法の基礎と臨床を研究し、正しい歯内療法を実践することにより国民の福祉と健康に貢献」の達成のために、専門医制度を制定・運用している
(3)歯科専門医制度の最新動向
・広告可能な5つの専門医に加え、「歯科保存」「補綴(ほてつ)歯科」「矯正歯科」「インプラント歯科」「総合歯科診療」(全て仮称)も認証に向け意見を集約中
・患者さんや生活者が必要とする専門医に、すみやかにかつ容易にアクセスできるよう、複数の学会や団体が合同してひとつの専門医を認定する方法(連合方式)の確立が検討されている
(4) 歯科専門分野としての「歯内療法」
・歯科保存に含まれる歯内療法は「根の治療」「神経を抜く」とも呼ばれ、歯科医師にとっては基本的かつ身近な治療法であり、歯科医師の誰もが施すことができるが、高度な技術が要求されるため、治療の成功率を上げるには高い治療技術を持つ専門の歯科医師へ受診することが望ましい
・患者さんや生活者に、再治療のない歯内療法を実践することで国民医療費を抑制し、長期で健康を維持できる機能を提供できるという意味で、歯内療法は専門医制度において重要な役割を担う
・当学会としては、グローバルスタンダードを実践できる歯科医師を多く輩出し、日本の歯科医療における歯内療法の底上げを図り、歯内療法に関する適切な情報発信を行うことで患者さんや生活者に貢献していきたい
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【詳細】
(1)歯科医にもそれぞれ得意分野が!「歯科専門医」とは
■医科だけではなく歯科にも存在する専門医
風邪をひいたら内科、捻挫してしまったら整形外科、子どもの体調が悪くなったら小児科……など、多くの人が当たり前のように、病気や怪我の症状によって専門的な治療を受けられる病院や医師を選択しています。実は、「歯科」においても歯の痛みや症状によって受診すべき病院や医師は異なります。特に、「それぞれの専門領域において適切な研修教育を受け、十分な知識と経験を備え、患者から信頼される専門医療を提供できる歯科医師」(一般社団法人日本歯科専門医機構)のことを歯科専門医と呼びます。
日本歯科医学会に属する学会は43学会あり(専門分科会25、認定分科会18)※、各学会で専門医・認定医を設け、専門家の育成を行っています。その中には、歯の根の治療である「歯内療法」を行う当学会はもちろん、日本矯正歯科学会、日本口腔インプラント学会、日本顎関節学会など、専門分野に応じた様々な学会が存在します。その中で、以下の5つの専門医に限り、標榜可能と厚生労働省に認められています。※2020年12月現在
・口腔外科専門医(公益社団法人 日本口腔外科学会)
・歯周病専門医(特定非営利活動法人 日本歯周病学会)
・小児歯科専門医(一般社団法人 日本小児歯科学会)
・歯科麻酔専門医(一般社団法人 日本歯科麻酔学会)
・歯科放射線専門医(特定非営利活動法人 日本歯科放射線学会)
■意外と知られていない?歯科の専門医
当学会が2019年に実施した意識調査によると、[グラフ(1)]歯科医院や病院を選ぶ際、多くの人が「医師の技術力」を重視し、確かな技術を持つ医師の治療を希望していることがわかりました。その一方で、[グラフ(2)]歯科専門医の存在について「知っている」と答えた人は全体の3割程度に留まりました。患者さんは、歯の症状によって、専門医など各分野の治療を得意とする歯科医の治療を受けることが推奨されるところですが、歯科専門医の認知度にまだ課題があることが明らかとなりました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202101210063-O1-47tfh818】
「あなたが【歯科医院や病院の歯科】を選ぶ際に重視する点として、あてはまるものを全てお選びください」という質問に対し、1位「治療が丁寧」(62.6%)、2位「自宅/職場の近くにある」(60.5%)に次いで、「医師の技術力が高い」(51.6%)が3位となり、技術力のある医師の治療を希望する人が過半数を占めました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202101210063-O2-i1z96MB6】
「あなたは、歯科医療に『専門医』がいることをご存知ですか」という質問に対し、「歯科に、どのような専門医がいるか具体的に知っていた」、「歯科にも専門医がいることをなんとなく知っていた」は33.9%。歯科専門医の認知度は高いとは言えず、課題があることがわかります。
※調査概要「歯内療法に関する生活者意識調査」
・実施時期 2019年7月29日(月)〜7月31日(水)
・調査手法 インターネット調査(調査委託先:株式会社マクロミル)
・調査対象 最近1年以内にむし歯などの歯科治療を受けた全国の20歳〜69歳 男女1,030人
(2)患者さんが適切な治療を受けるための、歯科専門医制度のあり方
■これまでの歩みから見る、歯科専門医制度の存在意義
各学会の専門医制度は、2018年に設立された日本歯科専門医機構が、中立・公平の立場から制度の監督・支援・協力等を行っています。
日本歯科専門医機構が設立する以前は、各学会の基準で専門医制度を設けていたため、歯科専門医として求められる知識・技能などに統一した基準がなく、認定される歯科専門医のレベルが学会ごとに異なっており、さらに、名称から専門性の内容がわかりにくいといった問題がありました。そうした背景から、各学会の専門医制度の見直しおよび客観的評価を行う日本歯科専門医機構が設立されました。
■歯科専門医制度、患者さんにとってのメリットは?
歯科専門医制度が適切に運用されることで、「歯科医師の質や技術力の向上」や「患者さんが適切な歯科医院や治療を選択しやすくなる」といったメリットがあります。当学会においても、歯内療法の研究、歯科医師への指導医・専門医の取得推奨や教育を行うことで、当学会の掲げる「歯内療法の基礎と臨床を研究し、正しい歯内療法を実践することにより国民の福祉と健康に貢献」の達成を目指しております。
(3)歯科専門医制度の最新動向
■新たな専門医制度、「矯正」や「インプラント」も
日本歯科専門医機構は、既に厚生労働省から標榜可能とされている5つの専門医に加え、「歯科保存」「補綴(ほてつ)歯科」「矯正歯科」「インプラント歯科」「総合歯科診療」(全て仮称)も認証に向け意見を集約中であり、中でも「矯正歯科」「インプラント歯科」は今年度中にも認証作業ができるステップへと進める方針です。
・歯科保存
歯を抜くことなく、いつまでも自分の歯で噛めるように治療を行い、大切な歯を口の中に維持、保存し機能させていくことを目的とした歯科の一分野。さらに、歯科保存治療には、歯の崩壊による欠損部を補修する「保存修復」、歯の神経の病気を治療する「歯内療法」、歯を支える組織の病気を治療する「歯周療法」があります。
・補綴(ほてつ)歯科
歯が欠けたり、なくなった場合に人工物で補う治療のこと。入れ歯やクラウン、ブリッジ、インプラントなどがこれに該当します。
・矯正歯科
悪い歯並びや噛み合わせを、きちんと噛み合うようにして、きれいな歯並びにする治療のこと。矯正装置を通じて、歯や顎の骨に力をかけてゆっくりと動かし、歯並びと噛み合わせを治療します。
・インプラント歯科
虫歯や歯周病で抜けた歯に代わって咬み心地や見た目を回復するための治療のこと。自分の歯のように使い心地がよいことから、「乳歯」「永久歯」に続く「第三の歯」や「第二の永久歯」と呼ばれることもあります。
・総合歯科診療(日本歯科専門医機構が提案する新しい専門医グループ)
全身の病気や障害がある患者さん、高齢の患者さんに対応できる歯科分野のこと。在宅や施設の訪問診療では医科と連携して歯科治療にあたります。高齢社会では、地域医療に貢献できる専門医として期待されます。
■専門医の統合整理「連合方式」
各専門医の名称は、患者さんや生活者が理解しやすいように、ある程度整理し、複数の学会や団体が共通の専門医を認定する「連合方式」を採用することも考慮されています。現在、各学会が上述した“グループ分け”のもとに集まり、合同のカリキュラムに従って、知識・技術を維持する「合同カリキュラム方式の専門医」の構築が、日本歯科専門医機構において行われており、各学会が独自に制定した専門医制度を統合整理しています。数多くの学会を5つのグループに収めるため、スムーズな作業とは言えませんが、学会間での意見交換を盛んに行って意見集約に努めています。
(4)歯科専門分野としての「歯内療法」
■誰でも一度は受けたことがある?歯内療法とは
歯内療法は、歯の治療に関する専門分野のひとつで、できるだけ歯を抜かずに治療することを目的としています。歯を残すために「歯の痛み」に対処し、「根の治療」「神経を抜く」と言われる治療も歯内療法の範囲です。特に歯の根の深くにアプローチする治療を「根管治療」と言います。
■歯科医師なら誰でもできる歯内療法、専門医による治療のメリットとは?
根管の径は1ミリメートル以下の細い管で、形態は様々で非常に複雑なため、歯内療法には高度な技術が要求されます。歯内療法は、歯科医師なら誰でも行うことができますが、専門医など歯内療法を得意とする歯科医師の治療を受けることで、(1)歯を残して治療できる可能性が高くなる、(2)治療中の感染予防が徹底される、(3)一度治療したところが悪化して再治療を行うリスクが下がる、といったことが期待できます。
■歯内療法専門医のコメント
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202101210063-O3-U7aRE5iR】
日本歯内療法学会 副理事長・佐久間歯科医院 院長 佐久間 克哉
【略歴】
1982年神奈川歯科大学卒業。歯学博士。昭和大学客員教授、2003年〜2017年総合診療歯科学講座、2018年〜歯科放射線学講座。日本歯科医学会評議員。
【所属学会】
日本歯内療法学会 専門医・日本顎咬合学会 認定医・日本歯科放射線学会 会員・日本臨床歯周療法集談会 会員
・基本的かつ高い技術力が求められる「歯内療法」、歯科専門医制度における位置づけとは
“歯の痛み”に対処する部門が「歯内療法」です。痛む歯を鎮静させて神経を保護したり、神経を取って除痛したり……細い神経の通路(根管)を治療し噛めるように機能を回復していく、これらは全て「歯内療法」の受け持つ範囲です。基本的な治療であるものの難易度が高く、治療の成功率を上げるには高い技術が必要とされています。
また、患者さんや生活者に再治療のない歯内療法を実践することで国民医療費を抑制し、長期にわたり健康を維持できる機能を提供することが歯内療法の目的でもあります。歯科専門医制度において基本治療となる重要な位置づけと考えています。
・歯内療法は「歯科保存」のひとつという捉え方もできるが、独自で学会や専門医制度を敷いていることの意義は
日本で唯一、歯内療法に“特化”している学会は「日本歯内療法学会」だけです。グローバルスタンダードを実践できる歯科医師を多く輩出し、日本の歯科医療における歯内療法の底上げを図ることが当学会の目的であり、存在意義だと考えています。
・新たな専門医制度において、歯内療法学会としての目的は達成されるか
今はまだ、新しい専門医制度は完成されておらず、各学会が目的達成のため意見を出し合っている段階です。今後の制度構築を見て評価されると思いますので、機構の動向に注目しています。
・患者さんが自分の症状にあった、適切な治療を受けるために必要なことは何か
どんな症状のときにどの歯科医院にかかればよいのか……受診に困った際、患者さんや生活者がすみやかに専門医にアクセスできる方法の確立だと考えており、日本歯科専門医機構にもわかりやすいアクセスの方法の構築をお願いしております。
また、歯内療法に関する情報発信も当学会としての責務と考えます。患者さんや生活者の目線にもとづいた“わかりやすさ” を念頭に置いた情報発信を、今後目指していきます。
一般社団法人 日本歯内療法学会(所在地:東京都豊島区、理事長:阿南 壽)より、「歯科専門医制度」に関する最新情報や、適切な治療を受診するためのポイントについてお知らせいたします。
患者さんや生活者は、歯の症状や痛みに応じて、その分野を得意とする歯科医院や医師を選択することが望ましいのですが、専門的な技術を持つ「歯科専門医」の認知は低いのが現状です。日本歯内療法学会は、患者さんや生活者が適切な歯科医院や歯科医師を選択できるよう、情報発信を通じ、患者さんや生活者の口腔健康の維持に貢献してまいります。
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【サマリー】
(1)歯科医にもそれぞれ得意分野が!「歯科専門医」とは
・医科だけでなく、歯科にもそれぞれの専門領域に明るく、確かな治療を施すことのできる専門医が存在する
・歯科医院や病院を選ぶ際、多くの人が「医師の技術力」を重視しているにも関わらず、歯科専門医の存在はあまり知られていない
(2) 患者さんが適切な治療を受けるための、歯科専門医制度のあり方
・各学会の専門医制度は、「歯科医師の質や技術力の向上」や「患者さんが適切な歯科医院や治療を選択しやすくなる」ことを目的とし、日本歯科専門医機構が中立・公平の立場から制度の監督・支援・協力等を行っている
・当学会も、「歯内療法の基礎と臨床を研究し、正しい歯内療法を実践することにより国民の福祉と健康に貢献」の達成のために、専門医制度を制定・運用している
(3)歯科専門医制度の最新動向
・広告可能な5つの専門医に加え、「歯科保存」「補綴(ほてつ)歯科」「矯正歯科」「インプラント歯科」「総合歯科診療」(全て仮称)も認証に向け意見を集約中
・患者さんや生活者が必要とする専門医に、すみやかにかつ容易にアクセスできるよう、複数の学会や団体が合同してひとつの専門医を認定する方法(連合方式)の確立が検討されている
(4) 歯科専門分野としての「歯内療法」
・歯科保存に含まれる歯内療法は「根の治療」「神経を抜く」とも呼ばれ、歯科医師にとっては基本的かつ身近な治療法であり、歯科医師の誰もが施すことができるが、高度な技術が要求されるため、治療の成功率を上げるには高い治療技術を持つ専門の歯科医師へ受診することが望ましい
・患者さんや生活者に、再治療のない歯内療法を実践することで国民医療費を抑制し、長期で健康を維持できる機能を提供できるという意味で、歯内療法は専門医制度において重要な役割を担う
・当学会としては、グローバルスタンダードを実践できる歯科医師を多く輩出し、日本の歯科医療における歯内療法の底上げを図り、歯内療法に関する適切な情報発信を行うことで患者さんや生活者に貢献していきたい
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(1)歯科医にもそれぞれ得意分野が!「歯科専門医」とは
■医科だけではなく歯科にも存在する専門医
風邪をひいたら内科、捻挫してしまったら整形外科、子どもの体調が悪くなったら小児科……など、多くの人が当たり前のように、病気や怪我の症状によって専門的な治療を受けられる病院や医師を選択しています。実は、「歯科」においても歯の痛みや症状によって受診すべき病院や医師は異なります。特に、「それぞれの専門領域において適切な研修教育を受け、十分な知識と経験を備え、患者から信頼される専門医療を提供できる歯科医師」(一般社団法人日本歯科専門医機構)のことを歯科専門医と呼びます。
日本歯科医学会に属する学会は43学会あり(専門分科会25、認定分科会18)※、各学会で専門医・認定医を設け、専門家の育成を行っています。その中には、歯の根の治療である「歯内療法」を行う当学会はもちろん、日本矯正歯科学会、日本口腔インプラント学会、日本顎関節学会など、専門分野に応じた様々な学会が存在します。その中で、以下の5つの専門医に限り、標榜可能と厚生労働省に認められています。※2020年12月現在
・口腔外科専門医(公益社団法人 日本口腔外科学会)
・歯周病専門医(特定非営利活動法人 日本歯周病学会)
・小児歯科専門医(一般社団法人 日本小児歯科学会)
・歯科麻酔専門医(一般社団法人 日本歯科麻酔学会)
・歯科放射線専門医(特定非営利活動法人 日本歯科放射線学会)
■意外と知られていない?歯科の専門医
当学会が2019年に実施した意識調査によると、[グラフ(1)]歯科医院や病院を選ぶ際、多くの人が「医師の技術力」を重視し、確かな技術を持つ医師の治療を希望していることがわかりました。その一方で、[グラフ(2)]歯科専門医の存在について「知っている」と答えた人は全体の3割程度に留まりました。患者さんは、歯の症状によって、専門医など各分野の治療を得意とする歯科医の治療を受けることが推奨されるところですが、歯科専門医の認知度にまだ課題があることが明らかとなりました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202101210063-O1-47tfh818】
「あなたが【歯科医院や病院の歯科】を選ぶ際に重視する点として、あてはまるものを全てお選びください」という質問に対し、1位「治療が丁寧」(62.6%)、2位「自宅/職場の近くにある」(60.5%)に次いで、「医師の技術力が高い」(51.6%)が3位となり、技術力のある医師の治療を希望する人が過半数を占めました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202101210063-O2-i1z96MB6】
「あなたは、歯科医療に『専門医』がいることをご存知ですか」という質問に対し、「歯科に、どのような専門医がいるか具体的に知っていた」、「歯科にも専門医がいることをなんとなく知っていた」は33.9%。歯科専門医の認知度は高いとは言えず、課題があることがわかります。
※調査概要「歯内療法に関する生活者意識調査」
・実施時期 2019年7月29日(月)〜7月31日(水)
・調査手法 インターネット調査(調査委託先:株式会社マクロミル)
・調査対象 最近1年以内にむし歯などの歯科治療を受けた全国の20歳〜69歳 男女1,030人
(2)患者さんが適切な治療を受けるための、歯科専門医制度のあり方
■これまでの歩みから見る、歯科専門医制度の存在意義
各学会の専門医制度は、2018年に設立された日本歯科専門医機構が、中立・公平の立場から制度の監督・支援・協力等を行っています。
日本歯科専門医機構が設立する以前は、各学会の基準で専門医制度を設けていたため、歯科専門医として求められる知識・技能などに統一した基準がなく、認定される歯科専門医のレベルが学会ごとに異なっており、さらに、名称から専門性の内容がわかりにくいといった問題がありました。そうした背景から、各学会の専門医制度の見直しおよび客観的評価を行う日本歯科専門医機構が設立されました。
■歯科専門医制度、患者さんにとってのメリットは?
歯科専門医制度が適切に運用されることで、「歯科医師の質や技術力の向上」や「患者さんが適切な歯科医院や治療を選択しやすくなる」といったメリットがあります。当学会においても、歯内療法の研究、歯科医師への指導医・専門医の取得推奨や教育を行うことで、当学会の掲げる「歯内療法の基礎と臨床を研究し、正しい歯内療法を実践することにより国民の福祉と健康に貢献」の達成を目指しております。
(3)歯科専門医制度の最新動向
■新たな専門医制度、「矯正」や「インプラント」も
日本歯科専門医機構は、既に厚生労働省から標榜可能とされている5つの専門医に加え、「歯科保存」「補綴(ほてつ)歯科」「矯正歯科」「インプラント歯科」「総合歯科診療」(全て仮称)も認証に向け意見を集約中であり、中でも「矯正歯科」「インプラント歯科」は今年度中にも認証作業ができるステップへと進める方針です。
・歯科保存
歯を抜くことなく、いつまでも自分の歯で噛めるように治療を行い、大切な歯を口の中に維持、保存し機能させていくことを目的とした歯科の一分野。さらに、歯科保存治療には、歯の崩壊による欠損部を補修する「保存修復」、歯の神経の病気を治療する「歯内療法」、歯を支える組織の病気を治療する「歯周療法」があります。
・補綴(ほてつ)歯科
歯が欠けたり、なくなった場合に人工物で補う治療のこと。入れ歯やクラウン、ブリッジ、インプラントなどがこれに該当します。
・矯正歯科
悪い歯並びや噛み合わせを、きちんと噛み合うようにして、きれいな歯並びにする治療のこと。矯正装置を通じて、歯や顎の骨に力をかけてゆっくりと動かし、歯並びと噛み合わせを治療します。
・インプラント歯科
虫歯や歯周病で抜けた歯に代わって咬み心地や見た目を回復するための治療のこと。自分の歯のように使い心地がよいことから、「乳歯」「永久歯」に続く「第三の歯」や「第二の永久歯」と呼ばれることもあります。
・総合歯科診療(日本歯科専門医機構が提案する新しい専門医グループ)
全身の病気や障害がある患者さん、高齢の患者さんに対応できる歯科分野のこと。在宅や施設の訪問診療では医科と連携して歯科治療にあたります。高齢社会では、地域医療に貢献できる専門医として期待されます。
■専門医の統合整理「連合方式」
各専門医の名称は、患者さんや生活者が理解しやすいように、ある程度整理し、複数の学会や団体が共通の専門医を認定する「連合方式」を採用することも考慮されています。現在、各学会が上述した“グループ分け”のもとに集まり、合同のカリキュラムに従って、知識・技術を維持する「合同カリキュラム方式の専門医」の構築が、日本歯科専門医機構において行われており、各学会が独自に制定した専門医制度を統合整理しています。数多くの学会を5つのグループに収めるため、スムーズな作業とは言えませんが、学会間での意見交換を盛んに行って意見集約に努めています。
(4)歯科専門分野としての「歯内療法」
■誰でも一度は受けたことがある?歯内療法とは
歯内療法は、歯の治療に関する専門分野のひとつで、できるだけ歯を抜かずに治療することを目的としています。歯を残すために「歯の痛み」に対処し、「根の治療」「神経を抜く」と言われる治療も歯内療法の範囲です。特に歯の根の深くにアプローチする治療を「根管治療」と言います。
■歯科医師なら誰でもできる歯内療法、専門医による治療のメリットとは?
根管の径は1ミリメートル以下の細い管で、形態は様々で非常に複雑なため、歯内療法には高度な技術が要求されます。歯内療法は、歯科医師なら誰でも行うことができますが、専門医など歯内療法を得意とする歯科医師の治療を受けることで、(1)歯を残して治療できる可能性が高くなる、(2)治療中の感染予防が徹底される、(3)一度治療したところが悪化して再治療を行うリスクが下がる、といったことが期待できます。
■歯内療法専門医のコメント
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202101210063-O3-U7aRE5iR】
日本歯内療法学会 副理事長・佐久間歯科医院 院長 佐久間 克哉
【略歴】
1982年神奈川歯科大学卒業。歯学博士。昭和大学客員教授、2003年〜2017年総合診療歯科学講座、2018年〜歯科放射線学講座。日本歯科医学会評議員。
【所属学会】
日本歯内療法学会 専門医・日本顎咬合学会 認定医・日本歯科放射線学会 会員・日本臨床歯周療法集談会 会員
・基本的かつ高い技術力が求められる「歯内療法」、歯科専門医制度における位置づけとは
“歯の痛み”に対処する部門が「歯内療法」です。痛む歯を鎮静させて神経を保護したり、神経を取って除痛したり……細い神経の通路(根管)を治療し噛めるように機能を回復していく、これらは全て「歯内療法」の受け持つ範囲です。基本的な治療であるものの難易度が高く、治療の成功率を上げるには高い技術が必要とされています。
また、患者さんや生活者に再治療のない歯内療法を実践することで国民医療費を抑制し、長期にわたり健康を維持できる機能を提供することが歯内療法の目的でもあります。歯科専門医制度において基本治療となる重要な位置づけと考えています。
・歯内療法は「歯科保存」のひとつという捉え方もできるが、独自で学会や専門医制度を敷いていることの意義は
日本で唯一、歯内療法に“特化”している学会は「日本歯内療法学会」だけです。グローバルスタンダードを実践できる歯科医師を多く輩出し、日本の歯科医療における歯内療法の底上げを図ることが当学会の目的であり、存在意義だと考えています。
・新たな専門医制度において、歯内療法学会としての目的は達成されるか
今はまだ、新しい専門医制度は完成されておらず、各学会が目的達成のため意見を出し合っている段階です。今後の制度構築を見て評価されると思いますので、機構の動向に注目しています。
・患者さんが自分の症状にあった、適切な治療を受けるために必要なことは何か
どんな症状のときにどの歯科医院にかかればよいのか……受診に困った際、患者さんや生活者がすみやかに専門医にアクセスできる方法の確立だと考えており、日本歯科専門医機構にもわかりやすいアクセスの方法の構築をお願いしております。
また、歯内療法に関する情報発信も当学会としての責務と考えます。患者さんや生活者の目線にもとづいた“わかりやすさ” を念頭に置いた情報発信を、今後目指していきます。