ミトコンドリアDNAの細胞質への漏出がパーキンソン病モデルにおける神経変性に関与
[21/05/27]
提供元:共同通信PRワイヤー
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新潟大学脳研究所脳病態解析分野の松井秀彰教授、同研究所病理学分野の柿田明美教授、同研究所脳神経内科学分野 兼 同研究所所長の小野寺理教授らの研究グループは、ミトコンドリアDNA(※1)が細胞質に漏出することで炎症反応や細胞死、神経変性が惹起されていることを培養細胞や小型魚類などの様々なパーキンソン病モデルで明らかにしました。また、そのミトコンドリアDNAの細胞質漏出のセンサー阻害や細胞質ミトコンドリアDNAの分解促進により、その病的な状態が改善することを見出しました。
このパーキンソン病の新しい病態メカニズムに関する研究成果が、Nature Communications誌に2021年5月25日(日本時間)に掲載されました。
【本研究成果のポイント】
・パーキンソン病の状態を模した培養細胞やゼブラフィッシュでは、ミトコンドリアDNAが細胞質に漏出していることを明らかにした。
・細胞質に漏出したミトコンドリアDNAのセンサーを阻害することや細胞質ミトコンドリアDNAの分解を促進することにより、炎症反応や神経変性が改善することを示した。
・ヒトパーキンソン病剖検脳でも細胞質に漏出したミトコンドリアDNAやそのセンサーであるIFI16(※2)の蓄積を認めた。
?.研究の背景
パーキンソン病は運動障害やそれ以外の多彩な症状を呈する神経難病の1つであり、未だにその病態には不明な点が多く残されています。パーキンソン病の病態にミトコンドリア機能障害やリソソーム(※3)機能障害が関わっていることは以前より示唆されてきましたが、その詳細なメカニズムはわかっていませんでした。
?.研究の概要・成果
本研究では、リソソーム中のDNase II(※4)などによる分解から逃れたミトコンドリア由来の細胞質DNAが、パーキンソン病を模す培養細胞およびゼブラフィッシュにおいて細胞毒性および神経変性を誘導することを報告しました。培養細胞ではパーキンソン病に関連する遺伝子であるPINK1、GBA、またはATP13A2(※5)の減少は、ミトコンドリア由来の細胞質DNAの増加を引き起こし、I型インターフェロン応答(※6)と細胞死を誘導しました。これらの表現型は、DNAを分解するリソソーム内のDNA分解酵素であるDNase IIの過剰発現、またはミトコンドリアDNAのセンサーとして機能するIFI16の減少によって改善しました。パーキンソン病モデルとして用いられるゼブラフィッシュの1つであるgba変異体においても、ヒトDNase IIを過剰発現させることにより、その運動障害とドーパミン作動性神経の変性が改善されました。IFI16およびミトコンドリア由来の細胞質DNAは、パーキンソン病患者の剖検脳の病変部位において蓄積を認めました。
以上の結果は、ミトコンドリアDNAの細胞質への漏出がパーキンソン病の神経変性の重要な原因となる可能性を示唆しています(図)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202105275472-O1-44995QqM】
図: 本研究成果から考えられるパーキンソン病の病態仮説
?.今後の展開
細胞質に漏出したミトコンドリアDNAの分解、あるいはそのミトコンドリアDNAセンサーの阻害が、パーキンソン病の治療につながる可能性があります。またパーキンソン病以外の疾患でも同様のメカニズムが存在する可能性があり、引き続き検証を進めます。
?.研究成果の公表
これらの研究成果は、2021年5月25日(日本時間)、Nature Communications誌に掲載されました。
論文タイトル:Cytosolic dsDNA of mitochondrial origin induces cytotoxicity and neurodegeneration in cellular and zebrafish models of Parkinson’s disease
著者:Hideaki Matsui, Junko Ito, Noriko Matsui, Tamayo Uechi, Osamu Onodera, and Akiyoshi Kakita
doi: 10.1038/s41467-021-23452-x
?.本研究への支援
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(PRIME)「全ライフコースを対象とした個体の機能低下機構の解明」研究開発領域、日本医療研究開発機構(AMED)の脳科学研究戦略推進プログラム事業、JSPS科研費、公益財団法人科学振興財団、武田薬品工業株式会社の支援を受けて実施しました。
?.用語解説
※1 ミトコンドリアDNA:細胞の中の細胞内小器官であるミトコンドリア内に存在するDNA
※2 IFI16:外部から細胞に侵入した微生物のDNAを認識するセンサーの役割を果たしていると言われているタンパク質
※3 リソソーム:細胞の中にある細胞内小器官で様々なものを分解する機能を持つ
※4 DNase II:DNAを分解する酵素の1つでリソソームに存在する
※5 PINK1、GBA、またはATP13A2:PINK1やATP13A2の変異は家族性パーキンソン病の原因の1つであり、GBAの変異はパーキンソン病の危険因子の1つである
※6 I型インターフェロン応答:IFNαやIFNβを中心とした免疫応答
このパーキンソン病の新しい病態メカニズムに関する研究成果が、Nature Communications誌に2021年5月25日(日本時間)に掲載されました。
【本研究成果のポイント】
・パーキンソン病の状態を模した培養細胞やゼブラフィッシュでは、ミトコンドリアDNAが細胞質に漏出していることを明らかにした。
・細胞質に漏出したミトコンドリアDNAのセンサーを阻害することや細胞質ミトコンドリアDNAの分解を促進することにより、炎症反応や神経変性が改善することを示した。
・ヒトパーキンソン病剖検脳でも細胞質に漏出したミトコンドリアDNAやそのセンサーであるIFI16(※2)の蓄積を認めた。
?.研究の背景
パーキンソン病は運動障害やそれ以外の多彩な症状を呈する神経難病の1つであり、未だにその病態には不明な点が多く残されています。パーキンソン病の病態にミトコンドリア機能障害やリソソーム(※3)機能障害が関わっていることは以前より示唆されてきましたが、その詳細なメカニズムはわかっていませんでした。
?.研究の概要・成果
本研究では、リソソーム中のDNase II(※4)などによる分解から逃れたミトコンドリア由来の細胞質DNAが、パーキンソン病を模す培養細胞およびゼブラフィッシュにおいて細胞毒性および神経変性を誘導することを報告しました。培養細胞ではパーキンソン病に関連する遺伝子であるPINK1、GBA、またはATP13A2(※5)の減少は、ミトコンドリア由来の細胞質DNAの増加を引き起こし、I型インターフェロン応答(※6)と細胞死を誘導しました。これらの表現型は、DNAを分解するリソソーム内のDNA分解酵素であるDNase IIの過剰発現、またはミトコンドリアDNAのセンサーとして機能するIFI16の減少によって改善しました。パーキンソン病モデルとして用いられるゼブラフィッシュの1つであるgba変異体においても、ヒトDNase IIを過剰発現させることにより、その運動障害とドーパミン作動性神経の変性が改善されました。IFI16およびミトコンドリア由来の細胞質DNAは、パーキンソン病患者の剖検脳の病変部位において蓄積を認めました。
以上の結果は、ミトコンドリアDNAの細胞質への漏出がパーキンソン病の神経変性の重要な原因となる可能性を示唆しています(図)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202105275472-O1-44995QqM】
図: 本研究成果から考えられるパーキンソン病の病態仮説
?.今後の展開
細胞質に漏出したミトコンドリアDNAの分解、あるいはそのミトコンドリアDNAセンサーの阻害が、パーキンソン病の治療につながる可能性があります。またパーキンソン病以外の疾患でも同様のメカニズムが存在する可能性があり、引き続き検証を進めます。
?.研究成果の公表
これらの研究成果は、2021年5月25日(日本時間)、Nature Communications誌に掲載されました。
論文タイトル:Cytosolic dsDNA of mitochondrial origin induces cytotoxicity and neurodegeneration in cellular and zebrafish models of Parkinson’s disease
著者:Hideaki Matsui, Junko Ito, Noriko Matsui, Tamayo Uechi, Osamu Onodera, and Akiyoshi Kakita
doi: 10.1038/s41467-021-23452-x
?.本研究への支援
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(PRIME)「全ライフコースを対象とした個体の機能低下機構の解明」研究開発領域、日本医療研究開発機構(AMED)の脳科学研究戦略推進プログラム事業、JSPS科研費、公益財団法人科学振興財団、武田薬品工業株式会社の支援を受けて実施しました。
?.用語解説
※1 ミトコンドリアDNA:細胞の中の細胞内小器官であるミトコンドリア内に存在するDNA
※2 IFI16:外部から細胞に侵入した微生物のDNAを認識するセンサーの役割を果たしていると言われているタンパク質
※3 リソソーム:細胞の中にある細胞内小器官で様々なものを分解する機能を持つ
※4 DNase II:DNAを分解する酵素の1つでリソソームに存在する
※5 PINK1、GBA、またはATP13A2:PINK1やATP13A2の変異は家族性パーキンソン病の原因の1つであり、GBAの変異はパーキンソン病の危険因子の1つである
※6 I型インターフェロン応答:IFNαやIFNβを中心とした免疫応答