オムロン サイニックエックス、機械学習分野におけるトップレベルの国際会議「ICML2021」に研究論文が採択
[21/07/13]
提供元:共同通信PRワイヤー
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〜自動走行ロボットなどの経路計画性能を飛躍的に向上させる経路探索アルゴリズムを開発〜
2021年7月13日
オムロン株式会社
イノベーション推進本部
エンゲージメント・コミュニケーション部
TEL:0774-74-2010
オムロン株式会社(本社:京都市下京区、代表取締役社長CEO:山田義仁)の子会社として近未来デザインの創出を目指す、オムロン サイニックエックス株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:諏訪正樹、以下OSX)のプリンシパルインベスティゲーターの米谷竜、シニアリサーチャーの谷合竜典(以下、米谷・谷合)らの研究グループは、自動走行ロボットなどが移動経路を計画するアルゴリズムにAIの技術領域の一つである機械学習を用いることで、飛躍的に経路計画性能を向上させる経路探索アルゴリズムを開発しました。本アルゴリズムでは、過去の経路計画から学習により経路を導き出すことで、経路計画に必要な移動環境の認識や経路探索の効率を向上させることができます。本研究の詳細は、7月18日より開催される機械学習分野における国際会議「International Conference on Machine Learning (以下、ICML) 2021」にて発表を行います。
「ICML」は世界中の研究者が参加し議論が行われる国際会議で、「NeurIPS*1」「ICLR*2」とならび、機械学習分野において国際的に権威のあるトップカンファレンスの一つです。2021年は5,000件を超える投稿の中から、およそ22%の論文が採択されています。
*1:Neural Information Processing Systems
*2:International Conference on Learning Representations
■研究の背景
近年、新型コロナウイルス感染症の拡大などで人々の生活様式が大きく変化し、人と人との接触や密を回避するために、自律移動ロボットによる配達や消毒など、さまざまな検証が行われています。また、人手不足の深刻化によりモノの搬送などにおいても、最終拠点からエンドユーザーまでのラストワンマイルを自動で搬送する研究が多く行われています。
そのような場面で、自律移動ロボットは目的地に到達するために、多様な環境において移動経路を導き出し、ロボット自らが意思決定を行って走行する必要があります。周囲の障害物などに接触することなく、安定して最短経路で目的地へ到達するためには、この移動経路を正確かつ効率的に見つける経路計画が重要です。
これまでに、様々な経路計画アルゴリズムの研究がおこなわれています。その中でもA*(A-Star, エースター)探索アルゴリズムを用いたアプローチは、スタート地点から目的地までの最短ルートを確実かつ効率的に探索できることから、活用、改良が進められてきました。さらに近年では、深層学習の技術を活用し、過去の経路計画の事例をロボットに学習させ、経路計画をさらに効率化する取り組みが進められています。しかしながら、このような深層学習を用いた手法は、経路計画により得られる経路の最適性、経路計画の効率性などの性能に課題がありました。
■研究の概要
このような課題に対して、米谷・谷合らの研究グループではA*探索のアルゴリズムを発展させ、深層ニューラルネットワーク*3の一部として利用可能な「微分可能A*探索」を世界に先駆けて提案し、経路計画の性能を飛躍的に向上させることに成功しました。
*3:深層ニューラルネットワークとは、ヒトの脳の仕組みを模した数理モデル(ニューラルネットワーク)を多層に重ねたものです。
<採択された論文情報>
論文タイトル:「Path Planning using Neural A* Search」
著者:米谷 竜(OSX)、谷合 竜典(OSX)、Mohammadamin Barekatain(2019年から2020年の間OSXインターン)、西村 真衣(OSX)、金崎 朝子(東京工業大学、OSX技術アドバイザ)
開発した技術の特長は、以下の通りです。
深層ニューラルネットワークの一部として利用可能な「微分可能A*探索」を開発
今回採択された論文では、経路計画において用いられるA*探索アルゴリズムを、深層学習で広く用いられる誤差逆伝播法*4が利用できる形式「微分可能A*探索」として新たに定式化しました。これにより、ニューラルネットワークを構成する一つのモジュールとしてA*探索アルゴリズムを利用し、与えられた問題に対して期待される経路を効率よく導き出すネットワークとして学習できるようになりました。
*4:誤差逆伝播法とは、機械学習において、ニューラルネットワークの出力と教師データとの誤差を最小化するように、ニューラルネットワークを学習させるアルゴリズムです。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202107137582-O2-H5hWx0Oq】 提案手法の概要
経路計画における最適性と効率のトレードオフを大幅に改善
経路計画において、与えられた環境での最適な経路を導出するためには、その環境で進むことが可能な経路を広範囲に探索する必要性が発生し、両者のトレードオフが課題となります。提案した微分可能A*探索を用いた深層ニューラルネットワークでは、経路計画における問題とその解法の関係性を学習できるようになります。これにより、経路計画におけるベンチマークテストにおいて、最短経路探索にかかる探索効率を従来手法から大幅に改善させることに成功しました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202107137582-O3-Qh5GTeE6】 ベンチマークによる性能検証結果
・黒色が障害物を表し、灰色の中でスタート地点からゴール地点までの経路探索を行います。
・赤が経路探索結果を示しており、従来手法に比べ最適な経路で探索できていることが分かります。
・緑が探索をおこなった領域を示しており、緑の範囲が少ないほど、探索効率が高いことを表すため、A*探索および従来手法よりも探索効率が高いことが分かります。
従来手法1:最良優先探索法
従来手法2:Choudhury, S., Bhardwaj, M., Arora, S., Kapoor, A., Ranade, G., Scherer, S., and Dey, D. Data-driven planning via imitation learning. The International Journal of Robotics Research (IJRR), 37(13-14):1632?1672, 2018.
実画像を用いた経路計画の実現
通常のA*探索アルゴリズムでは、環境中のどこが走行可能でどこが走行不可能であるかを認識し、あらかじめロボットに知らせる必要がありました。これに対して提案手法では、カメラ等で撮影した実画像とその中を歩く人間の移動経路のデータを学習することにより、実画像における道路や建物の領域といった詳細な環境情報を与えることなく、人間の歩行軌跡と同等の経路を計画できるようになりました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202107137582-O4-1ad4eve5】 実画像での検証結果 (スタート地点から道路に沿って緑色の樹木を迂回し、ゴール地点へ到達することが正解の移動軌跡)
今回開発した技術は、ロボットがカメラを通した環境の観察に基づいて人や障害物などを自ら判断し、それらを回避しながら移動するために有効な技術です。今後は、実際の自律移動型ロボットでの検証を進めていくとともに、さらなる精度向上を目指していきます。また、さまざまな研究機関とのオープンイノベーションによる共創を引き続き行いながら、研究を通じて社会的課題を解決しソーシャルニーズの創造を目指してまいります。
オムロン サイニックエックス株式会社について
オムロン サイニックエックス株式会社は、オムロンの考える"近未来デザイン"を創出する戦略拠点です。「AI」「ロボティクス」「IoT」「センシング」など、幅広い領域の最先端技術のトップ人財が研究員として在籍し、社会的課題を解決するために、技術革新をベースに「ビジネスモデル」「技術戦略」「知財戦略」を統合し具体的な事業アーキテクチャに落とし込んだ"近未来デザイン"を創り出します。また、大学や社外研究機関との共同研究を通じて「近未来デザイン」の創出を加速していきます。詳細については、https://www.omron.com/sinicx/をご参照ください。
■本件に関するお問い合わせ先
オムロン株式会社 イノベーション推進本部
エンゲージメント・コミュニケーション部 荻野 裕貴
TEL: 0774-74-2010
E-mail: rndpnp-omron-JML@omron.com
2021年7月13日
オムロン株式会社
イノベーション推進本部
エンゲージメント・コミュニケーション部
TEL:0774-74-2010
オムロン株式会社(本社:京都市下京区、代表取締役社長CEO:山田義仁)の子会社として近未来デザインの創出を目指す、オムロン サイニックエックス株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:諏訪正樹、以下OSX)のプリンシパルインベスティゲーターの米谷竜、シニアリサーチャーの谷合竜典(以下、米谷・谷合)らの研究グループは、自動走行ロボットなどが移動経路を計画するアルゴリズムにAIの技術領域の一つである機械学習を用いることで、飛躍的に経路計画性能を向上させる経路探索アルゴリズムを開発しました。本アルゴリズムでは、過去の経路計画から学習により経路を導き出すことで、経路計画に必要な移動環境の認識や経路探索の効率を向上させることができます。本研究の詳細は、7月18日より開催される機械学習分野における国際会議「International Conference on Machine Learning (以下、ICML) 2021」にて発表を行います。
「ICML」は世界中の研究者が参加し議論が行われる国際会議で、「NeurIPS*1」「ICLR*2」とならび、機械学習分野において国際的に権威のあるトップカンファレンスの一つです。2021年は5,000件を超える投稿の中から、およそ22%の論文が採択されています。
*1:Neural Information Processing Systems
*2:International Conference on Learning Representations
■研究の背景
近年、新型コロナウイルス感染症の拡大などで人々の生活様式が大きく変化し、人と人との接触や密を回避するために、自律移動ロボットによる配達や消毒など、さまざまな検証が行われています。また、人手不足の深刻化によりモノの搬送などにおいても、最終拠点からエンドユーザーまでのラストワンマイルを自動で搬送する研究が多く行われています。
そのような場面で、自律移動ロボットは目的地に到達するために、多様な環境において移動経路を導き出し、ロボット自らが意思決定を行って走行する必要があります。周囲の障害物などに接触することなく、安定して最短経路で目的地へ到達するためには、この移動経路を正確かつ効率的に見つける経路計画が重要です。
これまでに、様々な経路計画アルゴリズムの研究がおこなわれています。その中でもA*(A-Star, エースター)探索アルゴリズムを用いたアプローチは、スタート地点から目的地までの最短ルートを確実かつ効率的に探索できることから、活用、改良が進められてきました。さらに近年では、深層学習の技術を活用し、過去の経路計画の事例をロボットに学習させ、経路計画をさらに効率化する取り組みが進められています。しかしながら、このような深層学習を用いた手法は、経路計画により得られる経路の最適性、経路計画の効率性などの性能に課題がありました。
■研究の概要
このような課題に対して、米谷・谷合らの研究グループではA*探索のアルゴリズムを発展させ、深層ニューラルネットワーク*3の一部として利用可能な「微分可能A*探索」を世界に先駆けて提案し、経路計画の性能を飛躍的に向上させることに成功しました。
*3:深層ニューラルネットワークとは、ヒトの脳の仕組みを模した数理モデル(ニューラルネットワーク)を多層に重ねたものです。
<採択された論文情報>
論文タイトル:「Path Planning using Neural A* Search」
著者:米谷 竜(OSX)、谷合 竜典(OSX)、Mohammadamin Barekatain(2019年から2020年の間OSXインターン)、西村 真衣(OSX)、金崎 朝子(東京工業大学、OSX技術アドバイザ)
開発した技術の特長は、以下の通りです。
深層ニューラルネットワークの一部として利用可能な「微分可能A*探索」を開発
今回採択された論文では、経路計画において用いられるA*探索アルゴリズムを、深層学習で広く用いられる誤差逆伝播法*4が利用できる形式「微分可能A*探索」として新たに定式化しました。これにより、ニューラルネットワークを構成する一つのモジュールとしてA*探索アルゴリズムを利用し、与えられた問題に対して期待される経路を効率よく導き出すネットワークとして学習できるようになりました。
*4:誤差逆伝播法とは、機械学習において、ニューラルネットワークの出力と教師データとの誤差を最小化するように、ニューラルネットワークを学習させるアルゴリズムです。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202107137582-O2-H5hWx0Oq】 提案手法の概要
経路計画における最適性と効率のトレードオフを大幅に改善
経路計画において、与えられた環境での最適な経路を導出するためには、その環境で進むことが可能な経路を広範囲に探索する必要性が発生し、両者のトレードオフが課題となります。提案した微分可能A*探索を用いた深層ニューラルネットワークでは、経路計画における問題とその解法の関係性を学習できるようになります。これにより、経路計画におけるベンチマークテストにおいて、最短経路探索にかかる探索効率を従来手法から大幅に改善させることに成功しました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202107137582-O3-Qh5GTeE6】 ベンチマークによる性能検証結果
・黒色が障害物を表し、灰色の中でスタート地点からゴール地点までの経路探索を行います。
・赤が経路探索結果を示しており、従来手法に比べ最適な経路で探索できていることが分かります。
・緑が探索をおこなった領域を示しており、緑の範囲が少ないほど、探索効率が高いことを表すため、A*探索および従来手法よりも探索効率が高いことが分かります。
従来手法1:最良優先探索法
従来手法2:Choudhury, S., Bhardwaj, M., Arora, S., Kapoor, A., Ranade, G., Scherer, S., and Dey, D. Data-driven planning via imitation learning. The International Journal of Robotics Research (IJRR), 37(13-14):1632?1672, 2018.
実画像を用いた経路計画の実現
通常のA*探索アルゴリズムでは、環境中のどこが走行可能でどこが走行不可能であるかを認識し、あらかじめロボットに知らせる必要がありました。これに対して提案手法では、カメラ等で撮影した実画像とその中を歩く人間の移動経路のデータを学習することにより、実画像における道路や建物の領域といった詳細な環境情報を与えることなく、人間の歩行軌跡と同等の経路を計画できるようになりました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202107137582-O4-1ad4eve5】 実画像での検証結果 (スタート地点から道路に沿って緑色の樹木を迂回し、ゴール地点へ到達することが正解の移動軌跡)
今回開発した技術は、ロボットがカメラを通した環境の観察に基づいて人や障害物などを自ら判断し、それらを回避しながら移動するために有効な技術です。今後は、実際の自律移動型ロボットでの検証を進めていくとともに、さらなる精度向上を目指していきます。また、さまざまな研究機関とのオープンイノベーションによる共創を引き続き行いながら、研究を通じて社会的課題を解決しソーシャルニーズの創造を目指してまいります。
オムロン サイニックエックス株式会社について
オムロン サイニックエックス株式会社は、オムロンの考える"近未来デザイン"を創出する戦略拠点です。「AI」「ロボティクス」「IoT」「センシング」など、幅広い領域の最先端技術のトップ人財が研究員として在籍し、社会的課題を解決するために、技術革新をベースに「ビジネスモデル」「技術戦略」「知財戦略」を統合し具体的な事業アーキテクチャに落とし込んだ"近未来デザイン"を創り出します。また、大学や社外研究機関との共同研究を通じて「近未来デザイン」の創出を加速していきます。詳細については、https://www.omron.com/sinicx/をご参照ください。
■本件に関するお問い合わせ先
オムロン株式会社 イノベーション推進本部
エンゲージメント・コミュニケーション部 荻野 裕貴
TEL: 0774-74-2010
E-mail: rndpnp-omron-JML@omron.com