パブロフ条件反射の正体を発見
[21/08/05]
提供元:共同通信PRワイヤー
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司令ニューロンが操られることによって条件反射は起こる
2021年8月5日
国立研究開発法人情報通信研究機構
ポイント
■ パブロフ条件反射の脳内での仕組みを解明
■ 食べる行動を司令する細胞の情報処理変化が条件反射の行動変容をつくっていた
■ 確立した条件反射の実験系により、記憶時の細胞間がつながる様子のリアルタイム観察が可能になった
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)の吉原 基二郎 上席研究員と櫻井 晃 主任研究員らのグループは、未来ICT研究所神戸フロンティア研究センターにおいて、パブロフの条件反射の脳内での仕組みを解明しました。以前当グループによって発見されたショウジョウバエ脳内の摂食行動を引き起こす司令ニューロン(Nature, 2013)が、元々はつながっていなかった刺激に操られるようになって、条件反射が起こっていました。また、確立した条件反射の実験系により、細胞同士が記憶のためにつながる過程のリアルタイム観察が初めて可能になりました。つながり形成の仕組みを脳の記憶の基礎過程として知ることにより、脳の記憶の仕組みをまねた新しい知的情報処理のデザインを得ることが期待できます。
本成果は、2021年8月5日(木)0時(日本時間)に、米国科学雑誌「Current Biology」に掲載されました。
背景
未解明な脳内の記憶の仕組みが明らかになると、これまでよりも脳の機能に近い知的情報処理をデザインできます。そこで、NICT未来ICT研究所 神戸フロンティア研究センターでは、脳内情報通信のキーである記憶の基本原理を追求し、それを情報通信に応用する研究に取り組んでいます。
今回の成果
当グループは、今回、記憶の代表例であるパブロフ条件反射の脳内での仕組みを解明しました。
音とエサの二つの情報を連合するパブロフ条件反射は、一般によく知られていますが、その脳内の仕組みは不明のままでした。今回我々は、遺伝子操作によって特定の細胞で活動をモニターしたり特定の細胞の活動を操作したりできるショウジョウバエを用いました。また、当グループで開発した脳内を観察しながら同時に行動観察する実験方法を用いて、条件反射の脳内変化を追跡する実験を試みました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202108048537-O1-tdBm9079】
図1 条件反射の仕組み
司令ニューロンが操られて行動が引き起こされる。
その結果、ショウジョウバエの摂食行動を司令するコマンド(司令)ニューロン、 " フィーディング・ニューロン "による情報処理が変化することが、パブロフ条件反射の脳内での正体であることを明らかにしました。フィーディング・ニューロンは本来エサの刺激で活動します。ところが、イヌへの音刺激の代わりの " ハエがつかんでいた棒を離す " 刺激とエサの刺激を同時にハエに与えることを繰り返すと、 " 棒を離す " 刺激がフィーディング・ニューロンの活動を操るように変化しました。イヌの場合も同様に、摂食司令ニューロンに新しいつながりができて音の刺激で操られるようになることが条件反射の正体だと予想されます(図 1 参照)。さらに、この条件反射の実験系開発によって、 記憶を担う細胞のつながりをリアルタイムで観察することが可能になりました。
今後の展望
当グループは、現在、記憶を担う細胞のつながり(世界で初めて目撃されるエングラム=記憶の脳内実体)をリアルタイムで観察しています。また、この実験システムを使って、当グループから提唱された記憶の一般仮説、“ローカルフィードバック仮説(Science, 2005)”を検証することで、記憶の仕組みを解き明かすことが期待されます。
論文情報
掲載誌: Current Biology
DOI: 10.1016/j.cub.2021.07.021
論文名: Alteration in information flow through a pair of feeding command neurons underlies a form of Pavlovian conditioning in the Drosophila brain
著者: Akira Sakurai, J. Troy Littleton, Hiroaki Kojima, and Motojiro Yoshihara
2021年8月5日
国立研究開発法人情報通信研究機構
ポイント
■ パブロフ条件反射の脳内での仕組みを解明
■ 食べる行動を司令する細胞の情報処理変化が条件反射の行動変容をつくっていた
■ 確立した条件反射の実験系により、記憶時の細胞間がつながる様子のリアルタイム観察が可能になった
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)の吉原 基二郎 上席研究員と櫻井 晃 主任研究員らのグループは、未来ICT研究所神戸フロンティア研究センターにおいて、パブロフの条件反射の脳内での仕組みを解明しました。以前当グループによって発見されたショウジョウバエ脳内の摂食行動を引き起こす司令ニューロン(Nature, 2013)が、元々はつながっていなかった刺激に操られるようになって、条件反射が起こっていました。また、確立した条件反射の実験系により、細胞同士が記憶のためにつながる過程のリアルタイム観察が初めて可能になりました。つながり形成の仕組みを脳の記憶の基礎過程として知ることにより、脳の記憶の仕組みをまねた新しい知的情報処理のデザインを得ることが期待できます。
本成果は、2021年8月5日(木)0時(日本時間)に、米国科学雑誌「Current Biology」に掲載されました。
背景
未解明な脳内の記憶の仕組みが明らかになると、これまでよりも脳の機能に近い知的情報処理をデザインできます。そこで、NICT未来ICT研究所 神戸フロンティア研究センターでは、脳内情報通信のキーである記憶の基本原理を追求し、それを情報通信に応用する研究に取り組んでいます。
今回の成果
当グループは、今回、記憶の代表例であるパブロフ条件反射の脳内での仕組みを解明しました。
音とエサの二つの情報を連合するパブロフ条件反射は、一般によく知られていますが、その脳内の仕組みは不明のままでした。今回我々は、遺伝子操作によって特定の細胞で活動をモニターしたり特定の細胞の活動を操作したりできるショウジョウバエを用いました。また、当グループで開発した脳内を観察しながら同時に行動観察する実験方法を用いて、条件反射の脳内変化を追跡する実験を試みました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202108048537-O1-tdBm9079】
図1 条件反射の仕組み
司令ニューロンが操られて行動が引き起こされる。
その結果、ショウジョウバエの摂食行動を司令するコマンド(司令)ニューロン、 " フィーディング・ニューロン "による情報処理が変化することが、パブロフ条件反射の脳内での正体であることを明らかにしました。フィーディング・ニューロンは本来エサの刺激で活動します。ところが、イヌへの音刺激の代わりの " ハエがつかんでいた棒を離す " 刺激とエサの刺激を同時にハエに与えることを繰り返すと、 " 棒を離す " 刺激がフィーディング・ニューロンの活動を操るように変化しました。イヌの場合も同様に、摂食司令ニューロンに新しいつながりができて音の刺激で操られるようになることが条件反射の正体だと予想されます(図 1 参照)。さらに、この条件反射の実験系開発によって、 記憶を担う細胞のつながりをリアルタイムで観察することが可能になりました。
今後の展望
当グループは、現在、記憶を担う細胞のつながり(世界で初めて目撃されるエングラム=記憶の脳内実体)をリアルタイムで観察しています。また、この実験システムを使って、当グループから提唱された記憶の一般仮説、“ローカルフィードバック仮説(Science, 2005)”を検証することで、記憶の仕組みを解き明かすことが期待されます。
論文情報
掲載誌: Current Biology
DOI: 10.1016/j.cub.2021.07.021
論文名: Alteration in information flow through a pair of feeding command neurons underlies a form of Pavlovian conditioning in the Drosophila brain
著者: Akira Sakurai, J. Troy Littleton, Hiroaki Kojima, and Motojiro Yoshihara