News Letter Vol.3 新しい観光のパラダイム ニューノーマル時代の ライブエンターテインメント
[21/10/26]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
東洋大学 国際観光学部講師 八木京子
2021.10.26
東洋大学
News Letter Vol.3
新しい観光のパラダイム
ニューノーマル時代の
ライブエンターテインメント
東洋大学 国際観光学部講師 八木京子
2021年4月に行われた世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の年次総会で、グロリア・ゲバラ会長(当時)は「私たちは2019年には戻らない。前へ進む」と挨拶しました。
東洋大学国際観光学部では、「新しい観光のパラダイム」と題し、コロナ危機を乗り越え、ツーリズム産業を前に進めるための手掛かりを示すコンテンツを連載していきます。テーマは「IR」「SDGs」「ライブエンターテインメント」「国際交流の復活」の4つです。本学部ではこれからも、変化に対応し、時代を切り拓ける人材を育成していきます。
コロナ禍中のライブエンターテインメント
2020年4月18日、新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るうなか、「ワン・ワールド:トゥギャザー・アット・ホーム(One World:Together At Home)」と題した大型音楽イベントが開催されました。このイベントは、世界的人気アーティストのレディー・ガガが発起人となって、世界保健機関(WHO)と非営利団体グローバル・シティズンが主催し、新型コロナウイルス感染症と最前線で奮闘する医療従事者らを支援する目的で実現したものです。イベントにはレディー・ガガを筆頭に、ポール・マッカートニーやスティーヴィー・ワンダー、テイラー・スウィフト、ビリー・アイリッシュなどの世界を代表する音楽アーティストが多数参加し、大きな話題となりました。
特に注目を集めたのがイベントの運営方法で、世界各地にいる出演アーティストがそれぞれの自宅などでパフォーマンスを行って、その模様を全世界に向けてオンラインでライブ配信・生中継し、世界中の人々が自宅で視聴するというものでした。まさに、イベントのタイトル「自宅に居ながらにして、世界がひとつになる」を具現化したものとなり、世界中の人々が音楽を通してひとつになった瞬間でした。新型コロナウイルス感染症拡大を防ぐため、世界中の人々が“ステイホーム”を余儀なくされた状況下において、苦肉の策かつ唯一の方法だったと考えられますが、まさしくピンチを逆手にとってチャンスに変えた好例といえるでしょう。
パラダイムシフトはチャンスの宝庫
世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、音楽産業は最も大きな経済打撃を受けた産業の一つとなりました。特に、近年の音楽産業の主軸となっているライブやコンサート、音楽フェスティバルなどの「ライブエンターテインメント」市場への影響は深刻で、2020年の市場規模は日本国内で約779億円※1、世界全体では推定約48億米ドル※2となり、2019年の20%以下にまで落ち込みました。現在の音楽産業を取り巻く環境は非常に厳しいと言わざるを得ませんが、このような時だからこそ、逆境を機会へと変える力や発想の転換、つまり、人々の価値観や考え方などを劇的に変化させる「パラダイムシフト」が重要となります。「ワン・ワールド」のように、様々な環境の変化やそれに伴う課題も適切に対応することができれば、チャンスの宝庫と成り得るからです。さらに言えば、未曾有の事態が続く現在のような状況下のほうが、平常時では難しいパラダイムシフトを実現する可能性が高いとも考えられます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202110252187-O1-El2K67V0】
(c)SUMMER SONIC 2019
リアルとオンラインの兼備がカギ:新時代のライブエンターテインメント
日本最大級の動員数を誇る音楽フェスティバル「サマーソニック」は2020年11月、過去20年のアーカイブ映像を2日間にわたってオンラインでライブ配信する「オンライン開催」を実施し、日本に“ロック・フェス”の礎を築いた「フジロックフェスティバル」は2021年8月、例年よりも大幅に規模を縮小してリアル開催すると同時に、その模様をオンラインでライブ配信する「リアル×オンラインのハイブリッド開催」を行うなど、“ニューノーマル(新しい生活様式)”時代を見据えた新たな取り組みが進められています。
このように、今後は感染症対策をしっかりと行いながら、社会情勢や世論などの様々な外部環境の変化にも対応し、「リアル開催」と「オンライン開催」、さらに「ハイブリッド開催」をうまく組み合わせることによって、ニューノーマル時代に即した新しいライブエンターテインメントを構築していくことになるでしょう。また近年、地方自治体や地域コミュニティを中心に、イベントや音楽フェスティバルなどの誘致や運営を地域の交流人口の増加や賑わい創出へとつなげ、地域活性化を目指そうとする動きが日本各地で活発化していることから、ライブエンターテインメントにかかわる多様な人々による“連携”が、これまで以上に重要となってきます。同時に、今後は業界や業種の枠を超え、音楽に関わるすべての人々が協同しながら、豊かな音楽文化を創り上げていくことも求められるでしょう。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202110252187-O4-1JsY3M1H】
(c)SUMMER SONIC 2019
※注記
1 (一社)コンサートプロモーターズ協会「基礎調査推移表」より
2 The Goldman Sachs Group, Inc.「Music in the Air」より
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202110252187-O3-Zg4b0cDU】
八木京子
東洋大学国際観光学部 講師
専門分野: 経営学、マーケティング戦略論
研究キーワード:エンターテインメントビジネス、イベント、
音楽ビジネス、コンテンツツーリズム
2021.10.26
東洋大学
News Letter Vol.3
新しい観光のパラダイム
ニューノーマル時代の
ライブエンターテインメント
東洋大学 国際観光学部講師 八木京子
2021年4月に行われた世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の年次総会で、グロリア・ゲバラ会長(当時)は「私たちは2019年には戻らない。前へ進む」と挨拶しました。
東洋大学国際観光学部では、「新しい観光のパラダイム」と題し、コロナ危機を乗り越え、ツーリズム産業を前に進めるための手掛かりを示すコンテンツを連載していきます。テーマは「IR」「SDGs」「ライブエンターテインメント」「国際交流の復活」の4つです。本学部ではこれからも、変化に対応し、時代を切り拓ける人材を育成していきます。
コロナ禍中のライブエンターテインメント
2020年4月18日、新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るうなか、「ワン・ワールド:トゥギャザー・アット・ホーム(One World:Together At Home)」と題した大型音楽イベントが開催されました。このイベントは、世界的人気アーティストのレディー・ガガが発起人となって、世界保健機関(WHO)と非営利団体グローバル・シティズンが主催し、新型コロナウイルス感染症と最前線で奮闘する医療従事者らを支援する目的で実現したものです。イベントにはレディー・ガガを筆頭に、ポール・マッカートニーやスティーヴィー・ワンダー、テイラー・スウィフト、ビリー・アイリッシュなどの世界を代表する音楽アーティストが多数参加し、大きな話題となりました。
特に注目を集めたのがイベントの運営方法で、世界各地にいる出演アーティストがそれぞれの自宅などでパフォーマンスを行って、その模様を全世界に向けてオンラインでライブ配信・生中継し、世界中の人々が自宅で視聴するというものでした。まさに、イベントのタイトル「自宅に居ながらにして、世界がひとつになる」を具現化したものとなり、世界中の人々が音楽を通してひとつになった瞬間でした。新型コロナウイルス感染症拡大を防ぐため、世界中の人々が“ステイホーム”を余儀なくされた状況下において、苦肉の策かつ唯一の方法だったと考えられますが、まさしくピンチを逆手にとってチャンスに変えた好例といえるでしょう。
パラダイムシフトはチャンスの宝庫
世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、音楽産業は最も大きな経済打撃を受けた産業の一つとなりました。特に、近年の音楽産業の主軸となっているライブやコンサート、音楽フェスティバルなどの「ライブエンターテインメント」市場への影響は深刻で、2020年の市場規模は日本国内で約779億円※1、世界全体では推定約48億米ドル※2となり、2019年の20%以下にまで落ち込みました。現在の音楽産業を取り巻く環境は非常に厳しいと言わざるを得ませんが、このような時だからこそ、逆境を機会へと変える力や発想の転換、つまり、人々の価値観や考え方などを劇的に変化させる「パラダイムシフト」が重要となります。「ワン・ワールド」のように、様々な環境の変化やそれに伴う課題も適切に対応することができれば、チャンスの宝庫と成り得るからです。さらに言えば、未曾有の事態が続く現在のような状況下のほうが、平常時では難しいパラダイムシフトを実現する可能性が高いとも考えられます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202110252187-O1-El2K67V0】
(c)SUMMER SONIC 2019
リアルとオンラインの兼備がカギ:新時代のライブエンターテインメント
日本最大級の動員数を誇る音楽フェスティバル「サマーソニック」は2020年11月、過去20年のアーカイブ映像を2日間にわたってオンラインでライブ配信する「オンライン開催」を実施し、日本に“ロック・フェス”の礎を築いた「フジロックフェスティバル」は2021年8月、例年よりも大幅に規模を縮小してリアル開催すると同時に、その模様をオンラインでライブ配信する「リアル×オンラインのハイブリッド開催」を行うなど、“ニューノーマル(新しい生活様式)”時代を見据えた新たな取り組みが進められています。
このように、今後は感染症対策をしっかりと行いながら、社会情勢や世論などの様々な外部環境の変化にも対応し、「リアル開催」と「オンライン開催」、さらに「ハイブリッド開催」をうまく組み合わせることによって、ニューノーマル時代に即した新しいライブエンターテインメントを構築していくことになるでしょう。また近年、地方自治体や地域コミュニティを中心に、イベントや音楽フェスティバルなどの誘致や運営を地域の交流人口の増加や賑わい創出へとつなげ、地域活性化を目指そうとする動きが日本各地で活発化していることから、ライブエンターテインメントにかかわる多様な人々による“連携”が、これまで以上に重要となってきます。同時に、今後は業界や業種の枠を超え、音楽に関わるすべての人々が協同しながら、豊かな音楽文化を創り上げていくことも求められるでしょう。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202110252187-O4-1JsY3M1H】
(c)SUMMER SONIC 2019
※注記
1 (一社)コンサートプロモーターズ協会「基礎調査推移表」より
2 The Goldman Sachs Group, Inc.「Music in the Air」より
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202110252187-O3-Zg4b0cDU】
八木京子
東洋大学国際観光学部 講師
専門分野: 経営学、マーケティング戦略論
研究キーワード:エンターテインメントビジネス、イベント、
音楽ビジネス、コンテンツツーリズム