多孔質ナノ粒子の配列・配向制御
[22/09/21]
提供元:共同通信PRワイヤー
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世界で初めてアイステンプレート法による二次元超構造体の作製に成功
2022年9月21日
早稲田大学
詳細は早稲田大学WEBサイトをご覧ください⇒
発表のポイント
これまで、MOFナノ粒子超構造体の合成は極めて限られた方法のみに留まっており、実用化のためには方法の簡便化や合成法のスケールアップが望まれていた。
アイステンプレート法という低コスト、簡便かつ汎用性の高い手法を用いることで、MOFナノ粒子からなる超構造体を合成することに成功した。
超構造を持たないMOFナノ粒子由来の多孔質カーボン粒子と比べて、0.8 V vs. RHEにおいて10倍も高い酸素還元電流を得ることを達成した。
早稲田大学でのJST-ERATO山内物質化学テクトニクスプロジェクトにおいて、同大各務記念材料技術研究所 山内悠輔(やまうちゆうすけ) 客員上級研究員(客員研究院教授)(クイーンズランド大学 化学工学科/オーストラリア生物工学ナノテクノロジー研究所 教授)、同大各務記念材料技術研究所 奈良洋希(ならひろき)招聘研究員(物質・材料研究機構 NIMS特別研究員)、及び同大理工学術院 菅原義之(すがはらよしゆき)教授、らを中心とする国際共同研究チーム(以下、本研究チーム)は、水が凝固する過程で生じる濃縮という現象を利用したアイステンプレート法*1を用いて、金属と有機配位子からなる金属有機構造体(MOF)*2ナノ粒子を自己組織化現象によって、二次元的に配列させることで、新しい二次元超構造体*3の合成に成功しました。また、それらを前駆体として、炭化させることで、高い活性を有する電極触媒としての可能性を示しました。
これまで様々な金属、酸化物、硫化物といった単分散ナノ粒子をビルディングブロック*4とした超構造体が報告され、光学的、電子的、触媒的に特異な機能を発現することが示されてきました。これらのナノ粒子の集積化には、界面活性剤や鋳型などの添加や外部(磁界、電界など)の印加が必要とされてきました。一方で、これまでのナノ粒子とは異なり、MOFナノ粒子は、有機部位と無機部位を適切に組み合わせることで、細孔構造や表面機能を自由に調製可能な魅力的な物質です。しかしながら、MOFナノ粒子の超構造体の合成は極めて限られた方法のみに留まっており、それらの生成物の量や収率は低く、実用化のためには方法の簡便化や合成法のスケールアップが望まれていました。
本研究では、アイステンプレート法という低コスト、簡便かつ汎用性の高い手法によりMOFナノ粒子からなる超構造体を合成しました。本手法は、MOFナノ粒子の単分散水溶液の濃度を制御するだけで、単層や二層からなる二次元規則配列超構造体を選択的に合成することができました。また、その他様々なMOFナノ粒子やそれらの混合系においても、超構造体の合成が可能であることを見い出しました。
さらに、上記のMOFナノ粒子同士が隣接した二次元超構造体を前駆体とすることで、炭化処理により中空炭素ナノ粒子からなる超構造体への転換に成功しました。この中空構造、かつそれらの二次元配列は、物質拡散および電子伝導性の観点で大きな利点を有し、優れた酸素還元能を示すことを確認しています。アイステンプレート法というシンプルな手法は工業的にも魅力的であり、今後、MOFをはじめとする、あらゆる多孔質ナノ粒子からなる超構造体の派生につながると期待しています。
本研究の一部は、JST ERATO 山内物質空間テクトニクスプロジェクト(JPMJER2003)*5の一環として行われました。本研究成果は『Journal of American Chemical Society』誌にて2022年9月14日(現地時間)で掲載されました。
*1: アイステンプレート法
アイステンプレート法は、溶媒の凍結過程において、構造体を形成する物質が第二相へと分離することにより、構造体を形成することができ、その後、凍結乾燥により特異的な構造を得ることができます。
*2:金属有機構造体(Metal Organic Framework)
金属原子が有機配位子による架橋構造をもつ高い周期性を持つ結晶性化合物。金属と有機配位子の選択により細孔構造や比表面積、機能を設計可能で近年注目を集めている材料。
*3:超構造(Superstructure)
ナノ粒子が秩序を持って集合し、一次元、二次元、三次元状になった集合体構造。
*4:ビルディングブロック
ビルディングブロックは、最小の構成単位として利用することができ、それらの集合体を形成することで、特異的な形を有する材料を合成することができます。
*5:JST-ERATO山内物質空間テクトニクスプロジェクト
ERATOは、1981年に発足した創造科学技術推進事業を前身とする歴史あるプログラムです。既存の研究分野を超えた分野融合や新しいアプローチによって挑戦的な基礎研究を推進することで、今後の科学技術イノベーションの創出を先導する新しい科学技術の潮流の形成を促進し、戦略目標の達成に資することを目的としています。JST-ERATO山内物質空間テクトニクスプロジェクトは、2020年10月に採択され、2026年3月まで続く予定です。
雑誌名:Journal of American Chemical Society
論文名:Two-Dimensional Metal−Organic Framework Superstructures from Ice-Templated Self-Assembly
執筆者名(所属機関名):Yujie Song*f, Xiaokai Song*c,*d,*f, Xiaoke Wang*f, Jingzheng Bai*f, Fang Cheng*f, Chao Lin*e, Xin Wang*f, Hui Zhang*f, Jianhua Sun*f, Tiejun Zhao*g, Hiroki Nara*b,*c,*d, Yoshiyuki Sugahara*b, Xiaopeng Li*d, and Yusuke Yamauchi*a, *b,*c,*d
*a…豪州クイーンズランド大学、*b…早稲田大学、*c…物質・材料研究機構、*d…国際ナノアーキテクトニクス研究拠点、*e…Donghua University、*f…Jiangsu University of Technology、*g…Jiangsu JITRI-Topsoe Clean Energy Research and Development Co., Ltd
掲載日(現地時間):2022年9月14日(現地時間)
掲載URL:https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jacs.2c06109
DOI:https://doi.org/10.1021/jacs.2c06109
2022年9月21日
早稲田大学
詳細は早稲田大学WEBサイトをご覧ください⇒
発表のポイント
これまで、MOFナノ粒子超構造体の合成は極めて限られた方法のみに留まっており、実用化のためには方法の簡便化や合成法のスケールアップが望まれていた。
アイステンプレート法という低コスト、簡便かつ汎用性の高い手法を用いることで、MOFナノ粒子からなる超構造体を合成することに成功した。
超構造を持たないMOFナノ粒子由来の多孔質カーボン粒子と比べて、0.8 V vs. RHEにおいて10倍も高い酸素還元電流を得ることを達成した。
早稲田大学でのJST-ERATO山内物質化学テクトニクスプロジェクトにおいて、同大各務記念材料技術研究所 山内悠輔(やまうちゆうすけ) 客員上級研究員(客員研究院教授)(クイーンズランド大学 化学工学科/オーストラリア生物工学ナノテクノロジー研究所 教授)、同大各務記念材料技術研究所 奈良洋希(ならひろき)招聘研究員(物質・材料研究機構 NIMS特別研究員)、及び同大理工学術院 菅原義之(すがはらよしゆき)教授、らを中心とする国際共同研究チーム(以下、本研究チーム)は、水が凝固する過程で生じる濃縮という現象を利用したアイステンプレート法*1を用いて、金属と有機配位子からなる金属有機構造体(MOF)*2ナノ粒子を自己組織化現象によって、二次元的に配列させることで、新しい二次元超構造体*3の合成に成功しました。また、それらを前駆体として、炭化させることで、高い活性を有する電極触媒としての可能性を示しました。
これまで様々な金属、酸化物、硫化物といった単分散ナノ粒子をビルディングブロック*4とした超構造体が報告され、光学的、電子的、触媒的に特異な機能を発現することが示されてきました。これらのナノ粒子の集積化には、界面活性剤や鋳型などの添加や外部(磁界、電界など)の印加が必要とされてきました。一方で、これまでのナノ粒子とは異なり、MOFナノ粒子は、有機部位と無機部位を適切に組み合わせることで、細孔構造や表面機能を自由に調製可能な魅力的な物質です。しかしながら、MOFナノ粒子の超構造体の合成は極めて限られた方法のみに留まっており、それらの生成物の量や収率は低く、実用化のためには方法の簡便化や合成法のスケールアップが望まれていました。
本研究では、アイステンプレート法という低コスト、簡便かつ汎用性の高い手法によりMOFナノ粒子からなる超構造体を合成しました。本手法は、MOFナノ粒子の単分散水溶液の濃度を制御するだけで、単層や二層からなる二次元規則配列超構造体を選択的に合成することができました。また、その他様々なMOFナノ粒子やそれらの混合系においても、超構造体の合成が可能であることを見い出しました。
さらに、上記のMOFナノ粒子同士が隣接した二次元超構造体を前駆体とすることで、炭化処理により中空炭素ナノ粒子からなる超構造体への転換に成功しました。この中空構造、かつそれらの二次元配列は、物質拡散および電子伝導性の観点で大きな利点を有し、優れた酸素還元能を示すことを確認しています。アイステンプレート法というシンプルな手法は工業的にも魅力的であり、今後、MOFをはじめとする、あらゆる多孔質ナノ粒子からなる超構造体の派生につながると期待しています。
本研究の一部は、JST ERATO 山内物質空間テクトニクスプロジェクト(JPMJER2003)*5の一環として行われました。本研究成果は『Journal of American Chemical Society』誌にて2022年9月14日(現地時間)で掲載されました。
*1: アイステンプレート法
アイステンプレート法は、溶媒の凍結過程において、構造体を形成する物質が第二相へと分離することにより、構造体を形成することができ、その後、凍結乾燥により特異的な構造を得ることができます。
*2:金属有機構造体(Metal Organic Framework)
金属原子が有機配位子による架橋構造をもつ高い周期性を持つ結晶性化合物。金属と有機配位子の選択により細孔構造や比表面積、機能を設計可能で近年注目を集めている材料。
*3:超構造(Superstructure)
ナノ粒子が秩序を持って集合し、一次元、二次元、三次元状になった集合体構造。
*4:ビルディングブロック
ビルディングブロックは、最小の構成単位として利用することができ、それらの集合体を形成することで、特異的な形を有する材料を合成することができます。
*5:JST-ERATO山内物質空間テクトニクスプロジェクト
ERATOは、1981年に発足した創造科学技術推進事業を前身とする歴史あるプログラムです。既存の研究分野を超えた分野融合や新しいアプローチによって挑戦的な基礎研究を推進することで、今後の科学技術イノベーションの創出を先導する新しい科学技術の潮流の形成を促進し、戦略目標の達成に資することを目的としています。JST-ERATO山内物質空間テクトニクスプロジェクトは、2020年10月に採択され、2026年3月まで続く予定です。
雑誌名:Journal of American Chemical Society
論文名:Two-Dimensional Metal−Organic Framework Superstructures from Ice-Templated Self-Assembly
執筆者名(所属機関名):Yujie Song*f, Xiaokai Song*c,*d,*f, Xiaoke Wang*f, Jingzheng Bai*f, Fang Cheng*f, Chao Lin*e, Xin Wang*f, Hui Zhang*f, Jianhua Sun*f, Tiejun Zhao*g, Hiroki Nara*b,*c,*d, Yoshiyuki Sugahara*b, Xiaopeng Li*d, and Yusuke Yamauchi*a, *b,*c,*d
*a…豪州クイーンズランド大学、*b…早稲田大学、*c…物質・材料研究機構、*d…国際ナノアーキテクトニクス研究拠点、*e…Donghua University、*f…Jiangsu University of Technology、*g…Jiangsu JITRI-Topsoe Clean Energy Research and Development Co., Ltd
掲載日(現地時間):2022年9月14日(現地時間)
掲載URL:https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jacs.2c06109
DOI:https://doi.org/10.1021/jacs.2c06109