ナノスケールの箱庭でペプチド分子を集めた草原を作り,DNA分子を伸長しナノサイズの花を咲かせることに成功
[23/01/21]
提供元:共同通信PRワイヤー
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−生体適合性の高い新たなナノ材料として、その応用に期待−
2023年1月21日
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学
ナノスケールの箱庭でペプチド分子を集めた草原をつくり、DNA分子を伸長してナノサイズの花を咲かせることに成功 −生体適合性の高い新たなナノ材料として、その応用に期待−
【本研究のポイント】
・繊維状のナノ構造体であるナノファイバーを水中で自発的に形成し、ヒドロゲルを与える新たなペプチド分子を開発することに成功しました。
・ペプチド分子ナノファイバーがネットワーク化することで得られるヒドロゲルの中において、DNA分子を伸長させたDNAナノフラワーを構築できることを初めて実証しました。
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学工学部化学・生命工学科の池田 将 教授、岐阜大学大学院自然科学技術研究科生命科学・化学専攻 杉浦 進太郎 (修士1年(AGPコース)) さんらの研究グループは、名古屋大学大学院理学研究科の河野 慎一郎 講師と岐阜大学糖鎖生命コア研究所(iGCORE) 糖鎖分子科学研究センター(iGMOL) の鈴木健一教授らとの共同研究で、ペプチド注1)分子を集合させた繊維状のナノ構造体であるナノファイバー注2)と、DNAナノフラワー注3)と呼ばれる環状DNA分子から得られるフラワー状のナノ構造体を、水中かつ温和なプロセスで、それぞれの構成要素となる複数の分子を同一空間に共存させた混合状態から規則正しく組み立てることに成功しました。
本研究成果は、イギリスの王立化学会 (Royal Society of Chemistry, RSC) 刊行の学術雑誌「Nanoscale」のFront Coverに選ばれ、1月21日付出版号(2023年、15巻、3号)に掲載されました。Nanoscaleは、ナノテクノロジーとナノサイエンス分野における実験的・理論的研究をカバーする査読付きの学術雑誌です。
本研究成果を抽象的に表現すると、ナノスケールの箱庭で、自発的に集まるペプチド分子からナノサイズの草原を作り、DNA分子を伸長させてナノサイズの花を咲かせたと表現できるかもしれません。Front Coverに選ばれたCG (Computer Graphics) では、そのことを、岐阜県の県花でもある蓮華草(れんげそう)の花も用いて表現しています。なお、CGは本研究内容とイメージ案を元に、サイエンス・グラフィックス株式会社 辻野 貴志氏 によって制作されました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202301202275-O5-7Ix5G807】
今回の研究成果を、岐阜県の県花でもある蓮華草(れんげそう)の花を使って表現し、学術雑誌NanoscaleのFront Coverに選ばれたCG (Computer Graphics)
(Reproduced from Reference (doi:10.1039/D2NR04556G) with permission from the Royal Society of Chemistry.)
【研究成果について】
分子を規則正しく集合させることによって組み立てるナノスケールの構造体は、新しい材料開発につながるユニークで有用な機能や性質を秘めている可能性があります。本研究は、ペプチド分子から繊維状のナノ構造体である「ナノファイバー」と、環状のDNA分子からフラワー状のナノ構造体である「DNAナノフラワー」を、それぞれの構成要素となる複数種類の分子が同一空間に共存した混合溶液状態を出発にして、規則正しく作り出せることを実験的に証明した最初の例になります。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202301202275-O6-R6BrZlp4】
図1 ペプチド分子ナノファイバーとDNAナノフラワーを水中かつ体温程度の温和なプロセスで規則正しく組み立てる仕組みを示した模式図、および共存状態を可視化した蛍光顕微鏡画像(緑色部位がナノファイバーを、マゼンタ色部位がDNAナノフラワーの存在をそれぞれ可視化している)
本研究のように、複数種類のナノスケールの構造体を、その構成要素となる複数種類の分子の共存・混合状態から規則正しく組み立てる方法論は、学術的に未だ発展途上で、化学者に興味を持たれている研究対象の一つです。
【今後の展開】
今回開発された材料は、ヒドロゲルとよばれる95%以上が水でできている素材であるため生体適合性が高く(人の体は約60%が水とされています)、ペプチドやDNA、酵素など主に生体由来の分子を活用して水中かつ温和なプロセスで作り上げられているため材料開発の持続可能性も高いと期待されます。さらにナノ構造体としての特性も活かすことで、医療・化粧品用材料の開発分野における応用が期待できます。
【用語説明】
注1)ペプチド
数個のアミノ酸がアミド結合(ペプチド結合ともいう)で連結された生体分子です。医薬品や機能性食品としての研究が進んでいます。また、本研究のように、繊維状や球状などのナノ構造体をつくることに着眼した材料開発も進められています
注2)ナノファイバー
直径が数nmから数100 nmの繊維のことをナノファイバーと呼びます。構成要素となる物質に依存した特性を付与することが可能です。
注3)DNAナノフラワー
Mg(マグネシウム)イオンなどの金属イオン共存下において、環状DNAにDNAポリメラーゼ(DNA伸長酵素)を作用させる「ローリングサイクル増幅(RCA)と呼ばれる手法」によって得られるフラワー状のナノ構造体です。水中、37度の温和な条件でつくることが可能です。2010年代の初頭から研究開発が進んでおり、DNAナノフラワーそれ自身を薬物輸送キャリアーとして利用する研究も進んでいます。
【論文情報】
著者:Shintaro Sugiura, Yuki Shintani, Daisuke Mori, Sayuri L. Higashi, Aya Shibata, Yoshiaki Kitamura, Shin-ichiro Kawano, Koichiro M. Hirosawa, Kenichi G.N. Suzuki, Masato Ikeda
タイトル:Design of supramolecular hybrid nanomaterials comprising peptide-based supramolecular nanofibers and in situ generated DNA nanoflowers through rolling circle amplification
雑誌名:Nanoscale, 2023, 48, 1024-1031
DOI番号:10.1039/D2NR04556G
論文公開URL:
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2023/NR/D2NR04556G
表紙(Selected as front cover):
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2023/nr/d3nr90010j
【研究者情報】
教授 池田 将(責任著者)
岐阜大学 工学部 化学・生命工学科 生命化学コース
岐阜大学大学院 自然科学技術研究科 (兼任)
岐阜大学大学院 連合創薬医療情報研究科 (兼任)
岐阜大学 糖鎖生命コア研究所 (iGCORE) 糖鎖分子科学研究センター (iGMOL) (兼任)
岐阜大学 高等研究院 (GUiAS) One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター (COMIT) (兼任)
岐阜大学 高等研究院 (GUiAS) Guコンポジット研究センター (兼任)
名古屋大学 未来社会創造機構 ナノライフシステム研究所 (兼任)
杉浦 進太郎(筆頭著者)
岐阜大学大学院 自然科学技術研究科 生命科学・化学専攻 化学・創薬領域
修士1年 (AGPコース)
2023年1月21日
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学
ナノスケールの箱庭でペプチド分子を集めた草原をつくり、DNA分子を伸長してナノサイズの花を咲かせることに成功 −生体適合性の高い新たなナノ材料として、その応用に期待−
【本研究のポイント】
・繊維状のナノ構造体であるナノファイバーを水中で自発的に形成し、ヒドロゲルを与える新たなペプチド分子を開発することに成功しました。
・ペプチド分子ナノファイバーがネットワーク化することで得られるヒドロゲルの中において、DNA分子を伸長させたDNAナノフラワーを構築できることを初めて実証しました。
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学工学部化学・生命工学科の池田 将 教授、岐阜大学大学院自然科学技術研究科生命科学・化学専攻 杉浦 進太郎 (修士1年(AGPコース)) さんらの研究グループは、名古屋大学大学院理学研究科の河野 慎一郎 講師と岐阜大学糖鎖生命コア研究所(iGCORE) 糖鎖分子科学研究センター(iGMOL) の鈴木健一教授らとの共同研究で、ペプチド注1)分子を集合させた繊維状のナノ構造体であるナノファイバー注2)と、DNAナノフラワー注3)と呼ばれる環状DNA分子から得られるフラワー状のナノ構造体を、水中かつ温和なプロセスで、それぞれの構成要素となる複数の分子を同一空間に共存させた混合状態から規則正しく組み立てることに成功しました。
本研究成果は、イギリスの王立化学会 (Royal Society of Chemistry, RSC) 刊行の学術雑誌「Nanoscale」のFront Coverに選ばれ、1月21日付出版号(2023年、15巻、3号)に掲載されました。Nanoscaleは、ナノテクノロジーとナノサイエンス分野における実験的・理論的研究をカバーする査読付きの学術雑誌です。
本研究成果を抽象的に表現すると、ナノスケールの箱庭で、自発的に集まるペプチド分子からナノサイズの草原を作り、DNA分子を伸長させてナノサイズの花を咲かせたと表現できるかもしれません。Front Coverに選ばれたCG (Computer Graphics) では、そのことを、岐阜県の県花でもある蓮華草(れんげそう)の花も用いて表現しています。なお、CGは本研究内容とイメージ案を元に、サイエンス・グラフィックス株式会社 辻野 貴志氏 によって制作されました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202301202275-O5-7Ix5G807】
今回の研究成果を、岐阜県の県花でもある蓮華草(れんげそう)の花を使って表現し、学術雑誌NanoscaleのFront Coverに選ばれたCG (Computer Graphics)
(Reproduced from Reference (doi:10.1039/D2NR04556G) with permission from the Royal Society of Chemistry.)
【研究成果について】
分子を規則正しく集合させることによって組み立てるナノスケールの構造体は、新しい材料開発につながるユニークで有用な機能や性質を秘めている可能性があります。本研究は、ペプチド分子から繊維状のナノ構造体である「ナノファイバー」と、環状のDNA分子からフラワー状のナノ構造体である「DNAナノフラワー」を、それぞれの構成要素となる複数種類の分子が同一空間に共存した混合溶液状態を出発にして、規則正しく作り出せることを実験的に証明した最初の例になります。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202301202275-O6-R6BrZlp4】
図1 ペプチド分子ナノファイバーとDNAナノフラワーを水中かつ体温程度の温和なプロセスで規則正しく組み立てる仕組みを示した模式図、および共存状態を可視化した蛍光顕微鏡画像(緑色部位がナノファイバーを、マゼンタ色部位がDNAナノフラワーの存在をそれぞれ可視化している)
本研究のように、複数種類のナノスケールの構造体を、その構成要素となる複数種類の分子の共存・混合状態から規則正しく組み立てる方法論は、学術的に未だ発展途上で、化学者に興味を持たれている研究対象の一つです。
【今後の展開】
今回開発された材料は、ヒドロゲルとよばれる95%以上が水でできている素材であるため生体適合性が高く(人の体は約60%が水とされています)、ペプチドやDNA、酵素など主に生体由来の分子を活用して水中かつ温和なプロセスで作り上げられているため材料開発の持続可能性も高いと期待されます。さらにナノ構造体としての特性も活かすことで、医療・化粧品用材料の開発分野における応用が期待できます。
【用語説明】
注1)ペプチド
数個のアミノ酸がアミド結合(ペプチド結合ともいう)で連結された生体分子です。医薬品や機能性食品としての研究が進んでいます。また、本研究のように、繊維状や球状などのナノ構造体をつくることに着眼した材料開発も進められています
注2)ナノファイバー
直径が数nmから数100 nmの繊維のことをナノファイバーと呼びます。構成要素となる物質に依存した特性を付与することが可能です。
注3)DNAナノフラワー
Mg(マグネシウム)イオンなどの金属イオン共存下において、環状DNAにDNAポリメラーゼ(DNA伸長酵素)を作用させる「ローリングサイクル増幅(RCA)と呼ばれる手法」によって得られるフラワー状のナノ構造体です。水中、37度の温和な条件でつくることが可能です。2010年代の初頭から研究開発が進んでおり、DNAナノフラワーそれ自身を薬物輸送キャリアーとして利用する研究も進んでいます。
【論文情報】
著者:Shintaro Sugiura, Yuki Shintani, Daisuke Mori, Sayuri L. Higashi, Aya Shibata, Yoshiaki Kitamura, Shin-ichiro Kawano, Koichiro M. Hirosawa, Kenichi G.N. Suzuki, Masato Ikeda
タイトル:Design of supramolecular hybrid nanomaterials comprising peptide-based supramolecular nanofibers and in situ generated DNA nanoflowers through rolling circle amplification
雑誌名:Nanoscale, 2023, 48, 1024-1031
DOI番号:10.1039/D2NR04556G
論文公開URL:
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2023/NR/D2NR04556G
表紙(Selected as front cover):
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2023/nr/d3nr90010j
【研究者情報】
教授 池田 将(責任著者)
岐阜大学 工学部 化学・生命工学科 生命化学コース
岐阜大学大学院 自然科学技術研究科 (兼任)
岐阜大学大学院 連合創薬医療情報研究科 (兼任)
岐阜大学 糖鎖生命コア研究所 (iGCORE) 糖鎖分子科学研究センター (iGMOL) (兼任)
岐阜大学 高等研究院 (GUiAS) One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター (COMIT) (兼任)
岐阜大学 高等研究院 (GUiAS) Guコンポジット研究センター (兼任)
名古屋大学 未来社会創造機構 ナノライフシステム研究所 (兼任)
杉浦 進太郎(筆頭著者)
岐阜大学大学院 自然科学技術研究科 生命科学・化学専攻 化学・創薬領域
修士1年 (AGPコース)