尿酸値が高い状態で 血管の炎症反応が引き起こされるメカニズムの一部を示唆
[23/02/27]
提供元:共同通信PRワイヤー
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第56回 日本痛風・尿酸核酸学会総会にて 尿酸塩結晶が血管の細胞に与える影響の続報を発表
株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)および鳥取大学 医学部 ゲノム再生医学講座再生医療学分野の經遠 智一助教らの研究グループは、尿酸値が高い高尿酸血症の状態で生じる尿酸塩結晶※1が血管の細胞に与える影響に関する研究成果を、2023年2月23日〜24日に開催された「第56回 日本痛風・尿酸核酸学会総会」にて発表しました。本研究成果は「第55回 日本痛風・尿酸核酸学会総会」および「第51回 日本免疫学会学術集会」に続き、さらなる成果を追加した続報としての発表となります。
本研究により、血管に尿酸塩結晶が沈着すると、異物に反応する好中球※2などの免疫細胞がその沈着部分に集まるように促され、血管の炎症反応を引き起こす可能性が示唆されました。一連の研究から、高尿酸血症の状態が動脈硬化の直接的なリスク因子になり得ることがより強く示唆されました。
<研究成果の概要>
(1)尿酸値が高い状態が続くと形成される尿酸塩結晶は、血管の細胞に取り込まれることで細胞死を誘発し得ると示唆されました。
(2)尿酸値が高い状態で生存していた血管細胞でも、炎症に関わるさまざまな遺伝子の発現量が増加し、好中球などの免疫細胞を呼び寄せることで、血管組織の炎症反応が引き起こされる可能性が示唆されました。
なお当社ではこれまでに、尿酸塩結晶を添加した際の血管の細胞を顕微鏡で観察したところ、細胞が次々に死滅していく様子を確認しております。
https://www.meiji.co.jp/movie/corporate/pressrelease/2022/1213_01_urate_crystals.html
高尿酸血症がもたらす人への影響は、耳にすることが多い痛風だけにとどまらず、本研究で着目している動脈硬化や、メタボリックシンドローム、心臓病、腎臓病などのさまざまな疾患にもおよぶと報告されています。なお、研究段階ではありますが、高尿酸血症がCOVID-19の死亡危険因子の可能性があるという報告もあります※3。従って、尿酸値を正常な値に保つことは、多くの疾患を予防するためにも重要であると考えられます。
当社は今後もお客さまの健康維持のために有益な基礎的研究の知見を発信し、「meijiらしい健康価値」を提供してまいります。
※1 尿酸塩結晶:血中の尿酸が高濃度になり溶けきれなかった一部が結晶化したもの
※2 好中球:白血球の一種で、主に体内の異物を取り込み排除することで、免疫機能において重要な役割を有する
※3 https://doi.org/10.1016/j.jinf.2020.08.052
<発表内容>
【演題名】
「尿酸塩結晶がヒト血管内皮細胞へ与える影響の解析」
【背景と目的】
血中尿酸値が7 mg/dL(=70 ?g/mL)を超えた状態は高尿酸血症と呼ばれ、この状態が持続すると血中に溶けきれなかった尿酸が結晶化し、尿酸塩結晶として関節組織に沈着することで痛風の原因となります。近年では尿酸塩結晶が血管にも沈着することが明らかとなり、関節以外での尿酸塩結晶の影響が懸念されています。
そこで本研究では、高尿酸血症によって生じる尿酸塩結晶が血管の細胞に及ぼす影響を評価しました。
【方法】
(1)ヒト静脈内皮細胞とヒト大動脈内皮細胞に尿酸塩結晶を125 ?g/mLの濃度で添加し、3日後の細胞の状態を観察しました。
(2)ヒト静脈内皮細胞に尿酸塩結晶(125 ?g/mL)を添加して3日後に生細胞を分取し、遺伝子発現を網羅的に解析しました。一部の遺伝子については、PCR法を用いて遺伝子発現量の変化を確認しました。
【結果と考察】
(1)ヒトの静脈内皮細胞に尿酸塩結晶を125 ?g/mL添加すると、3日後には細胞内部の状態変化(複雑さの上昇)がみられ、細胞内に尿酸塩結晶が取り込まれていると推察されました。さらに一部の細胞が死滅しました。また、動脈硬化が起こる大動脈内皮細胞でも同様の結果が得られました(図1)。
(2)炎症・細胞遊走※4に関連する遺伝子群の発現量が非添加群に比べて2倍以上に増加していました。また好中球の遊走を促進する遺伝子CXCL1、CXCL2、CXCL8、多くの免疫細胞を炎症部位に誘導するCCL5、免疫細胞の接着を促進するCXCL10については、尿酸塩結晶添加で有意に発現量が増加することをPCR法により確認しました(図2)。これより尿酸塩結晶によって血管における細胞遊走、炎症が引き起こされる可能性が示唆されます。
【結論】
本研究成果より、高尿酸血症によって尿酸塩結晶が血管組織に沈着すると、以下の2つの側面から血管の細胞に直接的な影響をもたらし得ることが示唆されました。
(1)静脈・動脈などのさまざまな血管の細胞死を誘発し血管を損傷させる。
(2)細胞死を起こさないまでも、炎症に関わるさまざまな遺伝子の発現量が増加し、好中球を含めた多くの免疫細胞の遊走を介して細胞の炎症反応を引き起こす。
今回、動脈硬化が起こる大動脈の細胞において、尿酸塩結晶が血管の細胞死を誘発することが明らかとなりました。従ってヒトの体内において、高尿酸血症によって生じた尿酸塩結晶が大動脈の細胞の傷害を介して動脈硬化のリスク因子となり得ることがより強く示唆されました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202302243268-O6-59aUVlcJ】
図1:2種類の血管の内皮細胞への尿酸塩結晶添加における フローサイトメーターを用いた解析結果
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202302243268-O8-dml8uWjw】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202302243268-O9-geMytlNi】
図2:尿酸塩結晶添加時(125 ?g/mL)の遺伝子発現量
※4 遊走:細胞が炎症部位などの目的の場所に移動すること
株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)および鳥取大学 医学部 ゲノム再生医学講座再生医療学分野の經遠 智一助教らの研究グループは、尿酸値が高い高尿酸血症の状態で生じる尿酸塩結晶※1が血管の細胞に与える影響に関する研究成果を、2023年2月23日〜24日に開催された「第56回 日本痛風・尿酸核酸学会総会」にて発表しました。本研究成果は「第55回 日本痛風・尿酸核酸学会総会」および「第51回 日本免疫学会学術集会」に続き、さらなる成果を追加した続報としての発表となります。
本研究により、血管に尿酸塩結晶が沈着すると、異物に反応する好中球※2などの免疫細胞がその沈着部分に集まるように促され、血管の炎症反応を引き起こす可能性が示唆されました。一連の研究から、高尿酸血症の状態が動脈硬化の直接的なリスク因子になり得ることがより強く示唆されました。
<研究成果の概要>
(1)尿酸値が高い状態が続くと形成される尿酸塩結晶は、血管の細胞に取り込まれることで細胞死を誘発し得ると示唆されました。
(2)尿酸値が高い状態で生存していた血管細胞でも、炎症に関わるさまざまな遺伝子の発現量が増加し、好中球などの免疫細胞を呼び寄せることで、血管組織の炎症反応が引き起こされる可能性が示唆されました。
なお当社ではこれまでに、尿酸塩結晶を添加した際の血管の細胞を顕微鏡で観察したところ、細胞が次々に死滅していく様子を確認しております。
https://www.meiji.co.jp/movie/corporate/pressrelease/2022/1213_01_urate_crystals.html
高尿酸血症がもたらす人への影響は、耳にすることが多い痛風だけにとどまらず、本研究で着目している動脈硬化や、メタボリックシンドローム、心臓病、腎臓病などのさまざまな疾患にもおよぶと報告されています。なお、研究段階ではありますが、高尿酸血症がCOVID-19の死亡危険因子の可能性があるという報告もあります※3。従って、尿酸値を正常な値に保つことは、多くの疾患を予防するためにも重要であると考えられます。
当社は今後もお客さまの健康維持のために有益な基礎的研究の知見を発信し、「meijiらしい健康価値」を提供してまいります。
※1 尿酸塩結晶:血中の尿酸が高濃度になり溶けきれなかった一部が結晶化したもの
※2 好中球:白血球の一種で、主に体内の異物を取り込み排除することで、免疫機能において重要な役割を有する
※3 https://doi.org/10.1016/j.jinf.2020.08.052
<発表内容>
【演題名】
「尿酸塩結晶がヒト血管内皮細胞へ与える影響の解析」
【背景と目的】
血中尿酸値が7 mg/dL(=70 ?g/mL)を超えた状態は高尿酸血症と呼ばれ、この状態が持続すると血中に溶けきれなかった尿酸が結晶化し、尿酸塩結晶として関節組織に沈着することで痛風の原因となります。近年では尿酸塩結晶が血管にも沈着することが明らかとなり、関節以外での尿酸塩結晶の影響が懸念されています。
そこで本研究では、高尿酸血症によって生じる尿酸塩結晶が血管の細胞に及ぼす影響を評価しました。
【方法】
(1)ヒト静脈内皮細胞とヒト大動脈内皮細胞に尿酸塩結晶を125 ?g/mLの濃度で添加し、3日後の細胞の状態を観察しました。
(2)ヒト静脈内皮細胞に尿酸塩結晶(125 ?g/mL)を添加して3日後に生細胞を分取し、遺伝子発現を網羅的に解析しました。一部の遺伝子については、PCR法を用いて遺伝子発現量の変化を確認しました。
【結果と考察】
(1)ヒトの静脈内皮細胞に尿酸塩結晶を125 ?g/mL添加すると、3日後には細胞内部の状態変化(複雑さの上昇)がみられ、細胞内に尿酸塩結晶が取り込まれていると推察されました。さらに一部の細胞が死滅しました。また、動脈硬化が起こる大動脈内皮細胞でも同様の結果が得られました(図1)。
(2)炎症・細胞遊走※4に関連する遺伝子群の発現量が非添加群に比べて2倍以上に増加していました。また好中球の遊走を促進する遺伝子CXCL1、CXCL2、CXCL8、多くの免疫細胞を炎症部位に誘導するCCL5、免疫細胞の接着を促進するCXCL10については、尿酸塩結晶添加で有意に発現量が増加することをPCR法により確認しました(図2)。これより尿酸塩結晶によって血管における細胞遊走、炎症が引き起こされる可能性が示唆されます。
【結論】
本研究成果より、高尿酸血症によって尿酸塩結晶が血管組織に沈着すると、以下の2つの側面から血管の細胞に直接的な影響をもたらし得ることが示唆されました。
(1)静脈・動脈などのさまざまな血管の細胞死を誘発し血管を損傷させる。
(2)細胞死を起こさないまでも、炎症に関わるさまざまな遺伝子の発現量が増加し、好中球を含めた多くの免疫細胞の遊走を介して細胞の炎症反応を引き起こす。
今回、動脈硬化が起こる大動脈の細胞において、尿酸塩結晶が血管の細胞死を誘発することが明らかとなりました。従ってヒトの体内において、高尿酸血症によって生じた尿酸塩結晶が大動脈の細胞の傷害を介して動脈硬化のリスク因子となり得ることがより強く示唆されました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202302243268-O6-59aUVlcJ】
図1:2種類の血管の内皮細胞への尿酸塩結晶添加における フローサイトメーターを用いた解析結果
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202302243268-O8-dml8uWjw】
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図2:尿酸塩結晶添加時(125 ?g/mL)の遺伝子発現量
※4 遊走:細胞が炎症部位などの目的の場所に移動すること