米国エネルギー省が定める目標値の7倍を超える高耐久燃料電池用薄膜を開発
[23/07/27]
提供元:共同通信PRワイヤー
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芳香族系高分子電解質膜をフッ素系ナノファイバーで複合化し高性能と高耐久性の両立を実現
2023年7月27日
山梨大学
早稲田大学
信州大学
米国エネルギー省が定める目標値の7倍を超える高耐久燃料電池用薄膜を開発
― 芳香族系高分子電解質膜をフッ素系ナノファイバーで複合化し高性能と高耐久性の両立を実現 ―
詳細は 早稲田大学Webサイトをご覧ください。
【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M102172/202307267488/_prw_PT1fl_K58N2xBy.png】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307267488-O1-L2e45KeU】
図1:A. 本研究で開発した芳香族系のプロトン導電性高分子SPP-TFP-4.0の構造、B. エレクトロスピニング法によりナノファイバーシートにしたポリフッ化ビニリデンPVDFの構造、C. AとBを組み合わせて作製した複合膜(SPP-TFP-4.0-PVDF)
【研究概要】
山梨大学クリーンエネルギー研究センター・早稲田大学理工学術院の宮武 健治(みやたけけんじ)教授、信州大学学術研究院の金 翼水(きむいくす)教授、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構の刘 芳?(りゅうふぁんふぁ)次席研究員の研究グループは、酸性基を導入したプロトン導電性芳香族高分子(SPP-TFP-4.0)とエレクトロスピニング法(高分子溶液に高電圧を印加しながら射出してナノファイバーを作製する方法)でナノファイバーシート化したポリフッ化ビニリデン(PVDF)※1から複合電解質膜(SPP-TFP-4.0-PVDF)を作製しました。
この複合電解質膜を用いた固体高分子形燃料電池(PEFC)※2は、これまでの課題であった幅広い温度範囲(80〜120℃)および湿度範囲(相対湿度30〜120%)での高性能と、米国エネルギー省(US DOE)が定める加速耐久性試験(米国エネルギー省推奨試験)における2025年の目標値(20,000サイクル、次世代の燃料電池への搭載に求められる耐久性の指標)を大きく上回る高耐久性(148,870サイクル)を達成しました。
PEFCは主な構成材料としてプロトン導電性高分子電解質膜※3と電極触媒(主に白金や白金の合金を炭素粉末に担持させたものが用いられている)から成り立っており、燃料として水素、酸化剤として空気中の酸素を用いて発電することができます。常温から80℃程度の温度で効率よく発電でき、副生成物が水のみ(発電中に二酸化炭素や有害物質が発生しない)であることから、クリーンな発電デバイスとして注目を集めています。すでに電気自動車や家庭用電源として実用化が進められていますが、より広範な普及のためにはさらなる高性能化、高耐久化、低コスト化が課題です。本研究により、一般的なエンジニアリングプラスチックと同様の出発物質である比較的安価な材料から電解質膜が作製でき、これら課題の解決に大きく貢献できる可能性が示されました。
この成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務※4の結果、得られたのものです。
本研究成果は、2023年7月26日(水)午後2時(米国東部夏時間)に米国科学振興協会(AAAS)が発行するオンライン学術雑誌『Science Advances』で公開されました。
【論文情報】
雑誌名:Science Advances
論文名:Proton-conductive aromatic membranes reinforced with poly(vinylidene fluoride) nanofibers for high-performance durable fuel cells
DOI:10.1126/sciadv.adg9057
【用語解説】
※1 ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
熱可塑性の部分フッ素化樹脂の一つであり、図1Bの化学構造を持つ。耐熱性、機械強度に優れており、いくつかの有機溶媒にも可溶であるため溶融成型だけでなく、溶液から成型することもできる。
※2 固体高分子形燃料電池(PEFC)
PEFCはPolymer Electrolyte Fuel Cellの略称であり、負極と正極で高分子電解質膜を挟み、負極に水素、正極に酸素を供給して電気を発生させる電池。1つのセルでセル電圧(開回路電圧)は1.0V程度であり、実用的には積層(スタック)させて高電圧を得る。
※3 プロトン導電性高分子電解質膜
スルホン酸基などの強酸性基を含む高分子から成る膜。燃料電池や電解セル、センサーなどの電気化学デバイス用の固体電解質として用いられている。PEFCの用途としては、負極で発生したプロトン(水素イオン)を正極に運ぶ役割を担っており、プロトン導電性、ガスバリア性、機械強度、耐久性などの物性が必要である。
※4 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務
業務委託名称:燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業
プロジェクト名称:高効率・高出力・高耐久PEFCを実現する革新的材料の研究開発事業
研究分担者名(所属機関名):宮武 健治(山梨大学)
2023年7月27日
山梨大学
早稲田大学
信州大学
米国エネルギー省が定める目標値の7倍を超える高耐久燃料電池用薄膜を開発
― 芳香族系高分子電解質膜をフッ素系ナノファイバーで複合化し高性能と高耐久性の両立を実現 ―
詳細は 早稲田大学Webサイトをご覧ください。
【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M102172/202307267488/_prw_PT1fl_K58N2xBy.png】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307267488-O1-L2e45KeU】
図1:A. 本研究で開発した芳香族系のプロトン導電性高分子SPP-TFP-4.0の構造、B. エレクトロスピニング法によりナノファイバーシートにしたポリフッ化ビニリデンPVDFの構造、C. AとBを組み合わせて作製した複合膜(SPP-TFP-4.0-PVDF)
【研究概要】
山梨大学クリーンエネルギー研究センター・早稲田大学理工学術院の宮武 健治(みやたけけんじ)教授、信州大学学術研究院の金 翼水(きむいくす)教授、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構の刘 芳?(りゅうふぁんふぁ)次席研究員の研究グループは、酸性基を導入したプロトン導電性芳香族高分子(SPP-TFP-4.0)とエレクトロスピニング法(高分子溶液に高電圧を印加しながら射出してナノファイバーを作製する方法)でナノファイバーシート化したポリフッ化ビニリデン(PVDF)※1から複合電解質膜(SPP-TFP-4.0-PVDF)を作製しました。
この複合電解質膜を用いた固体高分子形燃料電池(PEFC)※2は、これまでの課題であった幅広い温度範囲(80〜120℃)および湿度範囲(相対湿度30〜120%)での高性能と、米国エネルギー省(US DOE)が定める加速耐久性試験(米国エネルギー省推奨試験)における2025年の目標値(20,000サイクル、次世代の燃料電池への搭載に求められる耐久性の指標)を大きく上回る高耐久性(148,870サイクル)を達成しました。
PEFCは主な構成材料としてプロトン導電性高分子電解質膜※3と電極触媒(主に白金や白金の合金を炭素粉末に担持させたものが用いられている)から成り立っており、燃料として水素、酸化剤として空気中の酸素を用いて発電することができます。常温から80℃程度の温度で効率よく発電でき、副生成物が水のみ(発電中に二酸化炭素や有害物質が発生しない)であることから、クリーンな発電デバイスとして注目を集めています。すでに電気自動車や家庭用電源として実用化が進められていますが、より広範な普及のためにはさらなる高性能化、高耐久化、低コスト化が課題です。本研究により、一般的なエンジニアリングプラスチックと同様の出発物質である比較的安価な材料から電解質膜が作製でき、これら課題の解決に大きく貢献できる可能性が示されました。
この成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務※4の結果、得られたのものです。
本研究成果は、2023年7月26日(水)午後2時(米国東部夏時間)に米国科学振興協会(AAAS)が発行するオンライン学術雑誌『Science Advances』で公開されました。
【論文情報】
雑誌名:Science Advances
論文名:Proton-conductive aromatic membranes reinforced with poly(vinylidene fluoride) nanofibers for high-performance durable fuel cells
DOI:10.1126/sciadv.adg9057
【用語解説】
※1 ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
熱可塑性の部分フッ素化樹脂の一つであり、図1Bの化学構造を持つ。耐熱性、機械強度に優れており、いくつかの有機溶媒にも可溶であるため溶融成型だけでなく、溶液から成型することもできる。
※2 固体高分子形燃料電池(PEFC)
PEFCはPolymer Electrolyte Fuel Cellの略称であり、負極と正極で高分子電解質膜を挟み、負極に水素、正極に酸素を供給して電気を発生させる電池。1つのセルでセル電圧(開回路電圧)は1.0V程度であり、実用的には積層(スタック)させて高電圧を得る。
※3 プロトン導電性高分子電解質膜
スルホン酸基などの強酸性基を含む高分子から成る膜。燃料電池や電解セル、センサーなどの電気化学デバイス用の固体電解質として用いられている。PEFCの用途としては、負極で発生したプロトン(水素イオン)を正極に運ぶ役割を担っており、プロトン導電性、ガスバリア性、機械強度、耐久性などの物性が必要である。
※4 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務
業務委託名称:燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業
プロジェクト名称:高効率・高出力・高耐久PEFCを実現する革新的材料の研究開発事業
研究分担者名(所属機関名):宮武 健治(山梨大学)