データやAIを活用した持続可能な農業生産システムで深刻化する食料問題の解決を図る
[23/08/22]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
【東洋大学 SDGs News Letter Vol.23】東洋大学は“知の拠点”として地球社会の未来へ貢献します
2023.8.22
東洋大学
東洋大学 SDGs News Letter Vol.23
東洋大学は“知の拠点”として地球社会の未来へ貢献します
データやAIを活用した
持続可能な農業生産システムで
深刻化する食料問題の解決を図る
2022年に世界の総人口が80億人を突破し、2050年には約97億人に達すると予想されています。急激に人口が増加する中、私たちが向き合わなければならないテーマが食料不足の問題です。農作物を安定的に生産するために、世界全体で持続可能な農業の実現に向けた研究が進められています。その一助となる「土壌水分動態」の解析について、経営学部の関勝寿教授が解説します。
Summary
・人口増加により食料問題が顕在化。農作物の安定的な生産・供給のため、農業生産システムの最適化が欠かせない。
・土壌水分動態の解析によって、経験や勘に委ねられていた農業のノウハウを理論化。
・農業分野でもAIの活用が加速。将来的には、AIが農業計画を示す「誰もが従事できる農業づくり」を実現する。
食料不足を解決する、サステナブルな農業
人口増加が加速する中で、農業分野において解決すべき課題を教えてください。
世界人口が増加の一途を辿る現在、 食料供給が追い付かなくなりつつあります。これは食料の大部分を輸入に頼る日本でも深刻なテーマです。今後、輸出国が自国で食料を消費し尽くすようになれば、日本の輸入が途絶える可能性もあります。そこで食料自給率を高めるために、自国で安定的に生産・供給できる仕組みを構築しなければなりません。
農業を営むには、微生物で土壌を整え、肥料を与えるなど、土壌づくりだけでも多様な工程が必要です。特に日本で盛んな米栽培では、水田への適切な水供給が不可欠であり、大規模な水利施設を整備し、維持管理することが求められます。
多大な手間とコストがかかる一方で、各国では異常気象による農業被害が多発し、紛争による農地破壊も起こっています。 日本国内では、農業従事者の高齢化が進み、後継者不足が深刻化しています。つまり、食料生産の拡大が求められているにも関わらず、農作物を育てていく上で必要な環境が世界的に失われつつあるのです。この状況下で安定供給を実現させるために、農業生産システムの最適化は欠かせません。現在、グローバルな規模で資源を効率的に活用する方法が研究されており、私が扱う「土壌水分動態」の解析もその一つと言えます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202308218235-O6-U44cbG52】
「土壌水分動態」を解析することの意義について教えてください。
撒いた肥料が水に溶けて土の中に浸透し、栄養分が行きわたることで農作物は育ちます。重要なのは、土壌に与える水分量です。品種や気候・季節によって必要な量が変動するだけではなく、水の浸透や蒸発の具合、根の吸収量などにも影響を受けます。
私の研究では保水性(土がどれだけ水を保持できるか)や透水性(土がどれだけ水を通しやすいか)といった土の性質を解析し、水の移動速度を測定。今まで農家が経験と勘で予測していた部分を数値に落とし込み、適切な水管理の方法を理論的に証明することを試みています。これを理論化できれば、農業の生産効率が向上し、肥料や水など資源の浪費を防ぐこともできます。農業経験のない人にもノウハウを共有できる仕組みを整えることで、農業への新規参入のハードルは低くなるでしょう。特に、現在若い世代の農業への関心が少しずつ高まっているようです。意欲のある若者を農業に呼び込むことができれば、後継者不足の解決につながります。土壌水分動態の解析は、持続可能な農業づくりに大きく寄与する可能性を有しています。
データとAIの有効活用が、農業の未来を切り拓くカギとなる
研究はどのようなプロセスで行われているのでしょうか。
1メートルほど掘削し土壌の採取(サンプリング)を行い、深度ごとに土の性質を調べます。また、センサーを埋め込んで水分量を測り、水の移動速度も測定します。土の性質は空気や水と比べて非常に複雑であり、精度の高い結果を得るために大量のデータが必要です。現在は農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)との共同研究を行い、農研機構が保有するデータを用いて実験を進めています。また、中国・西北農林科技大学と連携を図り 、中国の農地や果樹園の作物を対象に水の動態を解析しています。
土壌水分動態の解析は、農業生産システムの最適化を図り、農業の持続可能性を高める上で土台となる基礎づくりを担っています。将来的には研究で得られたデータをAI分析し、適切な農業計画を示す仕組みを構築することで、誰もが参入・従事できる農業を実現できると考えます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202308218235-O7-W6Qyt0U3】
今後、AIやIoTなどのデジタル技術が農業にもたらす影響についてお聞かせください。
人手不足などの問題を抱える農業においては、最先端技術を存分に活用することが解決の糸口となるはずです。
既に農業におけるスマート化の一環で、「スマートフードチェーン」の構築が進んでいます。消費者の需要が高い作物をAIが予測し、得られたデータから農作物の生産量や種類を逆算して調整するという画期的なシステムです。生産性の向上だけではなく、食品ロスの解決にもつながると期待されています。
「土壌水分動態」の解析においても、AIを活用した応用研究が世界的な潮流になりつつあります。今後も試行錯誤を繰り返していけば、そう遠くない未来で実用化が進んでいくでしょう。農業生産システムの最適化は、デジタル技術が鍵を握っているといっても過言ではありません。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202308218235-O5-r73wgVAo】
関 勝寿(せき かつとし)
東洋大学経営学部会計ファイナンス学科教授/博士(農学)
専門分野:農業工学/農業土木学・農村計画学/環境学/環境動態解析
研究キーワード:土壌物理/水文学/地球環境
著書・論文等:土壌微生物による土壌の透水性変化に関する研究(東京大学博士論文)、
福島原発事故による土壌の放射能汚染対策(経営論集)
本News Letterのバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
TOYO SDGs News Letter
https://www.toyo.ac.jp/sdgs/
2023.8.22
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東洋大学は“知の拠点”として地球社会の未来へ貢献します
データやAIを活用した
持続可能な農業生産システムで
深刻化する食料問題の解決を図る
2022年に世界の総人口が80億人を突破し、2050年には約97億人に達すると予想されています。急激に人口が増加する中、私たちが向き合わなければならないテーマが食料不足の問題です。農作物を安定的に生産するために、世界全体で持続可能な農業の実現に向けた研究が進められています。その一助となる「土壌水分動態」の解析について、経営学部の関勝寿教授が解説します。
Summary
・人口増加により食料問題が顕在化。農作物の安定的な生産・供給のため、農業生産システムの最適化が欠かせない。
・土壌水分動態の解析によって、経験や勘に委ねられていた農業のノウハウを理論化。
・農業分野でもAIの活用が加速。将来的には、AIが農業計画を示す「誰もが従事できる農業づくり」を実現する。
食料不足を解決する、サステナブルな農業
人口増加が加速する中で、農業分野において解決すべき課題を教えてください。
世界人口が増加の一途を辿る現在、 食料供給が追い付かなくなりつつあります。これは食料の大部分を輸入に頼る日本でも深刻なテーマです。今後、輸出国が自国で食料を消費し尽くすようになれば、日本の輸入が途絶える可能性もあります。そこで食料自給率を高めるために、自国で安定的に生産・供給できる仕組みを構築しなければなりません。
農業を営むには、微生物で土壌を整え、肥料を与えるなど、土壌づくりだけでも多様な工程が必要です。特に日本で盛んな米栽培では、水田への適切な水供給が不可欠であり、大規模な水利施設を整備し、維持管理することが求められます。
多大な手間とコストがかかる一方で、各国では異常気象による農業被害が多発し、紛争による農地破壊も起こっています。 日本国内では、農業従事者の高齢化が進み、後継者不足が深刻化しています。つまり、食料生産の拡大が求められているにも関わらず、農作物を育てていく上で必要な環境が世界的に失われつつあるのです。この状況下で安定供給を実現させるために、農業生産システムの最適化は欠かせません。現在、グローバルな規模で資源を効率的に活用する方法が研究されており、私が扱う「土壌水分動態」の解析もその一つと言えます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202308218235-O6-U44cbG52】
「土壌水分動態」を解析することの意義について教えてください。
撒いた肥料が水に溶けて土の中に浸透し、栄養分が行きわたることで農作物は育ちます。重要なのは、土壌に与える水分量です。品種や気候・季節によって必要な量が変動するだけではなく、水の浸透や蒸発の具合、根の吸収量などにも影響を受けます。
私の研究では保水性(土がどれだけ水を保持できるか)や透水性(土がどれだけ水を通しやすいか)といった土の性質を解析し、水の移動速度を測定。今まで農家が経験と勘で予測していた部分を数値に落とし込み、適切な水管理の方法を理論的に証明することを試みています。これを理論化できれば、農業の生産効率が向上し、肥料や水など資源の浪費を防ぐこともできます。農業経験のない人にもノウハウを共有できる仕組みを整えることで、農業への新規参入のハードルは低くなるでしょう。特に、現在若い世代の農業への関心が少しずつ高まっているようです。意欲のある若者を農業に呼び込むことができれば、後継者不足の解決につながります。土壌水分動態の解析は、持続可能な農業づくりに大きく寄与する可能性を有しています。
データとAIの有効活用が、農業の未来を切り拓くカギとなる
研究はどのようなプロセスで行われているのでしょうか。
1メートルほど掘削し土壌の採取(サンプリング)を行い、深度ごとに土の性質を調べます。また、センサーを埋め込んで水分量を測り、水の移動速度も測定します。土の性質は空気や水と比べて非常に複雑であり、精度の高い結果を得るために大量のデータが必要です。現在は農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)との共同研究を行い、農研機構が保有するデータを用いて実験を進めています。また、中国・西北農林科技大学と連携を図り 、中国の農地や果樹園の作物を対象に水の動態を解析しています。
土壌水分動態の解析は、農業生産システムの最適化を図り、農業の持続可能性を高める上で土台となる基礎づくりを担っています。将来的には研究で得られたデータをAI分析し、適切な農業計画を示す仕組みを構築することで、誰もが参入・従事できる農業を実現できると考えます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202308218235-O7-W6Qyt0U3】
今後、AIやIoTなどのデジタル技術が農業にもたらす影響についてお聞かせください。
人手不足などの問題を抱える農業においては、最先端技術を存分に活用することが解決の糸口となるはずです。
既に農業におけるスマート化の一環で、「スマートフードチェーン」の構築が進んでいます。消費者の需要が高い作物をAIが予測し、得られたデータから農作物の生産量や種類を逆算して調整するという画期的なシステムです。生産性の向上だけではなく、食品ロスの解決にもつながると期待されています。
「土壌水分動態」の解析においても、AIを活用した応用研究が世界的な潮流になりつつあります。今後も試行錯誤を繰り返していけば、そう遠くない未来で実用化が進んでいくでしょう。農業生産システムの最適化は、デジタル技術が鍵を握っているといっても過言ではありません。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202308218235-O5-r73wgVAo】
関 勝寿(せき かつとし)
東洋大学経営学部会計ファイナンス学科教授/博士(農学)
専門分野:農業工学/農業土木学・農村計画学/環境学/環境動態解析
研究キーワード:土壌物理/水文学/地球環境
著書・論文等:土壌微生物による土壌の透水性変化に関する研究(東京大学博士論文)、
福島原発事故による土壌の放射能汚染対策(経営論集)
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