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身体内部の感覚への意識、およびストレスの感じやすさなどの個人特性とヨーグルトの購買行動の関連性を確認

お客さまの心理特性に合わせてパーソナライズ化した商品開発に貢献する可能性

 株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)と広島大学 脳・こころ・感性科学研究センター 笹岡 貴史准教授らは、心理学に基づいた質問紙と食品購買データを紐づけた大規模調査データの解析により、身体内部の感覚への意識、およびストレスの感じやすさなどの心理的な個人特性とヨーグルトの購買行動との関連性を確認しました。当研究成果は2023年11月21日の第25回日本感性工学会大会にて発表しました。

【研究成果の概要】
(1)自覚ストレスが高く、ストレス対処能力が低い層が最もヨーグルトの購入数、購入した商品数が多く、金 
額も高く、かつ定期的に購入していることがわかりました。
(2)自覚ストレスが低く、ストレス対処能力が高い層においては、身体的感覚への意識が強い層において、よ
り多くのヨーグルトを購入していることがわかりました。
(3)商品の購買に関連する心理的な個人特性(内受容感覚 ※1への意識と自覚ストレス/レジリエンス※2特性の個人差)を加えた解析を実施することで、心理特性※3に基づく購買行動の類型化が可能であることを確認しました。

【研究の目的】
 消費者が食品を求める要素は、食品そのものが持つ味や香りなどの物性的な特徴のみでなく、人の感性による要素が影響していると考えられます。そのため、消費者のニーズに応えていくには食べる人の「心理特性」を類型化することが重要と考えました。一般的に胃や腸の健康に寄与する食品として知られているヨーグルトにおいては、内受容感覚に対する意識の個人差と購買行動を用いた類型化が可能となるという仮説のもと、ヨーグルトの購買行動に関連する感性の違いを明らかにするために本研究に取り組みました。

【研究成果の活用】
 従来の年齢、性別、職業などの社会的な個人属性を購買行動と結びつけた解析手法とは異なる、購買行動に影響する、人の心理特性に基づいたマーケティング調査によって、お客さまの心理特性に合わせてパーソナライズ化した商品の開発が実現する可能性が考えられます。今後は、異なる食品カテゴリーや、他の心理特性の質問紙についての検証について検討を進めてまいります。
 当社では今後も、新たな技術や科学的知見に基づく商品の開発を通じて、お客さまのさまざまなパーソナリティに応じた商品を提供してまいります。
※1 内受容感覚:「お腹が空いた」「心臓の鼓動が早い」など身体内部の感覚。
※2 レジリエンス:逆境に直面したときのストレス対処能力。
※3 心理特性:性格、パーソナリティや感情、知能などの心理的な特徴。

発表内容
【タイトル】
ヨーグルト購買行動におけるレジリエンス特性および内受容感覚の個人差の影響
−大規模質問紙調査による検討−

【発表者】
笹岡 貴史1)、町澤 まろ1)、松尾 篤2)
1) 広島大学 脳・こころ・感性科学研究センター、2)株式会社 明治

【方法】
・18歳以上の男女26,424名から以下の心理質問紙の回答を取得しました。
(1) 短縮版身体知覚質問紙(BPQ)※4
(2) 日本語版内受容感覚への気づきの多次元的評価(MAIA)※5
(3) 日本語版レジリエンス尺度(RS)※6
(4) 日本語版自覚的ストレス尺度(JPSS)※7
・調査対象者の2020年度および2022年度の食品購買データを取得しました。
そして、調査パネルの年齢、ヨーグルト年間購入個数、ヨーグルト年間購入商品数、ヨーグルト年間購入金額、購入したヨーグルト商品の価格年間平均、ヨーグルト購買タイミングの不均一性を表すクランピネス指標※8を対象者ごとに計算し、購買データとして用いました。
・各心理質問紙の回答と年間の購買データ2年分それぞれを組み合わせた2つのデータセットについて、主成分分析を行い、最適となった4つの因子に関する主成分軸の主成分得点に対して、k-means法によるクラスター解析を行いました。

【結果と考察】
・クラスター解析の結果、いずれのデータセットにおいても、5つに分類されました。
(ヨーグルト購買軸の得点が低い層(C1)、BPQ軸の得点が高い層(C2)、MAIA軸の得点が低い層(C3)、MAIA軸とRS軸の得点が高い層(C4)、RS軸の得点が低い層(C5))
・ヨーグルトをある程度購入する層において、自覚ストレスが高く、ストレス耐性が低い層は最もヨーグルトの購入数、購入した商品数、購入または購入単価金額が高く、定期的に購入していることがわかりました(図1 C5)。また、自覚ストレスが低く、ストレス耐性が高い層においては、MAIAに反映される内受容感覚への気づきのより強い層において、より多くヨーグルトを購入していることが分かりました(図1 C3、C4)。
 本研究で示された購買行動と心理特性の関係性は、従来の社会的属性を用いたマーケティング調査ではない、心理特性を用いた新たなマーケティング手法の可能性を示すものと考えられます。

 
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202311283474-O7-23Va0V8l
                  図1 クラスター解析の結果
縦軸は各クラスターにおける重心に対応するPC1〜4の主成分軸それぞれに関する主成分得点を表す。C1〜C5は各クラスターのラベルを表す。 Dataset1、Dataset2はそれぞれ(1)2022年度の質問紙データと2022年度の購買データ、(2)2022年度の質問紙データと2020年度の購買データに対応。

※4 出典 PORGES, S. Pridobljeno, 1993.
※5 出典 SHOJI, Masayasu, et al. Frontiers in psychology, 2018, 9: 1855.
※6 出典 NISHI, Daisuke, et al. Bmc research notes, 2010, 3: 1-6.
※7 出典 岩橋成寿, et al. 心身医学, 2002, 42.7: 459-466.
※8 出典 ZHANG, Yao, et al. Marketing Science, 2015, 34.2: 195-208.

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