ASC養殖場認証の基準を参考にした独自基準案に基づくニホンウナギの養殖場のパイロット審査の報告書を公表
[18/07/31]
提供元:PRTIMES
提供元:PRTIMES
エーゼロ株式会社(岡山県西粟倉村、代表取締役:牧大介)は、人や自然の本来の価値を引き出し地域の経済循環を育てていく事を目指し、ローカルベンチャー育成事業や自然資本事業に取り組んでいます。2016年からは村内の旧小学校でウナギ(ビカーラ種)の養殖を開始し、2017年より「森のうなぎ」として蒲焼を販売してきました。本年はニホンウナギの養殖許可を得て、人とウナギの持続可能な関係作りを目指した活動を開始しています。
当社は適切に管理された養殖水産業を認証する国際的な制度「ASC養殖場認証」の考え方をベースに、認証機関のアミタ株式会社(東京都千代田区、代表取締役:佐藤博之)が試作したニホンウナギの独自基準を元に、本年5月にパイロット審査を受審しました。「ASC養殖場認証」は魚種ごとに基準が策定されていますが、ニホンウナギの基準は未策定のため、他魚種の基準を参考に審査が行われました。この度、アミタ株式会社より審査報告書を受領したため、公表致します。
審査結果は、審査項目全102件の内、適合68件、軽微な不適合14件、重大な不適合5件、該当しない15件でした。重大な不適合は、稚魚の調達に関するもの(要件3.4.1)と飼料の原料に関するものでした(要件 4.2.1, 4.3.2, 4.3.3, 4.4.1)。
稚魚の調達に関しては、MSC等の持続可能な漁業認証やそれに準ずる評価の下に管理された漁業からの稚魚を使う事が求められています。現在、ニホンウナギに関しては、そのような稚魚は流通していないので、要件を満たす事が出来ません。稚魚の採捕段階からのトレーサビリティの向上、資源量に関する科学的データの蓄積など、多様な主体と一緒になった活動が必要です。
飼料に関しては、原料となる魚粉、魚油、そして大豆などの植物原料の持続可能性に関する情報を確認する事が求められています。飼料メーカーよりも更に上流の原料メーカーも含めた、サプライチェーン全体での取り組みが必要となります。
稚魚の調達と飼料原料という課題が明確になった一方、それ以外の多くの項目(養殖魚の健康管理、温暖化対策、周辺環境への影響など)に関しては、適合または改善が可能と思われる軽微な不適合となりました。持続可能な養鰻業が実現できる事を信じ、エーゼロは多様なステークホルダーと協働し、今回明らかになった課題の解決に努めます。
絶滅危惧種であるニホンウナギに関して、正式な「ASC養殖場認証」が発行される事はすぐには困難です。しかし、今後、養鰻家や水産資源管理の専門家等が、管理すべき項目や基準案等について具体的にディスカッションをしていく際のたたき台として、今回の審査結果が使われる事を願っています。
■ エーゼロ株式会社 ウェブサイト:http://a-zero.co.jp/
■ 想定されるご質問への回答
Q. ASC養殖場認証とは?
A. 「ASC(Aquaculture Stewardship Council: 水産養殖管理協議会)認証」は、環境に大きな負担をかけず、地域社会(人権や労働等)に配慮し、適切に管理された養殖業を「認証」する国際的な認証制度です。
Q. 絶滅危惧種のニホンウナギでは、ASC養殖場認証は取れないのではないか?
A. その通りです。そもそもニホンウナギを対象としたASC基準は制定されていません。本取り組みが将来の基準づくりの参考になる事を期待しています。また、ASC養殖場認証の基準の一つ”天然個体群への影響の軽減”も、絶滅危惧種の天然稚魚に依存する現在の養殖では満たす事ができません。エーゼロは河川でのウナギ調査も実施しており、流域での持続可能な資源管理の構築に貢献したいと考えております。
Q. ニホンウナギが絶滅の危惧に直面しているのに、消費して良いのか?
A. ニホンウナギは個体数の少なさではなく、その減少速度が急速であるために絶滅危惧種に指定されています。そのため、適切な資源管理が実現できれば、持続可能な利用は可能だと考えます。ただし、持続的な利用を実現するにあたっては多くの課題があることもまた、現実です。保護のために蒲焼を食べないという選択をする個人の意思は尊重されるべきですが、それでも他の人が食べてしまえば資源の枯渇は続いてしまいます。当社は、蒲焼の消費が資源の回復につながる仕組みを模索したいと考えています。NPO等の立場で、資源問題に警鐘を鳴らすのも重要ですが、資源を守りながらもビジネスが成り立つモデルを構築する事で、ウナギ業界を変える事が出来たらと考えています。日本の大切な食文化である鰻の蒲焼を将来の世代にも残したいと考えています。
Q. ビカーラ種の養殖からニホンウナギの養殖に移行する理由は?
A. 日本の川に生息するニホンウナギを通じて、日本の自然環境に向き合いたいと考えているからです。元々、ニホンウナギの養殖に取り組みたいと考えていましたが、ビカーラの池入れ許可しか取れず、まずはビカーラから始めました。ビカーラは外来種であるため、屋内の循環型養殖で、施設の外に逃げないようにしています。本年、ニホンウナギの池入れ許可を得る事が出来たため、ニホンウナギの養殖に移行します。残ったビカーラ種も、一尾一尾大事に育て、美味しく加工したいと考えています。
Q. 養殖業者として、持続可能なシラスウナギの採捕にどのように関わるのか?
A. ゆくゆくは、流域で持続可能な稚魚の採捕、養殖、販売を行うモデルが出来たらと思っています。そのためには、様々なステークホルダーとの協業が必要になります。また、今できる事に取り組むという観点で、エーゼロは、本年6月に養殖期間の短い稚魚を河川に放流し、生存率の調査をしています。トレーサビリティの向上も含め、エーゼロとして出来る事を探っています。
Q. 今後の取り組みの展開は?
A. ニホンウナギの資源については、まだまだ分かっていない事が沢山あります。一つ一つ仮説検証を重ねて行きたいと思います。また、弊社だけでは、取り組みにも限界があるため、情報公開を積極的に行い、多くの方々とのパートナーシップを築けたらと考えています。また、当社はシラスウナギの池入れ枠を0.5kgしか持たない小規模事業者なので、今後、池入れ枠を譲って頂ける養鰻業者がいらしたら取扱量を増やし、更に大きなインパクトを与える事ができたらと考えています。
当社は適切に管理された養殖水産業を認証する国際的な制度「ASC養殖場認証」の考え方をベースに、認証機関のアミタ株式会社(東京都千代田区、代表取締役:佐藤博之)が試作したニホンウナギの独自基準を元に、本年5月にパイロット審査を受審しました。「ASC養殖場認証」は魚種ごとに基準が策定されていますが、ニホンウナギの基準は未策定のため、他魚種の基準を参考に審査が行われました。この度、アミタ株式会社より審査報告書を受領したため、公表致します。
審査結果は、審査項目全102件の内、適合68件、軽微な不適合14件、重大な不適合5件、該当しない15件でした。重大な不適合は、稚魚の調達に関するもの(要件3.4.1)と飼料の原料に関するものでした(要件 4.2.1, 4.3.2, 4.3.3, 4.4.1)。
稚魚の調達に関しては、MSC等の持続可能な漁業認証やそれに準ずる評価の下に管理された漁業からの稚魚を使う事が求められています。現在、ニホンウナギに関しては、そのような稚魚は流通していないので、要件を満たす事が出来ません。稚魚の採捕段階からのトレーサビリティの向上、資源量に関する科学的データの蓄積など、多様な主体と一緒になった活動が必要です。
飼料に関しては、原料となる魚粉、魚油、そして大豆などの植物原料の持続可能性に関する情報を確認する事が求められています。飼料メーカーよりも更に上流の原料メーカーも含めた、サプライチェーン全体での取り組みが必要となります。
稚魚の調達と飼料原料という課題が明確になった一方、それ以外の多くの項目(養殖魚の健康管理、温暖化対策、周辺環境への影響など)に関しては、適合または改善が可能と思われる軽微な不適合となりました。持続可能な養鰻業が実現できる事を信じ、エーゼロは多様なステークホルダーと協働し、今回明らかになった課題の解決に努めます。
絶滅危惧種であるニホンウナギに関して、正式な「ASC養殖場認証」が発行される事はすぐには困難です。しかし、今後、養鰻家や水産資源管理の専門家等が、管理すべき項目や基準案等について具体的にディスカッションをしていく際のたたき台として、今回の審査結果が使われる事を願っています。
■ エーゼロ株式会社 ウェブサイト:http://a-zero.co.jp/
■ 想定されるご質問への回答
Q. ASC養殖場認証とは?
A. 「ASC(Aquaculture Stewardship Council: 水産養殖管理協議会)認証」は、環境に大きな負担をかけず、地域社会(人権や労働等)に配慮し、適切に管理された養殖業を「認証」する国際的な認証制度です。
Q. 絶滅危惧種のニホンウナギでは、ASC養殖場認証は取れないのではないか?
A. その通りです。そもそもニホンウナギを対象としたASC基準は制定されていません。本取り組みが将来の基準づくりの参考になる事を期待しています。また、ASC養殖場認証の基準の一つ”天然個体群への影響の軽減”も、絶滅危惧種の天然稚魚に依存する現在の養殖では満たす事ができません。エーゼロは河川でのウナギ調査も実施しており、流域での持続可能な資源管理の構築に貢献したいと考えております。
Q. ニホンウナギが絶滅の危惧に直面しているのに、消費して良いのか?
A. ニホンウナギは個体数の少なさではなく、その減少速度が急速であるために絶滅危惧種に指定されています。そのため、適切な資源管理が実現できれば、持続可能な利用は可能だと考えます。ただし、持続的な利用を実現するにあたっては多くの課題があることもまた、現実です。保護のために蒲焼を食べないという選択をする個人の意思は尊重されるべきですが、それでも他の人が食べてしまえば資源の枯渇は続いてしまいます。当社は、蒲焼の消費が資源の回復につながる仕組みを模索したいと考えています。NPO等の立場で、資源問題に警鐘を鳴らすのも重要ですが、資源を守りながらもビジネスが成り立つモデルを構築する事で、ウナギ業界を変える事が出来たらと考えています。日本の大切な食文化である鰻の蒲焼を将来の世代にも残したいと考えています。
Q. ビカーラ種の養殖からニホンウナギの養殖に移行する理由は?
A. 日本の川に生息するニホンウナギを通じて、日本の自然環境に向き合いたいと考えているからです。元々、ニホンウナギの養殖に取り組みたいと考えていましたが、ビカーラの池入れ許可しか取れず、まずはビカーラから始めました。ビカーラは外来種であるため、屋内の循環型養殖で、施設の外に逃げないようにしています。本年、ニホンウナギの池入れ許可を得る事が出来たため、ニホンウナギの養殖に移行します。残ったビカーラ種も、一尾一尾大事に育て、美味しく加工したいと考えています。
Q. 養殖業者として、持続可能なシラスウナギの採捕にどのように関わるのか?
A. ゆくゆくは、流域で持続可能な稚魚の採捕、養殖、販売を行うモデルが出来たらと思っています。そのためには、様々なステークホルダーとの協業が必要になります。また、今できる事に取り組むという観点で、エーゼロは、本年6月に養殖期間の短い稚魚を河川に放流し、生存率の調査をしています。トレーサビリティの向上も含め、エーゼロとして出来る事を探っています。
Q. 今後の取り組みの展開は?
A. ニホンウナギの資源については、まだまだ分かっていない事が沢山あります。一つ一つ仮説検証を重ねて行きたいと思います。また、弊社だけでは、取り組みにも限界があるため、情報公開を積極的に行い、多くの方々とのパートナーシップを築けたらと考えています。また、当社はシラスウナギの池入れ枠を0.5kgしか持たない小規模事業者なので、今後、池入れ枠を譲って頂ける養鰻業者がいらしたら取扱量を増やし、更に大きなインパクトを与える事ができたらと考えています。