ニッスイグループ取り扱い水産物の資源状態調査(第3回)調査結果
[24/09/30]
提供元:PRTIMES
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株式会社ニッスイ(代表取締役 社長執行役員 浜田 晋吾、東京都港区)は、ニッスイおよび国内外グループ企業の計37社が2022年1年間に取り扱った水産物の資源の状態について、第三者に分析・評価を依頼した結果がまとまりましたので、お知らせします。
調査の結果、持続的な水産資源の調達が進んでいることが判明した一方で、管理の仕組みやデータがなく評価できない漁業や改善が必要な漁業によるものも依然として存在しており、優先順位をつけて今後対処していきます。
ニッスイグループは海の恵みを受けて事業を営んでおり、取り扱う水産物の資源状態は中長期的な事業のリスクやチャンスに影響する重要な事項です。そこでニッスイでは、取り扱う水産物の資源状態の把握と対応すべき課題の抽出を目的として、この調査を定期的に実施して持続的な水産物の調達のための体制構築に役立てています。
今回の調査は、2016年を対象に2018年に公表した第1回調査、2019年を対象に2021年に公表した第2回調査に続くものです。
■第3回調査結果
調査対象を天然水産物と水産物加工品とし、第2回と同様に客観性を保つため第三者機関のデータと分析を活用、SFP(*1)による水産資源に関するデータベースFishSource (*2)を使用し、ODP(*3)が定める方法で分析・評価しました。
*1 SFP:Sustainable Fisheries Partnership、持続可能な漁業のためのパートナーシップ
サプライチェーンを通じた漁業の改善を推進している米国のNGO、2006年設立。
*2 FishSource:
SFPが2007年に開設した国際的な水産資源に関するデータベース。水産資源に関する公開情報を科学的に分析し、魚種ごとの資源状態や漁業管理情報を提供している。
*3 ODP:Ocean Disclosure Project
SFPが2015年に運営を開始した、水産物の調達を自主的に開示するためのオンライン報告プラットフォーム。
【調査の概要】
□対象企業:ニッスイおよびグループ企業(国内16社・海外20社)計37社
□対象期間:2022年1年間
□対象水産物:自社グループ漁業およびグループ外より調達した天然水産物・水産物加工品(海藻類を除く)で、グループ企業各社が年間1,000万円(10万USドル)以上取り扱ったもの。魚油と配合飼料用魚粉を含む水産物加工品については原魚換算した。
【調査結果】
(1)ニッスイグループの取り扱い天然水産物の概要(()内は前回調査の結果)
1)取り扱い総量…原魚換算重量で276万トン(271万トン)
2)魚種数…304魚種(269魚種)
3)漁獲海域…FAO(*4)区分の海域で18カ所(21カ所)
*4 FAO:Food and Agriculture Organization of the United Nations、国際連合食糧農業機関
(2)ニッスイグループの取り扱い水産物の資源状態
[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/19296/95/19296-95-503f31cc53ad46fbd143442a5facb5dd-1866x1872.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
1)2022年にグループ全体で取り扱った水産物のうち、83%が管理の仕組みのある漁業から調達したもので、75%が適切に維持・管理できている資源(「優れた管理」状態にあるものおよび「管理状態にあるもの」)でした。
・適切に維持管理された漁業によるもの(75%)は、前回の71%から4%増加しました。
その内訳は、「優れた管理」状態にあるものは35%で前回の18%から17%と大幅増、「管理」状態にあるものは40%で前回の53%より13%減少しました。
・管理の仕組みはあるものの資源状態が「要改善」状態の漁業から調達したものは8%で、
前回から変化はありませんでした。
・管理の仕組みやデータがなく評価できない漁業(「プロフィール未登録」)によるものは17%で、前回の21%より4%減少しました。
2)取り扱い量の上位1〜3位は順にスケソウダラ・アンチョベータ(ペルー・アンチョビー)・マイワシで約54%を占めており、これらは管理の仕組みがあり持続性が確保できていますが、それ以下の魚種には管理の仕組みのないまたは不十分な漁業によるものも含まれています。
3)取り扱い総量の85%がグループ外からの調達品で、自社グループ漁業による調達は15%でした。
これらはほとんどが「優れた管理」状態のものでしだか、外部調達品には「要改善」「プロフィール未登録」の資源も多く、今後の課題解決に向けては調達先のサプライヤーとの協働が不可欠です
4)国際自然保護連合(IUCN)が定めた絶滅危惧種I類(IUCNレッドリストにおけるCR・EN、*5)、およびII類(VU、*5)の取り扱いは13種あり、前回の16種より減少しました。
5)MSC(*6)認証を受けた漁業によるものは80万トン・29%あり、前回の77万トン・25%から4%増加しました。魚種では72種で、前回の55種から17種増加しました。
*5 CR・EN・VU:
CR(Critically Endangered、近絶滅種)、EN(Endangered、絶滅危惧種)、VU(Vulnerable、危急種)
*6 MSC:Marine Stewardship Council、海洋管理協議会
イギリスに本部を置き、水産エコラベル認証制度を運営する。
(3)今後の対応策
1)資源状態の把握が困難な魚種(特に魚粉・魚油・すり身の加工原料となる魚種)に対し、ラウンドテーブルへの参加やFIP(*7)の支援など、優先して対応します。
2)漁獲情報の収集が困難な品目の資源特定や、サプライヤーとの協働によるトレーサビリティの確保に取り組みます。
3)調達資源について、人権侵害リスクを把握するための評価方法を検討します。
*7 FIP:Fishery Improvement Project、漁業改善プロジェクト
漁業者・企業・流通・NGOなど関係者が協力し、漁業の持続可能性の向上に取り組む国際的な漁業改善プロジェクト
■参考:第2回調査結果と対応の概要
第2回調査は、第1回調査を踏まえ、調査対象の水産物の範囲を魚油・魚粉に拡大し、判定に使用するデータを刷新、第三者性を確保した分析に変更しました。
取り扱い天然水産物271万トンのうち管理されている資源(「優れた管理」、「管理」)によるものが71%であったものの、「要改善」状態のものが8%、「スコア欠損」(データがなく評価不能なもの)が21%となりました。
この結果を受けて以下を実施し、現在も継続しています。
1. 管理の仕組みがない、または不十分な漁業への対策として2022年7月にGlobal Roundtable on Marine Ingredientsに参画しました。
2. 「絶滅危惧種(水産物)の調達方針」(*8)を2022年11月に定めました。
3. 調達の対象について、選択が可能な場合はMSC認証を受けた漁業からの調達に転換しました。
4. 自社グループの漁業おいて、MSC漁業認証取得に取り組みました。2024年2月、共和水産株式会社が中西部太平洋のカツオおよびキハダマグロのまき網漁業でMSC漁業認証を取得しました。
5. ベトナムのホワイトまたはピンクエビの養殖生産者の実態調査を実施、社会科学的に評価しました。
ベトナムのメコン川下流で行われているいわゆる「粗放的」なエビ養殖の持続性評価のた
め、カマウ省2地区のエビ養殖農家計200世帯余りを対象として、2022〜23年にかけて
横浜国立大学の池口明子教授に調査を委託し現地の大学と共同で実態調査を実施しました。
6. インドおよび東南アジア産のすり身に使用されているエソ・イトヨリダイ・タチウオなどの遺伝子解析による種の同定を実施しました。
これにより、対象魚種は亜種が多く存在することから調査データベースと実際の調達魚種が一致しないケースがあることが明らかになり、持続性の評価には正しい魚種や資源の特定が重要であることを再認識しました。
*8 ニッスイグループ絶滅危惧種(水産物)の調達方針(2022年11月制定)
ニッスイグループは、生物多様性に関わる条約や法令の遵守とともに、自然との共生社会の実現に貢献します。特に絶滅の危険度が高い水産物に関しては、2030年までに資源回復への科学的かつ具体的な対策が見られない場合には、調達を中止します。
<科学的かつ具体的な対策の事例>
・MSCなどの認証漁業品(GSSI認証相当)またはFIP漁業品
・RFMOなどの国際的な資源管理団体による科学的な漁業管理
・ODPが定める基準で「Managed」以上の評価
・その他、上記の実現に向けて具体的な施策を実施している場合
●本件の詳細は以下でご覧いただけます。
https://nissui.disclosure.site/assets/pdf/212/2022_3rd_survey.pdf