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ヨルダン:シリア人難民援助の限界




内戦中のシリアから周辺国に逃れた人の数は150万人に達し、そのうち約50万人がヨルダン国内で難民として暮らしている*。難民キャンプの環境は不安定で、医療の不足や、夏季の到来による健康状態の悪化などが懸念されている。国境なき医師団(MSF)は、続々と到着する難民を受け入れているヨルダン政府の負担が限界に達しており、国際社会による緊急支援が必要だと訴えている。*国連難民高等弁務官事務所

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<援助限界で緊迫する難民キャンプ>

ヨルダンに滞在するシリア人難民50万人のうち、10万人余りが同国北部、シリア国境から20km足らずのザータリ・キャンプに滞在している。2013年4月までに同キャンプに到着した難民は1日平均1000人。周辺地域で最大のシリア人難民キャンプとなった。

キャンプ内には常に緊迫感が漂い、受け入れ能力が限界をはるかに超えていることを物語っている。こうした状況は、地元の地域社会にも影響を与えており、特に北部では数ヵ月のうちに人口が倍増した。現在のところ難民受け入れのための持続的な体策はなく、長期的な財政支援のないことが主な理由となっている。

ザータリ・キャンプの環境は極めて不安定だ。3月下旬にMSFが開設した小児病院が、生後1ヵ月〜10歳を対象とする唯一の小児医療施設だったが、MSFはさらなる難民到着に対応するため、人員を拡充し、4月下旬に小児向け外来診療所を増設するなど、活動を強化している。MSFが行った診療は、同地での活動開始後5週間で約2000件。そのうち60件が救急症例だった。また、小児病院開設以来、270人余りの子どもが入院治療を受けている。

同キャンプで活動するMSFのクラウディア・トルッパ医師は、「下痢と呼吸器感染症の継続的な増加を確認しています。これは、過密状態のキャンプで暮らす難民の過酷な生活環境の表れです。夏の間は、脱水症状が増加する恐れもあります」と懸念を口にする。周辺地域では、水の調達が重要な問題であることは疑いない。またキャンプの滞在者数の多さに対し、医療施設も不足している。

ヨルダンにおける保健医療体制全体の脆弱性も未解決だ。MSFを含む、ザータリで活動する保健医療団体は、特に重症の患者にはキャンプ外の公立病院を紹介しているが、いずれの病院の受け入れ能力も限界に近い。難民援助の資金不足がヨルダンの保健医療体制全体の機能と、シリア人難民への適切な治療を脅している。

MSFのヨルダンでの活動責任者、アントワーヌ・フーシェは、「各国からの政治的・財政的支援がなければ、ヨルダン政府も、難民受け入れの無期限中止や、公立医療施設の利用制限といった過激な対策を取らざるを得なくなる恐れがあります。大勢のシリア人が現在置かれている過酷な状況はいっそう厳しいものとなるでしょう。ヨルダンが本当に積極的受け入れ策を継続するのであれば、同国への国際援助拡大が緊急に求められます」と訴えている。

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MSFは2006年からヨルダンの首都アンマンの病院で活動。シリア、イラク、イエメンからの負傷者を受け入れ、再建手術や外来診療を提供している。

MSFはシリア国内にもスタッフを派遣し、現在、北部で5病院を運営。レバノンとイラクでもシリア人難民を対象に、医療・心理ケアを行っている。
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