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新年おめでとうございます。
新しい年を迎え、皆さんのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

私は昨年、1月1日付けで社長に就任し、ちょうど1年が経ちました。2008年上期までは、まあまあといったところでしたが、下期に入ってからは、円高やら、景気の後退などもあり大変厳しい経営環境になっております。今までも経営者として北米の通信バブルなどを経験していますが、今回はその変化の範囲と大きさ、そして急激さで過去の比ではないと思っています。

先日、NHKの「私の一冊」という番組のなかで作家の阿刀田高さんが「このくらいの小説を生涯一つ書けたら死んでも良い」と絶賛していた一冊が、阿部公房の「砂の女」です。阿刀田さんは、私と同じ早稲田のご出身で、国会図書館に勤務され、膨大な数の本をお読みになった方と聞き及びます。そんな方が推奨する一冊とあらば、と読み始めたものです。

物語は、主人公が昆虫採集に訪れた砂丘の部落で軟禁されてしまうミステリー。部落の家々は、まるで蟻地獄のような砂穴になっており、まさに脱出不可能な天然の牢獄。主人公も何度も脱出を試みますが、「砂」の作り出す劣悪な環境とその実体のない「砂」の性質に何度も打ちのめされてしまいます。何度目かの失敗の後、主人公は、外部との連絡のために鴉（からす）を捕獲しようと罠を仕掛け、その装置を「希望」と命名します。

ある日、絶望の中で、獲物を捕まえることすらできない「希望」に水が溜まっていることを発見します。「砂」の毛管現象によって「希望」が溜水装置として機能していたのです。劣悪な環境の元凶であったはずの「砂」がその本質と性質を懐柔することで、砂丘でもっとも高価な水という「価値」を産出するのです。今、我々が嘆いている不景気も、その本質と性質を懐柔してしまえば同様ではないでしょうか。

これだけ景気が悪くなると、各企業とも経費の見直しをされ、コピーやプリントのコストを見直し、果てには機器のメンテナンスコストにまで節約が及びます。こうなりますと結果的に長期無償保証を唱える当社にとっては、我々の提供する価値を評価いただける非常に都合の良い状況となるわけです。お客様は、メンテナンスコストのかかる機器の残存価格を機会減価と捉え、メンテナンスコストのかからない商品へと切り替えが起こります。

どんな厳しい環境下であっても、その本質、性質を理解し、お客様との信頼関係を深める機会ととらえ積極的に活動し、「希望」を失わなければオポチュニティは生まれます。今年一年が皆さんにとりまして「希望」に輝く良い年になりますことをご祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。