【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆中国情勢の落ち着きは持続するか◆
[16/10/23]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
〇「どっちもどっち」に変節点接近、製造業見直しは持続するか〇
東証33業種別株価指数の前年比騰落率を見ると、証券・商品先物-31.9%、電力・ガス-30.2%、銀行-28.8%、空運-27.4%、不動産-27.3%、海運-23.7%の6業種の不振が目立つ(TOPIX-10.2%)。いずれも非製造業だ。6ヵ月前比で見ると(TOPIX-0.65%とほぼ横ばい)、非鉄、機械、電気機器、その他製品などが二ケタ上昇で、「製造業の復権」色が出ている。
ドル円が前年比-12.8%、半年前比-4.3%なので、為替分を除くと日本株は小幅上昇にある。皮肉な事に、上海総合指数の1年前比-10.3%、半年前比-1.2%と最も近似している。「復権」と言うのは大袈裟だが、製造業の懸念が和らいでいるのは、為替の安定化(円高懸念の一服)が大きいと見られるが、米大統領選が3週間後に迫り、「どっちもどっち」(どちらにも与したくない)とされた戦いに一定の方向性が出る(世界経済の混迷要因が薄れる)ことを期待していることも考えられる。設備投資など企業が動き易い環境を期待、最近の日本企業の活発なM&Aや設備投資計画は、その表れと受け止める動きだ。
米大統領選と並ぶぐらいの「どっちもどっち」態勢だった中国情勢も来週の六中全会(共産党大会)で当面のヤマ場を迎える。日経新聞が「習近平の支配」シリーズを始め(本日2回目)、その攻防点を紹介しているが、今年前半は「ゾンビ企業一掃」の改革派と「失業増を招かない穏やかな改革」の穏健派の鬩ぎ合いが、腐敗追及の権力闘争となり、厳しかった。ただ、夏場以降、自動車減税の奏功で自動車販売が増加、日本車が恩恵を受け、本日のホンダの新工場投資再開ニュースにつながっている(集計はしていないが、日本企業の中国投資の動きは増えているように思われる)。
「習近平の改革」が大流だとしても、「大国の夢」を掲げる目標は空洞化しやすい。14日付ロイターは「遠のくサッカーW杯、中国の野望に冷や水」との解説記事を掲載。サッカー好きの習近平が目指す大国は程遠い状況を示した。国営の環球時報ですら「巨費を投じた国内サッカーの表面的な繁栄は偽りのバブルであり、狂気の資本と人材輸入によって膨らませたもの」と批判していると言う。国内だけでなく昨年末から既に30億ドル投資したと言われる海外サッカー市場への投資熱も冷めつつあるとされる。
習主席は最近、カンボジア、バングラデシュ、インドでのBRICs会議と回り、本日はフィリピンのドゥテルテ大統領を迎える。活発な周辺外交を展開しているが、その攻勢はあまり話題になっていない。むしろ、香港で「香港を乱す災いの元凶」として、党内序列3位の張徳江常務委員(全人代委員長)が親中メディアから連日の糾弾を受けたことが話題だ。9月末から10月初めに報道されたが、習執行部の許可がないと行えないものとして注目されている。来年の大人事異動の前に失脚する可能性があるのか、上海閥代表とされる張氏の動静が注目される。
年初来の高値圏にあった香港ハンセン指数は先週約3%下落、週明けの17日も0.84%下落した。高値圏の保ち合いを下離れる気配にある。米国の利上げ観測、中国の不動産低迷、マカオのカジノを代表に中国観光客の空振り、大陸投資家の投資急減などが要因に挙げられている。香港市場をウォッチしながら、中国情勢の落ち着き持続性を測ることになろう。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/10/18号)
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