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Eギャランティ Research Memo(9):長期的には保証残高で1兆円を目指す

注目トピックス 日本株
■中長期目標と成長戦略について

イー・ギャランティ<8771>では中期の経営目標として、連結経常利益で50億円をターゲットとしている。50億円を達成するためには、保証残高で現在の2.5〜3倍の規模となる7,000〜8,000億円が目安となる。既存サービスで年率10〜15%の成長を続けていくほか、新たなリスク受託サービスを開発し市場を開拓していくことで、成長率をさらに5%押し上げていく戦略だ。順調に進めば、5〜6年後には目標を達成できると見ている。また、M&Aによる業容拡大も視野に入れており、長期的には保証残高で1兆円を目指していく考えだ。今後の成長戦略については以下のとおりとなる。

(1)提携先金融機関の稼働率向上

現在の主力サービスである売上債権保証サービスについては、新規顧客獲得の6割強を占めている地方銀行の稼働率をさらに引き上げていく取り組みを強化していく。既に、51行の地方銀行と業務提携を結び全国エリアをカバーできているものの、提携先によって紹介案件数にバラつきがあり、稼働率の低い地方銀行(月間紹介件数で0〜2件程度)の比率はまだ全体の6〜7割を占めている状況にある。

稼働率が低い要因としては、提携先金融機関の営業マンが同社サービスを販売することに対するインセンティブがないことが大きい。このため、同社ではトップ営業により提携先の経営者層に対して同社サービスの価値を認識してもらい、人事査定評価にも盛り込んでもらうような取り組みを進めている。また、提携先に対してきめ細やかなフォロー体制を構築するため、専任担当者を1名配置している。こうした取り組みを前期から進めてきた結果、稼働率は2014年の2割から前年は3〜4割まで上昇するなど、その成果が顕在化しつつある。同社では今後も同様の取り組みを推進することで、顧客数及び保証残高の積み上げを進めていく方針だ。

(2)小口売上債権保証サービスの強化

同社は商品ラインナップ拡充の一環として、中小零細企業を対象とした小口の売上債権保証サービスを専門とした子会社、アールジー保証を2014年3月に設立している。顧客開拓は、Web経由が現在は中心だが販売代理店経由でも行っている。

小口売上債権の定義に関して明確に基準を定めているわけではないが、信用保証先企業1社当たりの平均保証額で見ると、同社の平均が600〜700万円であるのに対して、アールジー保証は100〜200万円の規模で引受けを行っている。売上規模はまだ小さいものの、着実に増加している。また、リスクが高いため保証料率も平均で9〜10%と全社平均の2%弱を大きく上回っており、収益性も高くなっている。このため今後、事業規模が拡大していけば収益に貢献度も大きくなると予想される。

同社ではこうした小口売上債権保証サービスを強化するため、販売チャネルとして信用金庫との提携を前期より活発化させている。信用金庫は対象顧客層となる中小零細企業の顧客を多く抱えているためだ。現在は5つの信用金庫と提携しているが、今後は四半期に1〜2件のペースで提携先を拡大していく。2016年3月末の信用金庫は全国で265行あり、開拓の余地は大きい。また、同時に現在1社にとどまっている販売代理店についても、今後増やす予定にしている。

なお、競合先となるトラスト&グロースの保証残高は直近で約90億円となっており、年率2ケタ台の高成長が続いている。今後も認知度の向上による普及拡大余地は大きく、高成長が期待される。

(3)輸出債権保証サービスの強化

輸出債権保証サービスについては、2013年12月に韓国で現地の大手損害保険会社など有力金融機関と提携し、サービスを本格的に開始したほか、2014年6月に中国交通銀行の日本支店と業務提携し、中国向けの債権保証サービスを開始したが、現状はやや伸び悩んでいるようだ。韓国についてはニーズを十分に据えられていないこと、中国については現地の提携先金融機関において無担保での保証枠が取りにくくなっていることなどが要因となっている。このため輸出債権の保証残高に関してはほぼ前年並みの水準にとどまっている。

このため、当面は輸出債権保証サービスについては現状維持が見込まれるが、アジア向けの輸出額は今後も増加していくことが予想されることから、将来的には東南アジアの保証事業会社などを対象にM&Aも視野に入れながら事業を拡大していく方針となっている。

なお、輸出債権保証サービスに関しては、独立行政法人日本貿易保険(NEXI)がサービスを行っているが、保証額の大きいサービスが中心となっている。中小企業に関しては、商社が信用保証も含めて実際の輸出取引を行うケースが多い。ただし、保証料率が同社の約5%に対して10〜20%と2倍以上高く設定されているため、同社が参入する余地は十分あるとみている。

(4)新サービスの拡充

同社は既存サービス以外にも、企業間取引における多様なリスクをヘッジするサービスを開発し、今後市場の開拓を進める計画となっている。具体的には、事業所用家賃保証サービス、リース債権保証サービス、ファクタリング保証サービスなどを計画している。

a)事業所用家賃保証サービス
事業所用家賃保証サービスとは、テナントとして入った事業者が家賃を滞納した場合に、不動産オーナーが家賃の未回収リスクをヘッジするためのサービスとなる。同様のサービスをトラスト&グロースが宅建ブレインズ※と提携して2014年から東京都内で開始しており、直近で保証残高は20億円弱の水準まで積み上がっている。同社は現在、提携先を開拓中であり、2017年3月期中にサービス開始を目指している。保証料率は低いものの、デフォルト率がほぼゼロパーセントのため、顧客を拡大することができれば高収益商品に育つ可能性がある。顧客基盤を持つ有力な提携先をいかに開拓できるかが、成長していくための重要なポイントになる。

※東京都内で約13,000社が加盟する東京都不動産協同組合の100%出資会社。

b)リース債権保証サービス
リース債権保証サービスについては現在開発段階ではあるものの、リース会社と提携して2017年3月期中のサービス開始を目指している。リース会社が許容するリスク限度額を超えた部分を同社が保証するサービスとなる。リース債権は中堅企業でも10億円単位となり、規模も大きいことから今後の成長が期待できる分野となる。

c)ファクタリング保証サービス
ファクタリング保証サービスは、ファクタリングを行う信託銀行向けのサービスとなる。現状、企業の財務戦略としてバランスシートの圧縮を進める方向にあり、そのなかで売上債権を早期に売却して資金化を図りたいとするニーズが増えている。信託銀行にとっては、買取り債権が増加するが、同時に未回収リスクも上昇することになり、リスク許容度を超えた部分に関して同社が保証するサービスとなる。

(5) M&A戦略について

M&A戦略に関しては信用保証サービスを行っている企業に対して、事業買収なども含めて候補先の探索を国内及びアジア市場において行っている。また、中小企業向けを顧客層とする中堅規模のファクタリング会社も対象として考えている。信用保証サービス以外の周辺サービスを拡充することで、多様な顧客ニーズに応えることが可能となり、結果的に顧客数の拡大に寄与すると考えているためだ。

欧米では企業間取引における信用保証サービスは一般的に普及しており、売上高が2,000億円規模の専業会社が欧州では3社あり、米国でもAIGが大手として事業を拡大している。こうしたなかで、国内では業界専業最大手の同社でも売上規模がまだ50億円程度にとどまっており、今後の成長余地は大きいと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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