ダイキアクシス Research Memo(9):海外事業はASEAN域内とインドでの飛躍を図る
[17/03/22]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略
2. 海外市場の開拓
アジア開発銀行(ADB)は、2030年までの15年間におけるアジアのインフラ需要を総額3,000兆円に上ると推定している。世界経済フォーラムは2016年版の報告書において「最も影響が大きいと思われるグローバルリスク」の3番目に「水危機」を挙げている。アジア13ヶ国で構成する「アジア水環境パートナーシップ(WEPA)」は水質汚濁防止を進めている。水質汚濁防止には従来のし尿処理だけでは不十分なため、生活排水を併せて処理する方向で環境規制の強化に動いており、日本の技術・製品力及び施設運営・保守にかかわるノウハウなどが評価される時代が到来したと言えるだろう。
水インフラビジネスは主要3業務で構成される。部材・部品・機器製造、装置設計・組立・施工・運転、事業運営・保守・管理(水売り)である。フランスのヴェオリアとスエズ、米国のGEウォーターなどのメジャーはすべての領域を網羅する。一方、日系企業は水処理機器、エンジニアリング、オーガナイザーなどの分野に特化している。ダイキアクシス<4245>は中小型をターゲットとして生活排水処理・事業場排水処理、公共水域浄化で主要3業務をカバーする機能を有する独自性がある。
(1) インドネシア
同社は、2013年10月にインドネシアのPT.BESTINDO AQUATEK SEJAHTERA(現 PT.DAIKI AXIS INDONESIA)を買収し、連結子会社とし、東南アジア地域の橋頭堡を獲得した。約6億円を投入して新工場を建設して2015年7月に本格稼働を開始し、生産能力を以前の5倍に拡大した。新規生産設備の導入により自動化を進め、日本品質を確立するとともに生産性を向上させた。製品面では1年中温暖な東南アジアでは低温時の対策が不要であることから、機能を絞り込んで製造コストを削減した。合併浄化槽を利用する住居、ビル、工場、商業施設の個別処理システムがターゲットになる。2017年は大型・中型・小型槽で各200〜250基、計400基超の生産稼働を見込んでいる。
2015年末に、「ASEAN(東南アジア諸国連合)経済共同体(AEC)」が発足した。域内人口は欧州連合(EU)を上回る6億2,000万人、域内総生産は2兆5000億ドルに達する。シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ブルネイの6ヶ国では、品目ベースで98%以上の域内関税が撤廃された。2018年には、自由貿易地域がCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)へ拡大する予定だ。2014年のAEC域内貿易額は6,083億ドルと10年間で2.3倍に増えた。目下、鉄道や国際幹線道路などの輸送網に関するインフラ整備が進められており、同社はインドネシアに生産拠点を有する強みを発揮することになるだろう。
同社は2015年6月にインドネシア第2の都市のスラバヤに支店を開設した。営業拠点を設ければ受注につながる状況にある。2015年8月に同社のグループ会社であることを明確にするため、子会社の商号を変更した。2015年4月に東京本社に海外展開を促進する東日本特需事業本部を設置した。東京から現地に進出している日系企業への働きかけや日本政府の支援策を活用する。インドネシアの子会社は現地企業を買収したため、ローカルな販売チャネルを有する。
同社は生産拠点を持つインドネシアの国内市場でシェアの拡大を図る。インドネシア政府は、2015年1月にインフラ開発5ヶ年計画をまとめており、総事業費は約51兆5千億円になる。ガソリン補助金の撤廃や燃料補助金を圧縮する一方、インフラ開発投資を拡充する。投資許可の窓口を集約し、着工までの期間を短縮するなどの投資促進策も打ち出す。インドネシアは都市や人口密集地域で水質汚濁が深刻な問題になっている。
インドネシア製をASEAN域内への輸出することでアドバンテージを取る。日系メーカーとの競争では、日本からの製品に15〜20%の関税がかかるのに対し、インドネシア製品にはかからずコスト優位性が発揮できる。
(2) ミャンマー
2016年1月にミャンマーにおける販売代理店として1社と契約し、納入実績ができた。ティラワ工場団地内の商業施設(処理能力188立米/日)と外資系のノボテル・ホテルへの設備(同300立米/日)、広告宣伝効果の高いナイトマーケット(ヤンゴン市)に6基(各20立米/日)とヤンゴン銀行(10立米/日)などである。新政権への移行により、公共事業の予算執行に進展がみられる。経済発展に伴う汚濁量増加に伴い、政府による規制運用が強化され、水質の汚濁状況を表すBOD(生物化学的酸素要求量)ではBOD20が標準化されている。ミャンマーの品質基準に、固有メーカー名と同等レベルのものとの表示があるが、クボタと同社が認定メーカーとなっている。既に、安定供給体制を確立しており、月間5〜10基の納入実績ができている。
(3) インド
インドでは「スワッチ・バーラト」(クリーン・インディア)がモディ政権の最優先課題の1つになっている。インドの下水道普及率は約15%にとどまる。2014年10月に発表された「クリーン・インディア」プロジェクトでは、国父マハトマ・ガンディーの生誕150周年になる2019年までに約3兆5,000億円を投じて、1億2,000万家庭に専用トイレを設置するという目標を掲げている。小中学校のトイレや公衆トイレも整備する。人口の約48%、農村では67%が専用のトイレを持っていないため、「屋外排泄」が恒常化しており、公衆衛生の脅威になっている。また、学校に男女別のトイレがないため、女子生徒が通学を断念する事態に陥っている。更に、夜間の屋外排泄が女性に対する性的暴行を引き起こす原因となっている。
同社は、2016年1月にローカルパートナーとMoU(了解覚書)を取り交わし、本格的な市場展開を模索している。2016年7月に、インド政府に浄化槽を寄贈し、製品品質をアピールした。浄化槽(処理能力10立米/日)の設置場所は、インド中西部にあるナーグプル市の公園内のトイレ、村の公衆トイレ、テストマーケティングとしてプラスチック工場の排水処理用の3件になる。
2017年4月にインド全土で排水量2,000立米以上の不動産に対し、水質汚濁防止の規制レベルが従来のBOD30からBOD10へ強化される予定である。新築だけでも膨大な需要が発生するが、既存設備にも規制が及ぶ。既設のセプティックタンク(腐敗槽)は汚水のみで生活排水の処理ができないため、強化される規制をクリアできない。ASEANインド包括的経済協力枠組み協定により、インドネシア製は日本からの輸出製品に対して関税面で優位性がある。現在、かなりの引き合いが来ており、今後の展開によってはインド国内に生産拠点を設けることも検討課題となるだろう。
(4) 中国
中国では、エンジニアリング会社として活動しており、日系企業から指名で大型案件が舞い込んでいる。農村部も環境規制が厳しくなっている。農産物が輸出されるため、水質汚濁による影響を防ぐための措置であり、今後の広がりに期待が高まっている。
(5) その他の地域
マレーシアでは日本の環境省にモデル事業が採択され、補助金による認証作業中である。環境省は2013年度より政府の成長戦略の一環として日本企業のアジア水ビジネス市場進出を支援する「アジア水環境改善モデル事業」を実施している。2014年度に公益財団法人 日本環境整備教育センター、(株)極東技工コンサルタントと同社の3社が提案した「マレーシアにおける浄化槽整備による生活排水処理事業」(浄化槽モデル)が採択された。同社はメーカーとしての役割を担う。同プロジェクトは日本の技術である汚水・生活排水の両方を処理する浄化槽で老朽化したコミュニティ・セプティックタンク(CST)を更新し、地域の衛生環境及び水環境の改善に貢献するというもの。日本企業と現地企業が協力し、浄化槽によるCSTの更新ビジネスを展開する。それと並行して、商用施設を対象とした浄化槽ビジネスも想定している。浄化槽の単品販売ではなく、レギュレーションからメンテナンスやチェック機能を含むトータルパッケージを提供するビジネスモデルが確立できれば、その後の事業展開がスムーズに行えることになるだろう。
農業国のベトナムは、BOD、窒素、アンモニアなどに対する排水規制の厳格化を進めており、処理性能の高い日本仕様製品への需要が期待される。同社は現在、ローカルパートナーを選定し、受注活動を開始した。アフリカのケニアでは、現地代理店と交渉中である。2016年8月にシンガポールにアジア市場の開拓を本格化させるため統括会社を設置した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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2. 海外市場の開拓
アジア開発銀行(ADB)は、2030年までの15年間におけるアジアのインフラ需要を総額3,000兆円に上ると推定している。世界経済フォーラムは2016年版の報告書において「最も影響が大きいと思われるグローバルリスク」の3番目に「水危機」を挙げている。アジア13ヶ国で構成する「アジア水環境パートナーシップ(WEPA)」は水質汚濁防止を進めている。水質汚濁防止には従来のし尿処理だけでは不十分なため、生活排水を併せて処理する方向で環境規制の強化に動いており、日本の技術・製品力及び施設運営・保守にかかわるノウハウなどが評価される時代が到来したと言えるだろう。
水インフラビジネスは主要3業務で構成される。部材・部品・機器製造、装置設計・組立・施工・運転、事業運営・保守・管理(水売り)である。フランスのヴェオリアとスエズ、米国のGEウォーターなどのメジャーはすべての領域を網羅する。一方、日系企業は水処理機器、エンジニアリング、オーガナイザーなどの分野に特化している。ダイキアクシス<4245>は中小型をターゲットとして生活排水処理・事業場排水処理、公共水域浄化で主要3業務をカバーする機能を有する独自性がある。
(1) インドネシア
同社は、2013年10月にインドネシアのPT.BESTINDO AQUATEK SEJAHTERA(現 PT.DAIKI AXIS INDONESIA)を買収し、連結子会社とし、東南アジア地域の橋頭堡を獲得した。約6億円を投入して新工場を建設して2015年7月に本格稼働を開始し、生産能力を以前の5倍に拡大した。新規生産設備の導入により自動化を進め、日本品質を確立するとともに生産性を向上させた。製品面では1年中温暖な東南アジアでは低温時の対策が不要であることから、機能を絞り込んで製造コストを削減した。合併浄化槽を利用する住居、ビル、工場、商業施設の個別処理システムがターゲットになる。2017年は大型・中型・小型槽で各200〜250基、計400基超の生産稼働を見込んでいる。
2015年末に、「ASEAN(東南アジア諸国連合)経済共同体(AEC)」が発足した。域内人口は欧州連合(EU)を上回る6億2,000万人、域内総生産は2兆5000億ドルに達する。シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ブルネイの6ヶ国では、品目ベースで98%以上の域内関税が撤廃された。2018年には、自由貿易地域がCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)へ拡大する予定だ。2014年のAEC域内貿易額は6,083億ドルと10年間で2.3倍に増えた。目下、鉄道や国際幹線道路などの輸送網に関するインフラ整備が進められており、同社はインドネシアに生産拠点を有する強みを発揮することになるだろう。
同社は2015年6月にインドネシア第2の都市のスラバヤに支店を開設した。営業拠点を設ければ受注につながる状況にある。2015年8月に同社のグループ会社であることを明確にするため、子会社の商号を変更した。2015年4月に東京本社に海外展開を促進する東日本特需事業本部を設置した。東京から現地に進出している日系企業への働きかけや日本政府の支援策を活用する。インドネシアの子会社は現地企業を買収したため、ローカルな販売チャネルを有する。
同社は生産拠点を持つインドネシアの国内市場でシェアの拡大を図る。インドネシア政府は、2015年1月にインフラ開発5ヶ年計画をまとめており、総事業費は約51兆5千億円になる。ガソリン補助金の撤廃や燃料補助金を圧縮する一方、インフラ開発投資を拡充する。投資許可の窓口を集約し、着工までの期間を短縮するなどの投資促進策も打ち出す。インドネシアは都市や人口密集地域で水質汚濁が深刻な問題になっている。
インドネシア製をASEAN域内への輸出することでアドバンテージを取る。日系メーカーとの競争では、日本からの製品に15〜20%の関税がかかるのに対し、インドネシア製品にはかからずコスト優位性が発揮できる。
(2) ミャンマー
2016年1月にミャンマーにおける販売代理店として1社と契約し、納入実績ができた。ティラワ工場団地内の商業施設(処理能力188立米/日)と外資系のノボテル・ホテルへの設備(同300立米/日)、広告宣伝効果の高いナイトマーケット(ヤンゴン市)に6基(各20立米/日)とヤンゴン銀行(10立米/日)などである。新政権への移行により、公共事業の予算執行に進展がみられる。経済発展に伴う汚濁量増加に伴い、政府による規制運用が強化され、水質の汚濁状況を表すBOD(生物化学的酸素要求量)ではBOD20が標準化されている。ミャンマーの品質基準に、固有メーカー名と同等レベルのものとの表示があるが、クボタと同社が認定メーカーとなっている。既に、安定供給体制を確立しており、月間5〜10基の納入実績ができている。
(3) インド
インドでは「スワッチ・バーラト」(クリーン・インディア)がモディ政権の最優先課題の1つになっている。インドの下水道普及率は約15%にとどまる。2014年10月に発表された「クリーン・インディア」プロジェクトでは、国父マハトマ・ガンディーの生誕150周年になる2019年までに約3兆5,000億円を投じて、1億2,000万家庭に専用トイレを設置するという目標を掲げている。小中学校のトイレや公衆トイレも整備する。人口の約48%、農村では67%が専用のトイレを持っていないため、「屋外排泄」が恒常化しており、公衆衛生の脅威になっている。また、学校に男女別のトイレがないため、女子生徒が通学を断念する事態に陥っている。更に、夜間の屋外排泄が女性に対する性的暴行を引き起こす原因となっている。
同社は、2016年1月にローカルパートナーとMoU(了解覚書)を取り交わし、本格的な市場展開を模索している。2016年7月に、インド政府に浄化槽を寄贈し、製品品質をアピールした。浄化槽(処理能力10立米/日)の設置場所は、インド中西部にあるナーグプル市の公園内のトイレ、村の公衆トイレ、テストマーケティングとしてプラスチック工場の排水処理用の3件になる。
2017年4月にインド全土で排水量2,000立米以上の不動産に対し、水質汚濁防止の規制レベルが従来のBOD30からBOD10へ強化される予定である。新築だけでも膨大な需要が発生するが、既存設備にも規制が及ぶ。既設のセプティックタンク(腐敗槽)は汚水のみで生活排水の処理ができないため、強化される規制をクリアできない。ASEANインド包括的経済協力枠組み協定により、インドネシア製は日本からの輸出製品に対して関税面で優位性がある。現在、かなりの引き合いが来ており、今後の展開によってはインド国内に生産拠点を設けることも検討課題となるだろう。
(4) 中国
中国では、エンジニアリング会社として活動しており、日系企業から指名で大型案件が舞い込んでいる。農村部も環境規制が厳しくなっている。農産物が輸出されるため、水質汚濁による影響を防ぐための措置であり、今後の広がりに期待が高まっている。
(5) その他の地域
マレーシアでは日本の環境省にモデル事業が採択され、補助金による認証作業中である。環境省は2013年度より政府の成長戦略の一環として日本企業のアジア水ビジネス市場進出を支援する「アジア水環境改善モデル事業」を実施している。2014年度に公益財団法人 日本環境整備教育センター、(株)極東技工コンサルタントと同社の3社が提案した「マレーシアにおける浄化槽整備による生活排水処理事業」(浄化槽モデル)が採択された。同社はメーカーとしての役割を担う。同プロジェクトは日本の技術である汚水・生活排水の両方を処理する浄化槽で老朽化したコミュニティ・セプティックタンク(CST)を更新し、地域の衛生環境及び水環境の改善に貢献するというもの。日本企業と現地企業が協力し、浄化槽によるCSTの更新ビジネスを展開する。それと並行して、商用施設を対象とした浄化槽ビジネスも想定している。浄化槽の単品販売ではなく、レギュレーションからメンテナンスやチェック機能を含むトータルパッケージを提供するビジネスモデルが確立できれば、その後の事業展開がスムーズに行えることになるだろう。
農業国のベトナムは、BOD、窒素、アンモニアなどに対する排水規制の厳格化を進めており、処理性能の高い日本仕様製品への需要が期待される。同社は現在、ローカルパートナーを選定し、受注活動を開始した。アフリカのケニアでは、現地代理店と交渉中である。2016年8月にシンガポールにアジア市場の開拓を本格化させるため統括会社を設置した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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