平野淳也:日本は仮想通貨の規制などの足かせで世界から周回遅れに【フィスコ・仮想通貨コラム】
[18/05/23]
提供元:株式会社フィスコ
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仮想通貨コラム
以下は、フィスコソーシャルレポーターの暗号通貨研究家の平野淳也氏(ブログ「junyahirano.com」、Twitter: @junbhirano)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。
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日本は、ビットフライヤー社が2017年を「仮想通貨元年」と銘打ち、本格的に市場が立ち上がりました。さらに2017年に世界で初めて仮想通貨に対する規制を施行して、事業者を登録制にした国でもあります。
3月に、国会で麻生財務相が「日本が仮想通貨で1番進んでいる」というような発言があり、一部メディアでは「仮想通貨大国」などという言葉も出てきますが、ただし、その評価は過剰だと言うのが、僕の認識です。その理由を下記で説明します。
日本の暗号通貨の規制の問題点
まず問題点として、日本の仮想通貨規制は設計ミスが多々見受けられます。というのも、金融目線で作られた規制なので、Dapps(分散型アプリケーション)や、管理主体を必要としないトラストレスな技術、アトミックスワップやライトニングネットワークといった仮想通貨技術の飛躍が期待される技術、DEX(従来のように管理者が存在する型ではない分散型取引所)などの開発はどうするべきか判別しないまま、規制の施行が先行しました。
そして、金融庁に登録した事業者の扱うコインが実質的に取り扱うコインのホワイトリストとして機能していて国内の取引所では新規のアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨の総称)がなかなか上場できず、日本で取り引き出来ないアルトコインを求めてBinanceやBittrexなど他国の仮想通貨取引所に日本居住者の顧客が流れています。
日本の暗号通貨に関する税金の問題
次に、現在の暗号通貨に関する税金の問題点を考えます。2018年時点の暗号通貨の税制の現状を改めて振り返ると、日本の暗号通貨は雑所得通算課税になります。個人の最高税率は、住民税と合わせて最高税率で55パーセントです。また、日本円との交換だけでなく、ビットコイン (BTC)とアルトコインの交換、アルトコインからアルトコインへの交換も利益の確定に含まれ、課税対象になります。
問題は大きくわけて、2つです。まず、第一の問題は単純に税金が高いことです。世界的に見てこれほどキャピタルゲインが高い国はありません。暗号通貨の世界はそもそもの思想から国境などなく、業界がグローバルに繋がっています。金融の世界で、お金は自由で、かつ安いところへ流れることは常識です。この高い税金は結果として国益を損ねるだろうと言わざるを得ません。
そして2つ目の問題点は、規制と同様ですが、この税制は暗号通貨の特殊性を考えずに金融商品と同じような想定で税制が組まれていることです。ご存知のように、ビットコインやその他の暗号通貨は支払いにも使用し得ます。しかし今の税制では、支払いのたびに利益確定の扱いになり、取得平均価格を算出して支払い税金を計算する必要があります。このような煩瑣な仕組みで支払いなどの一般利用は普及するでしょうか?
暗号通貨の文脈では世界をリードするために各国に先駆けて法整備をしたはずが、これでは世界をリードできるはずもありません。
また、暗号通貨は将来へ向けて様々な新しい技術の開発が日々進んでいます。例えば、取引所を介さずに異なるブロックチェーン上同士のアセットを交換できるインターオペラビリティ、マイクロペイメントを実現するライトニングネットワークなどが挙げられます。マシンtoマシンで高速で少額のアセットを交換するような新しい経済圏の未来予想もあります。
そのトランザクションのたびに、取得平均価格から納税金額を計算するというのは非常に非現実的です。
暗号通貨に関連する日本からのお金の流れ
日本で暗号通貨に関連するお金の流れを整理しますと、このようになります。
・中国でマイニングされたビットコインを日本円で輸入する
・ビットコインを通して、世界からICOトークンや草コイン(ジャンク債)を購入
・XRPなど海外の株式会社が販売するトークンを日本円で買う
・海外取引所の顧客として手数料を落とす
以上のように、ともかくお金が国外に流れているという構造です。ビットコインの取引ボリュームだけにおいては、仮想通貨大国かもしれませんが、このままの構造では取引ボリュームが増えれば増えるほど、日本からお金がでていくでしょう。
自国でマイニングしたビットコインをグローバルに向けて販売することは輸出産業であり、自国における海外プロジェクトのICOトークン自由販売を野放しにするのはジャンク債の販売を自由化しているのと同じなのです。
日本は「仮想通貨大国」ではない
バブル当時、ジャパンアズナンバーワンと呼ばれた一時期、円が基軸通貨になるのでは?という論調が一時期あったそうです。しかし、世界最大の軍事力と石油決済ネットワークを持ったアメリカや、為替市場を持っているイギリスに、日本円が対抗できる要素はないと今、歴史を振り返れば分かります。
もし日本が仮想通貨大国かもしれないというならば、このバブル当時に、円が世界をリードできるかも?と錯覚したことと似た勘違いをしているのかもしれません。世界各国が暗号通貨をどう利用するべきか試行錯誤しているときに、一番初めに規制をつくったことに胡座をかいてしまっているのだと思います。
アメリカが合法化したもの以外は、絶対に手を出さないという従米的な性格の日本が、近代ではじめて先端テクノロジー領域で、世界に先駆け法整備をしたことは事実で、これは素晴らしいことです。しかし、その規制を必要に応じ変化させる柔軟さが必要で、この理解が広まることを願うばかりです。
※2018年5月22日に執筆
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執筆者名:平野淳也
ブログ名:junyahirano.com
Twitter: @junbhirano
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日本は、ビットフライヤー社が2017年を「仮想通貨元年」と銘打ち、本格的に市場が立ち上がりました。さらに2017年に世界で初めて仮想通貨に対する規制を施行して、事業者を登録制にした国でもあります。
3月に、国会で麻生財務相が「日本が仮想通貨で1番進んでいる」というような発言があり、一部メディアでは「仮想通貨大国」などという言葉も出てきますが、ただし、その評価は過剰だと言うのが、僕の認識です。その理由を下記で説明します。
日本の暗号通貨の規制の問題点
まず問題点として、日本の仮想通貨規制は設計ミスが多々見受けられます。というのも、金融目線で作られた規制なので、Dapps(分散型アプリケーション)や、管理主体を必要としないトラストレスな技術、アトミックスワップやライトニングネットワークといった仮想通貨技術の飛躍が期待される技術、DEX(従来のように管理者が存在する型ではない分散型取引所)などの開発はどうするべきか判別しないまま、規制の施行が先行しました。
そして、金融庁に登録した事業者の扱うコインが実質的に取り扱うコインのホワイトリストとして機能していて国内の取引所では新規のアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨の総称)がなかなか上場できず、日本で取り引き出来ないアルトコインを求めてBinanceやBittrexなど他国の仮想通貨取引所に日本居住者の顧客が流れています。
日本の暗号通貨に関する税金の問題
次に、現在の暗号通貨に関する税金の問題点を考えます。2018年時点の暗号通貨の税制の現状を改めて振り返ると、日本の暗号通貨は雑所得通算課税になります。個人の最高税率は、住民税と合わせて最高税率で55パーセントです。また、日本円との交換だけでなく、ビットコイン (BTC)とアルトコインの交換、アルトコインからアルトコインへの交換も利益の確定に含まれ、課税対象になります。
問題は大きくわけて、2つです。まず、第一の問題は単純に税金が高いことです。世界的に見てこれほどキャピタルゲインが高い国はありません。暗号通貨の世界はそもそもの思想から国境などなく、業界がグローバルに繋がっています。金融の世界で、お金は自由で、かつ安いところへ流れることは常識です。この高い税金は結果として国益を損ねるだろうと言わざるを得ません。
そして2つ目の問題点は、規制と同様ですが、この税制は暗号通貨の特殊性を考えずに金融商品と同じような想定で税制が組まれていることです。ご存知のように、ビットコインやその他の暗号通貨は支払いにも使用し得ます。しかし今の税制では、支払いのたびに利益確定の扱いになり、取得平均価格を算出して支払い税金を計算する必要があります。このような煩瑣な仕組みで支払いなどの一般利用は普及するでしょうか?
暗号通貨の文脈では世界をリードするために各国に先駆けて法整備をしたはずが、これでは世界をリードできるはずもありません。
また、暗号通貨は将来へ向けて様々な新しい技術の開発が日々進んでいます。例えば、取引所を介さずに異なるブロックチェーン上同士のアセットを交換できるインターオペラビリティ、マイクロペイメントを実現するライトニングネットワークなどが挙げられます。マシンtoマシンで高速で少額のアセットを交換するような新しい経済圏の未来予想もあります。
そのトランザクションのたびに、取得平均価格から納税金額を計算するというのは非常に非現実的です。
暗号通貨に関連する日本からのお金の流れ
日本で暗号通貨に関連するお金の流れを整理しますと、このようになります。
・中国でマイニングされたビットコインを日本円で輸入する
・ビットコインを通して、世界からICOトークンや草コイン(ジャンク債)を購入
・XRPなど海外の株式会社が販売するトークンを日本円で買う
・海外取引所の顧客として手数料を落とす
以上のように、ともかくお金が国外に流れているという構造です。ビットコインの取引ボリュームだけにおいては、仮想通貨大国かもしれませんが、このままの構造では取引ボリュームが増えれば増えるほど、日本からお金がでていくでしょう。
自国でマイニングしたビットコインをグローバルに向けて販売することは輸出産業であり、自国における海外プロジェクトのICOトークン自由販売を野放しにするのはジャンク債の販売を自由化しているのと同じなのです。
日本は「仮想通貨大国」ではない
バブル当時、ジャパンアズナンバーワンと呼ばれた一時期、円が基軸通貨になるのでは?という論調が一時期あったそうです。しかし、世界最大の軍事力と石油決済ネットワークを持ったアメリカや、為替市場を持っているイギリスに、日本円が対抗できる要素はないと今、歴史を振り返れば分かります。
もし日本が仮想通貨大国かもしれないというならば、このバブル当時に、円が世界をリードできるかも?と錯覚したことと似た勘違いをしているのかもしれません。世界各国が暗号通貨をどう利用するべきか試行錯誤しているときに、一番初めに規制をつくったことに胡座をかいてしまっているのだと思います。
アメリカが合法化したもの以外は、絶対に手を出さないという従米的な性格の日本が、近代ではじめて先端テクノロジー領域で、世界に先駆け法整備をしたことは事実で、これは素晴らしいことです。しかし、その規制を必要に応じ変化させる柔軟さが必要で、この理解が広まることを願うばかりです。
※2018年5月22日に執筆
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執筆者名:平野淳也
ブログ名:junyahirano.com
Twitter: @junbhirano
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