世界初の木造人工衛星(LignoSat)完成、JAXAへ引き渡し宇宙での運用へ
[24/05/28]
提供元:共同通信PRワイヤー
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木の可能性を追及し木材利用の拡大を目指す
2024年5月28日
住友林業
国立大学法人京都大学(総長:湊 長博/以下、京都大学)と住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎/以下、住友林業)が2020年4月より取り組んできた「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」※1で、約4年かけて開発した木造人工衛星(LignoSat)※2が完成しました。6月4日、JAXA※3へ引き渡します。完成した木造人工衛星は1辺が100mm角のキューブサットと呼ばれる超小型の衛星で、NASA※4/JAXAの数々の厳しい安全審査を無事通過。世界で初めて宇宙での木材活用が公式に認められました。
宇宙空間での運用に向け今年9月に、米国フロリダ州のケネディ宇宙センター(Kennedy Space Center)から打ち上げ予定のスペースX社(Space Exploration Technologies Corp.)のロケットに搭載し国際宇宙ステーション(ISS)に移送します。ISS到着から約1か月後に「きぼう」日本実験棟より宇宙空間に放出される予定です。今後は木造人工衛星から送信されるデータ解析を通じ、木の可能性を追求し木材利用の拡大を目指します。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202405281355-O1-d5mq7RE3】
■審査合格までの経緯と意義
今回の木造人工衛星の開発は2022年3月〜12月までISSの船外プラットフォームで実施した木材宇宙曝露実験※5※6をはじめ、地上での振動試験、熱真空試験、アウトガス試験など様々な物性試験※7の結果得られたデータに基づいて行っています。木材宇宙曝露実験では温度変化が大きく強力な宇宙線が飛び交う過酷な宇宙の環境下でも、割れ、反り、剥がれ等はなく木材の優れた強度や耐久性を確認しています。その他の地上試験でも木材は宇宙飛行士の健康や安全、精密機器や光学部品などに悪影響を及ぼさないことが明らかになりました。数々の実験、試験を経てNASA/JAXAの審査に合格したことで、宇宙空間での木材活用の安全性が証明されました。
木造人工衛星がNASA/JAXAの安全審査に合格し、宇宙空間での木材利用が認められたことは宇宙業界にとっても木材業界にとっても非常に貴重な1歩です。持続可能な資源である木の可能性を広げ、更なる木材利用を推進する上で大きな意義があります。
宇宙空間ではスペースデブリ(宇宙ゴミ)とならないよう、役目を終えた小型の人工衛星は大気圏に再突入させ、燃焼させることが国際ルールとなっています。従来の金属製の衛星では、燃焼の際にアルミナ粒子と呼ばれる微粒子を発生し、地球の気候や通信に悪影響を及ぼす可能性があります。木材は大気圏再突入で燃え尽きるため、将来的に木造の人工衛星が増えることで、この影響の低減が期待できます。
各種物性試験の結果から、宇宙でも安定して使用できる樹種として今回打ち上げる木造人工衛星の実機(フライトモデル)の構体にはホオノキ材を選定しています。住友林業紋別社有林で伐採したホオノキを使用し、構体の構造はネジや接着剤を一切使わず精緻かつ強固に組み上げる「留形隠し蟻組接ぎ(とめがたかくしありくみつぎ)」と呼ばれる日本古来の伝統的技法を採用しています。
■今後の展望
ISSから放出後は木造構体のひずみ、内部温度分布、地磁気、ソフトエラーを測定し、京都大学構内に設置された通信局にデータを送信する計画です。今後はこの木造人工衛星から得られる各種データの分析を進めます。
京都大学は今回のLignoSat1号機の開発ノウハウと運用データを、これから計画を進める2号機の設計や2号機で計測を検討するデータの基礎資料としていきます。
住友林業は今回の開発を通して得られた知見をさらに分析し、ナノレベルでの物質劣化の根本的なメカニズムの解明を目指します。このメカニズムを解明することで木材の劣化抑制技術の開発、高耐久木質外装材などの高機能木質建材や木材の新用途開発を推進します。従来は木材が使われていなかった箇所での活用、例えばデータセンター施設等への木材利用の拡大に繋げ、林業界、木材業界の発展に貢献します。
※1 参考:「住友林業、京都大学と宇宙木材プロジェクトをスタート」リリース(2020年12月)https://sfc.jp/information/news/2020/2020-12-23.html。LignoStella(リグノステラ)は、Ligno(木)とStella(星)からなる造語で本プロジェクトにて命名。
※2 LignoSat(リグノサット)は、Ligno(木)とSatellite(人工衛星)からなる造語で本プロジェクトにて命名。
※3 JAXA:宇宙航空研究開発機構/Japan Aerospace Exploration Agency
※4 NASA:アメリカ航空宇宙局/National Aeronautics and Space Administration
※5 参考:「京都大学と住友林業 世界初の木材の宇宙曝露実験」リリース(2021年8月) https://sfc.jp/information/news/2021/2021-08-25.html
※6 参考:「世界初、10か月間の木材宇宙曝露実験を完了」リリース(2023年5月)https://sfc.jp/information/news/2023/2023-05-12.html
※7 様々な物性試験詳細
・振動試験:衛星にロケット打ち上げ時などで想定される振動を与え、固有周波数が共振しないものであること、および破壊など不具合が生じないことを検証する試験
・熱真空試験:真空の状態で衛星を熱(低温〜高温)に晒し、不具合が生じず、想定通り動作することを検証する試験
・アウトガス試験:木材を高温にさらした際に有害なガスを発生しないかどうかの試験
■経緯・今後のスケジュール
2020年4月 京都大学と住友林業は2020年4月「宇宙における樹木育成・木材利用に関する基礎的研究」に共同であたる研究契約を締結し「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」をスタート。木造人工衛星打ち上げをめざし開発を進める。
2020年11月 住友林業紋別社有林で木造構体用ホオノキ材を伐採。
2022年3月 国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟の船外曝露プラットフォームで宇宙曝露試験を開始。
2022年10月 文科省「令和4年度宇宙航空科学技術推進委託費」に採択。
2022年12月 294日間の宇宙曝露実験を完了。
2024年3月 木造人工衛星LignoSatフライトモデル完成。
2024年4月 内閣総理大臣より人工衛星管理許可証交付。
2024年5月 NASA/JAXAの安全審査合格。
2024年6月 JAXAへLingnoSat引き渡し。
2024年9月 LignoSatをロケットに搭載し打ち上げ。
2024年11月 LignoSat宇宙空間で運用開始予定。
2024年5月28日
住友林業
国立大学法人京都大学(総長:湊 長博/以下、京都大学)と住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎/以下、住友林業)が2020年4月より取り組んできた「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」※1で、約4年かけて開発した木造人工衛星(LignoSat)※2が完成しました。6月4日、JAXA※3へ引き渡します。完成した木造人工衛星は1辺が100mm角のキューブサットと呼ばれる超小型の衛星で、NASA※4/JAXAの数々の厳しい安全審査を無事通過。世界で初めて宇宙での木材活用が公式に認められました。
宇宙空間での運用に向け今年9月に、米国フロリダ州のケネディ宇宙センター(Kennedy Space Center)から打ち上げ予定のスペースX社(Space Exploration Technologies Corp.)のロケットに搭載し国際宇宙ステーション(ISS)に移送します。ISS到着から約1か月後に「きぼう」日本実験棟より宇宙空間に放出される予定です。今後は木造人工衛星から送信されるデータ解析を通じ、木の可能性を追求し木材利用の拡大を目指します。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202405281355-O1-d5mq7RE3】
■審査合格までの経緯と意義
今回の木造人工衛星の開発は2022年3月〜12月までISSの船外プラットフォームで実施した木材宇宙曝露実験※5※6をはじめ、地上での振動試験、熱真空試験、アウトガス試験など様々な物性試験※7の結果得られたデータに基づいて行っています。木材宇宙曝露実験では温度変化が大きく強力な宇宙線が飛び交う過酷な宇宙の環境下でも、割れ、反り、剥がれ等はなく木材の優れた強度や耐久性を確認しています。その他の地上試験でも木材は宇宙飛行士の健康や安全、精密機器や光学部品などに悪影響を及ぼさないことが明らかになりました。数々の実験、試験を経てNASA/JAXAの審査に合格したことで、宇宙空間での木材活用の安全性が証明されました。
木造人工衛星がNASA/JAXAの安全審査に合格し、宇宙空間での木材利用が認められたことは宇宙業界にとっても木材業界にとっても非常に貴重な1歩です。持続可能な資源である木の可能性を広げ、更なる木材利用を推進する上で大きな意義があります。
宇宙空間ではスペースデブリ(宇宙ゴミ)とならないよう、役目を終えた小型の人工衛星は大気圏に再突入させ、燃焼させることが国際ルールとなっています。従来の金属製の衛星では、燃焼の際にアルミナ粒子と呼ばれる微粒子を発生し、地球の気候や通信に悪影響を及ぼす可能性があります。木材は大気圏再突入で燃え尽きるため、将来的に木造の人工衛星が増えることで、この影響の低減が期待できます。
各種物性試験の結果から、宇宙でも安定して使用できる樹種として今回打ち上げる木造人工衛星の実機(フライトモデル)の構体にはホオノキ材を選定しています。住友林業紋別社有林で伐採したホオノキを使用し、構体の構造はネジや接着剤を一切使わず精緻かつ強固に組み上げる「留形隠し蟻組接ぎ(とめがたかくしありくみつぎ)」と呼ばれる日本古来の伝統的技法を採用しています。
■今後の展望
ISSから放出後は木造構体のひずみ、内部温度分布、地磁気、ソフトエラーを測定し、京都大学構内に設置された通信局にデータを送信する計画です。今後はこの木造人工衛星から得られる各種データの分析を進めます。
京都大学は今回のLignoSat1号機の開発ノウハウと運用データを、これから計画を進める2号機の設計や2号機で計測を検討するデータの基礎資料としていきます。
住友林業は今回の開発を通して得られた知見をさらに分析し、ナノレベルでの物質劣化の根本的なメカニズムの解明を目指します。このメカニズムを解明することで木材の劣化抑制技術の開発、高耐久木質外装材などの高機能木質建材や木材の新用途開発を推進します。従来は木材が使われていなかった箇所での活用、例えばデータセンター施設等への木材利用の拡大に繋げ、林業界、木材業界の発展に貢献します。
※1 参考:「住友林業、京都大学と宇宙木材プロジェクトをスタート」リリース(2020年12月)https://sfc.jp/information/news/2020/2020-12-23.html。LignoStella(リグノステラ)は、Ligno(木)とStella(星)からなる造語で本プロジェクトにて命名。
※2 LignoSat(リグノサット)は、Ligno(木)とSatellite(人工衛星)からなる造語で本プロジェクトにて命名。
※3 JAXA:宇宙航空研究開発機構/Japan Aerospace Exploration Agency
※4 NASA:アメリカ航空宇宙局/National Aeronautics and Space Administration
※5 参考:「京都大学と住友林業 世界初の木材の宇宙曝露実験」リリース(2021年8月) https://sfc.jp/information/news/2021/2021-08-25.html
※6 参考:「世界初、10か月間の木材宇宙曝露実験を完了」リリース(2023年5月)https://sfc.jp/information/news/2023/2023-05-12.html
※7 様々な物性試験詳細
・振動試験:衛星にロケット打ち上げ時などで想定される振動を与え、固有周波数が共振しないものであること、および破壊など不具合が生じないことを検証する試験
・熱真空試験:真空の状態で衛星を熱(低温〜高温)に晒し、不具合が生じず、想定通り動作することを検証する試験
・アウトガス試験:木材を高温にさらした際に有害なガスを発生しないかどうかの試験
■経緯・今後のスケジュール
2020年4月 京都大学と住友林業は2020年4月「宇宙における樹木育成・木材利用に関する基礎的研究」に共同であたる研究契約を締結し「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」をスタート。木造人工衛星打ち上げをめざし開発を進める。
2020年11月 住友林業紋別社有林で木造構体用ホオノキ材を伐採。
2022年3月 国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟の船外曝露プラットフォームで宇宙曝露試験を開始。
2022年10月 文科省「令和4年度宇宙航空科学技術推進委託費」に採択。
2022年12月 294日間の宇宙曝露実験を完了。
2024年3月 木造人工衛星LignoSatフライトモデル完成。
2024年4月 内閣総理大臣より人工衛星管理許可証交付。
2024年5月 NASA/JAXAの安全審査合格。
2024年6月 JAXAへLingnoSat引き渡し。
2024年9月 LignoSatをロケットに搭載し打ち上げ。
2024年11月 LignoSat宇宙空間で運用開始予定。