ヒトが超音波を内耳で受容する仕組みを発見
[24/07/30]
提供元:共同通信PRワイヤー
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〜動物が感知する音域「可聴域」の概念を覆す成果〜
2024年7月30 日
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学
ヒトが超音波を内耳で受容する仕組みを発見 〜動物が感知する音域「可聴域」の概念を覆す成果〜
本研究のポイント
・任教授らは、可聴域を超える超音波で動物を刺激した時の生体の電気的応答を蝸牛から確認し、蝸牛の「フック部」において超高速のナノ振動を観測した。
・非可聴域の超音波受容の原理として、フック部有毛細胞が通常受け取る周波数に加えて、その整数倍の周波数(高調波)の音波に応答することが見出された。
・蝸牛の新しい音受容機構の発見により、ヒトが超音波を聴取する能力「超音波聴覚」が難聴の早期診断などに応用できる可能性が示された。
岐阜大学大学院医学系研究科生命原理学講座生体物理・生理学分野、高等研究院One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター先端医療機器開発部門の任書晃教授と新潟大学自然科学系(工学部)の崔森悦准教授らのグループは、モルモットの内耳蝸牛に本来動物が聞くことができない高い周波数を持つ超音波を与えると、蝸牛の入り口に位置するフック部の有毛細胞が超音波に同期して超高速で振動・活性化することを世界で初めて実証しました。有毛細胞とは、蝸牛で音を電気に変換する細胞です。可聴音を認識する有毛細胞が、本来受け取る周波数とその整数倍の音を感知することが超音波受容の原理です。論文は、日本時間2024年7月25日付で“米国アカデミー紀要 Nexus”に掲載されました。
研究背景
20 kHzを超える超音波はイルカやコウモリなど限られた動物が聴取可能とされてきました。しかし、ヒトでも骨を介した音刺激を用いれば超音波を聴取できることが知られています。この現象は「超音波聴覚」と呼ばれ、その発見以来75年以上にわたり謎でした。従来想定されてきた仕組みとして、超音波が聴覚に関する神経を刺激する、骨により超音波が可聴音へと変調するなどの可能性がありましたが、決定的な証拠はありませんでした。
研究の概要
全身麻酔をかけたモルモットに可聴域を超える超音波を与え、神経の興奮と有毛細胞の電流を測定しました。通常、側頭骨を介した音刺激でのみ非可聴域の超音波が知覚されますが(図:赤矢印)、中耳の骨「耳小骨」に直接超音波刺激を加えると、超音波を知覚できました。すなわち、蝸牛は本来超音波を受容できることが判明しました(図:青矢印)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202407304348-O7-a4A04mHJ】
図 超音波検出時のフック部有毛細胞の動作原理と新しい可聴域
さらに、先端光学計測装置である光干渉断層撮影装置(OCT)を活用して、音が有毛細胞に引き起こす1000億分の1センチの振動をフック部で測定しました。フック部は可聴域の上限付近の高い周波数の音を受け取る場所です。振動を解析すると、有毛細胞は通常受容する可聴域の周波数に加えて、その2倍、3倍の周波数(高調波、図:緑四角)に応答していました。この応答が、可聴域を超える超音波の感知を可能にします(図:新しい可聴域)。
今後の展開
本研究成果により、超音波聴覚が有毛細胞機能を反映することが明らかになり、今後難聴の早期診断や新しい補聴方法の開発などに繋がる可能性があります。
論文情報
雑誌名:米国科学アカデミー紀要 Nexus(PNAS Nexus)
論文タイトル:The cochlear hook region detects harmonics beyond the canonical hearing range (蝸牛フック部は非可聴域の高調波超音波を検出する)
著者:堀井和広、小川博史、長瀬典子、森元伊織、安部力、小川武則、崔森悦、任書晃
DOI: 10.1093/pnasnexus/pgae280
関連特許
整理番号:SN004562 受付番号:52300669262 提出日:令 5. 3.29
出願番号通知:特願2023-52866
発明の名称:聴覚検査装置および聴覚検査方法
研究者プロフィール
任 書晃(にん ふみあき) 博士(医学)
岐阜大学大学院医学系研究科 生命原理学講座 生体物理・生理学分野 教授
1994年4月〜2000年3月 京都府立医科大学医学部医学科
2005年4月〜2009年3月 京都府立医科大学大学院医学系研究科博士課程
2010年6月〜2012年8月 米国ロックフェラー大学博士研究員
2012年9月〜2015年3月 新潟大学大学院医歯学総合研究科分子生理学助教
2015年4月〜2020年8月 新潟大学大学院医歯学総合研究科分子生理学准教授
2020年9月〜 現職
2024年7月30 日
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学
ヒトが超音波を内耳で受容する仕組みを発見 〜動物が感知する音域「可聴域」の概念を覆す成果〜
本研究のポイント
・任教授らは、可聴域を超える超音波で動物を刺激した時の生体の電気的応答を蝸牛から確認し、蝸牛の「フック部」において超高速のナノ振動を観測した。
・非可聴域の超音波受容の原理として、フック部有毛細胞が通常受け取る周波数に加えて、その整数倍の周波数(高調波)の音波に応答することが見出された。
・蝸牛の新しい音受容機構の発見により、ヒトが超音波を聴取する能力「超音波聴覚」が難聴の早期診断などに応用できる可能性が示された。
岐阜大学大学院医学系研究科生命原理学講座生体物理・生理学分野、高等研究院One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター先端医療機器開発部門の任書晃教授と新潟大学自然科学系(工学部)の崔森悦准教授らのグループは、モルモットの内耳蝸牛に本来動物が聞くことができない高い周波数を持つ超音波を与えると、蝸牛の入り口に位置するフック部の有毛細胞が超音波に同期して超高速で振動・活性化することを世界で初めて実証しました。有毛細胞とは、蝸牛で音を電気に変換する細胞です。可聴音を認識する有毛細胞が、本来受け取る周波数とその整数倍の音を感知することが超音波受容の原理です。論文は、日本時間2024年7月25日付で“米国アカデミー紀要 Nexus”に掲載されました。
研究背景
20 kHzを超える超音波はイルカやコウモリなど限られた動物が聴取可能とされてきました。しかし、ヒトでも骨を介した音刺激を用いれば超音波を聴取できることが知られています。この現象は「超音波聴覚」と呼ばれ、その発見以来75年以上にわたり謎でした。従来想定されてきた仕組みとして、超音波が聴覚に関する神経を刺激する、骨により超音波が可聴音へと変調するなどの可能性がありましたが、決定的な証拠はありませんでした。
研究の概要
全身麻酔をかけたモルモットに可聴域を超える超音波を与え、神経の興奮と有毛細胞の電流を測定しました。通常、側頭骨を介した音刺激でのみ非可聴域の超音波が知覚されますが(図:赤矢印)、中耳の骨「耳小骨」に直接超音波刺激を加えると、超音波を知覚できました。すなわち、蝸牛は本来超音波を受容できることが判明しました(図:青矢印)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202407304348-O7-a4A04mHJ】
図 超音波検出時のフック部有毛細胞の動作原理と新しい可聴域
さらに、先端光学計測装置である光干渉断層撮影装置(OCT)を活用して、音が有毛細胞に引き起こす1000億分の1センチの振動をフック部で測定しました。フック部は可聴域の上限付近の高い周波数の音を受け取る場所です。振動を解析すると、有毛細胞は通常受容する可聴域の周波数に加えて、その2倍、3倍の周波数(高調波、図:緑四角)に応答していました。この応答が、可聴域を超える超音波の感知を可能にします(図:新しい可聴域)。
今後の展開
本研究成果により、超音波聴覚が有毛細胞機能を反映することが明らかになり、今後難聴の早期診断や新しい補聴方法の開発などに繋がる可能性があります。
論文情報
雑誌名:米国科学アカデミー紀要 Nexus(PNAS Nexus)
論文タイトル:The cochlear hook region detects harmonics beyond the canonical hearing range (蝸牛フック部は非可聴域の高調波超音波を検出する)
著者:堀井和広、小川博史、長瀬典子、森元伊織、安部力、小川武則、崔森悦、任書晃
DOI: 10.1093/pnasnexus/pgae280
関連特許
整理番号:SN004562 受付番号:52300669262 提出日:令 5. 3.29
出願番号通知:特願2023-52866
発明の名称:聴覚検査装置および聴覚検査方法
研究者プロフィール
任 書晃(にん ふみあき) 博士(医学)
岐阜大学大学院医学系研究科 生命原理学講座 生体物理・生理学分野 教授
1994年4月〜2000年3月 京都府立医科大学医学部医学科
2005年4月〜2009年3月 京都府立医科大学大学院医学系研究科博士課程
2010年6月〜2012年8月 米国ロックフェラー大学博士研究員
2012年9月〜2015年3月 新潟大学大学院医歯学総合研究科分子生理学助教
2015年4月〜2020年8月 新潟大学大学院医歯学総合研究科分子生理学准教授
2020年9月〜 現職