インダストリー4.0から学ぶドイツ企業の競争力の源泉
[15/06/26]
提供元:PRTIMES
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イノベーションワークショップ2015「IoTでビジネスを変える〜第四次産業革命の最前線〜」第1回
フューチャー イノベーション フォーラム(略称=FIF、代表=牛尾治朗・ウシオ電機株式会社会長、金丸恭文・フューチャーアーキテクト株式会社会長兼社長)は、6 月11日にイノベーションワークショップ2015の第1回を開催しました。
本ワークショップは次世代リーダーの育成と業界を超えた企業同士の交流を深める場として2007年にスタートしました。本年は「IoTでビジネスを変える」をテーマに全3回シリーズで開催します。ドイツと米国で進行している第4次産業革命の事例を中心に、IoTが製造業だけでなく流通や小売り、サービス業でもビジネスを変える可能性があることを示唆し、日本ならではのIoTビジネスのあり方や自社ビジネスの変革について議論を重ねます。
[画像: http://prtimes.jp/i/4374/109/resize/d4374-109-892653-0.jpg ]
【開催概要】
講演者: 独立行政法人日本貿易振興機構 海外調査部欧州ロシアCIS課 課長 前田篤穂
テーマ: インダストリー4.0から学ぶドイツ企業の競争力の源泉
コーディネーター:サイバー大学 IT総合学部 専任教授 前川徹
コメンテーター:東京大学 先端科学技術研究センター 教授 森川博之
日 時: 2015年6月11日(木) 18:00 〜 20:10
会 場: フューチャーアーキテクト株式会社
【講演概要】
ドイツは産業別GDPに占める製造業の比率が他のEU諸国に比べて高く、ユーロ危機以降でも失業率が好転するなど底堅い。こうした社会背景と国際競争力向上に向け、「IoTの活用」や「インダストリー4.0」を国策として進めている。「インダストリー4.0」の取り組みにおいては企業、産業団体、有識者が相互協力しながら委員会形式で運営され、ドイツ工業アカデミーやロバート・ボッシュが中心となり作業グループが発足。現在ではワーキンググループがロードマップを整備している。主力産業である自動車業界などの製造業では「インダストリー4.0」の導入事例が出ており、製造業以外にも応用できるポイントが見られる。ここから日本企業が学ぶべきことや新たなビジネスの可能性について示唆する。
◆グローバルな情勢
2011年にドイツ政府は「ハイテク戦略2020行動計画」のひとつとして「インダストリー4.0」を提唱し、企業、産業団体、有識者が協力しながらインターネットによる産業(モノづくり)のデジタル化を推進する「第4次産業革命」に活路を見出そうとしている。
「インダストリー4.0」は、情報通信技術を活用し、開発・生産から消費にいたる製造業の効率的な統合を図る戦略であり、受注から出荷までのプロセス・情報をリアルタイムに統括管理していくことと捉えられているが、特にドイツでは自国の強みでもある「センサー技術」を駆使し、様々な生産プロセスから得られる情報をビッグデータ化し、将来予測による最適な生産ネットワークを確立する「スマートファクトリー」を目指している。生産拠点をドイツ国内に置きつつ、設備の自動化によって国際競争力を高め、将来はEU全域における共通のイノベーション基盤として確立しようとしている。
ドイツが「インダストリー4.0」に力を入れる背景には 米国の存在が大きい。米国ではドイツとは異なり、民間主導でオープンな有志連合「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(略称IIC)」が設立され、米国のみならず日本をはじめとするアジア各国、さらに欧州も含めた民間企業が参画し、ITを活用した生産システムの標準化などを目指している。こうした流れを受け、このままではモノづくり大国である日本が新たな生産システムの導入を図る欧米に対して劣位になりかねないという危機感から、日本でも今年5月に「ロボット革命イニシアティブ協議会」が設立された。
◆インダストリー4.0の実像と背景
「インダストリー4.0」を掲げたドイツの背景には、スマートファクトリーによるエネルギーの効率化や、人の経験値や勘をビッグデータ解析による内部蓄積で潜在的な人手不足を解消していこうという動きがある。
ドイツでは既に企業に変化をもたらす事例も生まれている。微小な無線チップにより人やモノを識別・管理するRFID(Radio Frequency Identification)を使うことで、ボッシュの中国事業所では在庫調査の作業時間を97%削減させ、ハンガリー事業所では保守部品の在庫を大幅に削減させた。さらにドイツ事業所では、センサーを使って熟練工のネジ回しの回転速度や強度を計測し、最適なプロセス分析をすることで品質改善を行っている。
ドイツにおいて「インダストリー4.0」は機械、自動車分野で特に経済効果があると見られており、大企業だけでなく中小企業でも「インダストリー4.0」への対応や導入が進んでいる。しかし、一方で課題も多い。新たなコンセプトのため実態が掴めず、企業や専門家など関係者の間に認識のギャップがあるほか、成果を享受するにはまだ時間を要するという現状だ。また、理念主導の欧州型でプロジェクトが進められているため、利益主導の米国に先行されるのではという懸念もある。BtoCの覇権を握る米国に対してドイツはBtoBに活路を見出そうとしており、モノづくりのプラットフォームをめぐる主導権争いは今後も続くと思われる。
◆企業における応用の可能性
フォルクスワーゲンはマルチブランドを展開しているため、開発・設計コンセプトが多岐にわたり、生産が非効率になりやすいという課題を長年抱えていた。しかし、同社は2012年2月よりモジュール・トランスバース・ツールキット(略称MQB)戦略を打ち出し、自動車開発や設計プロセスを刷新し、車輛の約60%に相当するユニットの共通化を進めている。さらに、基幹ユニットの統一化によって車長や車幅を自在に拡大・縮小できるようになり、急な需要変化に対して稼働状況に応じて柔軟に生産枠を変更する生産ラインを実現させ、高い生産性と利益率をあげている。
「インダストリー4.0」の実用は、従来の勘や摺り合わせ技術をデジタル化するところから生まれると考えている。だからこそ、製造業では開発期間の短縮や多品種少量化を実現できる可能性があり、さらには農業といった熟練者の勘がモノをいう分野にも応用できるのではないかと思う。また、ドイツには様々なニッチチャンピオンが存在するため、個社が持っている技術をどこまでオープン化し、ギブ&テイクできるかということも鍵となる。自社の技術を提供し、産業界、さらには国として、売り出していくことができれば製造業の枠を超えてイノベーションが起こるのではないかと期待しており、そのあり方こそ日本の目指すべき方向性の参考になるのではないかと感じている。
【本ワークショップに関するお問い合わせ】FIF事務局 TEL:03‐5740‐5817
フューチャー イノベーション フォーラム(略称=FIF、代表=牛尾治朗・ウシオ電機株式会社会長、金丸恭文・フューチャーアーキテクト株式会社会長兼社長)は、6 月11日にイノベーションワークショップ2015の第1回を開催しました。
本ワークショップは次世代リーダーの育成と業界を超えた企業同士の交流を深める場として2007年にスタートしました。本年は「IoTでビジネスを変える」をテーマに全3回シリーズで開催します。ドイツと米国で進行している第4次産業革命の事例を中心に、IoTが製造業だけでなく流通や小売り、サービス業でもビジネスを変える可能性があることを示唆し、日本ならではのIoTビジネスのあり方や自社ビジネスの変革について議論を重ねます。
[画像: http://prtimes.jp/i/4374/109/resize/d4374-109-892653-0.jpg ]
【開催概要】
講演者: 独立行政法人日本貿易振興機構 海外調査部欧州ロシアCIS課 課長 前田篤穂
テーマ: インダストリー4.0から学ぶドイツ企業の競争力の源泉
コーディネーター:サイバー大学 IT総合学部 専任教授 前川徹
コメンテーター:東京大学 先端科学技術研究センター 教授 森川博之
日 時: 2015年6月11日(木) 18:00 〜 20:10
会 場: フューチャーアーキテクト株式会社
【講演概要】
ドイツは産業別GDPに占める製造業の比率が他のEU諸国に比べて高く、ユーロ危機以降でも失業率が好転するなど底堅い。こうした社会背景と国際競争力向上に向け、「IoTの活用」や「インダストリー4.0」を国策として進めている。「インダストリー4.0」の取り組みにおいては企業、産業団体、有識者が相互協力しながら委員会形式で運営され、ドイツ工業アカデミーやロバート・ボッシュが中心となり作業グループが発足。現在ではワーキンググループがロードマップを整備している。主力産業である自動車業界などの製造業では「インダストリー4.0」の導入事例が出ており、製造業以外にも応用できるポイントが見られる。ここから日本企業が学ぶべきことや新たなビジネスの可能性について示唆する。
◆グローバルな情勢
2011年にドイツ政府は「ハイテク戦略2020行動計画」のひとつとして「インダストリー4.0」を提唱し、企業、産業団体、有識者が協力しながらインターネットによる産業(モノづくり)のデジタル化を推進する「第4次産業革命」に活路を見出そうとしている。
「インダストリー4.0」は、情報通信技術を活用し、開発・生産から消費にいたる製造業の効率的な統合を図る戦略であり、受注から出荷までのプロセス・情報をリアルタイムに統括管理していくことと捉えられているが、特にドイツでは自国の強みでもある「センサー技術」を駆使し、様々な生産プロセスから得られる情報をビッグデータ化し、将来予測による最適な生産ネットワークを確立する「スマートファクトリー」を目指している。生産拠点をドイツ国内に置きつつ、設備の自動化によって国際競争力を高め、将来はEU全域における共通のイノベーション基盤として確立しようとしている。
ドイツが「インダストリー4.0」に力を入れる背景には 米国の存在が大きい。米国ではドイツとは異なり、民間主導でオープンな有志連合「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(略称IIC)」が設立され、米国のみならず日本をはじめとするアジア各国、さらに欧州も含めた民間企業が参画し、ITを活用した生産システムの標準化などを目指している。こうした流れを受け、このままではモノづくり大国である日本が新たな生産システムの導入を図る欧米に対して劣位になりかねないという危機感から、日本でも今年5月に「ロボット革命イニシアティブ協議会」が設立された。
◆インダストリー4.0の実像と背景
「インダストリー4.0」を掲げたドイツの背景には、スマートファクトリーによるエネルギーの効率化や、人の経験値や勘をビッグデータ解析による内部蓄積で潜在的な人手不足を解消していこうという動きがある。
ドイツでは既に企業に変化をもたらす事例も生まれている。微小な無線チップにより人やモノを識別・管理するRFID(Radio Frequency Identification)を使うことで、ボッシュの中国事業所では在庫調査の作業時間を97%削減させ、ハンガリー事業所では保守部品の在庫を大幅に削減させた。さらにドイツ事業所では、センサーを使って熟練工のネジ回しの回転速度や強度を計測し、最適なプロセス分析をすることで品質改善を行っている。
ドイツにおいて「インダストリー4.0」は機械、自動車分野で特に経済効果があると見られており、大企業だけでなく中小企業でも「インダストリー4.0」への対応や導入が進んでいる。しかし、一方で課題も多い。新たなコンセプトのため実態が掴めず、企業や専門家など関係者の間に認識のギャップがあるほか、成果を享受するにはまだ時間を要するという現状だ。また、理念主導の欧州型でプロジェクトが進められているため、利益主導の米国に先行されるのではという懸念もある。BtoCの覇権を握る米国に対してドイツはBtoBに活路を見出そうとしており、モノづくりのプラットフォームをめぐる主導権争いは今後も続くと思われる。
◆企業における応用の可能性
フォルクスワーゲンはマルチブランドを展開しているため、開発・設計コンセプトが多岐にわたり、生産が非効率になりやすいという課題を長年抱えていた。しかし、同社は2012年2月よりモジュール・トランスバース・ツールキット(略称MQB)戦略を打ち出し、自動車開発や設計プロセスを刷新し、車輛の約60%に相当するユニットの共通化を進めている。さらに、基幹ユニットの統一化によって車長や車幅を自在に拡大・縮小できるようになり、急な需要変化に対して稼働状況に応じて柔軟に生産枠を変更する生産ラインを実現させ、高い生産性と利益率をあげている。
「インダストリー4.0」の実用は、従来の勘や摺り合わせ技術をデジタル化するところから生まれると考えている。だからこそ、製造業では開発期間の短縮や多品種少量化を実現できる可能性があり、さらには農業といった熟練者の勘がモノをいう分野にも応用できるのではないかと思う。また、ドイツには様々なニッチチャンピオンが存在するため、個社が持っている技術をどこまでオープン化し、ギブ&テイクできるかということも鍵となる。自社の技術を提供し、産業界、さらには国として、売り出していくことができれば製造業の枠を超えてイノベーションが起こるのではないかと期待しており、そのあり方こそ日本の目指すべき方向性の参考になるのではないかと感じている。
【本ワークショップに関するお問い合わせ】FIF事務局 TEL:03‐5740‐5817