アジア各国の求人が急回復 アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向 2021年4月〜6月
[21/07/26]
提供元:@Press
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[2021年7月26日 東京]
世界11ヵ国で人材紹介事業を展開し、東南アジアでは最大級の規模(※1)を誇る株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役社長:松園 健)は、この度、2021年第2四半期のアジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向を纏めましたので、お知らせいたします。
(※1)自社調べ(アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)
※以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください
https://www.atpress.ne.jp/open_media_file/268374/1499467979.pdf
【サマリー】
・新型コロナウイルスにより採用を抑えていた反動もあり、アジア各国で求人が急回復。
・インドでは第2四半期に発生した新型コロナウイルス第2波の影響を受け、求人数は前年四半期比で微減。
・アジア各国で新型コロナウイルスの収束の兆しが見えず、下半期の転職市場の動向は不透明な状態に。
【ジェイ エイ シー リクルートメントグループ各社の求人数増減一覧】
対前年四半期比:マレーシア : 228%
シンガポール: 167%
タイ : 155%
インドネシア: 193%
ベトナム : 161%
中国 : 106%
香港 : 116%
韓国 : 195%
インド : 90%
日本(※2) : 170%
対前四半期比 :マレーシア : 116%
シンガポール: 100%
タイ : 90%
インドネシア: 97%
ベトナム : 118%
中国 : 91%
香港 : 144%
韓国 : 167%
インド : 65%
日本(※2) : 110%
※2 日本企業の海外事業関連求人
■■マレーシア■■
企業の採用意欲は大きく回復するも、ロックダウンの長期化により
先行きは不透明。感染抑制が回復への鍵
【求人数】
対前年四半期比 228%
対前四半期比 116%
JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰
政府は6月28日にロックダウンを延長。その後も感染者数を抑制できず、7月1日に首都クアラルンプールの一部と日系企業を中心に多くの製造業が集積するスランゴール州の大部分に「強化された活動制限令 (PKPD)」を発出。この結果、食品・衛生/医療・金融・ロジスティックスなど人々が日常生活で必要とするビジネス(エッセンシャルビジネス)に類する企業のみ操業が認められています。マレーシアの主要産業である自動車・電子電機・半導体などは操業が大幅に制限されており、今後GDPの下振れリスクや失業率の上昇など懸念されます。この状況が長期化することにより、サプライチェーンの混乱から他国への影響が出る可能性があります。
新規感染者数は7月15日に1万3千人を超え過去最多を更新し、政府が国家回復計画で示したフェーズ2移行のための「4千人以下」の水準に達するには、依然時間を要する見込みです。
【企業の採用動向】
求人数でみると前四半期比116%、また前年同四半期比では228%と、採用意欲が大幅に戻ってきています。ウィズコロナやコロナ後を見据えた採用計画を進めた企業が増えたことがうかがえます。特に外資系企業(含む地場)の採用意欲の高まりが顕著で、求人数は前四半期比119%、前年同四半期比292%でした。日系企業の求人数も、前年同四半期比160%となっていますが、コロナ前の2019年の同四半期と比較すると求人数は80%と減少、外資系企業と比較し慎重な採用活動の動きが見られます。
業種別では、BPO、SSC/GBS(Global Business Services) やIT関連、物流やサプライチェーンの人材の需要が高く、特にICT/IT関連の求人数は、通信機器大手、ペイメント(決済)ソリューション、総合ITサービス、地場コングロマリット(複合企業)などを中心に活発で、2019年同四半期比では2倍強増加しました。
一方、6月1日から昨年3月に出された同じレベルの厳しい活動制限令が再度発出され、エッセンシャルサービス以外の経済活動は大きく制限されています。それにより、2割前後の企業が採用凍結や雇用時期の延期などの措置を取っています。長引く制限令により、企業の求人意欲は先行き不透明であり、国家回復計画の遂行状況を注視していく必要があります。
【求職者の動向】
全体的に候補者の転職意欲に大きな変化はなく、転職を希望する候補者は例年同水準です。特に、ICT(情報通信技術)/IT関連の求人数が増加しているため、候補者の売り手市場が続いています。長引く活動制限令により、事業閉鎖や給与カットを余儀なくされている企業もあり、転職希望者が従来に増して活動をしています。日本人候補者の登録者数は例年並みですが、ビザの発給手続きの遅滞が続いており、予定通りマレーシアに渡航できないケースや、マレーシア国内で転職をする外国人の就労ビザについても、当局の手続きの遅延が多く見受けられます。日本人の採用を検討する際は、従来よりも2〜3ヵ月長期化することを見込んだ採用活動を推奨します。
■■シンガポール■■
再度の行動規制・入国規制が敷かれる中でも、求人は順調に回復
【求人数】
対前年四半期比 167%
対前四半期比 100%
JAC Recruitment シンガポール法人社長 Kirsty Poltock (カースティ ポルトック)
新型コロナウイルスの感染者が再び増加したことを受け、5月16日から再度の行動規制が実施されていましたが、市中感染者数が二桁から一桁へ減少し、規制も段階的に緩和。国内のワクチン接種も大幅に進んだことから、ワクチン接種者への優遇検討や、ウィズコロナへの政策転換の動きが明確化しています。経済も一段と回復し、シンガポールの経済開発庁(EDB)が5月に発表した製造業生産高は、前年同月比で30.0%増加。6月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は50.8と、12ヵ月連続で好況水準を維持しています。
【企業の採用動向】
上述の行動規制にともない、シンガポールでは昨年同様に入国規制が敷かれ、生活に必要不可欠なサービス(エッセンシャルサービス)を提供している企業関連の従事者、シンガポール人、永住権保持者以外の入国が一旦停止となりました。その影響もあり、採用を急ぐ企業をはじめ多くの企業が、求人の人材要件をシンガポール人、シンガポール国内在住者向けとする傾向が強くなっています。また、経済の回復に伴い転職市場も活性化しており、第2四半期の求人数は昨年同時期比で67%増となりました。企業側としてもコロナと共存することを念頭とした戦略を練り、新たな人材確保に努めるケースも増えています。
【求職者の動向】
第1四半期は増加傾向にあった求職者の登録数も、第2四半期には一旦落ち着きを見せ、登録数としては全体的に前期比で30%程減少しました。5月に国外からの入国規制(新型コロナウイルスのリスクが高い国からの入国が一時的に不可)が敷かれたこと、かつ就労ビザの厳格化に伴い海外就職に二の足を踏む求職者が増加しました。そのため、シンガポール人、シンガポール永住権保持者、就労ビザ保持者など、すでにシンガポール国内にいる求職者の登録が主となりました。
■■タイ■■
コロナ第3波の影響で求人は停滞するも、
求人数は昨年抑制された反動により昨年同期比で55%増
【求人数】
対前年四半期比 155%
対前四半期比 90%
JAC Recruitment タイランド法人社長 山下 勝弘
年末発生した新型コロナウイルスのクラスター感染以来、今年の3月にかけて収束の兆しを見せていたタイの感染状況は4月に入り一転し、過去最大の厳しい状況下となっています。タイ政府はロックダウンに近い各種規制をかけ、国民へのワクチン接種を急ぐものの効果はあまり見られず、7月7日現在では連日6000人規模の新規感染者が発生しています。一方、プーケット島限定でワクチン接種済みの観光客を海外から迎え入れる試み「プーケット・サンドボックス」が開始され、観光業がGDPの10%以上を占めるタイではその成否が注目されています。
【企業の採用動向】
昨年採用を抑制された反動で昨年同期比の求人数は55%増となりましたが、新型コロナウイルスの第3波を迎え企業の採用意欲は再び停滞気味となっています。コロナ禍の先が見通せるようになるまでこの状態が続くと見られ、長引くようであれば昨年のような状況に戻る可能性もあります。ただ、タイ経済は輸出主導型であるため、世界経済が回復を見せている限りは自動車など製造業を中心にタイでの生産が必要であり、タイ国内のコロナ禍が収束しなくても、製造業を中心に採用ニーズは高まります。企業は輸出を見越した生産のバランスを取りながら採用活動を続けていくことが考えられます。
【求職者の動向】
年初は転職希望者が積極性に活動をしていましたが、第2四半期はコロナ第3波の影響で鈍化しました。
市内の移動や対面での面接や面談を避ける傾向も顕著であるため、対面の面接を好む企業では、選考フローを進められないケースも出ています。このような場合、書類選考を通過しても採用プロセスをスムーズに進めることができず、重要なポジションの採用の際に他社に先を越され、優秀な人材の採用の機会を逃す事になります。ウィズコロナの状況を踏まえ、感染状況や採用ポジションの重要性や選考の正確性を踏まえ、「対面で会うことができない中、どのように優秀な人材を確保するか」を考慮し、採用活動を行うことが必要です。
■■インドネシア■■
日系製造業を中心に経済活動が活発化。転職市場も回復の兆し
【求人数】
対前年四半期比 193%
対前四半期比 97%
JAC Recruitment International Group マネージングダイレクター兼
JAC Recruitment インドネシア法人社長 Adil Driouech(アディル ドリウェシ)
1-3月の実質GDP成長率は前年同期比マイナス0.74%と緩やかではあるものの、経済が回復基調にあるインドネシアでは、新型コロナウイルス感染の落ち着きと共に製造業を中心に日系企業の経済活動が活発化。特に昨年、新型コロナウイルスの影響を受け大打撃を受けた自動車産業においても政府施策の追い風もあり受注が増加し、年間4〜5%の成長率を見込んでいます。一方、旅行・ホテル・レストランといった一部のサービス関連の業界は依然回復の兆しが見えない状況です。
【企業の採用動向】
日系企業は経済活動の活発化の動きを受け、求人数は前年同期比で93%増と大幅に回復しました。特に新規案件受注が相次ぐ建設・建築、在宅勤務の浸透や健康意識の高まりから、内需が活況となった食品・消費財、新型コロナウイルスの影響を受け需要が高まったヘルスケア関連、受注が戻った一部の自動車業界関連メーカーでの採用が目立ちました。採用の目的は目的は今後の事業展開を見据えた増員、駐在員が帰任後に現地人材を採用し、経営の現地化を図るなどさまざまです。なお、ローカル企業の求人は昨年同期比でほぼ同等の水準となりました。5月中旬のレバラン休暇(断食明け休暇)後、6月に入り新型コロナウイルスの感染状況が急速に悪化。
デルタ株の拡大と重なり過去最悪の感染状況となり、今後の経済と採用の動向は不透明な状況です。
【求職者の動向】
インドネシア経済の回復や求人数の増加にともない求職者の動きも活発化し、日本からの転職希望者を含め、就職・転職希望者は昨年同期比、第1四半期比比ともに50%増となりました。4〜5月の断食期の宗教ボーナス支給後に活動を開始する転職者が毎年増えることは通年通りの動きですが、今年はさらに活発に活動する方々が増え、転職市場は活況を呈しています。しかし、6月以降の急激な新型コロナウイルスの感染状況が悪化したことにより、第3四半期以降は転職希望者の動きが鈍化する可能性もあります。
■■ベトナム■■
高度人材の不足により求人が増加
【求人数】
対前年四半期比 161%
対前四半期比 118%
JAC Recruitment ベトナム法人 ダイレクター Le Thuy Dieu Uyen (レー・トゥイ・ユー・ウィン)
2021年上半期の国内総生産(GDP)は5.64%を達成し、通年で6%を超える見込みです。輸出入はやや変動しているものの、GDPの達成率に最も貢献しています。内需は一部地域の短期的な感染拡大の影響により弱い傾向で、内需拡大が今後の成長の主な課題です。政府は「新型コロナウイルスの感染予防と経済発展」を方針として掲げています。政府は国民のワクチン接種を促進させるよう努めており、工業団地、輸出加工区、スーパーマーケット、流通、小売業などの労働者に優先的に接種を進めています。
【企業の採用動向】
ベトナムでは、高度人材不足がビジネスの回復と成長に影響を与えています。特に不動産、リテール、金融、ITおよび製造業は人手不足が深刻な業種で、これらの業界からの求人が増加し求人数は前年同期比で61%増加となりました。最近の企業の採用の動向として、出社・在宅を問わず仕事を遂行できる人材を求める傾向が高くなり候補者にリモートワーク経験者を求めたり、およそ6割の企業では適性を図るために採用時に面接だけでなく能力テストも行っています。コロナ禍で変化する経済環境に対応するために、企業は従業員の給与テーブルを再構築し、基本給や手当などの固定費を抑える一方で、ボーナスの予算の割合を増加させています。
これは、資格を持つハイスキル人材や上級管理職を維持するための適切な方法と判断しています。なお、半年以内に採用を増やす計画を立てている企業は、製造、建設、卸売、小売および貿易、輸送業などの業種です。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、多くの中小企業は業績改善の課題を抱えている状況です。
【求職者の動向】
転職希望者はこれまで転職先企業を選ぶ際の重要な基準は年収アップでしたが、現在は会社の財務力、社風、将来の成長・昇進の可能性など、安定的に働き自身のキャリアの成長を望む傾向が強くなっており、求職者に対し行ったアンケートでは約7割が、成長の機会がなくなったら会社を辞めると回答しました。各企業は、社員の引き留め策を考慮し、給与や待遇を変えても従業員が仕事を持続していけるかどうかを考慮する必要があります。
■■中国■■
コロナの早期抑制に成功し、日本人採用ニーズが増加
【求人数】
対前年四半期比 106%
対前四半期比 91%
JAC Recruitment 上海法人総経理 渥美 賢吾
7月上旬に行われた中国共産党創立100年の記念式典で、習近平国家主席が演説し「中国は飛躍的に時代に追いついた」と語りました。中国中央テレビによる大型番組の放送、上海外灘でLEDショーが行われるなど、全国的にお祝いムードが漂っています。世界経済における存在感は依然大きく、英国のシンクタンクによると2028年には経済規模で中国が米国を逆転すると予想されています。一方、生活費高騰等を背景に出生数の落ち込みが止まらず、少子高齢化対策として「一人っ子政策」が撤廃されましたが、来年にも出生数が減少に転じる可能性があると懸念されています。
【企業の採用動向】
企業の採用意欲は第1四半期に続き、依然活発な状態が継続しています。成長領域である半導体・医療・医薬業界他、食品・日用品業界・電子・化学など、多岐にわたる業界で増員の動きがあり、優秀な人材の獲得競争も激化しています。その結果、転職市場における賃金は大幅に上昇しています。
日本人向け求人については依然新規ビザ取得の難易度が高い状況が続いていますが、取得する事例も出初めています。しかしながら、日本から駐在員・出張者を送りだすことが困難な理由から、現地採用に切り替えるニーズは依然強く存在しています。日系企業における管理職ニーズに加え、ローカル民営企業や外資系企業においては、日本人技術者や専門職の採用も増加傾向にあります。
【求職者の動向】
採用市場の回復と共に、新規で転職活動始める方々による登録が増加傾向にあります。求人が増えたことで複数企業から内定を得る転職希望者も散見されるようになり、日系企業から中国現地の民営企業や外資系企業に転職するケースも増加しています。外国人の転職希望者は、新規ビザ取得には依然招聘状の取得、もしくは中国製ワクチンの摂取が条件となるため、引き続きオンラインで面接を実施し採用が決定するケースが主流で、内定後に入国ビザ待ちというケースも増えています。
■■香港(中国香港特別行政区)■■
香港の求人マーケットは回復基調が鮮明に
【求人数】
対前年四半期比 116%
対前四半期比 144%
JAC Recruitment 香港法人社長 渥美 賢吾
シンガポールと香港間のトラベルバブルはシンガポール側の要因で再延期となったものの、香港内における新型コロナウイルスの感染状況は落ち着いており、政府や民間の協力企業が主導する各種施策によりワクチンの接種率も少しずつ上昇しています。変異株への警戒感から出入境管理が全面的に緩和されるまでには時間がかかる見込みではあるものの、中国本土と香港間の行き来については早期緩和が期待されています。経済面では、第1四半期と比べて企業拠点の縮小・閉鎖は減少傾向にあり、各種経済指標も改善傾向を示した一方で、大手航空会社における追加人員削減が発表されるなど、未だ予断を許さない状況です。
【企業の採用動向】
求人総数は回復基調となり、特に5月以降で転職マーケットでは明らかに増加しました。採用時のオファー年収額は、2020年の抑制傾向から新型コロナウイルス発生前の水準まで戻り始めており、候補者の現職待遇から年収30%アップのオファーも散見されるようになってきました。日系企業においては、例年よりも日本語ネイティブレベルの人材の採用熱が顕著に増加しています。主な採用目的は依然として欠員補充ですが、増員目的の募集も見られるようになり、下半期に向けた経済回復が期待されています。特徴的なのは国外移住による退職者の欠員補充で、新たな採用目的の理由となっています。
【求職者の動向】
マーケットにおける離職者は減少傾向ですが、一方で現職からの待遇改善を求めて転職を希望する候補者の割合は増加しており、2019年以前の一般的な売り手市場に少しずつ戻っています。同時に複数のオファーを受け、条件を見比べて転職先企業を選び決める候補者も昨年と比べて増えています。
日本人候補者については、香港内での転職活動の結果、ビザ更新期間中に就業先が決まらず帰国を決断する方々が増加する一方、日本やその他海外から香港への転職を希望して活動を行うケースが減少した結果、香港内に既に滞在している方々の希少性が高まっています。
■■韓国■■
半導体や自動車などの輸出拡大により、求人が急回復
【求人数】
対前年四半期比 195%
対前四半期比 167%
JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎
5月に韓国銀行が発表した経済展望報告書によると、今年度の実質GDP成長率は4.0%と大幅に上方修正が行われ、失業率も下半期に改善される見込みで、今年度3.9%の着地予想としました。韓国経済は世界的な景気回復によって輸出額が大幅増加し、上半期で初めて3千億ドルを超え過去最高を記録。また7月1日に韓国政府が閣議決定した2021年の第2次補正予算案は33兆ウォン(約3兆3,000億円)と大規模なものであり、新型コロナ対策や雇用対策を含む内容になりました。また7月12日、韓国の最低賃金委員会は2022年度最低賃金を今年度比5.0%増の時給9,160ウォンで確定しました。
【企業の採用動向】
第2四半期の企業求人状況は対前期比で67%増、対前年四半期比で95%増と急回復しました。背景には世界経済再開の影響を受け、韓国財閥大手が得意とする半導体や自動車、家電製品、石油化学などで韓国の輸出額が大きく拡大しているため、日系サプライヤーも恩恵を受けています。若手営業社員を増やすなど攻めの姿勢に転じる企業も増えていることから求人件数が大きく増加しました。ワクチンの在庫不足で接種率が減速していることに加え、直近のコロナ第4波による急速な感染拡大は、経済活動に一定の影響を与えそうですが、採用需要は第3四半期も前年対比で上回る見込みです。
【求職者の動向】
昨年度と比較すると、求職者の転職活動意欲は徐々に高まってきています。また、ソウルを含む首都圏の新型コロナウイルスの感染拡大は在宅勤務の増加や、求職者自身が濃厚接触者判定やPCR検査対象者となるケースも時々あり、転職活動が思うように出来ない方も増えています。現在、求人件数が増加傾向にあり、優秀な方は複数社から内定を受ける為、適切な候補者がいる場合は短期戦でスピーディーに採用決着をつけることで採用を成功させることができます。
■■インド■■
1月より回復傾向にあった求人数は、
3月に入り新型コロナウイルス第2波の影響により停滞
【求人数】
対前年四半期比 90%
対前四半期比 65%
JAC Recruitment インド法人社長 小牧 一雄
インドでは年初から3月までの間、新型コロナウイルス第一波の新規感染者数の改善がみられたことから、個人消費も回復傾向にありました。しかし、4月に入り新規感染者が拡大し続け、5月には1日あたりの新型コロナウイルス新規感染者数が初めて40万人を超え、病床や治療用の酸素が足りない医療システムの崩壊に直面しました。2020年後半から特に製造業の回復が顕著で、経済回復の牽引役となりつつあった矢先の第二波の感染拡大による閉鎖措置が実施され、首都や日本人が多く住むグルガオンでも生活必需品の買い出しといった限られた目的以外の外出が禁じられ、再び経済に大きなダメージを与えました。
【企業の採用動向】
インドでは1月以降製造業で生産が回復傾向にあり、コロナ発生前に近い状況まで採用活動が戻りつつありました。しかし、3月以降の第二波の影響により再び経済活動がストップし、医療崩壊に直面したことからインドで就業する8割近い日本人が一時帰国したもあり、多くの採用活動が保留となりました。
一方で、採用を検討していたポジションは製造プロセスの改善、購買、人事、経理といった職種が多く、各企業は組織強化のための採用活動を予定していました。日系企業で就業する日本人の方々の一時帰国の影響もあり採用プロセスのスピードが遅くなったものの、多くの企業でオンラインで選考を進め、新型コロナウイルスが落ち着いたタイミングで対面での面接が実施する準備をするなど、コロナ禍でも選考を進めていました。
【求職者の動向】
2021年1月以降、求人件数の増加に伴い積極的にインド就職を検討される候補者が増加傾向にあったものの、4月以降の新規感染者拡大に伴い、インドでの就業を保留する候補者が多く見られました。一方で英語を使える環境や経済成長の著しい環境を望み、インドでの就業を目指す候補者は比較的目的が明確です。
ウェブセミナーなどに参加し、海外就業に関する情報収集を行いながら、積極的にオンラインで面接を受ける候補者も存在し、選考プロセスの回数を増やし時間をかけて候補者を選考するなど、新型コロナウイルスの感染状況と候補者の選考状況を踏まえ柔軟に選考プロセスを変えることが企業に求められています。
■■日本■■
日系企業の海外事業要員求人が
新型コロナウイルス発生前の状態まで回復
【求人数】
対前年四半期比 170%
対前四半期比 110%
(日本企業の海外事業関連求人)
JAC Recruitment(日本) チーフアナリスト 佐原 賢治
2020年末から21年始にかけて急増した国内の新型コロナウイルス新規感染者数は、その後急速に減少したものの、3月後半から再び増加に転じ、その後も一進一退の状況が続いています。
政府は、月例の景気総括判断において、5、6月ともに「持ち直しの動きが続いているものの、一部で弱さが増している」に据え置くなど、慎重な見方を続けています。
特に6月はここまで景気回復をけん引してきた中国で自動車販売が落ち込んだほか、比較的コロナ禍の影響が軽微であったベトナムで新規感染が拡大し、ホーチミン市では都市封鎖が行われるなど東南アジアにおけるコロナ禍の影響が沈静化しないことも、さらには鉄鋼や石油の価格が高騰し利益を圧迫していることなどが我が国企業の姿勢を慎重なものにしている一因と考えられます。
また都市部ではまん延防止等重点措置が依然として継続され、飲食業界を中心に深刻なダメージが拡がっており、足元の新規感染者増加傾向が長期化しワクチン接種が滞るようなことがあれば、さらに景気の回復が遅れる可能性があります。
【企業の採用動向】
2021年4月の有効求人倍率は1.09倍。小幅で変動はあるものの今年に入ってほほ横ばいを続けていますが、新年度を迎えて製造業を中心に大手各社から積極的な中途採用計画が打ち出されたことにより、当社に寄せられた4-6月の日系企業の海外事業要員の新規求人数は前年同時期比70%増と大幅に伸びました。求人に積極的なのは自動車関連の事業を行う企業で、特にCASEに関連するITや事業開発関連の求人が、完成車メーカーやその一次サプライヤーから多く寄せられています。
これらの分野では、中国や欧州、北米などの企業等との連携を伴う業務も多く、職務の専門性に加えて外国語力を必要とすることから、各社は採用に苦戦しています。金融、医薬品、など多様な分野で進むDX(デジタル・トランスフォーメーション)関連の求人も含め、既成の業種の枠を超えた人材獲得競争によって給与額が高騰する状況となっています。
【求職者の動向】
4-6月の新規求職者(海外事業経験者の登録者)数は、前四半期比115%と増加しました。前年同時期比でも118%と増加しています。コロナ禍の影響が測り切れず不透明であった今後の方向性が各社の中で徐々に明確化されている中で、自身のキャリアの方向性との不一致によって転職を考え始める人材が現れ始めました。企業は、海外経験を有する貴重な人材が流出しないよう繋ぎ留めが必要です。
また、求職者の動きは依然として慎重で、転職は状況次第という姿勢が目立ちます。また企業の選考のハードルが上がっていることから優秀人材の獲得競争は一層し烈で、先端ITやヘルスケアなどの高度専門分野や海外ビジネスなどの知見・経験を有する人材を募集する場合には、より競合を意識した条件設定やその他の魅力付けを行う必要があります。
各国の求人数の増減については、その国々の景況感による変動や各国が講じた戦略(高額帯年収の求人やスペシャリスト層求人に特化など)により、意図的に減る場合もあります。そのため、求人数の増減は直接各国の業績に結び付くものではありません。
■株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントについて
1988年設立。スペシャリストや管理職の人材紹介に特化し、企業と人材を一人のコンサルタントが同時に担当する「両面型」のビジネスモデルとして国内最大規模の東証一部上場企業です。国際ビジネス経験をもつ人材の紹介も強みの一つで、日本国内では外資系企業や日系企業の海外事業などのグローバル領域の売上が全体の50%以上を占めています。外資系企業の人材紹介に特化した JAC International、ジョブサイトの「キャリアクロス」を運営するシー・シー・コンサルティング、英国、ドイツおよびアジア8ヵ国で人材紹介業を展開するJAC Recruitment Asia Ltdのグループ会社、コンサルティング・金融業界に特化した人材紹介事業を展開するバンテージポイントを傘下に、世界11ヵ国、24拠点で事業を展開するグローバル企業です。
http://corp.jac-recruitment.jp (コーポレートサイト)
http://www.jac-recruitment.jp (転職サイト)
世界11ヵ国で人材紹介事業を展開し、東南アジアでは最大級の規模(※1)を誇る株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役社長:松園 健)は、この度、2021年第2四半期のアジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向を纏めましたので、お知らせいたします。
(※1)自社調べ(アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)
※以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください
https://www.atpress.ne.jp/open_media_file/268374/1499467979.pdf
【サマリー】
・新型コロナウイルスにより採用を抑えていた反動もあり、アジア各国で求人が急回復。
・インドでは第2四半期に発生した新型コロナウイルス第2波の影響を受け、求人数は前年四半期比で微減。
・アジア各国で新型コロナウイルスの収束の兆しが見えず、下半期の転職市場の動向は不透明な状態に。
【ジェイ エイ シー リクルートメントグループ各社の求人数増減一覧】
対前年四半期比:マレーシア : 228%
シンガポール: 167%
タイ : 155%
インドネシア: 193%
ベトナム : 161%
中国 : 106%
香港 : 116%
韓国 : 195%
インド : 90%
日本(※2) : 170%
対前四半期比 :マレーシア : 116%
シンガポール: 100%
タイ : 90%
インドネシア: 97%
ベトナム : 118%
中国 : 91%
香港 : 144%
韓国 : 167%
インド : 65%
日本(※2) : 110%
※2 日本企業の海外事業関連求人
■■マレーシア■■
企業の採用意欲は大きく回復するも、ロックダウンの長期化により
先行きは不透明。感染抑制が回復への鍵
【求人数】
対前年四半期比 228%
対前四半期比 116%
JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰
政府は6月28日にロックダウンを延長。その後も感染者数を抑制できず、7月1日に首都クアラルンプールの一部と日系企業を中心に多くの製造業が集積するスランゴール州の大部分に「強化された活動制限令 (PKPD)」を発出。この結果、食品・衛生/医療・金融・ロジスティックスなど人々が日常生活で必要とするビジネス(エッセンシャルビジネス)に類する企業のみ操業が認められています。マレーシアの主要産業である自動車・電子電機・半導体などは操業が大幅に制限されており、今後GDPの下振れリスクや失業率の上昇など懸念されます。この状況が長期化することにより、サプライチェーンの混乱から他国への影響が出る可能性があります。
新規感染者数は7月15日に1万3千人を超え過去最多を更新し、政府が国家回復計画で示したフェーズ2移行のための「4千人以下」の水準に達するには、依然時間を要する見込みです。
【企業の採用動向】
求人数でみると前四半期比116%、また前年同四半期比では228%と、採用意欲が大幅に戻ってきています。ウィズコロナやコロナ後を見据えた採用計画を進めた企業が増えたことがうかがえます。特に外資系企業(含む地場)の採用意欲の高まりが顕著で、求人数は前四半期比119%、前年同四半期比292%でした。日系企業の求人数も、前年同四半期比160%となっていますが、コロナ前の2019年の同四半期と比較すると求人数は80%と減少、外資系企業と比較し慎重な採用活動の動きが見られます。
業種別では、BPO、SSC/GBS(Global Business Services) やIT関連、物流やサプライチェーンの人材の需要が高く、特にICT/IT関連の求人数は、通信機器大手、ペイメント(決済)ソリューション、総合ITサービス、地場コングロマリット(複合企業)などを中心に活発で、2019年同四半期比では2倍強増加しました。
一方、6月1日から昨年3月に出された同じレベルの厳しい活動制限令が再度発出され、エッセンシャルサービス以外の経済活動は大きく制限されています。それにより、2割前後の企業が採用凍結や雇用時期の延期などの措置を取っています。長引く制限令により、企業の求人意欲は先行き不透明であり、国家回復計画の遂行状況を注視していく必要があります。
【求職者の動向】
全体的に候補者の転職意欲に大きな変化はなく、転職を希望する候補者は例年同水準です。特に、ICT(情報通信技術)/IT関連の求人数が増加しているため、候補者の売り手市場が続いています。長引く活動制限令により、事業閉鎖や給与カットを余儀なくされている企業もあり、転職希望者が従来に増して活動をしています。日本人候補者の登録者数は例年並みですが、ビザの発給手続きの遅滞が続いており、予定通りマレーシアに渡航できないケースや、マレーシア国内で転職をする外国人の就労ビザについても、当局の手続きの遅延が多く見受けられます。日本人の採用を検討する際は、従来よりも2〜3ヵ月長期化することを見込んだ採用活動を推奨します。
■■シンガポール■■
再度の行動規制・入国規制が敷かれる中でも、求人は順調に回復
【求人数】
対前年四半期比 167%
対前四半期比 100%
JAC Recruitment シンガポール法人社長 Kirsty Poltock (カースティ ポルトック)
新型コロナウイルスの感染者が再び増加したことを受け、5月16日から再度の行動規制が実施されていましたが、市中感染者数が二桁から一桁へ減少し、規制も段階的に緩和。国内のワクチン接種も大幅に進んだことから、ワクチン接種者への優遇検討や、ウィズコロナへの政策転換の動きが明確化しています。経済も一段と回復し、シンガポールの経済開発庁(EDB)が5月に発表した製造業生産高は、前年同月比で30.0%増加。6月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は50.8と、12ヵ月連続で好況水準を維持しています。
【企業の採用動向】
上述の行動規制にともない、シンガポールでは昨年同様に入国規制が敷かれ、生活に必要不可欠なサービス(エッセンシャルサービス)を提供している企業関連の従事者、シンガポール人、永住権保持者以外の入国が一旦停止となりました。その影響もあり、採用を急ぐ企業をはじめ多くの企業が、求人の人材要件をシンガポール人、シンガポール国内在住者向けとする傾向が強くなっています。また、経済の回復に伴い転職市場も活性化しており、第2四半期の求人数は昨年同時期比で67%増となりました。企業側としてもコロナと共存することを念頭とした戦略を練り、新たな人材確保に努めるケースも増えています。
【求職者の動向】
第1四半期は増加傾向にあった求職者の登録数も、第2四半期には一旦落ち着きを見せ、登録数としては全体的に前期比で30%程減少しました。5月に国外からの入国規制(新型コロナウイルスのリスクが高い国からの入国が一時的に不可)が敷かれたこと、かつ就労ビザの厳格化に伴い海外就職に二の足を踏む求職者が増加しました。そのため、シンガポール人、シンガポール永住権保持者、就労ビザ保持者など、すでにシンガポール国内にいる求職者の登録が主となりました。
■■タイ■■
コロナ第3波の影響で求人は停滞するも、
求人数は昨年抑制された反動により昨年同期比で55%増
【求人数】
対前年四半期比 155%
対前四半期比 90%
JAC Recruitment タイランド法人社長 山下 勝弘
年末発生した新型コロナウイルスのクラスター感染以来、今年の3月にかけて収束の兆しを見せていたタイの感染状況は4月に入り一転し、過去最大の厳しい状況下となっています。タイ政府はロックダウンに近い各種規制をかけ、国民へのワクチン接種を急ぐものの効果はあまり見られず、7月7日現在では連日6000人規模の新規感染者が発生しています。一方、プーケット島限定でワクチン接種済みの観光客を海外から迎え入れる試み「プーケット・サンドボックス」が開始され、観光業がGDPの10%以上を占めるタイではその成否が注目されています。
【企業の採用動向】
昨年採用を抑制された反動で昨年同期比の求人数は55%増となりましたが、新型コロナウイルスの第3波を迎え企業の採用意欲は再び停滞気味となっています。コロナ禍の先が見通せるようになるまでこの状態が続くと見られ、長引くようであれば昨年のような状況に戻る可能性もあります。ただ、タイ経済は輸出主導型であるため、世界経済が回復を見せている限りは自動車など製造業を中心にタイでの生産が必要であり、タイ国内のコロナ禍が収束しなくても、製造業を中心に採用ニーズは高まります。企業は輸出を見越した生産のバランスを取りながら採用活動を続けていくことが考えられます。
【求職者の動向】
年初は転職希望者が積極性に活動をしていましたが、第2四半期はコロナ第3波の影響で鈍化しました。
市内の移動や対面での面接や面談を避ける傾向も顕著であるため、対面の面接を好む企業では、選考フローを進められないケースも出ています。このような場合、書類選考を通過しても採用プロセスをスムーズに進めることができず、重要なポジションの採用の際に他社に先を越され、優秀な人材の採用の機会を逃す事になります。ウィズコロナの状況を踏まえ、感染状況や採用ポジションの重要性や選考の正確性を踏まえ、「対面で会うことができない中、どのように優秀な人材を確保するか」を考慮し、採用活動を行うことが必要です。
■■インドネシア■■
日系製造業を中心に経済活動が活発化。転職市場も回復の兆し
【求人数】
対前年四半期比 193%
対前四半期比 97%
JAC Recruitment International Group マネージングダイレクター兼
JAC Recruitment インドネシア法人社長 Adil Driouech(アディル ドリウェシ)
1-3月の実質GDP成長率は前年同期比マイナス0.74%と緩やかではあるものの、経済が回復基調にあるインドネシアでは、新型コロナウイルス感染の落ち着きと共に製造業を中心に日系企業の経済活動が活発化。特に昨年、新型コロナウイルスの影響を受け大打撃を受けた自動車産業においても政府施策の追い風もあり受注が増加し、年間4〜5%の成長率を見込んでいます。一方、旅行・ホテル・レストランといった一部のサービス関連の業界は依然回復の兆しが見えない状況です。
【企業の採用動向】
日系企業は経済活動の活発化の動きを受け、求人数は前年同期比で93%増と大幅に回復しました。特に新規案件受注が相次ぐ建設・建築、在宅勤務の浸透や健康意識の高まりから、内需が活況となった食品・消費財、新型コロナウイルスの影響を受け需要が高まったヘルスケア関連、受注が戻った一部の自動車業界関連メーカーでの採用が目立ちました。採用の目的は目的は今後の事業展開を見据えた増員、駐在員が帰任後に現地人材を採用し、経営の現地化を図るなどさまざまです。なお、ローカル企業の求人は昨年同期比でほぼ同等の水準となりました。5月中旬のレバラン休暇(断食明け休暇)後、6月に入り新型コロナウイルスの感染状況が急速に悪化。
デルタ株の拡大と重なり過去最悪の感染状況となり、今後の経済と採用の動向は不透明な状況です。
【求職者の動向】
インドネシア経済の回復や求人数の増加にともない求職者の動きも活発化し、日本からの転職希望者を含め、就職・転職希望者は昨年同期比、第1四半期比比ともに50%増となりました。4〜5月の断食期の宗教ボーナス支給後に活動を開始する転職者が毎年増えることは通年通りの動きですが、今年はさらに活発に活動する方々が増え、転職市場は活況を呈しています。しかし、6月以降の急激な新型コロナウイルスの感染状況が悪化したことにより、第3四半期以降は転職希望者の動きが鈍化する可能性もあります。
■■ベトナム■■
高度人材の不足により求人が増加
【求人数】
対前年四半期比 161%
対前四半期比 118%
JAC Recruitment ベトナム法人 ダイレクター Le Thuy Dieu Uyen (レー・トゥイ・ユー・ウィン)
2021年上半期の国内総生産(GDP)は5.64%を達成し、通年で6%を超える見込みです。輸出入はやや変動しているものの、GDPの達成率に最も貢献しています。内需は一部地域の短期的な感染拡大の影響により弱い傾向で、内需拡大が今後の成長の主な課題です。政府は「新型コロナウイルスの感染予防と経済発展」を方針として掲げています。政府は国民のワクチン接種を促進させるよう努めており、工業団地、輸出加工区、スーパーマーケット、流通、小売業などの労働者に優先的に接種を進めています。
【企業の採用動向】
ベトナムでは、高度人材不足がビジネスの回復と成長に影響を与えています。特に不動産、リテール、金融、ITおよび製造業は人手不足が深刻な業種で、これらの業界からの求人が増加し求人数は前年同期比で61%増加となりました。最近の企業の採用の動向として、出社・在宅を問わず仕事を遂行できる人材を求める傾向が高くなり候補者にリモートワーク経験者を求めたり、およそ6割の企業では適性を図るために採用時に面接だけでなく能力テストも行っています。コロナ禍で変化する経済環境に対応するために、企業は従業員の給与テーブルを再構築し、基本給や手当などの固定費を抑える一方で、ボーナスの予算の割合を増加させています。
これは、資格を持つハイスキル人材や上級管理職を維持するための適切な方法と判断しています。なお、半年以内に採用を増やす計画を立てている企業は、製造、建設、卸売、小売および貿易、輸送業などの業種です。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、多くの中小企業は業績改善の課題を抱えている状況です。
【求職者の動向】
転職希望者はこれまで転職先企業を選ぶ際の重要な基準は年収アップでしたが、現在は会社の財務力、社風、将来の成長・昇進の可能性など、安定的に働き自身のキャリアの成長を望む傾向が強くなっており、求職者に対し行ったアンケートでは約7割が、成長の機会がなくなったら会社を辞めると回答しました。各企業は、社員の引き留め策を考慮し、給与や待遇を変えても従業員が仕事を持続していけるかどうかを考慮する必要があります。
■■中国■■
コロナの早期抑制に成功し、日本人採用ニーズが増加
【求人数】
対前年四半期比 106%
対前四半期比 91%
JAC Recruitment 上海法人総経理 渥美 賢吾
7月上旬に行われた中国共産党創立100年の記念式典で、習近平国家主席が演説し「中国は飛躍的に時代に追いついた」と語りました。中国中央テレビによる大型番組の放送、上海外灘でLEDショーが行われるなど、全国的にお祝いムードが漂っています。世界経済における存在感は依然大きく、英国のシンクタンクによると2028年には経済規模で中国が米国を逆転すると予想されています。一方、生活費高騰等を背景に出生数の落ち込みが止まらず、少子高齢化対策として「一人っ子政策」が撤廃されましたが、来年にも出生数が減少に転じる可能性があると懸念されています。
【企業の採用動向】
企業の採用意欲は第1四半期に続き、依然活発な状態が継続しています。成長領域である半導体・医療・医薬業界他、食品・日用品業界・電子・化学など、多岐にわたる業界で増員の動きがあり、優秀な人材の獲得競争も激化しています。その結果、転職市場における賃金は大幅に上昇しています。
日本人向け求人については依然新規ビザ取得の難易度が高い状況が続いていますが、取得する事例も出初めています。しかしながら、日本から駐在員・出張者を送りだすことが困難な理由から、現地採用に切り替えるニーズは依然強く存在しています。日系企業における管理職ニーズに加え、ローカル民営企業や外資系企業においては、日本人技術者や専門職の採用も増加傾向にあります。
【求職者の動向】
採用市場の回復と共に、新規で転職活動始める方々による登録が増加傾向にあります。求人が増えたことで複数企業から内定を得る転職希望者も散見されるようになり、日系企業から中国現地の民営企業や外資系企業に転職するケースも増加しています。外国人の転職希望者は、新規ビザ取得には依然招聘状の取得、もしくは中国製ワクチンの摂取が条件となるため、引き続きオンラインで面接を実施し採用が決定するケースが主流で、内定後に入国ビザ待ちというケースも増えています。
■■香港(中国香港特別行政区)■■
香港の求人マーケットは回復基調が鮮明に
【求人数】
対前年四半期比 116%
対前四半期比 144%
JAC Recruitment 香港法人社長 渥美 賢吾
シンガポールと香港間のトラベルバブルはシンガポール側の要因で再延期となったものの、香港内における新型コロナウイルスの感染状況は落ち着いており、政府や民間の協力企業が主導する各種施策によりワクチンの接種率も少しずつ上昇しています。変異株への警戒感から出入境管理が全面的に緩和されるまでには時間がかかる見込みではあるものの、中国本土と香港間の行き来については早期緩和が期待されています。経済面では、第1四半期と比べて企業拠点の縮小・閉鎖は減少傾向にあり、各種経済指標も改善傾向を示した一方で、大手航空会社における追加人員削減が発表されるなど、未だ予断を許さない状況です。
【企業の採用動向】
求人総数は回復基調となり、特に5月以降で転職マーケットでは明らかに増加しました。採用時のオファー年収額は、2020年の抑制傾向から新型コロナウイルス発生前の水準まで戻り始めており、候補者の現職待遇から年収30%アップのオファーも散見されるようになってきました。日系企業においては、例年よりも日本語ネイティブレベルの人材の採用熱が顕著に増加しています。主な採用目的は依然として欠員補充ですが、増員目的の募集も見られるようになり、下半期に向けた経済回復が期待されています。特徴的なのは国外移住による退職者の欠員補充で、新たな採用目的の理由となっています。
【求職者の動向】
マーケットにおける離職者は減少傾向ですが、一方で現職からの待遇改善を求めて転職を希望する候補者の割合は増加しており、2019年以前の一般的な売り手市場に少しずつ戻っています。同時に複数のオファーを受け、条件を見比べて転職先企業を選び決める候補者も昨年と比べて増えています。
日本人候補者については、香港内での転職活動の結果、ビザ更新期間中に就業先が決まらず帰国を決断する方々が増加する一方、日本やその他海外から香港への転職を希望して活動を行うケースが減少した結果、香港内に既に滞在している方々の希少性が高まっています。
■■韓国■■
半導体や自動車などの輸出拡大により、求人が急回復
【求人数】
対前年四半期比 195%
対前四半期比 167%
JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎
5月に韓国銀行が発表した経済展望報告書によると、今年度の実質GDP成長率は4.0%と大幅に上方修正が行われ、失業率も下半期に改善される見込みで、今年度3.9%の着地予想としました。韓国経済は世界的な景気回復によって輸出額が大幅増加し、上半期で初めて3千億ドルを超え過去最高を記録。また7月1日に韓国政府が閣議決定した2021年の第2次補正予算案は33兆ウォン(約3兆3,000億円)と大規模なものであり、新型コロナ対策や雇用対策を含む内容になりました。また7月12日、韓国の最低賃金委員会は2022年度最低賃金を今年度比5.0%増の時給9,160ウォンで確定しました。
【企業の採用動向】
第2四半期の企業求人状況は対前期比で67%増、対前年四半期比で95%増と急回復しました。背景には世界経済再開の影響を受け、韓国財閥大手が得意とする半導体や自動車、家電製品、石油化学などで韓国の輸出額が大きく拡大しているため、日系サプライヤーも恩恵を受けています。若手営業社員を増やすなど攻めの姿勢に転じる企業も増えていることから求人件数が大きく増加しました。ワクチンの在庫不足で接種率が減速していることに加え、直近のコロナ第4波による急速な感染拡大は、経済活動に一定の影響を与えそうですが、採用需要は第3四半期も前年対比で上回る見込みです。
【求職者の動向】
昨年度と比較すると、求職者の転職活動意欲は徐々に高まってきています。また、ソウルを含む首都圏の新型コロナウイルスの感染拡大は在宅勤務の増加や、求職者自身が濃厚接触者判定やPCR検査対象者となるケースも時々あり、転職活動が思うように出来ない方も増えています。現在、求人件数が増加傾向にあり、優秀な方は複数社から内定を受ける為、適切な候補者がいる場合は短期戦でスピーディーに採用決着をつけることで採用を成功させることができます。
■■インド■■
1月より回復傾向にあった求人数は、
3月に入り新型コロナウイルス第2波の影響により停滞
【求人数】
対前年四半期比 90%
対前四半期比 65%
JAC Recruitment インド法人社長 小牧 一雄
インドでは年初から3月までの間、新型コロナウイルス第一波の新規感染者数の改善がみられたことから、個人消費も回復傾向にありました。しかし、4月に入り新規感染者が拡大し続け、5月には1日あたりの新型コロナウイルス新規感染者数が初めて40万人を超え、病床や治療用の酸素が足りない医療システムの崩壊に直面しました。2020年後半から特に製造業の回復が顕著で、経済回復の牽引役となりつつあった矢先の第二波の感染拡大による閉鎖措置が実施され、首都や日本人が多く住むグルガオンでも生活必需品の買い出しといった限られた目的以外の外出が禁じられ、再び経済に大きなダメージを与えました。
【企業の採用動向】
インドでは1月以降製造業で生産が回復傾向にあり、コロナ発生前に近い状況まで採用活動が戻りつつありました。しかし、3月以降の第二波の影響により再び経済活動がストップし、医療崩壊に直面したことからインドで就業する8割近い日本人が一時帰国したもあり、多くの採用活動が保留となりました。
一方で、採用を検討していたポジションは製造プロセスの改善、購買、人事、経理といった職種が多く、各企業は組織強化のための採用活動を予定していました。日系企業で就業する日本人の方々の一時帰国の影響もあり採用プロセスのスピードが遅くなったものの、多くの企業でオンラインで選考を進め、新型コロナウイルスが落ち着いたタイミングで対面での面接が実施する準備をするなど、コロナ禍でも選考を進めていました。
【求職者の動向】
2021年1月以降、求人件数の増加に伴い積極的にインド就職を検討される候補者が増加傾向にあったものの、4月以降の新規感染者拡大に伴い、インドでの就業を保留する候補者が多く見られました。一方で英語を使える環境や経済成長の著しい環境を望み、インドでの就業を目指す候補者は比較的目的が明確です。
ウェブセミナーなどに参加し、海外就業に関する情報収集を行いながら、積極的にオンラインで面接を受ける候補者も存在し、選考プロセスの回数を増やし時間をかけて候補者を選考するなど、新型コロナウイルスの感染状況と候補者の選考状況を踏まえ柔軟に選考プロセスを変えることが企業に求められています。
■■日本■■
日系企業の海外事業要員求人が
新型コロナウイルス発生前の状態まで回復
【求人数】
対前年四半期比 170%
対前四半期比 110%
(日本企業の海外事業関連求人)
JAC Recruitment(日本) チーフアナリスト 佐原 賢治
2020年末から21年始にかけて急増した国内の新型コロナウイルス新規感染者数は、その後急速に減少したものの、3月後半から再び増加に転じ、その後も一進一退の状況が続いています。
政府は、月例の景気総括判断において、5、6月ともに「持ち直しの動きが続いているものの、一部で弱さが増している」に据え置くなど、慎重な見方を続けています。
特に6月はここまで景気回復をけん引してきた中国で自動車販売が落ち込んだほか、比較的コロナ禍の影響が軽微であったベトナムで新規感染が拡大し、ホーチミン市では都市封鎖が行われるなど東南アジアにおけるコロナ禍の影響が沈静化しないことも、さらには鉄鋼や石油の価格が高騰し利益を圧迫していることなどが我が国企業の姿勢を慎重なものにしている一因と考えられます。
また都市部ではまん延防止等重点措置が依然として継続され、飲食業界を中心に深刻なダメージが拡がっており、足元の新規感染者増加傾向が長期化しワクチン接種が滞るようなことがあれば、さらに景気の回復が遅れる可能性があります。
【企業の採用動向】
2021年4月の有効求人倍率は1.09倍。小幅で変動はあるものの今年に入ってほほ横ばいを続けていますが、新年度を迎えて製造業を中心に大手各社から積極的な中途採用計画が打ち出されたことにより、当社に寄せられた4-6月の日系企業の海外事業要員の新規求人数は前年同時期比70%増と大幅に伸びました。求人に積極的なのは自動車関連の事業を行う企業で、特にCASEに関連するITや事業開発関連の求人が、完成車メーカーやその一次サプライヤーから多く寄せられています。
これらの分野では、中国や欧州、北米などの企業等との連携を伴う業務も多く、職務の専門性に加えて外国語力を必要とすることから、各社は採用に苦戦しています。金融、医薬品、など多様な分野で進むDX(デジタル・トランスフォーメーション)関連の求人も含め、既成の業種の枠を超えた人材獲得競争によって給与額が高騰する状況となっています。
【求職者の動向】
4-6月の新規求職者(海外事業経験者の登録者)数は、前四半期比115%と増加しました。前年同時期比でも118%と増加しています。コロナ禍の影響が測り切れず不透明であった今後の方向性が各社の中で徐々に明確化されている中で、自身のキャリアの方向性との不一致によって転職を考え始める人材が現れ始めました。企業は、海外経験を有する貴重な人材が流出しないよう繋ぎ留めが必要です。
また、求職者の動きは依然として慎重で、転職は状況次第という姿勢が目立ちます。また企業の選考のハードルが上がっていることから優秀人材の獲得競争は一層し烈で、先端ITやヘルスケアなどの高度専門分野や海外ビジネスなどの知見・経験を有する人材を募集する場合には、より競合を意識した条件設定やその他の魅力付けを行う必要があります。
各国の求人数の増減については、その国々の景況感による変動や各国が講じた戦略(高額帯年収の求人やスペシャリスト層求人に特化など)により、意図的に減る場合もあります。そのため、求人数の増減は直接各国の業績に結び付くものではありません。
■株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントについて
1988年設立。スペシャリストや管理職の人材紹介に特化し、企業と人材を一人のコンサルタントが同時に担当する「両面型」のビジネスモデルとして国内最大規模の東証一部上場企業です。国際ビジネス経験をもつ人材の紹介も強みの一つで、日本国内では外資系企業や日系企業の海外事業などのグローバル領域の売上が全体の50%以上を占めています。外資系企業の人材紹介に特化した JAC International、ジョブサイトの「キャリアクロス」を運営するシー・シー・コンサルティング、英国、ドイツおよびアジア8ヵ国で人材紹介業を展開するJAC Recruitment Asia Ltdのグループ会社、コンサルティング・金融業界に特化した人材紹介事業を展開するバンテージポイントを傘下に、世界11ヵ国、24拠点で事業を展開するグローバル企業です。
http://corp.jac-recruitment.jp (コーポレートサイト)
http://www.jac-recruitment.jp (転職サイト)