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トーセイ Research Memo(7):上期で期初の通期営業利益計画を達成

注目トピックス 日本株
■トーセイ<8923>の決算動向

(1) IFRSと日本の会計基準(J-GAAP)との相違

日本基準の連結損益計算書がIFRSでは連結包括利益計算書、日本基準の連結貸借対照表が連結財政状態計算書と名称が異なる。ただし、後者については基本的な様式に大きな相違はない。

前者の相違点としては、連結包括利益計算書には日本基準のような経常損益、営業外損益、特別損益の概念、項目がなく、IFRSにおける営業損益は、投資損益、金融損益、持分法損益、法人所得税、非継続事業からの損益以外の損益となる。したがって、日本基準で特別損益に計上される固定資産の売却損益や減損損失は、IFRSではその他の収益・費用という項目に計上され、営業損益に含まれることになる。IFRSにおける税引前利益は日本基準の税金等調整前当期純利益(経常利益に特別損益を加減算したもの)に相当する。

不動産会社の利益に影響を与える項目としては、1)開発物件の開発期間中の借入費用がIFRSでは資産計上される、2)減損損失の認識のタイミングがIFRSでは1ステップアプローチの採用により日本基準より早く、また、減損の原因となった事象が解消された場合、戻入を行う(日本基準は戻入不可)、など様々あるが、総じて影響は限定的。両基準の差が確認できる同社の12/11期決算を見ても売上高、利益ともその差は軽微である。

(2) 2016年11月期第2四半期累計(12月-5月)業績概況

7月5日に発表された2016年11月期第2四半期累計決算(連結)は、売上高306億円(前年同期比37.2%増)、営業利益76.7億円(同68.7%増)、税引前利益72.4億円(同73.6%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益47.4億円(同78.8%増)。

開発案件の都市型商業施設の売却益がけん引し、大幅増収増益の好決算となった。物件売却のタイミングで短期の業績はぶれるため、当社は第2四半期累計業績予想を開示していないが、営業利益は期初の通期予想75.6億円を既に達成した。このため通期の営業利益予想は90億円に上方修正された。

仕入は売上想定金額換算で383億円(引渡ベース)。契約済みの案件を含めると461億円。通期目標700億円に対し順調に進捗している。不動産保有会社のM&Aや、競合の少ない空ビルの取得など工夫を凝らすことで、物件の取得競争が熾烈さを増すなかでも想定売上総利益率の目線を下げることなく高水準の仕入れを維持できている。

(3)セグメント別の業績動向

a)不動産流動化事業
セグメント業績は、売上高154億円(前年同期比12.1%増)、営業利益36.2億円(同10.0%増)。売上総利益率は28.1%(同0.3%pt減)と高水準を維持した。

販売物件の内訳は、オフィス、レジデンスなどの1棟販売が19棟、売上高142億円(1棟平均約7.5億円)、Restylingが39戸、売上高11.8億円(戸当たり平均3,028万円)だった。

1棟販売の売却先はほとんどが事業法人。トーセイ・リート向けの売却はなかった。1棟販売の中には空ビルないし空ビルに近い低稼働物件が4棟あった(前年同期は3棟)。空ビルや低稼働物件は、投資用不動産と比べ流動性に乏しく、保有中の賃貸収入も十分に得られないことから、ある程度の投資リスクを負うが比較的格安に仕入れられる。一方で、本社使用などの実需で売却できた場合は、通常のキャップレートとは違った目線での取引となるため、高水準の売上総利益率を得られる可能性がある。上期に売却した4棟のうち3棟はこの実需用途であり、残り1棟は、ホテル用途へのコンバージョンプランの提案によって、ホテル保有を希望する買主へ売却した。

Restylingは新たな仕入れを行っておらず、在庫は漸減傾向。5月末の在庫は9棟、125戸(売上高規模40億円弱)となった。

b)不動産開発事業
セグメント業績は、売上高100億円(前年同期比2.4倍)、営業利益36.5億円(同6.2倍)と急伸した。売上総利益率は47.8%(前年同期比24.2%pt増)と非常に高水準になった。

売上高の内訳は、商業ビルの開発案件が2棟で74.8億円、戸建分譲が53戸で26.0億円。マンション分譲はなかった。商業ビル2棟は「T'S BRIGHTIA南青山」と「T'S BRIGHTIA綱島」。前者は同社が開発した商業施設の中では過去最大で、売却額は70億円近くになったもよう。2物件とも第1四半期(12月-2月)に売却した。戸建分譲の53戸の中には、買収したアーバンホームの案件が7戸含まれている。

戸建分譲の売上総利益率は前年同期と同水準の21%としており、商業ビル2棟の売上総利益率は57%程度となる。「T'S BRIGHTIA南青山」は建築中からテナントの誘致を図り、テナントの要望に沿った仕様とすることで高収益物件となった。不動産投資市場の活況、立地の稀少性もあり、アジアの不動産ファンドに好条件で売却することができた。なお、商業ビル2物件の売買契約は期初計画発表時点で既に済んでおり、今期の業績をけん引することは期初から明らかだったためサプライズはないが、「T'S BRIGHTIA南青山」の追加工事費用やテナントリーシングにかかるコンサルティングフィーが見込みを下回ったため、想定以上の高採算となった。

戸建分譲の販売状況は、立地や物件の価格帯、コンセプト等により好不調まちまちだが、市況同様、総じて力強さはない。値引きによる売り急ぎはせず、着実に販売していく方針。

c)不動産賃貸事業
セグメント業績は、売上高24.3億円(前年同期比28.8%増)、営業利益10.0億円(同19.3%増)。5月末の保有物件は、賃料の発生していない空ビルを除くベースで70棟(前年同期末比22棟増、前期末比18棟増)と好調な仕入れにより拡大したため、売上高(賃貸収入)は順調に拡大した。売上高の伸びに比べ、営業利益の伸び率がやや低めなのは、新たに仕入れる物件にはバリューアップ余地の大きい低稼働のものが含まれることによる。

安定収益拡大のため固定資産を増やしていくという方針のもと、レジデンス1棟、約16億円を固定資産として取得した。

トーセイ・リートの上場時に拠出した郊外オフィスに関し、スポンサーとしてREITの分配金の確実性を担保するため賃料固定型マスターリース契約を結んでいたところ、キーテナントの退去が発生し、逆ざやとなっている。ただし、前期に将来の損失見込み額を引当処理済み。今年11月に期限が到来する賃料固定型マスターリース契約は、マスターリース賃料を5.1%引き下げた上で、期間4年で再契約することになった。足元の稼働率は70%程度でリースアップには時間を要するかもしれないが、マスターリース賃料を引き下げたこともあり、セグメント利益への影響は軽微だろう。

d)不動産ファンド・コンサルティング事業
セグメント業績は、売上高10.9億円(前年同期比40.6%増)、営業利益4.3億円(同27.7%増)。5月末のAUMは4,867億円と前期末から約650億円の純増となった。新規のAM受託は、昨年末にブラックストーンから受託したレジデンス57物件、532億円を中心に871億円。売却等による減少は221億円だった。新規受託は好調で、これに伴いAMフィーが5.4億円(同33%増)と拡大した。一方、売却が少なかったためディスポジションフィーは0.2億円(同87%減)にとどまった。

e)不動産管理事業
セグメント業績は、売上高19.6億円(前年同期比18.1%増)、営業利益0.7億円(同20.8%減)。5月末の管理棟数は594棟(前期末比47棟増)とブラックストーンからAM受託したレジデンスのうち東京圏の物件の管理を受託したため大きく伸びた。これに加え、スポット工事が増加し売上高は増加したが、販管費増を吸収し切れず、営業利益段階では減少となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 堀部 吉胤)



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