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世界初、多数の光信号を同時に電気信号に変換する高速集積型受光素子を開発

2017年9月14日

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
早稲田大学

世界初、多数の光信号を同時に電気信号に変換する高速集積型受光素子を開発
〜大容量光通信装置の大幅な小型化と低消費電力化を可能に〜

【ポイント】
■ 世界初、米粒よりはるかに小さい約0.1平方ミリメートル集積型の高速受光素子を開発
■ 新型光ファイバ伝送システムへの取組、多数の光信号を同時に受信し高速電気信号に変換
■ 膨大な情報が集中するネットワークの大容量光通信装置を、大幅に小型化かつ低消費電力化

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)ネットワークシステム研究所は、早稲田大学理工学術院 川西哲也教授と共同で、多数の光信号を同時に受信し、高速に電気信号に変換する高速集積型受光素子を開発しました。本素子は、約0.1平方ミリメートルに32個の受光部を集積しており、光通信において多チャネルの光信号を一括受信し、チャネル別に10GHz以上の高速電気信号に変換します。
 ネットワークの幹線やデータセンタでは、飛躍的に増大する情報量を限られたスペースと電力で処理する必要があります。本素子の開発により、多数の光受信器を集約し、大容量光通信装置の大幅な小型化と低消費電力化が可能となります。さらに、本素子の多チャネルの光信号を高速に処理できる特長は、イメージセンサやレーザ測距等への応用も期待されます。

【背景】
 インターネットの通信量は急激に増加しており、膨大な情報が集中するネットワークの幹線やデータセンタでは、光ファイバや通信装置の設置スペースや消費電力の削減が課題となっています。NICTは産学と連携し、1本の光ファイバの中に7から36個の光通信路(コア)を収めたマルチコアファイバを開発し、さらに、マルチ伝搬モードも利用したマルチコアファイバ1本で従来の100本分以上に相当する通信容量を達成しました。一方、光ファイバからの光信号は、これまでコアやモードごとに別々の光受信器で受信してきましたが、コア数の増加につれて受信器の占有体積が大きくなるため、通信システム全体の省スペース・省電力化が重要で光受信器の小型化が望まれていました。

【今回の成果】
 NICTと早稲田大学は、光通信において波長多重伝送をはじめ将来のマルチコアファイバ等の多チャネル光信号の一括受信を可能とする集積型受光素子(図)を開発しました。本開発の要素技術は以下のとおりです。
 ・素子間の信号の漏れを抑制するクロストーク制御技術
 ・光信号を電気信号へ変換する高速受光素子技術 (図中央赤い四角)
 ・半導体を作製するための高密度集積技術
 ・性能評価技術
 本開発では、早稲田大学はクロストーク制御技術を用いて集積化の設計を行い、NICTは高速受光素子技術、高密度集積技術により本素子を作製し、受信性能の評価を行いました。なお、高速受光素子技術の一部は、総務省電波資源拡大のための研究開発の一環として実施されたものです。
 本素子は、複数の光信号を一括受信して電気信号に変換するため、光受信器数を大幅に削減し、省スペース化を行い、さらに、各光受信器が搭載する消費電力の大きい信号処理回路を1つに集約することで省電力化を可能とします。今回、本素子をマルチコアファイバ、マルチモードファイバと直結して光信号の受信に成功したことにより、将来の光ファイバ用超小型受信器の実現性を確認しました 。
 また、本素子は2次元面上に到来する赤外光の強さと位相差を計測でき、イメージセンサやレーザ測距等への応用も期待されます。本素子は、CCDイメージセンサと比較して約1,000倍〜10,000倍高速な10GHz以上で並列動作し、集積数を高めても動作速度への影響は小さく、フレームレートの高いイメージング等に有効と考えられます。

【今後の展望】
 今後は、本素子の実用化に向けて、更に集積度の向上や小型パッケージ化等に取り組みます。また、光通信分野以外のイメージセンサやレーザ測距等への応用も開拓したいと考えています。なお、本研究成果は、2017年9月にスウェーデンで開催される光通信・光デバイスの世界最高峰国際会議ECOC2017で発表を行う予定です。






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