電波障害の原因となるプラズマバブル観測レーダをタイ国内で運用開始 -プラズマバブル発生から高精度観測-
[20/01/16]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
2020年1月16日
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
電波障害の原因となるプラズマバブル観測レーダをタイ国内で運用開始
〜プラズマバブル発生領域に近い磁気赤道に設置することで、発生段階から高精度に観測〜
【ポイント】
■ 衛星測位などの利用に悪影響を与えるプラズマバブルの観測レーダをタイ国内に設置
■ 磁気赤道付近で発生するプラズマバブルを現象の発生初期段階から高精度に観測
■ 人工衛星を利用した高精度測位の農業や建築分野などへの利用拡大に期待
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、タイ王国モンクット王ラカバン工科大学(KMITL、President: Prof. Dr. Suchatvee Suwansawat)と共同で、電波障害の原因となるプラズマバブルを観測するためのレーダをタイのKMITLチュンポンキャンパスに設置し、2020年1月17日(金)から運用を開始します。チュンポンは磁気赤道に近く、その上空でプラズマバブルが発生することが想定される場所であり、現象の発生初期段階から観測できる最適な場所です。
プラズマバブルの付近では、通過する電波が乱れるため、衛星測位の精度が低下したり、衛星を利用した測位や通信ができなくなったりすることがあります。そのため、プラズマバブルの継続的な観測や発生の予測が、近年強く望まれてきました。
本レーダの設置により、プラズマバブルの定常的な観測が可能となり、人工衛星を利用した高精度測位の農業や建築分野などへの利用拡大に向けた大きな進歩となることが期待されます。
【背景】
NICTでは、電波の伝わり方に関する予報や警報を発信することを目的に、長年にわたり電離圏及び太陽活動を始めとする宇宙天気の観測や予報に関わる研究を行っており、1988年から「宇宙天気予報」を毎日配信しています。近年、様々な分野で、宇宙天気情報のニーズが高まりつつあり、特に航空業界では、2019年11月7日(木)に国際民間航空機関(ICAO)のグローバル宇宙天気センターが情報提供サービスを開始しました。NICTも当該センターの一員として、通信、衛星測位、放射線被ばくに関する情報を提供しています。
我々の社会生活において、宇宙天気が及ぼす極めて大きな影響の一つとして、電離圏の乱れに由来する衛星測位の誤差の増加が挙げられます。電離圏の乱れの大きな原因の一つは、地球磁場の赤道(磁気赤道)を中心に発生する「プラズマバブル」です。プラズマバブルの付近では、通過する電波が乱れるため、衛星測位の精度が低下したり、衛星測位や通信ができなくなったりすることがあります。
現在、人工衛星を利用した農業や建築分野での無人運転など、高精度ナビゲーションの実利用が進んでおり、既に社会において欠かすことのできない重要なインフラとなっています。プラズマバブルは、磁気赤道域を中心とした低緯度のみならず、中緯度に位置する日本などでも測位誤差を引き起こすことから、その継続的な観測や発生の予測を行うことが近年強く望まれてきました。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/202001145652-O1-GCQH882z 】
図1 タイ・チュンポンのプラズマバブル観測レーダ
【今回の成果】
今回、NICTはKMITLと共同で、プラズマバブル観測のためのレーダをKMITLチュンポンキャンパスに設置し、2020年1月17日(金)から運用を開始します(図1参照)。チュンポンは、プラズマバブルの発生領域である磁気赤道に近く、その発生直後の状況をいち早くとらえることができるため、プラズマバブルを観測するレーダの設置をするには最適な場所です(図2参照)。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/202001145652-O2-9x994G74 】
図2 タイ・チュンポンの位置
このレーダは、東西90 mの敷地内に等間隔に設置した18本のアンテナから成るレーダシステムで、VHF帯(39.65 MHz)の電波を利用しています。レーダから発射された電波は、電離圏のプラズマバブルが作り出す不規則な形状によって反射され、戻ってくる電波を観測することで、プラズマバブルの位置や速度を把握することができます(図3参照)。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/202001145652-O3-0cfpUfi1 】
図3 VHFレーダによるプラズマバブル観測のイメージ
プラズマバブルは、発生後に東に進んで赤道から中緯度まで発達することもあり、日本南部に電波障害をもたらすことがあります。
本レーダの設置によって、プラズマバブルの定常的な観測が可能となり、人工衛星を利用した高精度測位の、日本や東南アジア域への農業・建築分野などでの利用の拡大実現に大きな進歩となることが期待されます。
【今後の展望】
今後、本レーダシステムに加え、日本やタイ国内の衛星測位受信機網も利用して、プラズマバブルが様々な衛星測位手法に与える影響を調査するとともに、その影響を軽減する研究を進め、宇宙天気予報サービスの一つとして提供していく予定です。
これにより、将来、プラズマバブルに影響されることのない高精度測位の更なる利用拡大に向けた宇宙天気情報サービスの提供を進めます。
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
電波障害の原因となるプラズマバブル観測レーダをタイ国内で運用開始
〜プラズマバブル発生領域に近い磁気赤道に設置することで、発生段階から高精度に観測〜
【ポイント】
■ 衛星測位などの利用に悪影響を与えるプラズマバブルの観測レーダをタイ国内に設置
■ 磁気赤道付近で発生するプラズマバブルを現象の発生初期段階から高精度に観測
■ 人工衛星を利用した高精度測位の農業や建築分野などへの利用拡大に期待
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、タイ王国モンクット王ラカバン工科大学(KMITL、President: Prof. Dr. Suchatvee Suwansawat)と共同で、電波障害の原因となるプラズマバブルを観測するためのレーダをタイのKMITLチュンポンキャンパスに設置し、2020年1月17日(金)から運用を開始します。チュンポンは磁気赤道に近く、その上空でプラズマバブルが発生することが想定される場所であり、現象の発生初期段階から観測できる最適な場所です。
プラズマバブルの付近では、通過する電波が乱れるため、衛星測位の精度が低下したり、衛星を利用した測位や通信ができなくなったりすることがあります。そのため、プラズマバブルの継続的な観測や発生の予測が、近年強く望まれてきました。
本レーダの設置により、プラズマバブルの定常的な観測が可能となり、人工衛星を利用した高精度測位の農業や建築分野などへの利用拡大に向けた大きな進歩となることが期待されます。
【背景】
NICTでは、電波の伝わり方に関する予報や警報を発信することを目的に、長年にわたり電離圏及び太陽活動を始めとする宇宙天気の観測や予報に関わる研究を行っており、1988年から「宇宙天気予報」を毎日配信しています。近年、様々な分野で、宇宙天気情報のニーズが高まりつつあり、特に航空業界では、2019年11月7日(木)に国際民間航空機関(ICAO)のグローバル宇宙天気センターが情報提供サービスを開始しました。NICTも当該センターの一員として、通信、衛星測位、放射線被ばくに関する情報を提供しています。
我々の社会生活において、宇宙天気が及ぼす極めて大きな影響の一つとして、電離圏の乱れに由来する衛星測位の誤差の増加が挙げられます。電離圏の乱れの大きな原因の一つは、地球磁場の赤道(磁気赤道)を中心に発生する「プラズマバブル」です。プラズマバブルの付近では、通過する電波が乱れるため、衛星測位の精度が低下したり、衛星測位や通信ができなくなったりすることがあります。
現在、人工衛星を利用した農業や建築分野での無人運転など、高精度ナビゲーションの実利用が進んでおり、既に社会において欠かすことのできない重要なインフラとなっています。プラズマバブルは、磁気赤道域を中心とした低緯度のみならず、中緯度に位置する日本などでも測位誤差を引き起こすことから、その継続的な観測や発生の予測を行うことが近年強く望まれてきました。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/202001145652-O1-GCQH882z 】
図1 タイ・チュンポンのプラズマバブル観測レーダ
【今回の成果】
今回、NICTはKMITLと共同で、プラズマバブル観測のためのレーダをKMITLチュンポンキャンパスに設置し、2020年1月17日(金)から運用を開始します(図1参照)。チュンポンは、プラズマバブルの発生領域である磁気赤道に近く、その発生直後の状況をいち早くとらえることができるため、プラズマバブルを観測するレーダの設置をするには最適な場所です(図2参照)。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/202001145652-O2-9x994G74 】
図2 タイ・チュンポンの位置
このレーダは、東西90 mの敷地内に等間隔に設置した18本のアンテナから成るレーダシステムで、VHF帯(39.65 MHz)の電波を利用しています。レーダから発射された電波は、電離圏のプラズマバブルが作り出す不規則な形状によって反射され、戻ってくる電波を観測することで、プラズマバブルの位置や速度を把握することができます(図3参照)。
【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/202001145652-O3-0cfpUfi1 】
図3 VHFレーダによるプラズマバブル観測のイメージ
プラズマバブルは、発生後に東に進んで赤道から中緯度まで発達することもあり、日本南部に電波障害をもたらすことがあります。
本レーダの設置によって、プラズマバブルの定常的な観測が可能となり、人工衛星を利用した高精度測位の、日本や東南アジア域への農業・建築分野などでの利用の拡大実現に大きな進歩となることが期待されます。
【今後の展望】
今後、本レーダシステムに加え、日本やタイ国内の衛星測位受信機網も利用して、プラズマバブルが様々な衛星測位手法に与える影響を調査するとともに、その影響を軽減する研究を進め、宇宙天気予報サービスの一つとして提供していく予定です。
これにより、将来、プラズマバブルに影響されることのない高精度測位の更なる利用拡大に向けた宇宙天気情報サービスの提供を進めます。