ガンダム監督 富野 由悠季氏が「SACLA」のエンジニア論を語る!!
[13/09/25]
提供元:PRTIMES
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世界一小さいものが見えるX線自由電子レーザー施設「SACLA」スペシャルサイト 「SACLA×GENIUS」コーナーに2人目の天才現る!
「ガンダム」に「SACLA」を登場させるとしたら?
『せっかくだから真剣に考えてみた』と語る、富野氏の答えとは…?
独立行政法人理化学研究所 放射光科学総合研究センター(兵庫県播磨地区、センター長 石川 哲也、以下 理研 放射光センター)では、世界最先端施設であるX線自由電子レーザー施設「SACLA(サクラ)」のスペシャルサイト内「SACLA×GENIUS」のコーナーにて、第2回目のゲストとなる、アニメーション監督の富野 由悠季氏をお迎えし、石川センター長との対談を掲載しました。
X線自由電子レーザー施設「SACLA(サクラ)」とは、「ミリ(mm)」→「マイクロ(micro)」→「ナノ(nano)」に続く小ささを表す単位「ピコ(pico)」の世界を見ることができる、いわばX線を使った“巨大な顕微鏡”です。原子や細胞レべルも観察できることから、生命の神秘の解析や、医療の発展の研究などに貢献している世界最先端施設です。
世界一小さいものが見えるX線レーザー施設 「SACLA」は、 日本の未来に目覚ましい発展をもたらすと期待されていますが、 その仕組みの難解さから、 一般の方々に内容を十分にお伝えすることはこれまで非常に困難でした。
そこで、 理研 放射光センターでは、「SACLA」を、多くの方々に楽しみながら身近に感じて頂くためのスペシャルサイトを2013年7月3日(水)にオープンしました。
さらに8月8日には、「SACLA×GENIUS」のコーナーをスペシャルサイト内に開設することとなり、各界の著名な方々
をゲストに迎え、ピコの世界で見てみたいモノや「SACLA」への期待、魅力を語って頂きます。
第1回目の北野 武氏に続き、第2回目となるゲストには、「僕は基本的にロケットとか宇宙にしか興味がない人間ですから」と自ら公言される「機動戦士ガンダム」の生みの親である富野 由悠季氏をお迎えし、理化学研究所放射光科学総合研究センター 石川 哲也センター長の解説を交えロングインタビューを実施致しました。
富野監督ならではの「SACLA」とアニメーション技術をシンクロさせた話題から、ジブリ作品の最新映画「風立ちぬ」に描かれたエンジニアリングの現実と宮崎 駿氏との共通点にまで広がり、終始熱気を帯びた会話が繰り広げられました。
「SACLA×GENIUS」コーナーURL: http://xfel.riken.jp/pr/sacla/?cat=2
■ガンダムの生みの親、富野由悠季が語るSACLAのエンジニアリング論 ※インタビュー内容を一部抜粋
◇2011年の冬以来、2年振りの再会となる二人
MC:お二人は2011年の冬に一度、『月刊ガンダムエース』(角川書店)の富野監督の連載(「教えてください。富野です」)で対談をされていますね。
富野氏(以下、T):はい。理化学研究所を訪問し、「SACLA」を見学させていただきました。石川先生は心が広い方で、いろいろと質問攻めにしてしまう僕でもなぜか嫌わずに接してくれて。
石川センター長(以下、I):いやいやいや(笑)。本当に富野監督とのお話は面白かったですし、あの記事が出た後、周囲の人から「お前のやっていることが富野監督の連載で初めてわかったよ」と何度も言われました。どうも、私たちの仕事は理解されづらくて……。
T:それは先生が専門の世界の言葉で語っているからであって、あのときのように一般論で話していけば、誰でも「SACLA」に興味を持つはずですよ。
◇「SACLA」は日本の未来を支える“観察のインフラ”です
I:富野監督は理系の研究に造詣が深いですが、昔から興味があったのですか?
T:僕は怠け者だったから理系に行けなかっただけで、基本的にロケットとか宇宙にしか興味がない人間ですから。高校生のときに数学の成績があまりにも悪くて、映画の道を選んだ。現在の僕は挫折の結果というわけです(笑)。
I:「SACLA」に来てくださったとき、「これはインフラだ」と仰っていましたよね。それは本当に監督ならではの慧眼 (けいがん)だと思いました。
T:あの取材でわかったことは、科学技術というのは「SACLA」のような施設で事象を精緻に観察して、物質の癖を徹底的に理解したうえで研究していかなければならないのではないかということです。乱暴な言い方をすると、原子力はそこがなくて実用化してしまったがために、みんな未だにどう扱ったらいいのか慌てふためいている。使用することでどんなことが起こるかちゃんとわかっていなかったから、作ってしまってから困り果てることになった。
I:実用化の前に、「まず観察し、理解すべし」と。
◇「SACLA」を取材したことで、『ガンダム』新作の方向性が固まった
T:実を言うと、今日話したようなことは、新作の制作にあたって考えたことなんですよ。(中略)今回の取材班から、事前に質問をもらいましたよね。
MC:はい。「『ガンダム』に「SACLA」を登場させるとしたら、どんなかたちですか?」という質問ですね。
T:これはとても象徴的な質問です。「こんなことを聞くなんて今のメディア人はレベルが低いよな」って初めは思ったんだけど(笑)、せっかくだから真剣に考えてみたんです。そこで初めて、『ガンダム』というアニメについて、僕なりの簡潔な言い方を見つけました。
I:それは私もぜひ知りたいですね。
T:こうです。「SACLAはあまりにもリアルすぎる技術なので登場することはあり得ません。『ガンダム』のようなロボットアニメはファンタジーですから、魔法を扱うのです。以上」。
MC:しかし、富野監督が“ファンタジー”と呼ぶ『ガンダム』は、これまで“リアルロボットアニメ”と評されてきました。
T:その言葉がどれだけ嘘かということです。旧来のロボットアニメにあったような、「天才博士が一人ですべてを作り上げた」という世界観ではなく、メカニックがいて、設計者がいて、という当然のことをやったからそう言われただけで、あれが現実化されるとは思っていませんよ。やっぱり、表現するっていうことは、根源的に「魔法」を扱うことを指すのです。それが自分にとってはっきり言葉としてわかっただけでも、この質問はありがたかったですよ(笑)。
I:制作中の新作にそうした考えが反映されているというのは?
T:今の世界の状況では、物語をリアリズムで組み立てると、「終末論」とか「人間は限界だ」って結論にしかならないのですよ。そこを突破していく展開をリアルにやるなら、暴力的にやるしかない。例えば、ヒトラーの再来が世界を席巻しているとか。でも、そんなフィクションが気持ち良いわけがない。特にロボットアニメというジャンルは20年後、30年後の未来を担ってくれる子供たちに向けて作るものだから、自慢気に語っちゃいけないと思うんです。だから、そういう考えをすべて捨てて、「これだったら」という物語を見つけた。その考えに至ったことで、次の新作はかなり自信を持って作っています。
■富野 由悠季氏プロフィール
とみのよしゆき
1941年、神奈川県小田原市生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、虫プロに入社し「鉄腕アトム」の制作にスタッフとして参加。その後、CMディレクターを経てフリーの演出家に。「海のトリトン」で初のチーフディレクターを経験し、機動戦士ガンダムの原作・総監督を務め一躍人気監督となる。代表作は「機動戦士ガンダム」シリーズ、「伝説巨神イデオン」、「聖戦士ダンバイン」など。
<インタビュー風景>
■約2年前の対談の続きが、再会した瞬間から始まりました
石川センター長との再会が決まってから“受験生のように“(本人談)X線や「SACLA」について勉強してきたという富野監督は、「前回聞き忘れていたことがあったんですーー」と、取材陣のスタンバイが整う前から対談を”再開“。石川センター長も、富野監督との科学談議を楽しみにしていた様子で、久しぶりの挨拶もそこそこにすぐに「SACLA」の話で盛り上がりました。
対談の途中、富野監督がエンジニアリングに対して関心が高い理由について「父親が戦時中に戦闘機や爆撃機の部品を作るエンジニアだった」ことを明かすと、話は映画『風立ちぬ』の話題に。富野監督は「本当に見事な映画です。映画史上初めて、近代航空史を、そして技術者の苦悩を正面から描いた映画」と称賛し、ラストシーンを語りながら、感極まり涙する場面もありました。石川センター長も富野監督と再会し、「科学技術が持っている矛盾について改めて気づかされた」と感慨深く述べていました。
<参考資料>
■世界最短の波長を実現したX線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」
X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」は、2006年度に国家基幹技術の1つとして選定され、日本の最先端テクノロジーを結集して5年間にわたって整備が行われてきました。そして、2011年2月からビーム運転を開始し、わずか3カ月の調整運転で波長0.12ナノメートル(1.2Å)のX線レーザーの発振に成功しました。その後、順調に調整を進め、現在では、世界で最も短い波長となる63ピコメートル(0.063ナノメートル)を達成しています。直線型の加速器を利用したXFELで、波長0.1ナノメートル以下を実現したのは、「SACLA」が世界初となります。
「SACLA」で発生するXFELは、
(1)極めて明るい
(2)発光時間が10兆分の1秒(フェムト秒)と極めて短い
(3)波が完全にそろっている(コヒーレントである)
ことが特徴です。これにより、今まで捉えることのできなかった化学反応など超高速反応の解析や、タンパク質など生体分子の構造解析が可能となり、燃料電池や新薬などの開発が大きく進展するものと期待されています。
また、「SACLA」は、日本独自の技術によって非常にコンパクトに設計され、なおかつ安定に運転できることを重視したデザインになっています。これにより、アメリカやヨーロッパの施設と比べて、3分の1から4分の1の小型化を実現しています。
■ 「SACLA」のスペシャルサイトについて URL: http://xfel.riken.jp/pr/sacla/index.html
世界一小さいものが見えるX線レーザー「SACLA」を分かりやすく、さらに楽しんで頂くため、5つのコンテンツをご用意しています。
◇WHAT’S SACLA
「SACLA」公式キャラクターの『ピコネコ』がピコの単位についてや、なぜ小さいものが見えるかなどの紹介、さらに動画でも「SACLA」の凄さを解説しています。
◇SACLA × GENIUS
日本が誇る最先端科学技術の粋「SACLA」について著名人との対談や、著名人がピコの世界で見てみたいモノなどを語ります。第1弾は「北野武」さん。
◇HARIMA SACLA
アニメーション・CGの制作を手掛ける「神風動画」による スペシャルムービー「播磨サクラ」 を今秋スタートに向けて、起動準備中です。
◇PICO GALLERY
生命の神秘の解析や、医療の発展などに貢献する、ピコスコープ「SACLA」のスペシャルムービーとして2作品を公開中。
・ピコスコープSACLAが映し出す、愉快で不思議な細胞たちの世界!と題し、ピコの世界を描き続けるアニメーション作家「水江未来」さんの動画作品「ピコトピア」
・全篇鉛筆と水彩絵の具で描かれた、幻想的なアニメーションで、ナレーションを能登麻美子さんが手がける動画作品「忘れ星(わすれぼし)」
◇GO TO SACLA
“<(祝)SACLAサイト開設記念>ツアー”など、「SACLA」の見学ツアーを紹介。
「ガンダム」に「SACLA」を登場させるとしたら?
『せっかくだから真剣に考えてみた』と語る、富野氏の答えとは…?
独立行政法人理化学研究所 放射光科学総合研究センター(兵庫県播磨地区、センター長 石川 哲也、以下 理研 放射光センター)では、世界最先端施設であるX線自由電子レーザー施設「SACLA(サクラ)」のスペシャルサイト内「SACLA×GENIUS」のコーナーにて、第2回目のゲストとなる、アニメーション監督の富野 由悠季氏をお迎えし、石川センター長との対談を掲載しました。
X線自由電子レーザー施設「SACLA(サクラ)」とは、「ミリ(mm)」→「マイクロ(micro)」→「ナノ(nano)」に続く小ささを表す単位「ピコ(pico)」の世界を見ることができる、いわばX線を使った“巨大な顕微鏡”です。原子や細胞レべルも観察できることから、生命の神秘の解析や、医療の発展の研究などに貢献している世界最先端施設です。
世界一小さいものが見えるX線レーザー施設 「SACLA」は、 日本の未来に目覚ましい発展をもたらすと期待されていますが、 その仕組みの難解さから、 一般の方々に内容を十分にお伝えすることはこれまで非常に困難でした。
そこで、 理研 放射光センターでは、「SACLA」を、多くの方々に楽しみながら身近に感じて頂くためのスペシャルサイトを2013年7月3日(水)にオープンしました。
さらに8月8日には、「SACLA×GENIUS」のコーナーをスペシャルサイト内に開設することとなり、各界の著名な方々
をゲストに迎え、ピコの世界で見てみたいモノや「SACLA」への期待、魅力を語って頂きます。
第1回目の北野 武氏に続き、第2回目となるゲストには、「僕は基本的にロケットとか宇宙にしか興味がない人間ですから」と自ら公言される「機動戦士ガンダム」の生みの親である富野 由悠季氏をお迎えし、理化学研究所放射光科学総合研究センター 石川 哲也センター長の解説を交えロングインタビューを実施致しました。
富野監督ならではの「SACLA」とアニメーション技術をシンクロさせた話題から、ジブリ作品の最新映画「風立ちぬ」に描かれたエンジニアリングの現実と宮崎 駿氏との共通点にまで広がり、終始熱気を帯びた会話が繰り広げられました。
「SACLA×GENIUS」コーナーURL: http://xfel.riken.jp/pr/sacla/?cat=2
■ガンダムの生みの親、富野由悠季が語るSACLAのエンジニアリング論 ※インタビュー内容を一部抜粋
◇2011年の冬以来、2年振りの再会となる二人
MC:お二人は2011年の冬に一度、『月刊ガンダムエース』(角川書店)の富野監督の連載(「教えてください。富野です」)で対談をされていますね。
富野氏(以下、T):はい。理化学研究所を訪問し、「SACLA」を見学させていただきました。石川先生は心が広い方で、いろいろと質問攻めにしてしまう僕でもなぜか嫌わずに接してくれて。
石川センター長(以下、I):いやいやいや(笑)。本当に富野監督とのお話は面白かったですし、あの記事が出た後、周囲の人から「お前のやっていることが富野監督の連載で初めてわかったよ」と何度も言われました。どうも、私たちの仕事は理解されづらくて……。
T:それは先生が専門の世界の言葉で語っているからであって、あのときのように一般論で話していけば、誰でも「SACLA」に興味を持つはずですよ。
◇「SACLA」は日本の未来を支える“観察のインフラ”です
I:富野監督は理系の研究に造詣が深いですが、昔から興味があったのですか?
T:僕は怠け者だったから理系に行けなかっただけで、基本的にロケットとか宇宙にしか興味がない人間ですから。高校生のときに数学の成績があまりにも悪くて、映画の道を選んだ。現在の僕は挫折の結果というわけです(笑)。
I:「SACLA」に来てくださったとき、「これはインフラだ」と仰っていましたよね。それは本当に監督ならではの慧眼 (けいがん)だと思いました。
T:あの取材でわかったことは、科学技術というのは「SACLA」のような施設で事象を精緻に観察して、物質の癖を徹底的に理解したうえで研究していかなければならないのではないかということです。乱暴な言い方をすると、原子力はそこがなくて実用化してしまったがために、みんな未だにどう扱ったらいいのか慌てふためいている。使用することでどんなことが起こるかちゃんとわかっていなかったから、作ってしまってから困り果てることになった。
I:実用化の前に、「まず観察し、理解すべし」と。
◇「SACLA」を取材したことで、『ガンダム』新作の方向性が固まった
T:実を言うと、今日話したようなことは、新作の制作にあたって考えたことなんですよ。(中略)今回の取材班から、事前に質問をもらいましたよね。
MC:はい。「『ガンダム』に「SACLA」を登場させるとしたら、どんなかたちですか?」という質問ですね。
T:これはとても象徴的な質問です。「こんなことを聞くなんて今のメディア人はレベルが低いよな」って初めは思ったんだけど(笑)、せっかくだから真剣に考えてみたんです。そこで初めて、『ガンダム』というアニメについて、僕なりの簡潔な言い方を見つけました。
I:それは私もぜひ知りたいですね。
T:こうです。「SACLAはあまりにもリアルすぎる技術なので登場することはあり得ません。『ガンダム』のようなロボットアニメはファンタジーですから、魔法を扱うのです。以上」。
MC:しかし、富野監督が“ファンタジー”と呼ぶ『ガンダム』は、これまで“リアルロボットアニメ”と評されてきました。
T:その言葉がどれだけ嘘かということです。旧来のロボットアニメにあったような、「天才博士が一人ですべてを作り上げた」という世界観ではなく、メカニックがいて、設計者がいて、という当然のことをやったからそう言われただけで、あれが現実化されるとは思っていませんよ。やっぱり、表現するっていうことは、根源的に「魔法」を扱うことを指すのです。それが自分にとってはっきり言葉としてわかっただけでも、この質問はありがたかったですよ(笑)。
I:制作中の新作にそうした考えが反映されているというのは?
T:今の世界の状況では、物語をリアリズムで組み立てると、「終末論」とか「人間は限界だ」って結論にしかならないのですよ。そこを突破していく展開をリアルにやるなら、暴力的にやるしかない。例えば、ヒトラーの再来が世界を席巻しているとか。でも、そんなフィクションが気持ち良いわけがない。特にロボットアニメというジャンルは20年後、30年後の未来を担ってくれる子供たちに向けて作るものだから、自慢気に語っちゃいけないと思うんです。だから、そういう考えをすべて捨てて、「これだったら」という物語を見つけた。その考えに至ったことで、次の新作はかなり自信を持って作っています。
■富野 由悠季氏プロフィール
とみのよしゆき
1941年、神奈川県小田原市生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、虫プロに入社し「鉄腕アトム」の制作にスタッフとして参加。その後、CMディレクターを経てフリーの演出家に。「海のトリトン」で初のチーフディレクターを経験し、機動戦士ガンダムの原作・総監督を務め一躍人気監督となる。代表作は「機動戦士ガンダム」シリーズ、「伝説巨神イデオン」、「聖戦士ダンバイン」など。
<インタビュー風景>
■約2年前の対談の続きが、再会した瞬間から始まりました
石川センター長との再会が決まってから“受験生のように“(本人談)X線や「SACLA」について勉強してきたという富野監督は、「前回聞き忘れていたことがあったんですーー」と、取材陣のスタンバイが整う前から対談を”再開“。石川センター長も、富野監督との科学談議を楽しみにしていた様子で、久しぶりの挨拶もそこそこにすぐに「SACLA」の話で盛り上がりました。
対談の途中、富野監督がエンジニアリングに対して関心が高い理由について「父親が戦時中に戦闘機や爆撃機の部品を作るエンジニアだった」ことを明かすと、話は映画『風立ちぬ』の話題に。富野監督は「本当に見事な映画です。映画史上初めて、近代航空史を、そして技術者の苦悩を正面から描いた映画」と称賛し、ラストシーンを語りながら、感極まり涙する場面もありました。石川センター長も富野監督と再会し、「科学技術が持っている矛盾について改めて気づかされた」と感慨深く述べていました。
<参考資料>
■世界最短の波長を実現したX線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」
X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」は、2006年度に国家基幹技術の1つとして選定され、日本の最先端テクノロジーを結集して5年間にわたって整備が行われてきました。そして、2011年2月からビーム運転を開始し、わずか3カ月の調整運転で波長0.12ナノメートル(1.2Å)のX線レーザーの発振に成功しました。その後、順調に調整を進め、現在では、世界で最も短い波長となる63ピコメートル(0.063ナノメートル)を達成しています。直線型の加速器を利用したXFELで、波長0.1ナノメートル以下を実現したのは、「SACLA」が世界初となります。
「SACLA」で発生するXFELは、
(1)極めて明るい
(2)発光時間が10兆分の1秒(フェムト秒)と極めて短い
(3)波が完全にそろっている(コヒーレントである)
ことが特徴です。これにより、今まで捉えることのできなかった化学反応など超高速反応の解析や、タンパク質など生体分子の構造解析が可能となり、燃料電池や新薬などの開発が大きく進展するものと期待されています。
また、「SACLA」は、日本独自の技術によって非常にコンパクトに設計され、なおかつ安定に運転できることを重視したデザインになっています。これにより、アメリカやヨーロッパの施設と比べて、3分の1から4分の1の小型化を実現しています。
■ 「SACLA」のスペシャルサイトについて URL: http://xfel.riken.jp/pr/sacla/index.html
世界一小さいものが見えるX線レーザー「SACLA」を分かりやすく、さらに楽しんで頂くため、5つのコンテンツをご用意しています。
◇WHAT’S SACLA
「SACLA」公式キャラクターの『ピコネコ』がピコの単位についてや、なぜ小さいものが見えるかなどの紹介、さらに動画でも「SACLA」の凄さを解説しています。
◇SACLA × GENIUS
日本が誇る最先端科学技術の粋「SACLA」について著名人との対談や、著名人がピコの世界で見てみたいモノなどを語ります。第1弾は「北野武」さん。
◇HARIMA SACLA
アニメーション・CGの制作を手掛ける「神風動画」による スペシャルムービー「播磨サクラ」 を今秋スタートに向けて、起動準備中です。
◇PICO GALLERY
生命の神秘の解析や、医療の発展などに貢献する、ピコスコープ「SACLA」のスペシャルムービーとして2作品を公開中。
・ピコスコープSACLAが映し出す、愉快で不思議な細胞たちの世界!と題し、ピコの世界を描き続けるアニメーション作家「水江未来」さんの動画作品「ピコトピア」
・全篇鉛筆と水彩絵の具で描かれた、幻想的なアニメーションで、ナレーションを能登麻美子さんが手がける動画作品「忘れ星(わすれぼし)」
◇GO TO SACLA
“<(祝)SACLAサイト開設記念>ツアー”など、「SACLA」の見学ツアーを紹介。