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SI Research Memo(5):2020年2月期はE-Commerce事業、ERP・AI事業が2ケタ増収増益

注目トピックス 日本株
■業績動向

2. 事業セグメント別動向
(1) Object Browser事業
システムインテグレータ<3826>のObject Browser事業の売上高は前期比3.6%増の767百万円、営業利益は同3.6%減の326百万円となった。「OBPM」を中心に売上高は増加したが、前期に抑えた広告費を積極的に投下し、「OBPM」をオンプレミス型からクラウドサービス型に移行する取り組みを進めたことが減益要因となった。オンプレミスからクラウドサービスにビジネスモデルを移行する際は、一時的に売上げ・利益面でマイナスに作用する期間がある。

「OBPM」の導入社数は前期末の170社超から190社超に拡大し、売上高で前期比5.7%増となった。IT業界ではここ数年、繁忙状況が続いている半面、プロジェクトの開発遅延リスクも増しており、プロジェクト全体を管理できる「OBPM」の需要増加につながっているものと見られる。オンプレミスよりもクラウドサービスを選択する企業が増加したため、増収率は従来の2ケタ成長から鈍化したが、ストック型ビジネスの拡大を打ち出しており、同戦略に沿った動きとして評価される。

また、「SI Object Browser」シリーズは、新規顧客への導入が進んだほか、既存顧客からの更新需要などもあり、前期比で微増収となった。導入社数は前期末の1.7万社超(39万ライセンス)から1.9万社(43万ライセンス)に拡大しており、業界デファクトスタンダード製品として着実に成長を続けている。

アプリケーション設計支援ツールの「OBDZ」については、2019年6月にパフォーマンスを大幅に向上した完全Web版をリリースし、セミナー等の販促活動の取り組みを進めたことで、導入社数が前期末の約40社から60社に増加した。売上規模はまだ小さいものの、ソフトウェア開発分野の生産性を高めるツールとして、今後も機能の向上を図りながら拡販を進めていく方針だ。

(2) E-Commerce事業
E-Commerce事業の売上高は前期比14.4%増の829百万円、営業利益は同50.5%増の205百万円と大幅増収増益となった。EC市場の拡大とともに参入企業が増加し競争が激化しているものの、20年以上にわたる開発実績とノウハウを強みとして、大規模ECサイトの構築や難易度の高い案件の受注が増加した。最近の傾向はERPなど他システムとの連携や多様なビジネス形態(BtoC/モール/BtoB/オムニチャネル)への対応を求められるケースが増えており、1案件当たりの受注額も1〜2億円(標準パッケージは1千万円程度)に大型化する傾向にある。また、営業利益率に関してもプロジェクト管理の徹底や開発手法の見直しによる生産性向上が寄与し、前期の18.9%から24.8%と大きく上昇した。

(3) ERP・AI事業
ERP・AI事業の売上高は前期比12.6%増の2,914百万円、営業利益は同11.7%増の183百万円となった。2019年8月に製造業での生産、販売、据付・設置、アフターサービスの業態に一気通貫で対応できる各種アドオンモジュール(生産管理、工事管理、原価管理)のバージョンアップ及び新規リリースを行った効果もあり、これら業種向けの受注が好調に推移した。また、同社は自らが「GRANDIT」と「OBPM」を連携させ、「継続取引管理アドオンモジュール」も利用したうえで、IT企業における理想的な合理化モデルを実現しており、この連携モデルを「ITテンプレート」として製品化し、IT企業への導入も増えている。

また、AWSやMicrosoft Azureなどのパブリッククラウド上に「GRANDIT」を構築するといったニーズも増えてきており、2019年3月からは「GRANDIT」サブスクリプションモデルの提供も開始している。クラウドサービスで提供することにより顧客企業は低コストかつ短納期で導入が可能となるため、中小企業でも「GRANDIT」を利用しやすくなり、顧客数の拡大につながる取り組みとして注目される。

新規事業として開始した「AISI∀-AD」(ディープラーニング異常検知システム)については、工場の目視検査工程用として多くの引き合いが来ている。検査対象物としては、輸送機器用部品やペットボトルのキャップ、電設資材など多種多様であり、そのうち2〜3社と実証試験を進めている。試験を進めていくなかで要望なども出てきており、現在はノウハウを蓄積して完成度を高め、ソリューション力の向上を図っている段階にある。売上高としては、実証実験のコストとして9百万円程度を計上している。現在は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあってプロジェクトが中断したままだが、今後事態が収束に向かえば再開するものと見られる。

(4) その他
その他の事業には、プログラミングスキル判定サービスの「TOPSIC」とその他の研究開発投資が含まれている。「TOPSIC」の売上高は前期の11百万円から42百万円と順調に拡大した。認知度の向上とともにIT企業を中心に導入社数が前期末の約50社から約70社に増加したことや、企業・学校対抗プログラミングバトル「PG BATTLE」の開催に伴うスポンサー収入8百万円を計上したことが増収要因となった。

なお、AIサービスとして開発を進めていた「AISI∀-CL(Company List)」※については、先行企業があり収益化も見込みにくいと判断したことから、開発を中止したことを明らかにしている。その他部門の営業損失額は「TOPSIC」の増収効果に加えて、こうした研究開発投資の減少もあり、前期の95百万円から54百万円に縮小している。

※インターネット上に開設されている企業のホームページをクローリングし、スクレイピング(情報抽出)した会社概要や製品・サービス等を自然言語理解技術で読み取り、業態や業種などを自動でタグ付けする情報収集自動化サービス。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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